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GI

および同性愛知識と同性愛への否定的態度との関連

1.仮説の検証

本研究では,

GI

および同性愛知識と同性愛への否定的態度との関連,そして

GI

および同性愛知 識の同性愛への否定的態度に対する交互作用について検討するため,

GI (GS

と合致・非合致)と同 性愛知識(多・少)の群分けを独立変数,同性愛への否定的態度を従属変数とした,

2

要因分散分析 を施した。その結果,否定的態度得点に対する同性愛知識の主効果が有意であり,知識多群よりも知 識少群のほうが,同性愛に対する否定的態度得点が高いことが認められた。以上の結果より,同性愛 についての知識が多い青年よりも,少ない青年のほうが同性愛に対して否定的態度をとることが示さ れた。

本研究において設定した仮説は仮説 1iジェンダー・ステレオタイプと合致するジェンダー・ア イデンティティを持つ青年は,ジェンダー・ステレオタイプと合致しないジェンダー・アイデンティ ティを持つ青年よりも,同性愛に対して否定的な態度をとるJおよび仮説2iジェンダー・ステレオ タイプと合致するジェンダー・アイデンティティを持つ青年において同性愛についての知識が少な い青年のほうが,知識が多い青年よりも,同性愛に対して否定的な態度をとる」の

2

つであるが,

本研究の結果からどちらとも支持されなかった。

仮説 1が支持されなかった理由として 以下のことが考えられる。まず,同性愛への否定的態度 についての関連要因として

GS

と合致する

GI

を取り上げている和田 (1996,2008, 2009)の研究 では,青年が鹿内ほか (1982)の研究で得られた性役割に関するステレオタイプ

( G S )

を持つこと を前提として,鹿内ほか (1982)における

GS

と合致する

GI

を持っか否かについて検討している。

しかし,本研究では,現代社会における

GS

と青年自身の

GI

の両方をたずね,現在における

GS

を 確認するとともに,青年が

GS

と合致する

GI

を持っか否かについて検討した。本研究では,

GS

を 採用するにあたって 男性性項目については平均値が3.5以下,女性性項目については平均値が 4.5 以上を基準とした。採用された男性性項目および女性性項目の平均値を確認すると (Table1),女性 性項目 i11.家庭的J(M=5.12)と同じく女性性項目 i20.優雅なJ(M=5.09)を除く男性性項目 および女性性項目について多くが「どちらかというと男性/女性にとって望まししリに回答してい ることがうかがえる。すなわち 本研究において 「男性/女性にとって望ましいJという回答を得

‑47

た項目は,先述の

2

項目のみであるということがし、える。また,

GI

について,男性性についても女 性'性についても,理論的中央値である 4に近い平均値を取っており,標準偏差の値も大きくないこ とから(男性性

M

3 . 8 7

S

JJ=

. 9 7 ;

女性性

M=3.52

S

JJ=

. 9 0 )

, 

GS

と合致する

GI

を持つ青年は多 くないといえる。このことから,現代社会において,青年が男性に対しでも女性に対しでもそれほど 強く

GS

を持っておらず,また

GS

と合致する

GI

を持たない傾向にあることが示された。くわえて,

GS

と合致する

GI

を持つ青年および

GS

と合致しない

GI

を持つ青年どちらにおいても,同程度の否 定的態度得点が見られた。同性愛への否定的態度として向性愛態度をまとめて見た場合,以上の結果 により仮説1が支持されなかったと考えられる。

次に,仮説 2が支持されなかった理由として,仮説 1が支持されなかった理由と関連するが,本 研究において,積極的に「男性/女性にとって望まししリとしづ回答を得た

GS

項目が少なく,また 採用方法の基準が不十分で、あったことが挙げられる。また,本研究の課題といえるが,向性愛につい ての知識そのものに検討の余地があることも挙げられる。すなわち,同性愛についての知識は,今回 のように単語の意味や同性愛者の社会制度における立ち位置に関するものもあれば,同性愛者の持つ 悩みや葛藤などについてのエピソードも含まれうる。したがって,本研究では,

GS

と合致する

GI

を持つ青年において同性愛への否定的態度に対する同性愛知識の主効果は確認されなかったが,今後 向性愛者のエピソードなどについても言及し,検討する必要があるといえる。

ところで,本研究では,

GS

と合致しない

GI

を持つ青年においては,同性愛に対して嫌悪・拒否 は低いことが先行研究において示されていることから,同性愛に対して肯定的な態度をとることが予 測されるが,

GS

と合致しない

GI

を持つ青年においてで、あっても,同性愛についての知識が多い青 年は,少ない青年よりも同性愛に対してより肯定的な態度をとるが同性愛に対して否定的な態度を 取ることが示されている

GS

と合致する

GI

を持つ青年においてのほうが,同性愛についての知識を 多く持っか否かが,同性愛への否定的態度により大きな差異が見られると予測した。しかし,今回の 結果から,

GS

と合致する

GI

を持つ青年においても,

GS

と合致しない

GI

を持つ青年においても,

同性愛への否定的態度に対する知識の主効果が認められた。仮説

2

は支持されなかったものの,和 田 (2008) の研究において確認されている同性愛についての知識を多く持つことの重要性が,本研 究でも確認されたといえる。

2 .

