5. シミュレーション実験
5.3. 実験1 シングルホップ
まず、実験1ではシンプルな1対1のトポロジーを用いる。トポロジーを図5.1に示す。
通信距離Xはまず、500[m]と1000[n]とする。パラメータは以下の表5.1を用いる。
表5.2 実験1パラメータ
Data Size 40[Kbyte]
Number of Fragmentation 160 Frame Size 256[byte]
Packet Header Size 10[byte]
Contorol Packet Size 10[byte]
Selective ARQ 8Frame/1ACK
BER 0~5×10-4
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0 X[m] 1
Sender Receiver
図5.1 実験1トポロジー
なお、Selective ARQのルールとして、いくつのフレームに対して、1ACKを待つかとい う点が挙げられるが、今回は8フレームに1ACKを待つという設定にしている。また、MAC プロトコルにはIEEE 802.11のCSMA/CAをUWASNs向けのパラメータチューニングは 行っておらず、CSMA/CAとしては機能していない。まず、通信距離を500[m]とし、BER を変化させたときのチャネル使用率の結果を図5.1に示す。
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1
0.0000001 0.000001 0.00001 0.0001 0.001
chennel efficiency
BER
Selective+JSW Selective JSW S&W
図5.1 通信距離500[m]における実験結果
S&W の使用率は40[%]とかなり低い。やはり、1フレームに対して1ACKを待つので、
SenderとReceiver間の片方向遅延の2倍分が空帯域となってしまため、高遅延のUWASNs
では低いスループットとなる。その他の三手法はS&Wよりかなり高い使用率を示している。
まず、Selective に関して。連続してフレームを送信した後に ACK を受信するので、それ
だけSenderがACKを待つ時間は減り、使用率が向上したといえる。また、JSWもACK
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をただ単純に待つのではなく、S&Wの2×片方向遅延中に次のフレームを送信するため、
使用率が向上した。この際、通信距離が500[m]の場合、2×片方向遅延中にSenderが送る ことができるフレーム数は1フレームである。SelectiveとJSWを比べると、Selectiveの 方が、数パーセント高い使用率を示している。これは、JSW がACK を待つ時間を利用す る効率の良さよりも、1フレームに1ACKを受け取るという、ACK受信のオーバーヘッド の影響が出たためであると考えられる。さらに、これらSelectiveとJSWのハイブリッド 手法である提案手法は最も使用効率が高く。使用率は 90[%]近くとなっている。RTS/CTS ハンドシェイクの時間やACKの受信時間などを考えると、ほぼ限界までチャネルを使用し ていると言える。BERが増加すると当然再送数が増え各手法とも使用効率は低下する。
次に、より高伝搬遅延環境を想定し、通信距離を1000[m]と変更し、BERを変化させた 際のチャネル使用率の結果を図5.2に示す。
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9
0.0000001 0.000001 0.00001 0.0001 0.001
chennel efficiency
BER
Selective+JSW Selective JSW S&W
図5.2 通信距離1000[m]における実験結果
よりUWASNs特有の高伝搬遅延の影響が大きい環境での実験といえる。結果を参照する
と、先ほどの通信距離 500[m]の結果と比べ全手法の使用効率が低下している。これは
RTS/CTS ハンドシェイクの時間が、高伝搬遅延の影響を受け増加したためと考えられる。
提案手法は使用率が最も高く、S&Wの使用率がかなり低いという傾向は先の実験と変わら ない。しかし、SelectiveとJSWの結果をみると、JSWの効率が相対的に増加し、ほぼ同 じ値の結果が出ている。Selective は ACK を待つ時間が高伝搬遅延のため増加するため、
チャネル使用率は単純に低下するのに対し、JSWはその時間を効率的に利用するため、チ
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ャネルの使用率の低下が最小限に抑えられている。なお、ACK待ち時間に送信できるフレ
ーム数は500[m]では1つであったが、1000[m]では3つである。
以上より、JSW やその効果を享受しているSelective+JSW のハイブリッド手法は、高 伝搬遅延環境下でもチャネル使用率はあまり変化せず、通信距離が大きいときにより効果 を発揮するARQといえる。
また、その効果はACKを受信するまでの時間にいくつのフレームを送信できるかにもよ って変動する。そのフレーム数をMと定義する。Mは通信距離に応じて変化し、通信距離 が遠ければMは増え、反対に近づけばMは小さくなる。さらに、Mはレイヤー3で定め られるパケットのフラグメンテーション数によっても変化する。次に、このMについての 評価を行う。上位層から到着するデータサイズは40[Kbyte]と変更せず、フラグメンテーシ ョン数や通信距離を変化させた際の実験を行う。先ほどの実験ではフラグメンテーション 数は160のみであったが、今回は79~385と変化させる。またそれに応じて送信されるフ レームサイズは 512~104[byte]と変化する。通信距離を 250,500,750,1000[m]と変化させ た際の結果を、それぞれ図5.3~5,6に示す。なおARQにはSelective+JSWの手法を用い ている。各図の味方として、曲線の説明の横に位置した二つの数字はフレームサイズとフ ラグメンテーション数を意味している。
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1
0.0000001 0.000001 0.00001 0.0001 0.001
channel efficiency
BER
