本 章 で は 、 日本 経 済 財 政 中 期 モ デ ル を構 築 し、 現 在 の 財 政 制 度 を維 持 した 場 合 に 経 済 や 財 政 に つ い て どの よ うな 見 通 しが 描 か れ る か に つ い て 検 討 した 。 本 章 で 構 築 した モ デ ル で は 、
SNAを
ベ ー ス と した 財 政 ブ ロ ッ ク と制 度 財 政 をベ ー ス と した 財 政 ブ ロ ッ ク を置 き 、 一 般 政 府 の 部 門 間 の財 政 関 係 を見 る こ とが で き る よ うに な っ て い る。 ま た 財 政 ブ ロ ッ ク とマ ク ロ経 済 ブ ロ ッ ク は 連 動 す る形 と な っ て お り、 制 度 改 革 の 経 済 と財 政 に 対 す る影 響 に つ い て 両 者 の 相 互 関係 を踏 ま え な が ら分 析 で き る よ うに した 。 マ ク ロ経 済 ブ ロ ッ ク に つ い て も 、 長 期 の 財 政 見 通 しを示 す た め 供 給 主 導 型 と し、 貯 蓄 率 を モ デ ル に 織 り込 み 高 齢 化 の 進 行 の マ ク ロ経 済 へ の影 響 を反 映 す る な どの 特 徴 が あ る。こ の モ デ ル を 用 い た 分 析 の 結 果 は 次 の 通 りで あ る。
2012年
現 在 の 財 政 制 度 を 維 持 した ま ま で は 、 財 政 収 支 の 改 善 が 図 られ る こ とが な く、 長 期 債 務 残 高 の 累 増 ペ ー ス が 緩 ま な い 。経 済 に つ い て も2025年
度 を境 に ピー ク ア ウ トして い く結 て い る。ま た2014年
度 以 降 に 予 定 され て い る 消 費 税 率 の 引 き 上 げ を行 レー シ ョン で は 、 基 礎 的 財 政 収 支 の 赤 字 は 縮 小 す る が 、 これ を均 衡 さ せ る に は 至 ら な い 。した が っ て 財 政 の 持 続 可 能 性 の 確 保 の た め に は 、 歳 出 の 削 減 が 必 要 と な る と考 え られ る 。本 章 で は
2030年
度 時 点 で の 基 礎 的 財 政 収 支 の 均 衡 を 目標 と し て 、 国 か ら地 方 へ の 移 転 の 削 減 を 通 じ て 歳 出 を 削 減 す る こ と を 検 討 した 。 計 測 結 果 か ら 、 国 庫 支 出 金 な ら び に 基 準 財 政 需 要 額 を5.7%削
減 す れば 、
2030年
度 時 点 の 基 礎 的 財 政 収 支 の 均 衡 が 達 成 さ れ る と い う結 果 が 得 られ た 。 し か し な が ら こ の 場 合 で も長 期 債 務 残 高 の 累 増 ペ ー ス は 止 ま ら な い と い う結 果 も 得 られ た 。最 後 に 、 今 後 の 課 題 を 挙 げ る 。 本 モ デ ル に よ る 分 析 の 限 界 で あ る が 、 消 費 税 率 の 引 き 上 げ や 歳 出 削 減 に 関 す る 結 果 の 解 釈 に お い て 、 需 要 側 に 対 す る 影 響 が 考 慮 され て い な い と い う点 に 留 意 す る 必 要 が あ る 。
ま た 政 府 間 財 政 関 係 を 見 直 した こ と で 個 々 の 地 方 自 治 体 に お け る 財 政 の 影 響 や 地 域 経 済 に ど の よ うな 影 響 が あ る の か に つ い て は 、 こ の 章 の 分 析 で は 明 らか と な つ て い な い 。 こ の 点 に つ い て は 、 マ ク ロ 経 済 で は な く地 域 経 済 ・ 地 方 財 政 の 観 点 か ら 、 次 章 以 降 で 検 討 して い く こ と とす る 。
ま た 地 方 財 政 へ の 移 転 に つ い て 総 額 とい う 経 済 へ の 影 響 を 勘 案 す る た め に は 、 地 域 ご と く個 別 に検 討 す る必 要 が あ る と考 え る。 そ れ 定 方 法 等 に つ い て モ デ ル 全 体 の 頑 健 性 を 高 め
面 で しか 捉 え られ て い な い 。 地 域 に モ デ ル を構 築 す る な ど よ り細 か と同 時 に 、 個 別 の 構 造 方 程 式 の 推 る こ と も課 題 で あ る。
第
2章
饗
需 要 面 か らみ た 道 州 制 下 に お け る 公 共 投 資 の 地 域 経 済 へ の 影
