既述のように砂糖産業の生産額、付加価値額の推計については古・呉(2002)の研究があり、
23
)篠原推計では家具の項目がみられず、家具がどこに属するのか明らかでない。本稿で は木製品(分類番号20)と家具を1つの項目とし「木製品・家具」として処理することとし
た。それに従うのが合理的と思われるので、1940 年以前の砂糖生産については同論の数値をそ のまま引用することにし、篠原推計の砂糖推計と入れ替えを行った。ただ同論で調整の必 要性が指摘されている
1945
年前後の数値については、問題の所在の指摘には異論がないが、調整系列を定めるには他の系列の修正も考慮したより詳細な分析が必要なように思われる ので、今後の検討に待つことにした。また同論で指摘されているように『台湾商工統計』
の数値は『台湾糖業統計』の「年度」数字をそのまま転用している。年度数字は砂糖黍生産 の周期にあわせて作成されているために年次とは一致しない。この不一致を調整するには 月数を考慮しながら2年度データの加重平均による調整が必要になる。統計表の作成作業 では、例えば
1930
年次の数値は1929/30
年度の数字と1930/31
年度の数字に7:5のウエ イトを付して加重平均して求めている。既述のように大戦終結後については、第2次産業の名目生産額総計に関する時系列デー タは公表されていない。これを補うものとして工商業センサスによる推計が
1954
年と、1961
以降の5年毎に発表されている。表2.2
では、センサスから得られた名目生産額が、名目付加価値額とともに示されている。既述のようにこのセンサスの結果は、台湾の産業 統計の基礎になるものであるから、これをベースとした生産額についての推計があっても よいと考えられるが、統計年鑑等にはこの種の数値は発表されていない。これに代わる数 値として、鉱業、製造業については付加価値額の推計が『中華民国台湾地区国民所得統計』
に発表されている。
一方、製造業についてはセンサス年の間の4年間を補充するかたちで「製造業経営概況
調査」が
1972-1994
年にかけて実施されているので、その情報を利用すれば時系列を得ることが可能になる。この他『民国
90
年 中華民国統計年鑑』には経済部の推定として1995-2000
年の製造業生産額の数値が発表されている。この系列の1966
年値はセンサスの数字と一致していることから、上記の数字に接続可能なように思われる。
台湾の公式統計以外の生産額系列として2種の系列が発表されている。その1は川畑
(2001) 24 )に引用されている UNIDO
からのデータベースの数値である。1970年代以降の国連機関の公式印刷物には台湾の系列が引用されないのが普通であるから、このデータベー スについての詳細な情報は得られない。ただ
CDR2.6
の比較から明らかなように、センサ ス実施年にはセンサスの数値に近い推計となっているためセンサス実施年の間を補間する ためのデータとして使用可能である。第2の情報は既述の文(2002)に掲載された独立推計である。この推計は台湾当局による個 別品目別生産高を合計して生産額を求め、中分類別に集計したものである。この系列は大 戦終結前の篠原推計と同じ性格のものであることから、原・溝口(2004)との比較等で魅力的 なものである。ただ郭等の推計やセンサス結果と比較すると
1960
年以前の数値が過大にな っているような印象を拭うことができない。また、台湾の国民経済計算や鉱工業生産指数 のウエイトの決定に工商センサスが重視されている事情を考慮すると、文推計を主要系列24 )川端康治(2001)『東アジア長期経済統計5 工業発展』、勁草書房。
とすることにとまどいがある。このような理由からこの推計は当面参考系列として利用し ていくことにする。
表
2.2
には鉱工業の名目付加価値額も示されている。大戦終結後の付加価値系列としては『中華民国台湾地区国民所得』の数字をそのまま採用した。
25
)鉱業については62.5%の付
加価値率が想定された。1912
年から1937
年までの製造業付加価値の名目値は、篠原(1972)
等から計算した。すなわち、大戦終結前の製造業の生産金額データは篠原(1972)
を使用する ことにし、対応する付加価値率については西川・腰原(1981) 26
)に示された日本の戦前期(
1935
年)についての産業連関表から、産業別粗付加価値率を求め、概数化すると表2.8
が得られた。ただし、台湾における主要製造業であった精糖業については、古・呉(2002)
の推計を利用した。砂糖以外の付加価値率は大戦終結前の全期間について一定と仮定され ているのに対して、砂糖の付加価値率は年々変動していることに注意されたい。1941
年から1950
年については、国民経済計算から得られる1951
年の名目付加価値額と 郭等推計で示される1951
年の名目生産額の値から付加価値率を求め、郭等の推計期間中(1937-1951 年)一定と仮定し、郭等の名目生産額に乗じて名目付加価値額を作成した。
なお、1937年から
1940
年については篠原推計、郭等推計の両方から名目付加価値額が得 られるが、より詳しい情報をもとに作成された篠原推計から得られる結果を優先すること にした。表 2.8 大戦終結前産業別付加価値率 付加価値率
紡織工業 0.12
金属工業 0.25
機械器具 0.50
窯業 0.70
化学 0.30
製材 0.65
印刷製本 0.10
砂糖・糖蜜 年毎変動
その他食品工業 0.2
その他工業 0.4
25
)台湾の国民経済計算は5年毎にベース改定が行われ過去5年前まで遡って改定が行わ れている。したがって同表の1996
