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5.1 ナタリズマブの安全性プロファイルの概観

本剤300 mgを4週間に1回点滴静注したときの安全性は、4000例を超える被験者を対象とし

た臨床試験、10万例を超える患者(全ての適応症)に対する5年間を超える市販後の経験及び20 万人年を超える累積曝露から得られたデータに基づいて、外国人(日本人以外、主に白人)患者 に対して確立されている。日本人患者の臨床試験から得られたデータを評価した結果、外国にお いて実施された臨床試験及び広範囲にわたる市販後の経験をとおして得られたデータに一致する 安全性プロファイルが示された。

臨床開発プログラムから得られた安全性に関する要約を以下に示す。これらの詳細な結果につ いては、[M2.7.4 臨床的安全性]に示す。開発当初のプラセボ対照試験( 年まで)は、プラセ ボとの関連性で安全性プロファイルの特性を明らかにするものであるため、その結果を最初に示 す。その後に、 年以降に実施したその他の試験の安全性データを示す。これらの試験では安 全性プロファイルが同様であることが示された。

年までのプラセボ対照試験において、本剤の投与を受けた外国人MS患者1617例のうち、

1030例(64%)が2年間を超えて本剤の投与を受けた。本剤の投与を1回以上受けたMS患者2321 例の曝露量は3804人年であった。より完全な安全性評価を行うため、CD患者の曝露量も含めた。

AEの発現率は、MS及びCDの両試験対象集団において、本剤群とプラセボ群で同様であった。

MSに対するプラセボ対照試験では、本剤の投与を受けた被験者では96.0%、プラセボの投与を受 けた被験者では97.3%に1件以上のAEが発現した。本剤の投与を受けたMS患者及びプラセボの 投与を受けたMS 患者で多く報告されたAEは、頭痛、多発性硬化症再発、鼻咽頭炎、疲労及び 背部痛であった。本剤の投与を受けたMS患者の方がプラセボの投与を受けたMS患者より発現

率が1.5%以上高かったAEは、咽頭炎、末梢性浮腫、胃腸炎NOS、及び悪寒のみであった。CD

に対する安全性プロファイルも同様であった。

年から 年までに、本剤の効果特性をより明らかにする目的で、追加試験を実施した。

これらの試験で認められた本剤の安全性プロファイルは、上記の 年までに実施した試験で認 められたものに一致した。追加試験の結果、本剤を使用してもワクチン接種に対する患者の反応 への影響はないこと(試験101MS404)、また、本剤の投与中断によりMSの疾患活動性が再燃す る可能性があること(試験101MS205)が示された。

本剤の臨床試験及び市販後の経験から得られた広範囲にわたる安全性データから、本剤の特性 が明らかとなる十分な安全性プロファイルが示された。本剤のリスク管理計画にも記載されてい る安全性に関する項目を要約して、以下に示す。

5.1.1 日本人患者における安全性プロファイル

本剤300 mgを4週間に1回、24週間にわたり点滴静注するプラセボ対照試験(試験101MS203)

及び試験101MS203の非盲検長期継続投与試験(試験101MS204)で、日本人患者における本剤の

安全性プロファイルが確認された。試験 101MS203 に 106 例の被験者が組み入れられ、試験 101MS203を完了した97例に試験101MS204で本剤300 mgを4週間に1回、点滴静注した。全体 として、日本人患者で認められた安全性プロファイルは、外国人患者の試験で確認されたプロフ ァイルと一致していた。試験101MS203及び101MS204で最も報告が多かったSAEは多発性硬化 症再発であった。

発現した本剤投与被験者はなかった。本試験で2例(いずれも本剤群)において、AEとして帯状 疱疹が認められた。試験 101MS204の旧プラセボ群の1例に重篤な感染(髄膜炎及びマイコプラ ズマ感染)が発現し、治験責任医師より治験薬に因果関係ありと判定された。また、旧本剤群の 1例に帯状疱疹が発現し、治験責任医師より治験薬に因果関係なしと判定された。PML が疑われ る症例又は日和見感染症の症例はみられなかった。

試験101MS203及び101MS204でみられた投与時反応は臨床的に意味のあるものではなく、その

重症度は軽度又は中等度であった。過敏症反応は試験 101MS203 で認められなかったが、試験

101MS204 の旧プラセボ群の2例に中等度で治験責任医師より治験薬に因果関係ありと判定された

過敏症反応が認められた。試験101MS203及び101MS204の数例が抗ナタリズマブ抗体陽性を示し たが、持続的陽性例となった被験者は少なかった。これらの所見は外国人患者での臨床試験や市販 後報告でみられている予期される範囲に含まれるものであった。予期されるPD 作用としては、好 中球を除き、循環白血球及び白血球のサブタイプの増加と本薬との間に関連がみられたが、感染リ スクを増大させるデータは認められなかった。

全体として、日本人患者で認められた安全性プロファイルは、外国人患者の試験で確認された プロファイルと一致していた。

5.1.2 投与時反応及び過敏症反応

MS及びCD患者を対象とした臨床試験において、本剤の投与を受けた被験者の0.8%で重篤な 投与時反応が認められ、これらの大半が過敏症反応であり、初回から 3回までの投与で多くみら れた。その他、過敏症の危険因子としては、本剤による治療を中断した後に再開した被験者若し くは抗ナタリズマブ抗体を有する被験者であることがあげられた。