補足分析

①同性愛を男性同性愛および女性同性愛に分けた分析

同性愛知識の主効果が,男性同性愛および女性同性愛両方への否定的態度に対して見られるかどう か検討した結果,どちらにおいても知識の主効果が有意で、あり,知識多群よりも知識少群のほうが男 性同性愛および女性同性愛への否定的態度得点が高いことが認められた。さらに,具体的に同性愛に 対する態度のどの領域において知識の主効果が見られるかについて検討した結果男性「嫌悪・拒否」

得点に対して,知識の主効果だけでなく,有意傾向ではあるが,

GI

の主効果も見られ,

GS

非合致

GI

群よりも

GS

合致

GI

群のほうが,知識多群よりも知識少群のほうが,男性「嫌悪・拒否」得点が 高いことが認められた。また,男性「容認・寛容」得点および女性「容認・寛容J得点に対する向性 愛知識の主効果が有意であり,知識少群よりも知識多群のほうが男性「容認・寛容」得点および女性

「容認・寛容」得点が高いことが認められた。以上の結果より,

GS

と合致しない

GI

を持つ青年よ りも

GS

と合致する

GI

を持つ青年のほうが男性同性愛への嫌悪や拒否感が高いことが示され,向性 愛についての知識が多い青年よりも少ない青年のほうが,男性同性愛への嫌悪や拒否感が高く,男性 同性愛と女性同性愛両方に対して容認・寛容的態度をとらないことが示された。

補足分析①によって,仮説の検証の際には見られなかった

GI

の主効果が,有意傾向ではあるもの の,男性同性愛に対する態度の下位領域である男性「嫌悪・拒否」において認められた。この結果は,

和田

( 1 9 9 6 )

などの先行研究においても確認されている

GI

の主効果であり,先行研究と同様の結果 を確認できたことには意義があるだろう。しかしながら,この結果はあくまでも有意傾向であるので,

GI

との関連は強くないことが考えられる。また 同性愛についての知識の主効果は,男性同性愛と 女性同性愛ともに関連を見せており,さらに具体的に検討した結果,男性同性愛に対する態度の下位 領域である男性「嫌悪・拒否J,男性「容認・寛容J,そして女性同性愛に対する態度の下位領域であ る女性「容認・寛容」において知識の主効果が確認された。補足分析①から,仮説の検証において認 められた同性愛についての知識の主効果について詳細に検討することができた。すなわち,青年が向 性愛についての知識を多く持つことと,男性同性愛への嫌悪や拒否感の低さ,そして男性同性愛およ び女性同性愛に対する容認や寛容的態度の高さと関連があることが示された。

②男女別に

GS

合致

GI

群と

GS

非合致

GI

群に分けた分析

次に,男女で

GS

合 致

GI

群と

GS

非合致

GI

群とに分け,同性愛の否定的態度との関連を検討す るために,同性愛知識とともに独立変数とした上で

2

要因分散分析を施した。その結果,男性にお いてのみ,同性愛への否定的態度得点に対する同性愛知識の主効果が有意であり,男性において,向 性愛の否定的態度得点に関して,知識多群よりも知識少群のほうが高いことが認められた。

‑49

そして,有意な結果が見られた男性についてのみ,同性愛の否定的態度を男性同性愛の場合と女性 同性愛の場合とで分け, 2要因分散分析を施した。その結果,男性において,男性同性愛の否定的態 度得点に対する同性愛知識の主効果が有意であり,男性において,男性同性愛の否定的態度得点に関

して,知識多群よりも知識少群のほうが高いことが認められた。

さらに,有意な結果が得られた男性における男性同性愛に対する態度を, I嫌悪・拒否

J

, Iネガ ティブ・イメージJ,

I

容認・寛容」に分け,

2

要因分散分析を施した。その結果,

GI

と同性愛知 識の交互作用が有意で、あったため,単純主効果検定を施したところ,知識多群において,

GI

の単純 主効果が有意であり,向性愛知識の単純主効果が有意で、あった。すなわち,知識多群において,

GS 

非合致

GI

群よりも

GS

合致

GI

群のほうが男性「嫌悪・拒否」得点が高く,

GS

非合致

GI

群におい て,知識多群よりも知識少群のほうが男性「嫌悪・拒否」得点が高いことが認められた。また,男性

「容認・寛容」得点に対する同性愛知識の主効果が有意であり,知識少群よりも知識多群のほうが男 性「容認・寛容」得点が高いことが認められた。

補足分析①の結果と合わせて考察すると,男性において同性愛についての知識を多く持つことが男 性同性愛への否定的態度を緩和する要因となりうることが考えられる。くわえて,男性同性愛に対す る態度の下位領域である男性「嫌悪・拒否」に関しては,知識を多く持つ青年において,

GS

と合致 していない

GI

を持つ男性よりも,

GS

と合致する

GI

を持つ男性のほうが,男性同性愛に対して嫌悪 や拒否感を持つことが示されるとともに,

GS

と合致しない

GI

を持つ男性において,知識を多く持 つ場合よりも,知識が少ない場合のほうが男性同性愛に対して嫌悪や拒否感を持つことが示された。

補足分析②から,同性愛について知識を多く持つ場合で、も,

GS

と合致しない

GI

を持つ男性よりも

GS

と合致する

GI

を持つ男性のほうが男性同性愛に対する嫌悪や拒否感は高いこと,また

GS

と合 致しない

GI

を持つ男性で、あっても,同性愛についての知識を多く持つことで男性同性愛に対する嫌 悪や拒否感が低くなる可能性が示唆された。そして,補足分析②においても,同性愛についての知識

を多く持つことが 男性同性愛に対する容認や寛容的態度の高さにつながることも示された。

③青年の

GI

を男性性(高,低)

x

女性性(高,低)の

4

群に分けた分析

補足分析②において,

GI

と同性愛知識の交互作用が有意であることが男性において示された。そ こで,

GI

についてさらに細かく検討するために,青年の

GI

GS

合致群と

GS

非合致

GI

群とに分 けるのではなく,男性性(高,低)

x

女性性(高,低)の

4

(HH

HL

, 

LH

, 

L

:C)に分類し,

同性愛知識(多,少)とともに独立変数とし,同性愛態度を従属変数とする 2要因分散分析を施し

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