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小 山 優 子

(保育学科)

A Study on Improvement of the Practical Teaching Abilities in Junior College for Nursery and Kindergarten Course(Ⅱ)

Yuko K

OYAMA

キーワード:保育者養成カリキュラム Curriculum for Nursery and Kindergarten Course  保育の知識・技能 Knowledge and Skills for Care and Education

指導計画 teaching plan  日案 daily plan        

-116- 島根県立大学短期大学部松江キャンパス研究紀要第53号(2015年)

べき要点を明らかにする。

1)対象

 保育学科の1・2年次の学生を対象とし,2年間 における保育の専門科目のカリキュラムや授業内容 を分析した。本研究の対象としたのは,3年間分の 授業実践と指導計画などの学生への課題である。

2)分析方法

 研究方法は,学生に対する講義などの教育実践の 過程を振り返り,学生の保育に関する実践知の習得 状況とそれを踏まえた授業改善の過程をまとめたア クションリサーチの手法をとる。また,学生の作成 した指導計画などの保育に関する記述物(レポート 課題)などの質的データから,学習の理解深化プロ セスを追い,学生の記述から授業での保育学に関す る知識の理解,思考過程,技能の習得の過程を明ら かにするエスノグララフィーの手法を基盤とした質 的研究を行った。

3.保育者養成カリキュラムと学習内容

 短大2年間における学生の学習過程を踏まえ,次 の3つの時期に分類し(表1),その期間に学生が 習得する保育に関する知識・技能を分析することと した。

表1.短大2年間における3つの教育段階

時期 指導計画の習得過程

第1期 短大入学~1年終了 指導計画の意味や書き方を 理解する

第2期 2年開始~2年11月幼稚園実習終了 実習で実施する指導計画を 作成できる

第3期 2年11月~短大卒業 就職に向け,保育現場で作 成する指導計画を理解する

 本稿では,第2期の指導計画の作成方法の習得の 時期について,2年開始~2年11月の幼稚園実習終 了までの学習過程について論じることとする。この 時期は,保育士資格や幼稚園教諭二種免許状取得の ための必修科目である「保育者論」「教育実習指導」

「保育内容総論」「教育方法の研究」を短大で学ぶと 同時に,2年8月初旬から10日間の保育所実習と,

2年9月から2週間と2年10月下旬から2週間の計 4週間の幼稚園実習1)を通じて保育現場で実践的 に学ぶ時期である。これらの授業科目や実習中の学 びの過程において,保育の実践的な知識・技能を習 得するための授業内容や学生に課すレポート課題を 実習との関係から見直し,実習中の学びを高めるた めの保育理論のさらなる理解と指導計画の作成の習 得を目的とした教育内容を考案した。本稿では,以 下の第2期の2年次の教育内容について考察する

(表2)。

表2.第2期の教育カリキュラム

【第2期】2年開始(2年4月)~2年幼稚園実習終了(2年11月)

     の目標

時期 2年前期 2年後期(11月まで)

授業科目「保育者論」(必修) 「保育内容総論」(必修)

「教育実習指導」(幼教必

修) 「教育方法の研究」(幼教 必修)

教育目標

・生活と遊びを中心とした 保育を行う保育者の役割 と実際の子どもへの関わ り方などの保育の実践方 法を理解する。

・多数のクラスの子どもを 保育者1人で保育する際 の個別理解と集団理解の 方法が分かり,幼稚園実 習で試みる。

・指導計画の書き方につい て理解し,保育所実習や 幼稚園実習で,設定保育 の部分指導案や日案など の指導計画が実際に書け る。

・幼稚園実習において,設 定保育などの部分指導案 や遊びを中心とした日案 などの異なる種類,異な るタイプの様式で実際に 指導計画が書ける。

 本学保育学科2年生の保育士・幼教必修科目であ る「保育者論」「教育実習指導」「保育内容総論」「教 育方法の研究」の授業実践と学生に対する指導から,

授業科目を通じての学習内容を示し,その上で保育 者論のテスト,学生に課題として提出させた「集団 臨床としての保育の特質」のワークシートや「設定 保育の部分指導計画」「自己紹介の部分指導計画」「遊 びを中心とした日案」の課題レポートを使い,学生 の保育実践知に関する習得状況を分析した。

1)保育実践の知識の習得  (1)保育理論の理解の深化

 保育学科の2年次のカリキュラムでは,2年前期 に「保育者論」が保育士資格・幼稚園教諭免許の必 修科目として位置づけられている。この授業の中 で,学生が教職の意義や保育者としての専門性を理 解し,実際に保育所実習や幼稚園実習で保育者とし