臨床開発全般を通じてほぼ全ての試験で抗ナタリズマブ抗体の産生量を測定した。これらの抗 体を一時的抗体又は持続的抗体とする。一時的抗体は有効性の低下とは関連しないが、投与時反 応とは関連する可能性がある。持続的抗体は有効性の低下及び投与時反応と関連がある。抗ナタ リズマブ抗体の持続的陽性例の割合は、MS患者を対照とした全ての第 III相試験をとおして 6%

であった。但し、持続的陽性例でも、かなりの例数の被験者で抗体価の経時的低下が認められ、

反復投与により抗ナタリズマブ抗体陰性になった者も認められた。全身性過敏症様の AE は、悪 寒、発熱、蕁麻疹、そう痒症、潮紅及び悪心を特徴とした。これらの事象は主に投与2 回目に認 められ、通常の処置により容易に治療することができた。

通常は抗ナタリズマブ抗体の検査が日常的に行われていないため、抗ナタリズマブ抗体産生に 関する市販後のデータは少ないが、全般的にみて、過敏症反応と投与時反応に関する市販後のデ ータはこれらの所見と一致している。

上述した3. 項で言及したように、本薬は一部の白血球上のα4インテグリン受容体と結合する。

その結果として、本薬により好中球以外の循環白血球が増加する。これらの作用は薬物濃度と相 関し、可逆的であり、感染のリスクの増大とは関連がなかった。また、本剤の投与に伴い、ヘモ グロビン値の軽度な低下が認められたが、この変化は一過性で、臨床的貧血とは関連がなかった。

5.1.3 ヘルペス感染及びその他の日和見感染

臨床試験で認められた重篤な感染症の発現率は、本剤群で 2.4%、プラセボ群で 2.3%あった。

本開発プログラムの間に、PML(PMLに関しては後に考察する)を除く日和見感染がまれに報告 された。臨床開発プログラム内の被験者における単純ヘルペス及び帯状疱疹を含むヘルペス感染

の発現率は、本剤群で7.1%、プラセボ群で6.0%であった。ヘルペス脳炎が市販後調査でまれに報 告されている。

5.1.4 肝臓に関する事象

臨床試験で認められた重篤な肝胆道系障害の発現率は、本剤群で 0.7%、プラセボ群で 0.8%で あった。市販後では肝障害の症例がまれに報告されたが、投与回数と肝障害との間に関連はみら れず、大部分は肝疾患の既往及び/又は、肝毒性に関連する他の併用薬の使用によって悪化した 可能性が考えられた。

5.1.5 PMLのリスクとその軽減

PMLはJCVによって生じるCNSの日和見感染である。PMLは外国の被験者を対象とした後期 臨床試験で初めて確認された。その後、国際的に実施されている添付文書の更新、販売業者教育 及びリスク管理計画により、データ収集が促進され、PMLのリスクについて一層の理解が得られ るようになった。2012年11 月1 日までの臨床試験と市販後報告から、全世界で本剤に曝露され

た115736例の患者のうち、PMLと確認された302例の症例報告が得られている。これらのうち、

99例は臨床試験又は観察研究から得られており、203例は自発報告によるものであった。2012年 11月1日現在、本剤関連のPML患者の生存率は78%であり、PMLと確認された患者302例中66 例(22%)が死亡した。これらの転帰は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)などの他の患者集団で認 められるPML患者における高い死亡率と著しく異なっている(Crowder et al., 2005、Engsig et al., 2009、Koralnik 2004、Shitrit et al., 2005)。PMLの診断及び治療後の機能障害の状態は診断の6ヵ 月後におおむね安定化し、Karnofsky Performance Scaleスコアの平均値と中央値は中等度の障害と 一致する。

本剤の投与を受けた患者におけるPMLの発症は、「抗JCV抗体陽性」、「本剤の投与の期間(特 に、2 年を超える治療)」、及び「免疫抑制療法の治療歴」の 3 つの既知の危険因子と関連してい る。これら3つの危険因子を、PMLの発症リスクが高い患者集団と低い患者集団の特定が可能な リスク層別化アルゴリズムに加えた(表 5-1)。

表 5-1 危険因子により層別化したPMLの発現率の推定値 Anti-JCV

Antibody Negativea

Natalizumab Exposure

Anti-JCV Antibody Positive

No Prior Immunosuppressant Use Prior Immunosuppressant Use 0.11/1000

(0.00-0.62)

1-24 months 0.62/1000 (0.42-0.88) 1.83/1000 (1.12-2.82) 25-48 months 5.17/1000 (4.28-6.19) 10.64/1000 (8.05-13.8) a Statistical modeling assumes 1 case of anti-JCV antibody negative PML in patients exposed to ≥18 months of therapy.

Note: Postmarketing PML data as of 05 September 2012 and natalizumab exposure as of 31 August 2012. Data beyond 4 years of treatment are limited.

The anti-JCV antibody status was determined using an anti-JCV antibody test (ELISA) configured with screening and inhibition steps to confirm detection of JCV-specific antibodies with a false negative rate of 3% and which has been analytically and clinically validated for patients with MS and CD.

Source: M5.3.6-13 PSUR13 Table 34

PML のリスクを推定するリスク層別化アルゴリズムは臨床医と患者が利用する重要なツール となっており、彼らは本剤療法の開始又は継続に関して、特定の個人に合わせたリスク-ベネフ

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