一 地 域 間 の 経 済 取 引 関 係 を 考 慮 した 地 域 計 量 モ デ ル に よ る 分 析 一
1
本 章 の ね ら い本 章 で は 、 全 国 を 地 域 分 割 し、 各 地 域 に お け る公 共 投 資 の 経 済 波 及 効 果 を み る こ とに よ つ て 、 地 域 政 策 の あ り方 に つ い て 考 え る。 具 体 的 に は 全 国 を
5地
域 に 分 割 して そ れ ぞ れ 地 域 計 量 モ デ ル を構 築 し、 移 出 入 を通 じて これ らを接 続 し た モ デ ル を構 築 して い る。 そ して こ の モ デ ル を 用 い て 、 公 共 投 資 の 各 地 域 経 済 へ の 影 響 に つ い て 地 域 間 の 経 済 取 引 関係 を考 慮 す る形 で 計 測 す る。地 域 計 量 モ デ ル で は 、 しば しば海 外 部 門 を含 む 他 地 域 は 、 外 生 と して 取 り扱 わ れ る。 しか しな が ら、 地 域 経 済 に お い て 圏 域 を超 え た 経 済 取 引 は 近 年 ま す ま す 活 発 化 して お り、 これ に 留 意 した 分 析 を行 う必 要 が あ る。 複 数 地 域 の 計 量 モ デ ル を 同 時 に 取 り扱 う とい う研 究 事 例 は い くつ か 存 在 す る。 大 河 原 ほ か (1988) で は 、 全 国
9地
域 の 計 量 モ デ ル が 構 築 され て い る。 こ の モ デ ル の 特 徴 は 、 マ ク ロ経 済 ブ ロ ッ ク を別 途 設 け 、 マ ク ロ全 体 と個 別 地 域 の 整 合 性 につ い て 、 相 互 チ ェ ッ ク が 行 わ れ て い る 点 で あ る。 た だ し財 の 地 域 間 移 動 に つ い て は 、 明 示 的 に 考 慮 され て い な い 。 ま た 論 文 内 で 方 程 式 体 系 が 示 され て い な い こ と も あ り、 地 域 経 済 モ デ ル 同 士 、 な らび に マ ク ロ経 済 ブ ロ ッ ク と地 域 経 済 ブ ロ ッ ク が どの よ うに 連 結 され て い る の か を把 握 す る こ とが 困 難 で あ る。 複 数 地 域 に つ い て 公 共 投 資 の 効 果 を検 討 した 研 究 と して は 、 林0小
西(1991)、 稲 田・ 小 川 (1994)、 楊 (1997)な どが あ る。 林 ・ 小 西(1991)で は 、 グ ラ ビテ ィモ デ ル を モ デ ル に組 み 込 む 形 で 逐 次 決 定 型 の モ デ ル が 構 築 され て い る。 ま た 稲 田・ 小 川(1994)で は 、 近 畿 地 方 の 各 府 県 に つ い て ほ ぼ 同 一 構 造 の モ デ ル を 作 成 し、 各 々 の 府 県 を統 合 し た 地 域 モ デ ル が 構 築 され て い る。 た だ し、 こ の よ うな 複 数 地 域 に ま た が る計 量 モ デ ル の 開 発 は 、 地 域 間 の 経 済 取 引 が 活 発 化 して い る に も か か わ らず 、 統 計 資 料 の 整 備 が 十 分 に行 わ れ て い な い とい うこ と も あ り、 近 年 は あ ま り行 わ れ て い な い 。 楊 (1997)は 計 量 モ デ ル を用 い た 研 究 で は な い が 、 理 論 的 枠 組 を も と に 公共 投 資 と地 域 経 済 発 展 に つ い て 効 率 と公 平 の 観 点 か ら検 討 が 行 わ れ て い る。
な お 地 域 間 の 経 済 取 引 関 係 を 明 らか に す る た め に は 、 分 析 ツ ー ル と して 地 域 間 産 業 連 関 表 が 有 用 で あ る。 地 域 内 産 業 連 関 表 は 域 内 の 財 0サー ビス の 取 引 の み を 対 象 とす る の に 対 して 、 地 域 間 産 業 連 関 表 は 地 域 内 表 が 把 握 す る取 引 に 加 え て 、 複 数 の 地 域 間 の 財 ・ サ ー ビス の 取 引 も対 象 とす る。 地 域 内 産 業 連 関 表 で は 、 域 外 へ の 財 ・ サ ー ビス ヘ の 移 出 の 行 き 先 は 不 明 で あ る が 、 地 域 間 産 業 連 関 表 で は 、 どの 地 域 に 移 出 され た の か が 定 量 的 に把 握 で き る。 例 え ば 高 林
