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専門領域案内

ドキュメント内 文学部2017.indd (ページ 37-42)

1975年東京大学文学部卒業。アムステルダム大学美術史研究所で学んだ後、東京大学助手、東京経済大学専任講師、助教授を経て1996年より青山学院大学文学部教 授。本来の専門は17世紀のオランダ絵画と風俗画の歴史ですが、関心が拡大する一方で困っています。そういう事情で準専門分野は15〜16世紀のネーデルラント絵画 と写本彩飾、印刷聖書挿絵および連作聖書版画の歴史、印刷時祷書を筆頭とする書物史。

髙橋 達史

Tatsushi Takahashi

 私は大学の文学部に5年在籍しました。留年したせいですが、専攻決定まで1年多く猶予期間があったことが結果的に非常に幸いしました。西 洋美術史はそれまで念頭になく、美術は音楽、演劇に比べて自分には縁の薄い分野だと思い込んでいたからです。

 幼少時からのピアノで素質の差を痛感しましたし、大学時代はテレビ局でギャグやコントを書いていましたが、  才能の限界は明白でした。自分 の強みがどこにあるかと考えると好奇心と雑学以外は見当たらなかった。あらゆる視覚的情報に満ちた絵画なら、雑知識の豊富さが生きるかも しれないと思ったのです。日本絵画史の素晴らしい講義を受けて西洋偏重の価値観の見直しを迫られたのが逆に最後の決め手になりました。

 造形言語の理解には実は長い時間がかかります。一朝一夕にはいきません。しかし絵画はほかにも多種多様なアプローチに対して開かれた存在です。本当に優れた芸術は 来る者を拒みません。

 この学科を目指す皆さんには、ぜひとも芸術の全領域に関心を注ぎ続けて欲しいと切に願っています。そして東西の双方に目を向けて欲しいと。贅沢な注文ですが。

東京芸術大学大学院美術研究科修士課程修了。日本・東洋の仏教美術、とくに仏像彫刻を中心に仏画や工芸の歴史、さらには東南アジアのヒンドゥー教美術の歴史を研究。

日本近代美術史にも関心をもつ。著書に『名宝日本の美術7 唐招提寺』(小学館)、『日本美術全集4 東大寺と平城京』(共著、講談社)、『世界大美術全集 東洋編12  東南アジア』(共著、小学館)、『日本の美術382 不空羂索観音と准胝観音』(至文堂)、『日本の美術456 天平の美術』(至文堂)、『日本美術全集3  東大寺・正倉院と興 福寺』(編著、小学館)ほか。近年の論考としては「東大寺盧舎那大仏造立覚書」(『佛教藝術』295、2007)、「明治仏像模刻論」(『國華』1400、2012)など。1979年よ り東京国立博物館に勤務、1992年に同館法隆寺宝物室長。1994年から現職。

浅井 和春

Kazuharu Asai

美術

 美術と他の芸術との違いはどこにあるでしょうか?

 洞窟壁画にしても、ギリシア彫刻にしても、飛鳥時代や奈良時代の 仏像にしても、経年による外見の変化こそあれ、 「もの」として今も存 在し続けており、観る者の心に直接訴えてきます。その美しさに見と れていると 「時の隔たり」を忘れてしまうほどです。

 しかし美術作品にはもう一つの重要な側面があります。どんな作品 であれ「時代の鏡」であり、それを生み出した社会のありかたを反映し ているのです。たとえば市民階級が成熟して美術の主な受容者に成 長した17世紀のオランダでは親しみやすい分野である風景画、風俗 画、静物画が独立して流行し、同じく町民層の富に支えられた江戸時 代の日本でも庶民的美術の華である浮世絵が大発展を遂げました。

 さらに美術作品は「美術それ自体の歴史」にも深く組み込まれてい ます。古典古代の格言「自然は芸術の師」に倣って表現すれば「美術こ そが美術の師」であり、一見どれほど独創的に見えようとも、美術作品 というものは、程度の差こそあれ、過去に生みだされた偉大な作品の

伝統に連なっているからです。作品の真の理解には、美術の伝統を知 ることが不可欠なのです。

 このコースでは「時代に規定されている」と同時に「時代を超越した 存在」でもある美術作品の本質を、さまざまなアプローチを通じて総 合的に理解してもらうことを目指します。

 日本古代〜中世の彫刻(仏像・神像・肖像)を中心に、中国・朝鮮・東南アジアの美術(石窟美術・石造彫刻・金銅仏・工芸品)などを研究していま す。最近、仏像がさまざまな年代の人びとの間でブームとなっていますが、神社・仏閣に縁の薄い若者たちが関心をもつのは良いことだと思っ ています。あの抹香臭く妙にキンキラしたお寺や七五三等でにぎわう派手な色合いの神社の雰囲気は、専門家の私でももう一つ馴染めませ んが、そこに古くから伝えられた仏像や神像が祀られているだけで、ホッとするのも事実です。何故でしょうか?