年以降の数値は暫定推計である。26
)西川俊作・腰原久雄(1981)「1935年の投入産出表」、中村隆英(編)(1981)『戦間 期の日本経済』、山川書店。郭等推計による製造業の生産額を篠原推計と比較すると、1940 年の付加価値ベースで
28%程度少なくなっている。その原因を探ってみると、篠原推計が 1939
年から1940
年にかけて下落しているためであり、その原因は両年の秘匿数字の取り扱いの差によるものと 考えられる。事実
1937
-40
年平均で見ると2
者間に大差はない。そこで本論では2
者を未 調整のまま接続している。表
2.3
には製造業中分類別の名目付加価値額が示されている。大戦終結前後とも原則とし て国際標準分類によっているが、年次間では若干の相違がみられる。たとえば、大戦終結 後の統計では通常「食料・飲料・タバコ」の生産額は2
分割されているが、初期では「飲 料・タバコ」が同一分類に属するのに対して、後半期ではタバコのみが独立項目となって いる。このような状況は時系列比較にあたって不便であるので、産業連関表等の情報を利 用して長期期間比較可能な中分類別の系列を作成した。実質付加価値額の推計は、大戦終結後の鉱業については、1961年以降について国民経済 計算による実質付加価値額が得られているのでそれによることにした。すなわち、1961年 から
1991
年については1991
年価格表示の数値を利用し、1996年価格表示の1991-2000
年の数値に接続した。本来ならば、5年毎に実施される基準年価格の変更を考慮した準連 鎖系列を利用すべきであるが、連鎖系列と上記の系列の相違が小さいので簡便法によった。1951
年から1961
年に関する鉱業の実質額系列は、生産指数によって1960
年の名目付加価 値額の補外により推計を行った。一方、製造業については生産金額が大きいことと、生産構造の変化が顕著であることを 考慮して中分類別に実質額を推計し、それを総合して製造業の実質生産額を求めることに した。すなわち、参照時点である
1960
年の名目付加価値額を基準として、対応する中分類 別生産指数で1951
年から1960
年だけでなく、1960
年から2000
年の期間についても補外 した。これは、中分類は比較的等質的な製品から構成されているから、数量をベースとし た生産指数と実質金額の動きが類似するであろうとの想定に基づいている。ただこの方法 では中分類内での付加価値率の変化が十分反映されていないことに注意が必要である。大戦終結前の製造業については、砂糖を除く部分について篠原推計の実質生産額を新中 分類に組み替えたのち、付加価値率を乗じて
1934-36
年平均価格表示の実質付加価値額に 変換した。砂糖産業については古・呉推計によった。この間様々な近似計算や補正作業が 実施されているが、その詳細は原・溝口(2004)記述されているので参照されたい。表2.9
に は、中分類ベースで接続された実質付加価値額の系列が示されている。大戦終結前の鉱業 については呉(1991)に拠った。第2次大戦下の混乱期についての接続は郭等の系列を利用し た。このようにして得られた接続系列を1960
年基準に切り替えた結果が、鉱業については表
2.10、製造業中分類については表 2.9
に示されている。産業中分類の実質額を総合して製造業の実質額を計算する作業と、鉱工業の実質額を総 合するには、指数論上の問題を解決せねばならない。もっとも簡単な総合法は単純合計で あるが、製造業中分類の合計値と国民経済計算に示された大分類ベースで発表されている
表2.9 製造業実質付加価値額
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
製造業計
食料・飲料 たばこ 繊維 衣類製品 皮革製品 紙・パルプ 印刷 木製品・家具 石油製品
1960年価格:百万元 Millions of NT$
1901 1902 1903 1904 1905 1906 1907 1908 1909 1910 1911
1912 723.3 265.0 105.6 7.1 2.0 0.2 10.5 4.7 30.1 0.0
1913 718.9 274.6 115.8 7.2 2.4 0.3 11.1 5.3 32.3 0.0
1914 845.9 388.4 126.6 7.0 3.5 0.4 10.8 5.5 39.3 0.0
1915 998.1 544.8 116.7 10.0 4.0 0.4 14.6 5.7 45.6 0.0
1916 1,222.7 756.8 144.0 15.9 6.3 0.5 14.8 5.9 50.2 0.0
1917 1,222.2 722.2 147.9 16.4 6.2 0.5 12.0 6.5 56.9 0.0
1918 1,128.6 603.1 184.1 14.8 5.8 0.7 12.7 6.8 42.4 0.0
1919 1,139.5 494.8 220.2 16.1 5.8 0.8 13.4 7.5 48.0 0.0
1920 1,242.8 453.0 268.5 14.2 3.4 1.2 12.5 9.1 61.6 0.0
1921 1,259.4 567.8 211.6 13.6 2.5 0.9 11.9 9.5 74.8 0.0
1922 1,422.3 655.5 221.1 18.2 4.4 0.9 12.1 14.7 80.9 0.0
1923 1,615.5 788.6 197.5 22.6 3.3 1.0 12.0 14.3 164.6 0.0
