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第4章 参照モデルと学習理論に基づいた位置制御法

4.5 実験結果

4.5.1 実験結果について

次世代 EB 露光への応用を目的に、熊本テクノロジー社は超精密ステージ駆動用アクチュ エータ SPIDER(Syncronous PIezoelectricDevice drivER)を新たに開発した。非共振型超音 波モータは従来の超音波モータとは異なり、共振特性を使用しないため、任意の位置でア クチュエータを止めることが可能である。また電磁力を用いないため磁気ノイズ特性に優 れている為将来的に EB が転写用光源として用いられるようになった際、有効となる。

本研究に用いた実験装置の構成図を図41に示す。ホストPCから送られた入力指令はPCI スロットに装着したパラレルIOカードを利用して、サーボインターフェスユニット(モー ションコントローラ)、アンプを通してSPIDERに送信される。ここのアンプにおいて入力

指令電圧は130/10倍(以下13 倍)されて送られる。また、エンコーダ及びリミットセン サよりステージの位置情報ストロークリミット情報が読み込まれ、ホストPCに送られる。

ホストPCにはOSとしてWindows98を搭載したPCを用い、VisualC++により実行プログ

ラムを作成している。I/F カードには Interface Corporation 製 16/16bitI/O PCI ボード

PCI-2735を使用している。圧電素子を使用しているアクチュエータを含むステージシステ

ムは熊本テクノロジー、太平洋セメント社らの共同研究により開発された。

ステージシステムの写真を図42 に、アクチュエータ拡大図を図43 に示す。位置を測定 するためにリニアエンコーダがステージ稼動部の下面に取り付けてある。リニアエンコー ダはミツトヨ製で計測分解能は電気分割ユニットのスイッチ切り替えにより、最小 10nm となっている。制御入力となる圧電素子への最大印加電圧は±130Vである。駆動周波数は

1kHz~60kHzまで設定変更が可能であり、ステージストロークは4インチウェハ対応の約

100mmとなっている。ステージの仕様を表 3.1 に示し、また圧電素子の性能表を表 3.2 に

示す。また、圧電素子の静的な発生力は最大伸縮素子発生力660N(4脚同時)となる。予

圧力が50N、摺動面の摩擦力が15Nであることから足の運動に十分な駆動力が得られてい

る。また、ガイドプレートの平均表面粗さが約 0.2μm であることから、伸縮方向に 39V のオフセット電圧を印加することで表面粗さの影響を軽減している。

ここで電磁モータと比較した際のSPIDERの特徴を列記する。

1. 超音波振動を利用した摩擦駆動のモータである 2. 対象物を直接駆動できるため小型化できる 3. 位置決め応答などの制御性能が良い

4. 電磁ノイズを発生しない(磁気の影響なし)

5. 超小型、薄型、軽量、構造が単純である

このような特徴から、SPIDERは、超小型化可能、制御特性良好、電磁ノイズがない、と いう電磁モータが不得意な用途への応用例が今後ますます増えると思われる。

Linear encoder

Linear guide Limit sensor SPIDER

Stage

Scale

PC

Motion controller with servo system control input

position signal

operator

limit signal

Guide Plate

図41:ハードウェア構成図

SPIDER

Slide plate Stage

SPIDER

Slide plate Stage

図42:精密ステージ

preload mechanism

20mm piezoelectric actuator

preload mechanism

20mm piezoelectric actuator

図43:アクチュエータ部拡大図

表7:ステージの仕様

可動部質量 1kg

駆動周波数設定 1~60kHz

最大推力 13N

最大印加電圧 ±130V

ストローク 100mm

位置分解能 100nm

表8:アクチュエータ(SPIDER)の仕様

材質 PB(Zr,Ti)O3

密度 7.8×103kg/m3

伸縮率 660×10-12m/V

剪断率 1010×10-12m/V

積層枚数 4(伸縮)×4(剪断)

ここで、SPIDER 駆動ステージの動作原理を示す。

本研究で用いているステージ駆動用のアクチュエータ(SPIDER)は圧電素子の積層化に よって構成されている。この圧電素子に関しては二つの効果を得ることができる。一つは 素子の変形によって電圧の発生する圧電効果, もう一つが電圧を印加することにより素子 が変形する逆圧電効果である。本アクチュエータではこの逆圧電効果を利用している。圧 電素子に分極と同じ方向の電圧を印加すると縦に伸び横に縮む。また, 分極と異なる方向 の電圧を印加すると, 縦に伸び横に縮む。この二つの動作を組み合わせることでステージ を送り出すというものである。

実際に圧電素子を利用して作られるSPIDERの1脚を図44に示す。SPIDERの1脚は 圧電素子8層から構成されており, 脚を伸縮方向に変形させるための圧電素子と, 脚を剪断 方向(横方向)に変形させるための圧電素子がそれぞれ 4 層づつとなっている。ステージ の送り手順をより分かりやすく示したものが図45である。図中の番号はそれぞれ以下の動 作に対応している。ここで対となっている1方の脚をA 脚, 他方をB脚とすると, 以下の ような動作を繰り返すことで足先が円軌道を描く。すなわち, SPIDERを固定し, ステージ を接触させればステージ送りが可能となるという原理になっている。