 どうも、いにしえの仏像・神像の姿には、それを護り伝えた人びとの思いがなんらかの形で投影されているようです。幸運にも今日まで伝えられた美術品の数々には、その 色や形のどこかに、それを作り大切にしてきた人びとの心模様が「具体的な姿」で止められているのです。作品を静かに見つめ、それが作られた当時の、またそれを継承して きた各時代の人びとの心模様を探し求めること、それが美術史の基本的な課題といえましょう。その探索は、皆さんの前に立ちはだかるさまざまな困難を切り抜ける智慧を 身につけることとも無縁ではないでしょう。いま私は、日本やアジアの美術の歴史を振りかえるなかで、皆さんのその探索の旅路にささやかなナビゲーションができればと考 えています。

西洋美術

日本・東洋美術

絵画を中心にして、西洋美術における主な素材と技法、ギリシア神話やキリスト教に関 連した主な主題と図像、描写対象による絵画の分類およびその序列の歴史、今日では とかく「非実用的なもの」の代表格とみなされがちな美術作品が担ってきた各種の実 用的機能、「芸術家」のイメージの変遷などさまざまな問題について考えます。

原始時代から今日まで、日本や東洋にはさまざまな形の美術が生み出されてきました。

日本美術では縄文〜近現代の美術の様式変遷とその歴史的背景を振り返ります。東洋 美術では日本美術と関係の深いもの―仏教美術や水墨画、工芸ほか―に焦点をあて、

その理解を深めるとともに、日本美術との比較を通して互いの特色を考えます。

京都大学大学院文学研究科美学美術史学専攻博士後期課程単位取得退学、フィレンツェ大学、日本学術振興会特別研究員、京都造形芸術大学教授を経て、2015年より 現職。博士(人間・環境学)。専門は、イタリア中・近世美術史・芸術理論。主著・共著に、『カラヴァッジョ鑑』(人文書院、2001年)、『イメージの地層』(名古屋大学出版会、

2011年)、『キリストの顔』(筑摩書房、2014年)、主な訳書に、ディディ=ユベルマン『残存するイメージ』(人文書院、2005年)など。『イメージの地層』で、第34回サント リー学芸賞、第1回フォスコ・マライーニ賞、他受賞。

水野 千依

Chiyori Mizuno

 西洋の美術、なかでも中世からルネサンスにかけてのイタリア美術史を専門に研究しています。

 美術作品というと、私たちはまず「美しいもの」として鑑賞する対象だと考えがちです。しかし、Artという言葉が「美術」を意味するようになっ たのは近代以降のことで、古くは「技芸」をさしていました。現在、美術館に収められ、鑑賞対象として眺められている作品の多くは、かつては崇 拝対象だったり、神への捧げ物だったり、呪術力や奇跡力など、美的価値にとどまらない力をそなえ、見るものに、崇敬、畏怖、祈願、呪詛、魅惑…といった多様な感情をかき立 ててきました。私は、こうした近代以前の造形物を、伝統的な美術史学の手法で理解するとともに、それらがかつて人々の生活のなかでいかに息づき、いかに受容されてい たのかを、歴史人類学的視座から考え直したいと思っています。それぞれの時代がいかにイメージを生きてきたのかを問うことは、同時に、何を「美」としたのかを理解するこ とにもつながります。西洋美術の歴史を辿りながら、イメージと人間が取り結ぶ豊かな関係を一緒に考えていくことができれば幸いです。

音楽

西洋音楽

日本・東洋音楽

日本や東洋には様々な楽器や歌による音楽、仮面舞踏や音楽劇のような他の芸術と関 連した多種多様な音楽があります。これらを理解し、その音楽を生み出した人々の美意 識や社会的背景、各楽器や楽譜などの伝承方法と現代への変化の過程などを比較・検 証することで、人間と音楽の関係を考え、豊かな感性を養うことを目指します。

古代ギリシアから現代にいたる西洋音楽について、名曲を学ぶことはもちろん、政治・

宗教や他の芸術との関係、音楽理論や楽譜の変遷、音楽家という職業、楽器とその演奏 法、楽譜出版・演奏会、録音技術の影響など、多角的な視点から考えることにより、音楽 芸術についての幅広い知識と鋭い洞察力を養うことを目指します。

国際基督教大学大学院比較文化研究科・博士前期課程修了。一橋大学大学院言語社会研究科・博士後期課程修了。博士(学術)。19世紀後半〜20世紀前半の西洋音楽、

とくにドイツの作曲家リヒャルト・シュトラウスのオペラ作品を中心に研究活動を行う。著書に『リヒャルト・シュトラウス 自画像としてのオペラ』(アルテスパブリッシング、

