第 3 章 数とは 37
3.5 実数とは
3.5. 実数とは 第 3. 数とは
定義3.5.3. 【実数の四則演算】
2つの実数α= [{an}]とβ = [{bn}]について,
(1) 和α+βを数列{cn :=an+bn}の定める同値類[{cn}]と定義する.
(2) 差α−βを数列{dn:=an−bn}の定める同値類[{dn}]と定義する.
(3) 積αβを数列{en:=anbn}の定める同値類[{en}] と定義する.
(4) β6= 0のとき,商 α
β を次の数列{fn}の同値類[{fn}]と定義する.
fn:=
an bn
(bn6= 0) an (bn= 0)
定理3.5.2. 【四則演算の well-definedness】
(1) 上の数列{cn},{dn},{en},{fn}は全て有理コーシー列になる.
(2) 有理数のコーシー列 {an},{a0n},{bn}.{b0n}があり,
{an} ∼ {a0n}かつ{bn} ∼ {b0n}であるとする.このとき,上のよう にして得られる数列{cn}と{c0n}は同値(つまり,{cn} ∼ {c0n}).
{dn}と{d0n},{en}と{e0n},{fn}と{fn0} についても同様.
注意 3.5.7. 有理数を表す数列に対する四則演算は,これまでの有理数の四
則演算と一致する.
定理3.5.3. 【加法の性質】
(1) 実数の加法について,結合則と交換則がなりたつ.
つまり,任意の実数α,β,γに対して,次が成り立つ.
α+ (β+γ) = (α+β) +γ , α+β=β+α
(2) 0 = [{0,0,0,· · · }]は加法の単位元である.
つまり,任意の実数αに対して,0 +α=α+ 0 =α
定理3.5.4. 【加法の逆元】
(1) 実数αに対して 0−αを,−αと略記すると,−αは加法におい てαの逆元である.つまり,α+ (−α) = (−α) +α= 0 である.
(2) 実数αとβに対して,α−β =α+ (−β)が成り立つ.
第 3. 数とは 3.5. 実数とは
定理3.5.5. 【乗法の性質】
• 任意の実数α, β, γ∈R に対して,次が成り立つ.
(1) αβ=βα (2) α(βγ) = (αβ)γ (3) α(β+γ) =αβ+αγ
• 実数1は正の実数における乗法の単位元である.
つまり,任意のα∈Rに対して,α×1 = 1×α=αが成り立つ.
• 任意の実数αと実数0に対して,α×0 = 0×α= 0が成り立つ.
• 任意の実数αに対して,以下が成立.
(1) −α= (−1)×α (2) −(−α) =α
定理3.5.6. 【乗法の逆数】
ゼロでない実数αの逆数 α1 を,割り算1÷α の結果として定義する と,1
αは乗法においてαの逆数である.
つまり,α1 ×α=α×α1 = 1が成り立つ.
定義3.5.4. 【実数の大小関係】
2つの実数α= [{an}]とβ= [{bn}]について,次のように大小関係を定 義する.
• (復習)α=βが成り立つのは,それぞれの代表元(有理コーシー 列){an}と{bn} が次をみたすとき:
∀ε >0,∃N(ε)∈Ns.t. n > N(ε)⇒ |xn−yn|< ε
(つまり,lim
n→∞|an−bn|= 0)
• α6=βかつ,ある代表元{an}と {bn}について,
∀n∈Nについてan≤bnがなりたつとき,α < βと定義する.
• α6=βかつ,ある代表元{an}と {bn}について,
∀n∈Nについてan≥bnがなりたつとき,α > βと定義する.
3.5. 実数とは 第 3. 数とは
定理3.5.7. 【実数の大小関係の性質】
実数α,β,γに対して,次が成り立つ.
• 次の3つのうち一つだけが常に成立する: α < β,α=β,α > β
• 推移律が成り立つ: α < β かつβ < γ ならばα < γ
• (1) α < β ならば α+γ < β+γ
(2) α < β かつγ >0 ならばα×γ < β×γ
定理3.5.8. 【実数の十進小数表示】任意の正の実数x∈Rに対して,
次の形の有理コーシー列{an} でx= [{an}] となるものが存在する.
an=x0+x1
10+ x2
102 +· · ·+ xn
10n, xi∈Z, 0≤xi≤9 ただしx0は,x=x0またはx > x0をみたす最大の整数.
練習問題 3.5.1. 2つの有理コーシー列{xn}と{yn}の関係{xn} ∼ {yn}を 次のように定義したとき,反射律が成り立つことを示しなさい.
∀ε >0,∃N(ε)∈Ns.t. n > N(ε)⇒ |xn−yn|< ε
練習問題 3.5.2. 2つの有理コーシー列{an}と{bn}に対して,数列{dn:=
an−bn}が有理コーシー列になることを示しなさい.
練習問題3.5.3. 有理コーシー列の同値類として実数を定義したとき,0.9999· · ·= 1となることを示しなさい.
第 3. 数とは 3.5. 実数とは
第13講
前回の続き.実数の性質を調べよう.
注意 3.5.8. 実数に対して,その絶対値を,これまでと同様に定義すること
ができる.詳しいことは,ここでは省略.
3.5.2 実数の完備性と連続公理
定理3.5.9. 【実数の完備性(completeness)】
実数のコーシー列は必ず収束する.
すなわち,任意の実数の列{xn}がコーシー列である,つまり,
∀ε >0,∃N(ε)s.t. ∀n, n0> N(ε),|xn−xn0|< ε が成り立つとき,実数αがただ一つ定まり,次が成立する.
∀ε >0,∃N(ε)s.t. ∀n > N(ε),|xn−α|< ε
注意 3.5.9. 一般に,絶対値(ノルム)が定義されている集合において,任
意のコーシー列が収束するとき,その集合は完備である(complete)という.
定義3.5.5. 【上限(sup)と下限(inf)】
Rの部分集合をAとする.
• Aに対して「すべてのα∈Aに対してα≤x」となるようなx∈R が存在するとき,このxをAの上界という.
• Aの上界がすくなくとも一つ存在するようとき,Aは上に有界で あるという.
• Aが上に有界であるとき,Aの上界のうちで最小のもの,つまり 任意の「A の上界」λに対して,α≤λをみたすAの上界αが存 在するとき,それをAの上限(supA)という.
下界,下に有界,下限も同様に定義する.
定理3.5.10. 【実数の連続公理】
上に有界なRの部分集合Aには,必ず上限α= supA∈Rが存在する.
また,下に有界な集合Bには,必ず下限β= infB∈Rが存在する.