第 2 章 調査結果
2. 各審査員の法的義務について
- 66 -
- 67 -
的及び社会における使命を自覚し、教育及び研究並びに大学及び本属である学術 院等の運営について、誠実に自己の職務を果たさなければならないから(教員の 服務に関する規程第 3 条第 1 項)、審査分科会の構成員は、誠実に学位授与の合否 判定を行う義務を負っている。
これらのことから、審査分科会の構成員は、学位請求を求める学生が博士学位 の意義に値するものか否かを、審査分科会において適切に判定する義務を負って いると考えられる。
b. 審査分科会の運用を踏まえた上での法的義務の内容
ただし、本研究科の審査分科会の構成員の供述等の関係各証拠によれば、審査 分科会の体制・運用について、以下の事実を認定できる。
審査分科会における学位授与に係る審査の時間は、学位請求者一人あたり、
(a)
おおむね 30 分程度であり 1 時間を超えることはない。
審査分科会においては、各構成員に対して、主査が作成した博士論文の審 (b)
査報告書が配布される。
博士論文については、製本された最終的な完成版の博士論文が各構成員に (c)
回覧こそされるものの、各構成員がその内容を確認できる時間は、数分程 度である。
投票による合否判定の前には、主査が、学識確認結果を報告し、博士論文 (d)
の審査報告書の説明を行った上で、審査に関する質疑に答えるところ、主 査の説明は、15 分程度である。また、主査の説明後、副査が、数分程度、
補足の説明を行う。
審査分科会の構成員が、審査分科会の開催前に、学位請求者の博士論文を (e)
確認することはできない。
審査分科会においてなされる指摘は、審査報告書や博士論文概要書の記載 (f)
方法等、形式的なものがほとんどである。
審査分科会の体制・運用に関する上記の認定された事実に鑑みると、審査分科 会の構成員が、審査分科会において、学位請求者の博士論文や学識を精査するこ とは難しく、審査分科会の構成員に対して、かかる精査の義務を課すことは難し い。審査分科会の体制・運用に関する上記の認定された事実からすれば、審査分 科会の構成員に求められる行為は、審査分科会における主査及び副査の説明や審 査報告書の記載から学位請求者に学位を授与することが相当でないことが察知し 得る場合、回覧される博士論文を数分程度確認することで察知できる程度に博士 論文に明らかな問題点が存在する場合、博士論文の内容以外で博士学位を授与す べきでない事情が存在する場合等に、それらの問題点を審査分科会において指摘 することであると考えられる。
- 68 - (4) 研究科運営委員会の法的義務について
a. 法的義務の根拠
研究科運営委員会の構成員は早稲田大学の教員であることが通常であるところ、
研究科運営委員会の構成員は、早稲田大学との雇用契約上、学位授与の最終的な 合否判定に際して必要な注意を払う義務を負っている。また、早稲田大学の教員 は、大学の理念、目的及び社会における使命を自覚し、教育及び研究並びに大学 及び本属である学術院等の運営について、誠実に自己の職務を果たさなければな らないから(教員の服務に関する規程第 3 条第 1 項)、研究科運営委員会の構成員 は、誠実に学位授与の最終的な合否判定を行う義務を負っている。
これらのことから、研究科運営委員会の構成員は、学位請求を求める学生が博 士学位の意義に値するものか否かを、研究科運営委員会において適切に判定する 義務を負っていると考えられる。かかる義務に基づき、研究科運営委員会の構成 員は、学位請求を求める学生が博士学位の意義に値するものか否かを判定する必 要があると考えられる。
b. 研究科運営委員会の運用を踏まえた上での法的義務の内容
ただし、本研究科の運営委員会の構成員の供述等の関係各証拠によれば、研究 科運営委員会の体制・運用について、以下の事実を認定できる。
研究科運営委員会においては、必要と認める場合には、無記名投票による (a)
学位授与の判定が行われることとされている。しかし、実際の手続は、本 研究科の教務主任が、学位請求者の専攻名、氏名、主査の氏名、理学・工 学の別、及び審査分科会での合否を読み上げるのみであって、研究科運営 委員会の判定は、これを黙示的に承認したものとして処理されている。教 務主任による読み上げは、学位請求者 1 人あたり、1 分足らずの時間であ る。
教務主任が読み上げる学位請求者の専攻名等については、研究科運営委員 (b)
会におけるスクリーン上に投影されるが、資料として配付されるものでは ない。
研究科運営委員会においては、各構成員に対して、主査が作成した審査報 (c)
告書が配布されることはない。
研究科運営委員会においては、学位請求者の博士論文や論文審査の内容に (d)
ついて、主査や副査による説明がなされることはない。
研究科運営委員会の開催場所の机上には、製本された最終的な完成版の博 (e)
士論文が並べられているものの、各構成員に対して博士論文の回覧がなさ れるものではない。
審査分科会の体制・運用に関する上記の認定された事実に鑑みると、研究科運 営委員会の構成員が研究科運営委員会において学位請求者の博士論文や学識を精
- 69 -
査することは難しく、研究科運営委員会の構成員に対して、かかる精査の義務を 課すことは難しい。研究科運営委員会の構成員に求められる行為は、教務主任が 読み上げる情報のみで博士学位を授与すべきでない一見して明らかな事情が存在 する場合等に、それらの問題点を研究科運営委員会において指摘することである と考えられる。
3. 小保方氏に対する博士学位授与の審査過程における問題点