2009年)等。訳書にベルリオーズ、シュトラウス『管弦楽法』(音楽之友社、2006年)等。

 21世紀という時代を迎えたいまなお、名曲として親しまれている西洋音楽。我々日本人は「クラシック音楽」という名のもとに、その音 楽をさまざまな生活の場面で楽しんでいます。しかし、数百年前に作曲された異国の音楽が、時を超え、場所を越え、世界中で親しまれる ようになったのは何故なのでしょうか。「音楽学」とは、その作品が生まれた社会的・政治的・文化的背景を踏まえつつ、音楽そのものへと切 り込み、作品の魅力を探る学問です。作曲家が生み出した美しい旋律の背後には、数多くの工夫と試行錯誤が隠れています。その秘密の 一端を知るだけでも、皆さんの音楽の聴き方はその瞬間から劇的に変わることでしょう。交響曲、室内楽曲、オペラなど、西洋音楽の世界 には、一生をかけても聴ききれないほどの、さまざまな名作が満ちあふれています。そんな音楽に触れ、その素晴らしさを貪欲に吸収する 意欲に溢れた皆さんと、青山の地でお目にかかれるのを愉しみにしています。

広瀬 大介

Daisuke Hirose

立教大学大学院文学研究科博士後期課程退学、ケンブリッジ大学大学院修士課程修了(Master  of  Philosophy)。中世からバロック時代にかけての音楽、とくにイギリス の教会音楽史と中世の音楽理論を専攻。最近の著作に、『ヘンリ8世の迷宮〜イギリスのルネサンス君主』(共著、昭和堂、2012年)、『15のテーマで学ぶ中世ヨーロッパ 史』(共著、ミネルヴァ書房、2013年)など。青山学院大学聖歌隊指揮者も務める。

 中世ルネサンス〜バロック時代の音楽を研究しています。中世の音楽理論などと聞くと、遥か昔の難解きわまる話に聞こえるでしょう。

でもじつは西洋音楽の根本を考えるということなのです。たとえばピアノの白鍵と黒鍵はどうしてああいう並び方をしているのか、ドレミ の階名は誰がどうして考えたのか、音の高さやリズムを書き表すためにヨーロッパ人はどのような工夫を重ねてきたか……。当時の人々 の立場に立ってその思考経路を追体験するのはとてもスリリングなことです。もちろん当時の音楽作品も素晴らしい。吟遊詩人が綴った 愛の歌、ゴシック大聖堂に響いていた絢爛豪華なア・カペラの教会音楽、宮廷舞踏会を彩った典雅な舞曲……。みなさんにとって未知の傑 作がどれほどあることでしょう。過去千年におよぶ音楽の宝庫に足を踏み入れ、感動し、名作がどのように作られたのか、誰によってどのよ うに演奏されていたのか、音楽の知の探求にでかけようではありませんか!

那須 輝彦

Teruhiko Nasu

 人はなぜ、ある音と音との組み合わせに快を感じるのでしょう。傑作 はどうして万人を感動させるのでしょう。古今の名曲はいったいどうい う仕組みになっているのか、なぜそのような作品が生み出されたのか、

どんな社会だったのか……。

 ありとあらゆる音楽が溢れ、 しかしメロディもコードも出尽くして、世 代を越えた傑作の誕生が行き詰まっている今こそ、過去一千年の風雪 に耐えた古典に立ち返る時です。

 ─グレゴリオ聖歌、パレストリーナ、バッハ、モーツァルト、ベートー ヴェン、 ショパン、 チャイコフスキー、 ヴァーグナー、 ストラヴィンスキー、

そしてビートルズ……。古典の真価に触れた経験は、あなたの人生に とってかけがえのない魂の糧となり宝となるでしょう。

 音の美の探求は、中世からヨーロッパの大学で営まれてきた由緒あ る学問です。知の源泉を訪ねる旅に出ようではありませんか。

慶應義塾大学文学部美学美術史分野(日本美術史)博士課程修了。博士(美学)。専門は日本絵画史。研究テーマは、江戸時代の水墨画の巨匠・池大雅の風景画をめぐる詩 と画の鑑賞サークル。現在は、大雅が憧れた室町水墨画や、近代南画(小杉放菴)、人々の暮らしを描いた風俗画にまで関心が広がる。著書に『大雅・蕪村・玉堂と仙厓―「笑」

のこころ』(出光美術館、2011年)、『祭―遊楽・祭礼・名所』(出光美術館、2012年)、共著に『風俗絵画の文化学』Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ(思文閣出版、2009年、2012年、2014年)。

出光 佐千子

Sachiko Idemitsu

 水墨画と聞くと、地味で好きになれないと感じてしまう人もいるかもしれませんが、実際にはモノクロームほど、様々な光や音を伴った豊か な色彩表現はありません。ぜひ寺社や美術館など心静かになれる環境で、水墨で描かれた山水や花鳥と、じっくり向き合ってみてください。墨 の濃淡を見慣れてくれば、山々は清らかな深緑や紅葉に変わり、川のせせらぎや花鳥の旋律も聴こえてくるはず。

 抽象的だからこそ自由な鑑賞をゆるす水墨画の世界は、古来、詩文や名筆を生み出し、それらは時代を超えて画に添えられて一緒に鑑賞さ れてきました。授業では画と詩の鑑賞を通じて、名画は過去のものではなく、現代に生き続けているという感動を味わいます。海外の舞台で活 躍できる人になるためにも、屏風や絵巻などに日本美術のユニークな感性を皆様と再発見してゆきたく思います。

英米文学科

フランス文学科 英米文学科 日本文学科 史学科 比較芸術学科 留学・進路など

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