小山優子:保育者の力量形成を促すカリキュラムの検討(Ⅱ) -117-

て子どもたちに関わる際の保育実践技術を学ぶこと を目標に授業を行った。

 達成目標は,保育者の役割や資質,保育の専門性 について理解する,保育者として子ども集団に関わ る際の基本理論を習得する,多様な保育ニーズなど の保育の実情を知る,の3点である。この中で,特 に以下の3つの内容を2年前期の時期に学生が理解 することが必要であると考えた。

①教職の意義,法令上の専門性の理解

 講義の中で,教職の意義や資格免許の観点からの 法令上の専門内容,保育所・幼稚園・認定こども園 などの制度の変革,幼児教育の目的と目標,学校教 育と幼児教育の違い,保育ニーズと保育の現代的問 題など,保育者として当然知っておくべき事項を,

1年次の「保育原理」の内容を踏まえてさらに高度 化して理解することを目的とした。

②保育者の子どもへの関わりの方法の理解

 1年次の「保育原理」で学んだ幼児教育の重要な 考え方や子どもへの関わりなどの保育理論を実際の 保育実践に結びつけるために,保育のビデオを計7 本見ながら,幼児教育の理解と子ども理解の方法,

保育の展開方法を解説した。特に岩波映像出版の新 規採用教員研修用DVD「幼児とのかかわりを考える シリーズ」を中心に視聴し,子どもを受容する関わ りや子ども理解の方法,子ども同士のケンカへの対 処,遊び場面における保育の展開方法などを説明し た。これは公立幼稚園に正規職員として採用された 新任教員用の研修DVDのため,新卒者がしてしまい がちな望ましくない子どもへの関わり方の実際につ いても解説し,自分が実習に出た際に意識するよう に話した。

③保育の集団臨床の理解

 2年前期「保育者論」の授業において,小川博久

『保育援助論』の第5章「集団臨床としての援助の 特色」 2)を題材に,学生がグループワークで内容を 読み込み,発表する授業を行った。短大2年次の学 びでは教員から教えられた知識を吸収するだけでは

なく,筆者の意図していることや趣旨を学生が文章 から自主的に読み取る学習も大切であると考えてゼ ミ形式の授業を取り入れた。この中で,学校教育と 幼児教育における教育目的や教育方法の違い,幼児 教育の教育方法上の特質,実際に保育を行う際に個 別理解と集団理解の関連性について学生が主体的に 学ぶことを目的に授業を行った。

 また,9月の2週間の幼稚園実習終了後の10月に は,子どもたちの遊びの様子や保育者の援助方法の 実際が経験上分かり始める時期であるため,2年後 期「教育方法の研究」の中で,小川博久『保育援助 論』の第6章「全体把握と個の援助の関連」 3)を読 み,10月最終週から始まる後半の幼稚園実習に向け て,全体把握と個別理解の両立を実行できるように 授業の中でグループワークを行い,保育実践の理解 をさらに深められるようにした。

(2)指導計画の作成に関する理解

 2年次の「教育実習指導」は,幼稚園実習前の事 前指導を行う授業であるが,この中で,図1.文科

図1.文部科学省.指導計画の作成の具体的な手順

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省の指導計画の作成の手順4)から指導計画に盛り 込むべき項目を確認し,主に指導計画の書き方を全 員が習得することを目指した。特に,保育の一部分 を担当する「部分指導案」について,保育所用と幼 稚園用の2通りの書き方で書けるように指導した。

 「教育実習指導」での保育の文書作成に関する目 標は,実習日誌などの文書の書き方を理解する,部 分指導案や日案などの書き方を理解し,指導計画を 立案する力を身につける,の2点である。その中で 以下の3つの内容を学生が理解することが必要であ ると考えた。

①幼児理解を柱とした実習日誌の書き方の理解  幼稚園実習では,毎日実習日誌を記述し提出する ことが必須となるが,その実習日誌の書き方につい ては,先輩の幼稚園実習時の日誌を解説しながら書 き方の要点を説明した。

 幼稚園実習の日誌は,本学では図2のように,左

側に1日の保育の流れを大まかに書き,右側に自由 記述で,子どもの活動や保育者の指導内容を具体的 に書く様式にしている。その理由は,幼稚園での実 習においては,幼児一人ひとりの興味・関心や子ど もの特性,発達過程などの個人差や,子ども同士の 関係性,遊びや生活の展開など,実態をありのまま に具体的に記述する能力が求められるからである。

幼児理解を20日間の実習で深めることができるよう に自由記述欄を大きくとり,保育現場の中の子ども や保育者のどの部分に着目して記録をとったかとい う実習生自身の着眼点も自覚できる様式にしてい る。保育を記録する力が,保育現場を理解する力や 指導計画を立案する力につながってくるので,子ど もや保育者,環境の構成など,様々な視点を具体的 に記述するよう学生に指導した。

②保育所実習における指導計画の書き方の理解 1年次の「保育課程論」の授業においては,保育課 図2.幼稚園実習における実習日誌の様式(A3)