0下
山 (2005)は 、 地 域 間 産 業 連 関 表 を 用 い た 研 究 で あ り、 公 共 投 資 の 生 産 波 及 効 果 に つ い て 自地 域 と他 地 域 を分 け て 結 果 が 示 され て い る。しか しな が ら地 域 間 産 業 連 関 表 に よ る分 析 で は 、 各 地 域 の 経 済 構 造 が 投 入 係 数 表 に 集 約 され て お り、 地 域 経 済 に 対 す る波 及 効 果 の 経 路 が 不 明 で あ る こ と、 ま た 時 間 概 念 が 存 在 しな い
こ とが 問 題 点 と して 指 摘 で き る。
本 章 で 構 築 して い る 地 域 計 量 モ デ ル は 、 以 下 の よ うな 特 徴 を持 た せ て い る。
ま ず 各 地 域 経 済 に つ い て 、 基 本 的 に 共 通 した 構 造 とな る よ うモ デ ル を 設 計 して い る。 これ に よ り、 各 構 造 方 程 式 の パ ラ メ ー タ の 地 域 間 比 較 を行 う こ とが で き る よ うに な っ て い る。 ま た そ れ ぞ れ の 地 域 経 済 モ デ ル は 、 各 地 域 の 移 出 と移 入 を通 じて 連 結 した モ デ ル と して い る。各 地 域 モ デ ル を連 結 して い る こ とに よ り、
あ る地 域 で 需 要 が 増 加 した 際 に 、 そ れ 以 外 の 地 域 に も た ら され る効 果 (いわ ゆ る ス ピル オ ー バ ー 効 果
)も
把 握 で き る よ うに な っ て い る。 こ こ で 各 地 域 の 移 出 入 に つ い て は 、 どの 地 域 に 対 す る移 出 な の か 、 あ る い は どの 地 域 か らの 移 入 な の か を 区 別 す る た め に 、 地 域 間 の 経 済 取 引 関 係 を把 握 で き る地 域 間 産 業 連 関 表 を利 用 し、 デ ー タ の 作 成 を行 つ て い る。以 下 、
2節
に お い て モ デ ル の 構 造 を 示 し、3節
で 各 地 域 モ デ ル の 推 定 結 果 を 示 し、比 較 を 行 う。4節
で は 公 共 投 資 の 追 加 シ ミュ レー シ ョン を行 う。5節
は ま と め で あ る。2
モ デ ル の 構 造本 節 で は 、 全 国
5地
域 経 済 モ デ ル の 構 造 に つ い て 述 べ る。2‑1で
各 地 域 計 量 モ デ ル を連 結 した モ デ ル 全 体 の 構 造 を述 べ た の ち 、2‑2で
各 地 域 計 量 モ デ ル の構 造 に つ い て 述 べ る。
な お 本 章 で 構 築 す るモ デ ル に お け る地 域 区 分 は 、北 日本・ 関 東 ・ 中 部 ・ 関 西 ・ 西 日本 の
5地
域 で あ る (表 2‑1)。 こ の 区 分 は 、林(2004)に お け る地 域 区 分 で ある 北 日本 非 都 市 地 域 、 都 市 地 域 、 西 日本 非 都 市 地 域 の うち 、 都 市 地 域 を さ らに 関 東 ・ 中 部 ・ 関 西 の
3地
域 に 区 分 した 形 で の 区 分 で あ る。 各 都 道 府 県 が どの 地 域 に 属 す る か は 、 経 済 産 業 省 の9地
域 区 分 に 従 つ て い る。表
2‑1
地 域 区 分(1)全 体 の 構 造
本 節 で は 、ま ず 各 地 域 計 量 モ デ ル を連 結 した モ デ ル 全 体 の 構 造 を 述 べ る。個 々 の 地 域 計 量 モ デ ル の 構 造 は 、 (2)で 述 べ られ る。
5地
域 経 済 モ デ ル は 、 ま ず 各 地 域 の 計 量 モ デ ル を 作 成 した うえ で 、 移 出 入 を 通 じて これ ら を連 結 して い る。 各 地 域 の 移 輸 出 (入)は
、 日本 国 外 地 域 へ の 輸 出 (入)と 日本 国 内 の 他 地 域 へ の 移 出 (他地 域 か らの 移 入)か
らな る。移 出 (入)は 、 相 手 地 域 に よ つ て 分 割 され る。 な お 、 輸 移 出 お よび 輸 移 入 は 、 県 民 経 済 計 算 で は 相 手 地 域 別 に 分 割 して 計 上 され て お らず 、 地 域 間 産 業 連 関 表 の 比 率 を 用 い て 按 分 した デ ー タ を利 用 す る5。
