6.10 応用 — 有理関数の不定積分
6.10.2 対数部分の計算
f(x) =n(x)/d(x), GCD(n, d) = 1, deg(n)<deg(d)で d は無平方とする. このとき
Z
f dx=X
i
cilogri
と書ける. 一般に ci ∈ Q, ri ∈Q[x] とは限らず, 何らかの代数的数を含む可能性があ るが, この代数拡大を最小限にするような表示を求めたい.
命題 6.57 (Rothstein[12])
K を複素数体 C の部分体とし, f(x) = n(x)/d(x), n, d ∈ K[x], GCD(n, d) = 1, deg(n)<deg(d) で d は無平方, 無平方とする. このとき,
n/d=
Xn
i=1
civ0i/vi
ただしci ∈Cは相異なり,vi ∈C[x], vi はモニック,無平方で互いに素,と書けたなら ば, ci は
R(z) = resx(n−zd0, d)∈K[z]
の根で,
vi = GCD(n−cid0, d).
[証明] claim 1 v =d.
v =Qni=1 とおくと,
nv=d
Xn
i=1
civ0i(v/vi).
6.10. 応用 —有理関数の不定積分 73 GCD(n, d) = 1 よりd|v. 一方で, vi|右辺より, もし vi6 |d ならば vi|civi0(v/vi) となる が, これはvi に関する条件より不可能. よって vi|d. 結局v|d となりv =d. 2
claim 2vi = GCD(n−cid0, d).
claim 1より n=Pni=1civi0(v/vi). d0 =Pni=1vi0(v/vi) より, n−cid0 =X
j6=i
(cj −ci)v0j(v/vj).
これからvi|n−cid0 がわかる. よって vi|GCD(n−cid0, d). 一方で, j 6=i のとき, GCD(n−cid0, vj) = GCD((cj −ci)vj0(v/vj), vj) = 1
より, vi = GCD(n−cid0, d). 2
claim 2より, ci が R(z)の根でなければならないこともわかる.
claim 3{c1,· · ·, cn}=R(z) の根全体
cが R(z)の根ならば,v0 = GCD(n−cd0, d)は自明でないd の因子. よってv0 の 既約因子g を一つとれば, あるvi が存在して g|vi.
g|(n−cd0) =
Xn
j=1
(cj−c)vj0(v/vj)
より, g|(ci−c)vi0(v/vi). これは ci =cのときのみ可能. 2
系 6.58 K を複素数体Cの部分体とし,f(x) = n(x)/d(x),n, d∈K[x], GCD(n, d) = 1, deg(n)<deg(d) で d は無平方, モニックとし,
R(z) = resx(n−zd0, d)∈K[z]
とする. KRを R(z) の最小分解体とすれば,KR が Rn/ddx を表示するための最小の K の拡大.
[証明]F を K の拡大体とし,ci ∈F,vi ∈F[x] によるn/d =Picivi0/vi なる表示をと ると, 体の拡大なしに, 前命題のci vi に対する条件が満たされるようにできる. この とき, ci はR(z) の根でci ∈F だから, KR⊂F. KR 上でこの表示ができることは前 命題で保証されている. 2
Chapter 7 グレブナ基底
7.1 代数方程式の解とイデアル
体 K 上の n 変数多項式環 R = K[x1,· · ·, xn] を考える. 以下, (x1,· · ·, xn) を X と 略記する. R の元f1,· · ·, fm に対し,
f1 = 0,· · ·, fm = 0 (7.1) を代数方程式系,あるいは単に方程式と呼ぶ. (7.1)を満たすKn の元を (1) の解と呼 ぶ. このような方程式を解いて解を求めようとする場合に最も基本的な方法は, 中学 以来おなじみの消去法である.
例 7.1 f1(x, y) =x2+y2−2 = 0, f2(x, y) =xy−1 = 0 を解け
解 y2f1−(xy+ 1)f2 =y4−2y2+ 1 = 0 よりy =x= 1 または y=x=−1. これら は実際に解である. 2
ここで行った計算は, f1, f2 に適当な多項式を掛けたものの和を作ってより変数の少 ない多項式を作り出すものである.
定義 7.2 f1,· · ·, fm ∈R に対し,
Id(f1,· · ·, fm) ={
Xn
i=1
gifi |i∈R}
を f1,· · ·, fm で生成されるイデアルと呼ぶ. f1,· · ·, fm をI の生成系あるいは基底と 呼ぶ.
一般に, 方程式 (7.1) が与えられた場合, I =Id(f1,· · ·, fm) を考えれば, 消去法とは I の中から, 含まれる変数の個数が少ないものを選び出す方法と言える. I の元全て
75
の共通零点は (7.1) の解に一致する. イデアルの基底は一組とは限らないが, 同一の イデアルを生成する基底の共通零点は一致するから, イデアルを考える方が, 方程式 の解を考える上でより自然であると言える.
例 7.3 Id(x2+y2−2, xy−1) =Id(−y4+ 2y2−1, x+y3−2y)
例 7.4 (線形方程式)Id(2a+3b−4c+d−1,3a−2c−5d−4, a−b+4d−5,3a+2b+2c−2d)
=Id(−185d+ 78,−185c−94,−185b−299,−185a+ 314)
これらの例では, 右辺の基底は確かに解を容易に求められる形になっている. ここで 大事な点は, 両辺が等しいイデアルを与えているかどうか,という点である.
定義 7.5 イデアル I に対し I の Kn におけるvariety VK(I) を VK(I) ={a ∈Kn| すべての f ∈I に対し f(a) = 0}
で定義する. 混乱のない場合には V(I) と書く.
系 7.6 I ⊂J ⇒V(J)⊂V(I)
すなわち,消去法により得られた多項式は, イデアルの元であることは保証されるが, それらはあくまで解の満たすべき必要条件であり,実際にもとの方程式の解を表すか 否かは別のチェックが必要となる. もし新たに得られた多項式集合がもとのイデアル を生成していれば,解が等しいことは保証されている.