1924 1,702.4 900.0 191.0 23.6 5.2 1.0 15.4 12.0 139.1 0.0
1925 1,901.5 952.2 212.3 26.2 8.7 1.1 17.5 13.1 168.4 0.0
1926 1,932.5 891.3 202.5 25.6 9.0 1.3 19.3 15.6 169.7 0.0
1927 2,135.6 1,018.2 209.6 20.6 5.7 1.6 20.5 16.2 168.6 0.0
1928 2,579.6 1,408.2 213.1 22.2 13.1 1.0 20.8 16.2 174.2 0.0
1929 2,910.4 1,669.4 216.0 21.5 14.6 1.2 22.2 21.3 181.3 0.0
1930 2,910.1 1,710.7 215.1 17.9 11.0 1.8 22.6 23.6 167.7 0.0
1931 3,157.1 1,944.6 208.2 19.7 22.4 1.9 19.7 27.0 169.4 0.0
1932 3,016.5 1,690.5 216.9 22.7 17.5 2.4 21.7 26.2 219.8 0.0
1933 2,686.6 1,414.0 236.6 24.5 22.3 2.1 22.4 28.1 234.7 0.0
1934 3,115.5 1,823.5 263.9 27.2 25.0 2.2 24.0 28.9 242.4 0.0
1935 3,517.2 2,019.9 314.0 30.4 16.0 2.3 29.9 33.7 296.0 0.0
1936 3,795.5 2,089.1 350.2 35.4 15.0 2.0 31.4 35.9 315.8 0.0
1937 3,708.0 2,120.2 383.7 56.3 14.7 2.9 27.4 34.0 305.2 0.0
1938 4,167.0 2,592.5 466.4 49.4 14.9 2.6 41.7 38.2 357.3 0.0
1939 4,744.6 2,749.7 593.5 48.9 14.4 3.2 52.4 35.1 340.3 0.0
1940 4,076.6 2,104.5 659.2 61.3 13.9 3.1 71.3 30.7 363.4 0.0
1941 3,906.7 1,830.6 573.4 70.2 16.0 3.6 70.7 30.4 370.8 57.3
1942 4,368.4 1,965.7 615.7 55.5 12.6 2.8 81.6 35.1 486.8 66.1
1943 3,787.1 1,704.1 533.8 48.2 10.9 2.5 70.8 30.4 422.0 57.3
1944 3,180.6 1,431.2 448.3 40.4 9.2 2.1 59.4 25.6 354.4 48.2
1945 993.2 446.9 140.0 12.6 2.9 0.6 18.6 8.0 110.7 15.0
1946 1,010.1 364.2 242.4 29.3 6.7 6.5 19.5 8.4 87.3 9.4
1947 1,200.9 322.8 209.1 41.0 9.3 7.2 50.8 21.9 127.8 44.2
1948 2,147.2 837.6 304.1 77.1 17.5 8.2 67.6 29.1 161.2 154.0
(出所) 原・溝口(2004),行政院主計処『中華民国台湾地区 国民所得』
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
製造業計
食料・飲料 たばこ 繊維 衣類製品 皮革製品 紙・パルプ 印刷 木製品・家具 石油製品
1960年価格:百万元 Millions of NT$
1949 3,169 1,527 483 157 36 6 64 28 165 155
1950 3,383 1,543 483 226 51 12 101 43 182 82
1951 3,721 1,268 563 341 78 20 130 56 225 194
1952 4,907 1,894 684 535 121 26 163 70 235 202
1953 6,074 2,353 756 838 190 30 177 76 262 227
1954 6,851 2,458 857 975 222 20 216 93 298 283
1955 7,715 2,890 962 1,022 232 24 251 108 304 345
1956 7,965 2,964 996 964 219 30 307 132 306 350
1957 8,988 3,527 964 1,070 243 32 363 156 333 384
1958 9,580 3,477 1,036 1,038 236 36 418 180 439 410
1959 10,768 3,534 1,097 1,274 289 29 524 225 456 468
1960 11,925 3,853 1,097 1,422 323 33 601 258 508 538
1961 13,135 4,212 1,131 1,673 380 39 650 280 732 566
1962 14,049 4,116 1,108 1,865 463 37 702 317 890 614
1963 15,925 4,423 1,155 1,929 567 32 740 318 1,047 605
1964 19,345 5,446 1,201 2,187 654 33 919 344 1,323 638