具 体 的 に 北 日本 を例 に 取 っ て 説 明 し よ う。 北 日本 の 移 出 は 、 北 日本 か ら関 東
5推
定 期 間 中 の 地 域 間 産 業 連 関 表 は1995年
表 と2000年
表 の2種
類 が 利 用 可 能 で あ る。これ に つ い て 、1995年
以 前 に つ い て は1995年
表 の 値 、1995年
以 降 2000 年 ま で に つ い て は 補 完 推 計 した 値 、2001年
以 降 に つ い て は2000年
表 の 値 を 用い て い る。
地 域 都 道 府 県
北 日 本 北 海 道 、 青 森 、 秋 田 、 岩 手 、 宮 城 、 山 形 、 福 島
関 東 新 潟 、 長 野 、 茨 城 、 栃 木 、 群 馬 、 埼 玉 、 東 京 、 神 奈 川 、 千 葉 、 山 梨 、 静 岡 中 部 富 山 、 岐 阜 、 石 川 、 愛 知 、 二 重
関 西 福 井 、 滋 賀 、 京 都 、 大 阪 、 兵 庫 、 奈 良 、 和 歌 山
西 日本 岡 山 、広 島 、 山 口 、鳥 取 、 島 根 、徳 島 、香 川 、愛 媛 、 高 知 、福 岡 、佐 賀 、長 崎 、 大 分 、 熊 本 、 宮 崎 、 鹿 児 島 、 沖 縄
(出所
)筆
者 作 成へ の 移 出 、 北 日本 か ら中部 へ の移 出 、 北 日本 か ら関 西 へ の 移 出 、 北 日本 か ら西 日本 へ の 移 出 とい うよ うに 分 か れ て い る。 輸 移 入 も同 様 に 、 北 日本 を例 に す る と、 関 東 か ら北 日本 へ の 移 入 、 中部 か ら北 日本 へ の 移 入 、 関 西 か ら北 日本 へ の 移 入 、西 日本 か ら北 日本 へ の 移 入 とい うよ うに 分 か れ て い る。 こ の と き 、「北 日 本 ブ ロ ッ ク に お け る 関 東 へ の 移 出 」と、「関 東 ブ ロ ッ ク に お け る北 日本 か らの 移 入 」 は 同 一 で あ る。 モ デ ル 上 で は 乖 離 が 生 じな い よ う、 恒 等 式 と して い る。 こ の よ うに移 出 入 を通 じて 連 結 す る こ とに よ り、 地 域 間 の 相 互 依 存 関 係 の 内 生 化 が 図 られ て い る。
モ デ ル 内 で の 波 及 経 路 は 次 の よ うに な る。仮 に 北 日本 で 公 共 投 資 が 追 加 され 、 域 内 総 生 産 が 拡 大 す る と、 他 地 域 か ら北 日本 へ の 移 出 が 増 加 す る。 これ は 、 北
日本 に と っ て は 他 地 域 か らの 移 入 が 増 加 す る こ とに な る。 一 方 、 他 地 域 の 立 場 か らみ る と、 他 地 域 か ら北 日本 へ の 移 出 が 増 加 す る こ とに よ つ て 、 他 地 域 の 域 内 総 生 産 が 増 加 し、これ に よ っ て 乗 数 効 果 が 働 き 、経 済 が 拡 大 す る こ とに な る。
こ の よ うな 経 路 を通 じて 、 北 日本 で 公 共 投 資 が 行 わ れ た 際 に 、 北 日本 経 済 だ け で な く他 地 域 の 経 済 に も及 ぶ 影 響 と して 表 れ る形 と して い る。
図
2‑1
モ デ ル 全 体 の 構 造他地域経済からのフィードバック 域 内経済における
波及効果
(出所
)筆
者 作 成(2)各 地 域 経 済 ブ ロ ッ ク の 構 造
次 に 、 本 章 に お い て 構 築 した 地 域 計 量 ブ ロ ッ ク の 構 造 に つ い て 説 明 す る。 北 日本 、 関 東 、 中 部 、 関 西 、 西 日本 の 計
5種
類 の 地 域 ブ ロ ッ ク を兼 ね 備 え て い る が 、 基 本 的 な モ デ ル の 構 造 は 共 通 と して い る。 これ に よ り、 シ ミュ レー シ ョン の 結 果 の 差 異 に つ い て 、 推 定 結 果 の 比 較 を通 じて 検 討 す る こ とが で き る。本 章 で 構 築 した 地 域 計 量 モ デ ル は 需 要 主 導 型 の モ デ ル で あ る。 モ デ ル 構 築 に お い て 必 要 とな る デ ー タ に つ い て は 、 前 述 した 地 域 区 分 に 従 い 、 各 都 道 府 県 を
北 日本ブロック 関東ブロック 中音「ブロック 関 西 ブロック 西 日本ブロック