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本章以降は,学生参画型教授学習支援領域の中でチューター分野に位置づく 学習支援実践である東北大学高度教養教育学生支援機構学習支援センター

(CLS)の取組みに焦点を当てる。「学生の力」を活かした取組みにおいて は,支援対象である学生だけでなく,支援主体である学生にも成長が促される ことが指摘されている(鳥越ら 2013; 泉谷ら 2013など)。そこで学生参画 型学習支援プログラムの「質保証」体制のあり方を検討する上で,まず本章で は,学習支援に参画するチューター学生(SLA)に注目し,その特性について 明らかにすることを目的とする。第 1節では,CLSとSLAの取組みを理解す るための概要を示す。なお,ここで示すCLS や SLAの実践に関するデータは CLS年次活動報告書(東北大学高度教養教育・学生支援機構 2015,2016,

2017)にもとづいている。第 2節では,SLA が学習支援活動に従事するモチ

ベーションと,活動に参画したことによる自己成長認識について分析し,それ らの傾向を明らかにする。第3節では,活動期間の長い SLAに特化して,活 動を経ながら学習支援者としてどのような成長プロセスを描くのかについて,

段階別の特徴分析とともに検証する。

第1節 CLSとSLAの実践概要

(1)CLSの概要

CLSは,2014年度の高度教養教育・学生支援機構 1)の発足に伴い設立され た業務センターの一つである。CLSによる学習支援の起源は,2010年度の

「東北大学アクションプラン」において,教養教育充実化の一方策として検討 された「スチューデント・ラーニング・アドバイザー(SLA)制度」2)までさ かのぼる。2010年度から 2012年度の間「全学教育学習支援プロジェクト

―SLA(Student Learning Adviser)制度の実践―」を企画・運営する「SLA サポート室」(総長室付け)が土台となり,その後 2013年度に機構の前身で ある高等教育開発推進センター内に位置づき現在に至っている。CLS の学習 支援が「学生支援」の文脈ではなく「教養教育改善」の文脈から始まったこと

表 4-1 CLSのミッションと事業

①学生の主体的・自律的な学習を,実践的に促進・支援し,研究大学で学ぶ学生とし ての資質を育成する。

②初年次教育や学習支援に関する国内外の動向を調査研究し,東北大学の学習支援 の質的向上に寄与する。

③教職員・学生の間に「学び合い」文化を醸成し,学習共同体(ラーニング・コミュ ニティ)の形成に寄与する。

①全学教育段階のリメディアル・レベルアップ学習支援の開発・実践を行う。

②学習支援の組織開発および支援者育成システムの開発・実践を行う。

③情報還元による正課カリキュラムの改善・充実に貢献する。

④全学教育範囲における学習支援ネットワーク(部局間連携体制)を構築する。

も,現在の体制を構築する上で大きく影響している。実際に,CLSの教員は 機構の中の教員組織3)において高等教育開発部門高等教育開発室に所属してい る。なお,CLSが展開する SLAによる学習支援プロジェクト 4)は,東北大学 の全学教育の質保証のためのツール・システムとして位置づけられている(杉 本 2016)。

CLSではミッションとそれに応じた事業を表 4-1 の通り示している。学習 支援の主対象は学部1・2年生であり,1・2年次学生にとって“学び”という観 点で最も身近な組織であることが CLSの役割である。また,学習支援におけ る最大の特徴は,学習支援主体が「SLA(Student Learning Adviser)」と呼 ばれる学生チューターであることで,「学生による学習支援」のあり方自体を 模索し,開発を進めていくこともCLSの重要な使命の一つである。そのポリ シーが反映されている専任スタッフ(教員)による一文を記載しておく。この 発想は,学生参画型学習支援プログラムの「質保証」体制を検討する上で,組 織のスタンスを示す重要な認識といえる。

…固定化しすぎない活動の在り方が,SLAの活動においては本質的に 必要であるとSLAサポート室では考えている(中略)ある一人のSLA との出会いで生まれる活動がある。その活動は「その学生」いなくては 成り立たないものかもしれない。しかし,こうした個別性を許さなけれ ば,サイクルが早く,一週間当たりに関わる時間は数時間程度しかない

“学生”たちから発せられる,創造の種を拾い上げることはできない。一

方で,学生たちのアイディアを尊重するあまり主体性という名の“放任”

を容認する事もまた,質保証の観点からすると好ましくはない。個別的 な創造の萌芽をいかにキャッチし,組織全体の動きの中に位置づけ統括 するか。このことの実現によって,学生の学生による学生のための学習 支援たるSLAの活動を,SLAサポート室は「サポート」することがで きるのである(足立 2015: 147より,下線筆者)。