1. B 脚の剪断部がステージの送り方向に変形(ステージ移動)。A 脚はステージに接 していない状態で B 脚と逆向きに変形する。

2. A 脚の伸縮部が伸びステージと接触。

3. B 脚の伸縮部が縮んでステージから離れる。

4. A 脚の剪断部がステージの送り方向に変形(ステージ移動)。B 脚の剪断部はステ ージに非接触状態のまま A と逆方向に変形。

5. B 脚の伸縮部が伸びステージと接触。

6. A脚の伸縮部が縮んでステージから離れる。

図 44:圧電素子の拡大図

図 45:足先の動作

この一連の動作を行うにあたり, 印加電圧には正弦波状の電圧を用いている。伸縮部と剪 断部の位相差を 90°, A 脚と B 脚の位相差を 180°とすることで人間の歩行のようなスムー ズなステージ送りを実現している。また, 実際の SPIDER では A・B 脚一対を 4 組とする計 8 脚によりステージの送りを行っている。

摩擦材料 伸縮変形配線

ベース電極

剪断変形配線 GND配線

摩擦材料 伸縮変形配線

ベース電極

剪断変形配線 GND配線

摩擦材料 伸縮変形配線

ベース電極

剪断変形配線 GND配線

摩擦材料 伸縮変形配線

ベース電極

剪断変形配線 GND配線

A B

A B

A B A B

A B

A B

1 2

3 4

A B 6

A B

A B

A B

A B

A B A A B B

A B

A B

A B

A B

1 2

3 4

A B 6

A B

A B A B

A B

A B

1 2

3 4

A B 6

A B

A B

A B

A B

A B A A B B

A B

A B

A B

A B

1 2

3 4

4.5.2 摩擦特性

本節では、先に示した超精密ステージに摩擦が影響して起こるスティックスリップ現象 について述べる。また、超精密捨て^字に摩擦力を考慮したモデルについて示す。

2.1 スティックスリップ現象

スティックスリップ現象とは、摩擦の速度負勾配特性の影響によって精密ステージの位 置が目標値近傍で振動する現象である。ここで図においてステージにおける摩擦の速度負 勾配特性を示す。

スティックスリップ現象の発生プロセスは以下の通りである。

1. 摩擦の影響によりステージが目標値に到達せずに静止する。

2. 積分(I)制御器の積分動作により、制御入力が徐々に増大する。

3. 制御入力が静止摩擦力を上回るとステージは動き出すが、動作に伴い動摩擦が減尐し、

必要以上の力が印加され目標値を越えてしまう。

4. この動作が正方向、負方向に繰り返されることでステージの位置が目標値近傍で振動す る。

実際に SPIDER 駆動精密ステージを用い PID 制御(制御帯域 50Hz、サンプリング時間

0.5ms、計測分解能100nm)により位置決め制御実験を行った時のスティックスリップ現象

発生時の制御入力及び位置出力波形を図に示す。この時、低速度では、速度が増加するに ともなって摩擦力が減尐している。これをストライベック効果という。この効果の影響で スティックスリップ現象が生じてします。このため、非線形摩擦を補償することが求めら れる。

図46:摩擦特性

-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 -80

-60 0 20 40

F ri c ti o n u

f

[V ]

Steady-state velocity v [mm/s]

-40 -20 60 80

Coulomb friction

Static friction

Viscous friction

13 0 1

16

-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 -80

-60 0 20 40

F ri c ti o n u

f

[V ]

Steady-state velocity v [mm/s]

-40 -20 60 80

Coulomb friction Coulomb friction

Static friction Static friction

Viscous friction Viscous friction

13 0 1

16

13 0 1

16

図47:スティックスリップ現象

4.5.3 実験結果

参照モデルと学習理論に基づく位置制御法を SPIDER 駆動ステージに適用した。実験条件 は以下のようにした。さらに、実験した結果を示す。

表 9:シミュレーション条件

目標値 Ts コントローラ 外乱 学習係数

±0.2[mm] 0.5[ms]

) 1 0265 . 0 (

100 3 . 24 111 .

0

2

s s

s

s

-5[V] α=0.0012 β=1×10-5

図48:実験結果

0 0.004 0.010 0.012

Position [mm]

-20 -10 0 10 20

Control input [V]

0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0

Time [s]

0.008 0.006 0.002

: reference : position

0

0.004 0.010 0.012

Position [mm]

-20 -10 0 10 20

Control input [V]

0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0

Time [s]

0.008 0.006 0.002

: reference : position : reference : position

42 42.5 43 43.5 44

-0.4 -0.3 -0.2 -0.1 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

Time [s]

Output y, ys[mm]

ywith NN ywithout NN

42 42.5 43 43.5 44

-0.4 -0.3 -0.2 -0.1 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

Time [s]

Output y, ys[mm]

ywith NN ywithout NN ywith NN ywithout NN

先の図をみると、赤線が参照モデルと学習理論を用いた制御法を用いた出力結果で、緑線 がPID制御の出力結果である。赤線と緑線を比較すると、静止摩擦や周期外乱を抑制して いることがわかる。つまり、シミュレーション結果と実験結果がよく一致していることが わかる。

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