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実用性の考察

第 5 章 システムの評価 36

5.3 実用性の考察

5.3.1 実行速度

Kuan-Ta Chenら[15]によると,ユーザがゲームを遊ぶ際に感じるアプリケーショ ンの実行速度は,ユーザの操作入力からそのレスポンスの出力までにかかる時間に よって表せる.すなわち,Unity Mobile Streamingによって,サーバ上で高速に演 算処理やレンダリングを行うことによって減った処理時間が通信の遅延よりも大き い時,Unity Mobile Streamingは有効なシステムであると言える.

ここで,節5.2.3の結果より,Android端末単独で実行した場合とUnity Mobile

Streamingを利用して実行した場合のフレームレートから,1フレーム処理するのに

かかる時間を計算する.1000/フレームレートによって1フレーム処理するのにか かった時間(ミリ秒)を求めると表5.9のようになる.また,節5.2.1より画面出力 にかかる時間は240ミリ秒,節5.2.2より操作入力にかかる時間は30ミリ秒とする と,Unity Mobile Streamingの通信によって増える遅延時間は270ミリ秒と言える.

そのため,表5.9のUnity Mobile Streamingの値に270を加えた値が,Unity Mobile

Streamingを利用している時の操作入力からレスポンスの出力までにかかる時間で

あると言える.なお,クライアント端末そのものが入力を検知するのにかかる時間 と画面を描画するのにかかる時間は十分小さく,またAndroid端末単独で実行する 場合もUnity Mobile Streamingを利用する場合も同等の時間がかかるため,無視す る.表5.10より,2048粒子のときおよそ1.28倍,4096粒子のとき2.8倍高速である.

よって,2048粒子以上相当の負荷がかかる場合においてUnity Mobile Streamingが 有効である事が示せた.

図 5.6: 遅延時間とfEMGポテンシャルの関係(参考文献[16]のFig.4)

5.3.2 遅延時間

一方で,最も理想的な実行速度,すなわち60fpsでゲームが動作している場合,レ スポンスの出力までにかかる時間は16ミリ秒であるため,通信によって増える遅延 時間の270ミリ秒は小さいとは言えない.Yeng-Ting Leeらの研究[16]では,クラ ウドゲームにおける遅延時間の増加は体感品質の低下を招くとしている.この研究 では,どのようなジャンルのゲームがクラウドゲーミングとの相性が良いかを,筋 電図によるアプローチで評価している.実験では,アクションゲーム,ファースト パーソンシューティング,ロールプレイングゲームの3ジャンルに対し各3タイトル の計9タイトルのゲームについて,任意の時間の遅延を発生させるエミュレータを 通して被験者にプレイさせる.被験者は,各タイトルを遅延時間0,50,100,200, 400ミリ秒加えた状態でプレイし,その時の表情筋の状態を筋電図によって測定す る.この結果から,被験者の体感品質を数値化している.被験者には,19歳から28 歳でゲーム経歴平均4.6年の男女15人が選ばれた.実験結果より,遅延時間と顔面 筋電図(fEMG)ポテンシャルの関係は図5.6のようになったとしている.ここで,

緑色のデータはアクションゲームの,赤色はファーストパーソンシューティングの,

青色はロールプレイングゲームのタイトルを表している.fEMGポテンシャルの値 が高いほど不快感が強い,すなわち体感品質が低いとしている.

図5.6より,遅延時間270ミリ秒の時を見ると,殆どのゲームタイトルにおいて,

fEMGポテンシャルの値が大きくなっている.よって,現状のUnity Mobile Streaming では快適に遊べるとは言いがたい可能性がある.しかし,節5.2.1でWindowsタブレッ ト端末を用いた実験での結果を考えると,Android版クライアントアプリでも.NET フレームワークのソケット通信を利用できれば出力遅延は110ミリ秒まで削減出来 ると思われる.そうすれば,入力遅延と合わせて通信にかかる遅延時間は140ミリ

秒となる.遅延時間が140ミリ秒の場合,ファーストパーソンシューティングのよ うな厳密なリアルタイム性の求められるゲームジャンルでは,やはり快適に遊ぶの は難しいようであるが,アクションゲームやロールプレイングゲームではfEMGポ テンシャルの値に大きな変化の見られないタイトルもあるため,ある程度快適に遊 べるのではないかと思われる.

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