展開する事業として,高大接続の円滑化と大学教育における学びの実質化に 対応するため,大学初期段階での学びのスタート・アップ支援の充実方策を提 案・実施している。1・2年次の段階で学習姿勢も含めた基盤づくりを行うこ とが重要であり,その際,研究大学における支援としては「リメディアル」の 意味合いの支援と同時に,「レベルアップ」を指向した支援も開発・実施する 点に特徴がある。加えて,研究大学における「学生同士の学び合い」を核とし た学習支援を組織することがCLSのアイデンティティでもあり,組織開発の 一環として教育専門スタッフ(教職員)の充実を図るため,教育(実践)志向 型大学教員のあり方も模索・提言している。さらに,支援主体学生を「学習意 識の高い先輩学生(学士課程後期学生,大学院生)」として育成することも SLAを中心とした学習支援を展開する上でポイントとなっている。

以上の点を踏まえて,CLSでは具体的な学習支援活動として①個別対応型

図4-1 CLS の学習支援概念図

学習支援:学生からの個別の質問・ニーズに応じた相談対応型の支援,②企 画発信型学習支援:CLSやSLA がイベント等を企画し,新しい学びの機会を 提供する支援,③授業連携型学習支援:公募型で特定の授業とリンクし,授業 内外で受講生の学習を促進する支援,④自主ゼミ支援:学生同士で学び合う自 主ゼミ活動を行う学生に向けた教室・物品の貸出等の支援を展開している。①

②は課題解決型の学習(Project-Based Learning),①③は教科・科目型の学 習(Subject-Based Learning),④は学生同士の学び合いに対応した支援形態 としている(図4-1)。支援の中核は①のSLAによるピア・チュータリング であり,理系科目(物理・数学・化学),英会話,ライティングの支援を軸に 年間約3000人の学生を支援している。

CLSの教職員体制(2017年度段階)は,センター長 1名,副センター長 1 名,センター員(助教 1名,助手 1名,事務員 1名)で,日常的かつ直接的 なSLAの育成はセンター付の専任スタッフ(助教・助手)が担っている。な お,副センター長以下,教育学を専門としている。

最後に,物理的環境についても言及しておく。東北大学はキャンパスの拠点 が分散している大学である。CLS は 1・2年次学生が過ごすキャンパスに拠点

図4-2 SLA ラウンジの様子

CLSオフィス

相談受付 カウンター フリースペース

を置いて支援活動を行っているが,SLAとして活動している学生たちは,普 段は全員別のキャンパスを拠点としている。「SLA ラウンジ」と呼ばれるス ペースに CLSオフィスと SLAの活動場所(相談受付カウンター)及び待機場 所が設けられており,広さがおおよそ 150㎡ほどの約 50~60名を収容数可能 なコモンズに併設されている場所ある。コモンズは飲食・談話可のフリースペ ースで,SLAによる学習支援を利用しない学生も自由に使用できる(図 4-2)。

(2)SLAの概要

有給の学生チューターであるSLAは学部 3年生から博士課程後期 3年生ま で幅広い学生層で構成され,約50名規模の組織を形成している。学部 3年生 以上とされているが,理系科目担当のSLA を中心に,博士課程前期・後期の 学生も多いことは本実践の特徴である。SLAの平均活動年数は約2年で,大 多数は卒業時(本実践の場合は博士課程前期修了時が多い)まで活動を継続す る。加えて,博士課程後期に進学後も活動を継続するSLA は少なくなく,5 年以上の活動歴を有する SLAも一定数存在している。活動開始段階から2016 年度までのSLA 数の推移を示したのが表 4-2である。

毎学期 10名程度のSLAを新規で採用しているが,SLAの選抜は次の流れ で進められる。まず募集は,公募制と主にSLA による推薦・紹介制を併用し ている。ただし,公募と推薦・紹介の違いが直接的に採用結果に影響すること はなく,以降の流れも同様である。SLAの活動に興味を持った学生には,ま ず30分程度の「説明会」を実施し,事前に CLSの学習支援理念やSLAの活 動の様子を理解してもらうことで,希望と実態のミスマッチを防ぐ目的があ る。「説明会」後,学生に再度正式な応募の手続きしてもらった上で,個別に

表 4-2 SLA数の推移

2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 前期 21 38 37 36 46 62 50 後期 30 37 37 37 49 55 55

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