第 4 章 既知情報を用いた TS4SID 法に基づくデータ駆動型設計法 28
4.4 実機実験
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図 4.8: 図4.7の拡大図
図 4.9: 二慣性共振系速度制御装置
て性能を大きくが改善することができ,既知情報を用いたTS4SID法に基づくデータ 駆動型制御器設計法の有効性が確認できる。
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4.4.1 実験条件
初期安定化制御器C0は(4.52)式のように設定し,参照モデルM は(4.53)式のよう に設定した。
C0 = 0.051z−0.05
z−1 (4.52)
M = 0.0952
z−0.9048. (4.53)
サンプリングタイムはT s= 10msとし,ブロックハンケル行列を構成する際のrの値 はr = 50とした。閉ループシステムの参照入力r(k)にデータ数N = 9100の白色雑音 を印加し,閉ループ実験データ{r(k), u(k), y(k)}をそれぞれ9100個取得した。また,
ブロックハンケル行列を構成する際のrの値はr= 50とし,離散時間システムで,積 分器を持つように制御器を設計するので,A11= 1,B1 = 1とする。
本実験では,Case i) 状態空間ベースの二段階制御器設計法,Case ii) TS4SID法に 基づくデータ駆動型制御器設計法,Case iii) 既知情報を用いた状態空間ベースの二段 階制御器設計法,Case iv)開ループデータで,既知情報を用いてPI-MOESP法で制御 器設計を行った場合について,提案手法と比較を行うことで,提案手法の有効性を検 証することを目的とする。
なお,Case iv)では開ループシステムの制御対象の入力u(k)に,データ数N = 9100 の白色雑音を印加し,開ループ実験データ{u(k), y(k)}をそれぞれ9100個取得した。
4.4.2 実験結果
図4.10,4.11,4.12,4.13,4.14にそれぞれCase i)の特異値プロット,Case ii) の2 段階目の制御器を設計する際の特異値プロット,Case iii) の特異値プロット,Case iv) の2段階目制御器を設計する際の特異値プロット,既知情報を用いたTS4SID法に基づ くデータ駆動型制御器設計法の特異値プロットを示す。図4.10より,制御器の次数を 5次,図4.11より,制御器の次数を5次,図4.12より,制御器の次数を4次,図4.13 より,制御器の次数を4次,図4.14より,制御器の次数を5次と判断した。Case i) , Case ii)の設計後の制御器の伝達関数Ccase i),Ccase ii)は,それぞれ(4.54)式,(4.55) 式となった。
Ccase i)= 0.3150(z−0.09089)(z2−1.935z+ 0.9368)(z2−1.705z+ 0.8854)
(z+ 0.9251)(z−0.9487)(z−1.011)(z2−1.803z+ 0.91) (4.54) 40
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図 4.10:Case i) 2段階目の特異値プロット 図 4.11:Case ii)の特異値プロット
図 4.12:Case iii) 2段階目の特異値プロット 図 4.13:Case iv)の特異値プロット
図 4.14: 提案手法の特異値プロット
Ccase ii) = 0.3045(z−0.07572)(z2−1.932z+ 0.9344)(z2−1.71z+ 0.8909)
(z+ 0.9308)(z−0.9402)(z−1.012)(z2−1.803z+ 0.9107) (4.55)
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図 4.15: 応答波形
表 4.2: 評価値 JOE
手法 Case i) Case ii) Case iii) Case iv) 提案手法
評価値 82.36 88.98 74.57 62.89 74.96
また,Case iii) ,Case iv),提案手法の設計後の制御器の伝達関数Ccase iii),Ccase iv), Cpは,それぞれ(4.56)式,(4.57)式,(4.58)式となった。
Ccase iii) = 0.3122(z−0.09732)(z2−1.946z+ 0.9484)(z2−1.705z+ 0.883)
(z+ 0.9226)(z−0.9758)(z−1)(z2−1.804z+ 0.9108) (4.56)
Ccase iv)= 0.3149(z−0.086)(z2−1.958z+ 0.9598)(z2−1.725z+ 0.8881)
(z+ 0.9035)(z−0.9771)(z−1)(z2−1.814z+ 0.9127) (4.57)
Cp=0.3019(z−0.9824)(z−0.08291)(z2−1.935z+0.9369)(z2−1.709z+0.8893)
(z+0.9282)(z−0.9428)(z−0.9998)(z−1)(z2−1.804z+0.9108) (4.58) 設計後の閉ループシステムに対して,0秒から5秒まで30rad/sで回転させた応答波 形を図4.15に示し,(4.59)式に示すような,望みの応答yd(k)と設計後の閉ループシス テムの出力y(k)との平均二乗誤差を評価値として,表4.2に示す。
JOE =∥yd(k)−y(k)∥22 (4.59)
(4.54)式,(4.55)式より,既知情報を用いず,3章で述べた手法では,積分器を持つ制
御器が設計できていないことがわかる。また,図4.15,表4.2から,Case i),Case ii) 42
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の制御器は積分器を持っていないので,定常誤差が残ってしまい,評価値も大きい値 をとっていることがわかる。
それに対して,既知情報を用いたCase iii),Case iv),提案手法は(4.56)式,(4.57) 式,(4.58)式から積分器を持つ制御器を設計できていることがわかる。また,図4.15,
表4.2から,定常偏差が少なく,評価値も小さい値をとっていることが確認できる。
Case iii)と提案手法を比較すると,図4.15,表4.2からわかるように,Case iii)より 提案手法の方が,性能が劣化していることがわかる。これは,提案手法は近似式を用 いて,観測雑音の影響を除去した行列Zr+1,Nを生成していることが原因で性能が劣化 していると考えられる。
しかし,Case iii)には劣るが,提案手法は相補感度関数を同定することなく,閉ルー
プ実験データを用いて,開ループ実験データを用いて設計した場合に近い性能を得れて いることが確認できる。よって,実機実験を通じても提案手法の有効性を確認できた。
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