第 3 章 情報教育における小学校引用指導と中学校著作権教育
3.5 小学校引用指導と中学校著作権教育の関連性
小学校における著作権教育の実践の結果,授業導入時に学習者自身に自作ルールを作 成させる活動を主体にした能動学習行うことは,学習者の意識と知識の向上から「遵守」
を適正に指導できることが分かった。また,「遵守」を適正に指導することが,「意識」
や「尊重」の観点を高める効果があることが分かった。この結果を基に,中学校におけ る著作権教育を行うための学習指導の概念モデルを図3-6 に提案する。著作権教育は,
倫理や道徳の意識が重要であるとされている100),103) 。そのため図3-6 に示すように,倫 理や道徳などで扱われる日常生活におけるモラル(日常モラル)104)を基にした「意識」
を根幹とした指導が必要である。その上で,「遵守」を適正に指導するための学習指導を 行い,生徒に遵守すべき法律や規律に関する知識を与える。この時,既に提案している
表 3-7 制作時の行動の調査結果
七つのルール 実験群(%) 統制群(%)
必然性 100(14) 100(13)
主従の関係 100(14) >> 69(13) 原文に正確 64(9) > 38(6)
明瞭区分性 7(14) 15(13)
図・表等にも適用 43(13) > 15(13) 出典等の明記 43(11) > 15(12)
許諾の必要性 0(0) 0(0)
()は 評 価 対 象 の 人 数 割 合 の 差 :> 20 % ~3 0%,>> 30 % ~40 %
学習者の知識習得段階を考慮した学習指導の流れが有効となる。ここまでの段階で,生 徒の情意面には著作権に対する「意識」と「遵守」の精神が養成される。さらに,著作 者に対する「尊重」の精神も養われるため,具体的な活動の場面において著作者を尊重 した適正な行動や態度をとることができる。この適正な行動や態度の養成は,その後の 創造性の認識に必要な創造物の調査や自己の創造物と他者の創造物との適正な比較を行 うための生徒の情意面の「評価」の精神に強く影響すると言える。
以上のことを踏まえ,図3-7に示すように筆者らは,小・中学校の関連を「意識」,「遵 守」,「尊重」,「評価」の四つのブロックに分けて検討した。「意識」に関しては,道徳そ のものに関連しており,人間形成そのものである。次に,「遵守」に関しては,国語的な 内容と著作権そのもの内容に分かれているものの,それぞれが結合して指導されている。
知識欲求
知識獲得
意識
遵守 倫理・道徳
(日常モラル)
法律・規律
学習指導の流れ 学習指導の内容
学習内容 情意面
知識深化 道徳観の理解
実践・活用 尊重 体験的理解
学習内容 情意面
創造性の認識
学習内容 情意面
調査・比較 評価
図 3-6 中学校における著作権教育の概念モデル
情意面
ものの手順に近い内容であるため,中学校では著作権という法律に近い内容に対応する。
ただし,知的財産権の著作権以外の権利である「産業財産権」や「その他」の内容につ いては,小学校の引用指導では行われていない。そのため,図3-7 では,左下側が空白 として位置付けている。「尊重」は,新たな考え方として小学校で行われている従来の引 用の内容を「受動型」と見ることができるのに対し,中学校での内容は受動型に能動型 が加わったものと捉えることができる。受動型の内容は,小学校の引用指導が他者の著 作物を利用するという観点となる。一方,中学校では自分の著作物が利用されるという より幅広い観点からの考察が必要となってくる。そのために,能動型の有無に対応する
「情報の発信」,「意匠登録」,「特許権」,「その他」の項目が中学校で新たに追加される 構図となる。最後に「評価」に関しては,小学校の国語や図画工作での製作や執筆の活 動を行う際に他者の創造物の調査や比較を基にした判断が必要となる。小学校では,調 査・比較した内容から適正な創造の判断が行われるが,中学校ではさらに独自性や新規 性等が含まれる。このように知的財産に関する教育には,小学校から中学校の学齢に応 じた関連性に基づいて順次学習内容を深めていくことが可能となった。
教 科 等
小学校 中学校
教 科 等 意
識 道 徳
普遍的内容
(学齢を問わず継続的な指導が必要)
道 徳
遵 守
国 語
必然性 主従の関係
必然性 主従の関係
国 語
国 語
技 術
・ 美 術
・ 音 楽
尊 重
国 語
技 術
・ 美 術
・ 音 楽
評 価
国 語
・ 図 画 工 作
国 語
・ 技 術
・ 美 術
・ 音 楽
図 3-7 知的財産教育における小学校引用指導と中学校著作権教育の関連性 原文に正確
明瞭区分性 図・表等にも適用 出典等の明記 許諾の必要性
著 作 権
受 動 型 受
動 型
能 動 型
情報の発信 意匠登録 特許権 その他
<引用>
+
<知的財産権>
その他 産業財産権
著作権
他者の著作物 を利用 他者の著作物
を利用
製作・執筆
<創造性>
著作物・アイディア調査 基礎知識の収集
製作・執筆 調
査
・ 比 較
構想 構想
引用・参照
調 査
・ 比 較
<創造性>
独自性・新規性
+