1965 21,865 5,446 1,274 2,541 745 46 985 373 1,356 771
1966 26,091 6,464 1,281 3,221 860 53 1,262 439 1,483 962
1967 30,600 6,841 1,411 4,097 1,142 51 1,463 467 1,534 1,060
1968 37,675 7,227 1,535 5,240 1,818 53 1,656 546 1,710 1,277
1969 44,907 8,001 1,518 6,792 2,634 71 1,882 603 1,915 1,683
1970 52,473 8,498 1,505 8,934 3,328 90 2,268 671 1,974 2,039
1971 63,645 9,276 1,542 11,430 4,792 82 2,700 816 2,441 2,206
1972 76,712 9,971 1,591 12,070 4,437 85 2,978 835 2,730 2,727
1973 93,722 10,457 1,792 13,191 4,921 96 3,218 872 3,125 3,283
1974 92,851 10,489 1,764 12,996 5,391 94 3,162 732 2,134 3,018
1975 93,208 9,935 1,934 17,260 5,946 103 3,021 767 2,471 3,270
1976 116,388 11,657 2,035 20,255 6,713 109 3,496 879 3,230 4,818
1977 128,564 12,453 2,180 21,432 6,464 116 3,934 1,002 3,169 5,555
1978 163,457 12,835 2,403 27,113 8,324 146 5,049 1,287 4,374 6,858
1979 171,245 13,868 2,497 26,477 9,087 175 6,069 1,547 3,736 6,653
1980 184,463 13,414 2,530 29,609 11,130 165 6,375 1,624 3,293 6,865
1981 198,209 13,582 2,577 29,746 12,961 145 6,216 1,584 3,793 6,524
1982 199,598 13,957 2,780 29,377 12,906 180 6,127 1,561 3,794 6,474
1983 238,292 15,128 2,966 30,305 12,780 259 6,333 1,614 4,230 7,236
1984 273,452 16,774 3,082 33,970 14,383 324 7,011 1,787 4,372 7,627
1985 274,084 18,035 2,961 33,788 15,482 368 7,586 1,828 4,610 7,593
1986 322,908 18,174 3,054 36,654 16,570 455 9,185 1,970 5,349 7,497
1987 373,648 19,061 2,693 38,383 17,005 459 9,891 2,040 5,731 8,908
1988 390,147 19,405 2,729 34,479 14,122 436 10,374 2,036 5,240 9,657
1989 406,688 18,767 2,866 35,789 14,125 424 10,877 2,315 4,930 10,481
1990 410,604 19,808 2,787 34,955 11,849 387 11,459 2,347 3,832 9,333
1991 431,035 20,043 3,417 25,164 11,376 374 12,310 2,388 2,844 9,454
1992 452,046 20,459 3,445 22,160 10,018 316 12,454 2,580 2,403 10,403
1993 473,118 20,876 3,473 19,155 8,659 257 12,598 2,771 1,961 11,352
1994 510,236 21,900 3,747 17,181 7,767 246 12,988 2,717 1,576 11,020
1995 561,920 22,097 3,679 15,670 7,084 212 13,403 2,635 1,266 13,453
1996 588,993 21,631 3,806 14,496 6,553 196 13,511 2,553 1,187 14,619
1997 669,100 20,182 3,942 13,782 6,230 179 14,146 2,645 1,115 15,170
1998 712,171 18,934 4,002 13,731 6,207 167 13,996 2,946 950 15,780
1999 810,671 18,414 4,114 12,731 5,755 164 14,836 2,859 836 17,109
2000 919,182 18,263 4,066 11,298 5,108 159 15,042 3,027 700 17,784
(出所) 原・溝口(2004)、行政院主計処『中華民国台湾地区 国民所得』