本節では,導体シールドにおいてMSEが得られる理由を説明し,その考え方 を積層シールドに拡張する.
図 4.2 (a) に導体シールド近傍の電磁波の伝搬を示す.導体シールドの場合,
磁界のノイズ源から放射した電磁波は空気/導体層の界面で反射するとともに,
導体内で減衰する[1][2].磁界のノイズ源から放射する近傍界における波動イン ピーダンスZw,導体層の特性インピーダンスZc,および導体層内における電磁 波の減衰定数αcはそれぞれ以下のよう表すことができる.
0
2 0
c
Zw rf (4.1)
c c
Z j
0
(4.2)
2
1 0 c
c c
(4.3)
ただし r はノイズ源とシールド間の距離,c は導体層の導電率である.空気
/導体層の界面で反射係数 wc は次式で与えられる.
c w
c w
wc Z Z
Z Z
1
1 (4.4)
導体シールドの MSE は空気/導体層の界面における反射と導体内における多 重反射から得られる.電磁波は導体層内における多重反射している間に減衰す る.薄い導体層による導体シールドは導体内における電磁波の減衰が十分得ら
(a) 導体シールド
0
2 0
c Zw rf空気
空気 導体層
c c
Z j
0
0
2 0
c Zw rf
2
0 c c
磁界のノイズ源
高 高
高 低
特性インピーダンス 減衰定数
0
2 0
c Zw rf
c c
Z j
0
c c
Z j
0
0
2 0
c Zw rf
m r m
Z j
0
特性インピーダンス
2
0 r m
m
2
0 c c
2
0 c c
減衰定数
磁界のノイズ源
空気
空気 導体層
導体層
磁性体層
高高
高 低
高
高 高
低
m r m
Z j
0
, (4.5)
2
1 0 r m
m m
, (4.6)
µr は磁性体層の比透磁率,σm は磁性体層の導電率である.導体層/磁性体層 の界面における反射係数cm は次式となる.
m c
m c
cm Z Z
Z Z
1
1
. (4.7)
積層シールドの場合,電磁波は空気/導体層の界面だけではなく,導体層/磁性 体層の界面でも反射する.磁性体層により反射面が増え,多重反射の回数がより 多くなり,電磁波はシールド層内で減衰しやすくなる.
また,磁性薄層の比透磁率rは複素比透磁率として,下記のように表される.
' ' j
' r
r r ‐ , (4.8)
r’ 比透磁率の実部, r’’比透磁率の虚部である.
そして,複素比透磁率の周波数特性はLandau-Lifshitz-Gilbert 方程式の解と して下記のように表せる[3].
4
1' 2 2 2 2
0
2 2 0 2
0
2
r Ms
, (4.9)
02 2
2
22
0 2
4 ' 4
'
s
r
M
, (4.10)
k s
r M H
f
0 2
0 2
, (4.11)
なお,磁性体層は 一軸磁気方向依存性を持ち,高い比透磁率は磁化困難軸方 向(磁化回転により磁化過程が進行するような方向)のみ得られる.これと直交 する磁化容易軸方向(磁壁移動により磁化過程が進行するような方向)の透磁率 は真空の透磁率となり,導体層/磁性体層の界面における高い反射係数は得られ ない.従って,磁性体を 1 層のみ用いた積層シールドでは,面内の 1 方向のみ に高いMSEを有する.しかしながら,磁性体層を2層以上用い,それぞれの層 の困難軸方向を直交させるなど平行ではない方向に誘導すれば,面内の2方向 に高いMSEを有するシールドとすることが製作することができる.