104*385 128*313 152*264 176*228 200*200 224*179 248*162 272*148 296*136 320*125 344*117 368*109 392*103 416*97 440*91 464*87 488*82 512*79
図5.3通信距離250[m]における実験結果
フレームサイズ[byte]
フラグメンテーション数
40 0
0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1
0.0000001 0.000001 0.00001 0.0001 0.001
channel efficiency
BER
104*385 128*313 152*264 176*228 200*200 224*179 248*162 272*148 296*136 320*125 344*117 368*109 392*103 416*97 440*91 464*87 488*82 512*79
図5.4 通信距離500[m]における実験結果
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1
0.0000001 0.000001 0.00001 0.0001 0.001
channel; efficiency
BER
104*385 128*313 152*264 176*228 200*200 224*179 248*162 272*148 296*136 320*125 344*117 368*109 392*103 416*97 440*91 464*87 488*82 512*79
図5.5 通信距離750[m]における実験結果
41 0
0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1
0.0000001 0.000001 0.00001 0.0001 0.001
channel; efficiency
BER
104*385 128*313 152*264 176*228 200*200 224*179 248*162 272*148 296*136 320*125 344*117 368*109 392*103 416*97 440*91 464*87 488*82 512*79
図5.6 通信距離1000[m]における実験結果
BERが高くなったときは、当然、分割数が大きく1フレーム当たりのサイズが小さいと きのほうがパケットロスをしにくくなり、結果が良くなる。一方、BER が低いときは、オ ーバーヘッドの影響で分割数が大きいと使用効率が悪くなりそうであるが、JSWの効果で そうはならない。例えば、通信距離250[m]の図5.3をみると、フラグメンテーション数が 264でフレーム数152[byte]のとき、BERが高いときは当然スループットが高くなり、BER が低いときでも他の分割数と比較してもオーバーヘッドの影響を感じさせない高いスルー プットを示している。通信距離が短いときは、ACKが返ってくるまでの時間が短いため、
フレームサイズが小さくなければ、Mが増加せず、JSWの効果が出ないため、フラグメン テーション数が小さく 1 フレームサイズが大きいとあまりいい結果が得られていないこと が分かる。しかし、今回の実験でのフラグメンテーション数がMAXの385では、Mは増 加するが、オーバーヘッドの影響が大きく出てしまうため、BERが低いときのスループッ トは悪くなる。
通信距離が変化すると、フラグメンテーション数に応じてMが変化するため、BERが低 いときの最大スループットを出力するフラグメンテーション数が異なることが分かる。ま た、各図のBERが低いときを比較すると、スループットMAXのフラグメンテーション数 385とMIN のフラグメンテーション数79の差は変わらないが、フラグメンテーション数 が中間(ex,200~103)の結果は徐々にMAXの点に近づいていることが分かる。図5.3をみる と、フラグメンテーション数385,313,264のときだけMが1以上となりJSWの恩恵を受 け、他の分割数よりも大分結果がいいことが分かる。このとき、それ以外のフラグメンテ ーション数はMが0となり、ただのSelective ARQとなってしまっている。つまり、通信
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距離が増加するにつれ、フラグメンテーション数が小さくフレームサイズが大きくても M が1以上となりJSWの効果が発揮され、フラグメンテーション数が小さいときに近い使用 率が出ているのではないか。しかし、1フレームサイズの違いがPERの差を生み、BERが 大きいとき分割数が大きいとほとんどが再送になってしまうため、使用率は低下する。
以上より、通信距離が小さいときはJSWの恩恵を受けつつオーバーヘッドの影響が最小 限になるようなフラグメンテーション数を選択し、通信距離が大きいときは、そこまでフ ラグメンテーション数にシビアにならずに、M との兼ね合いで適切なフラグメンテーショ ン数を選択すべきである。本当はBERに応じてAdaptiveにフラグメンテーション数を変 化させる方法が一番いいのであるが、UWASNsでは突発的に通信状況が悪くなることが考 えられるため、そのような手法は向かない。また通信距離が遠くなるということは、BER が高くなることであるから、オーバーヘッドとの兼ね合いで、なるべく分割数を大きくし1 フレームのサイズを小さくすることが最適とも考えられる。
次にSelective ARQのパラメータである、何フレームに対して1ACKを返すのかという
点について述べる。このフレーム数をNとして定義する。先の実験ではN=8、8フレーム に対し1ACKを返す設定であった。通信距離を1000[m]とし、Nを変化させた際の結果を 図5.6に示す。なお、フラグメンテーション数は160である。
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1
4 8 16 32 64 128
channel efficiency
N
BER:0 BER:0.00001 BER:0.0001 BER:0.0005
図5.6 Nを変化させた際の実験結果
Nを8より低く4と設定するとチャネル使用率は若干低下する。また、Nを16以上に設
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定するとわずかではあるが使用率が上昇し、収束している。NはEnd to End delayや受信 側でのバッファなどとのトレードオフであるため、あまり大きすぎない値を選択するべき である。実験結果より、N を変化させるときの使用率の変化はわずかであり、本実験では Nを8と設定する。