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字種

ドキュメント内 csj-report.pdf (ページ 51-58)

2.4 発音形の表記法

2.4.1 字種

ただし,「ヤハリ」が「ヤッパリ」,「ヨホド」が「ヨッポド」となるといったように,周囲の音が規則的に転 訛しているものについては,タグ<Q>ではなく「ッ」で対処し,基本形も「やっぱり」のように「っ」を含めて 表記する。タグ<H>,タグ<Q>の詳細については,それぞれ2.5.17節, 2.5.18節を参照されたい。また子音の引 き延ばしについては,2.3.5節も参照されたい。

2.4.4 綴り字における母音連鎖

「エイ ゴ(英語)」のように,綴り字において母音が連鎖する場合,その母音連鎖部の発音が[e:go]のよう に長音化することもあれば,[eigo]のように母音が発音されることもある。これらの聞き分けは難しいこと も多いため,以下に示すような規則を設け,それに従って母音連鎖部の発音を記すこととした。

表2.8 母音連鎖部における発音の扱い

綴り字上での  タイプA:形態素内の場合の発音    タイプB:形態素を跨ぐ場合の発音

連鎖パターン 語例   長音   母音1   母音2   語例    長音   母音1   母音2   a a(同)  母さん カーサン *カアサン   −   油揚げ (アブラーゲ)⇒ アブラアゲ   −   i i(同)  小さい チーサイ *チイサイ   −   第一  (ダイーチ) ⇒ ダイイチ    −   u u(同)  空気  クーキ  *クウキ    −   安売り (ヤスーリ) ⇒ ヤスウリ    −   e e(同)  姉さん ネーサン *ネエサン  ネイサン  影絵  (カゲー)  ⇒ カゲエ  ×カゲイ    o o(同)  大きい オーキイ *オオキイ  オウキイ  お教え (オーシエ) ⇒ オオシエ  ×オウシエ   e i(異)  経路  ケーロ   ケイロ  *ケエロ   毛色   ×ケーロ  ケイロ  ×ケエロ   o u(異)  講師  コーシ   コウシ  *コオシ   子牛   ×コーシ  コウシ  ×コオシ  

【タイプA】 綴り字における母音連鎖が,後述する「形態素」の内部で生じるもの(表2.8「タイプA」欄)。

表2.8のタイプAの欄にあるように,「エエ/エイ」「オオ/オウ」の交代を含む全ての発音を認め,実際 の発音に従って書き分ける。ただし同じ母音が連続する発音(表の中で「*」が付されたもの)につい ては,一音一音区切るなど,明らかに分節音レベルでそれぞれの母音が発音されている場合に限定する。

長音表記をデフォルトとし,迷った場合は長音表記とする。

経路 : ケーロ・ケエロ・ケイロ … いずれも表記可だが,迷う場合は「ケーロ」とする

ただしouが活用語の語幹と語尾に跨がる場合は,母音表記をデフォルトとする。

思う : オモー・オモオ・オモウ  … いずれも表記可だが,迷う場合は「オモウ」とする

【タイプB】 綴り字における母音連鎖が,二つの形態素に跨がるもの(表2.8「タイプB」欄)。

二つの形態素に跨がる場合には,綴り字と同じ母音で発話されたもの(表中の「母音1」の系列)のみ,

その語の読みとして認める。そのため,実際の発音において,「エエ/エイ」「オオ/オウ」の交代(表 の中で「×」が付されたパターン)が生じた場合には,以下に示すように,タグ(W)を用い,実際の発 音に加え,丁寧に発音された場合に生じるであろう音(つまり「母音1」の系列)を記す。

毛色   &  (Wケエロ;ケイロ),  お産み  &  (Wオーミ;オウミ)

同母音の連鎖において,実際の発音が長音化していたとしても,長音は用いず一律母音で表記する。

第一に &  ダイイチニ     … 「ダイーチ」と長音化して聞こえても一律母音表記とする

なおここで言う「形態素」とは,原則として形態論情報で定める「最小単位」を指すが(3.1.3.1節参照),次 の2点において異なる:(1)最小単位では固有名詞等に関し,姓や名をそれぞれまとめて1最小単位と扱うが

(例:\\亀井\\),ここでは一般の普通名詞と同様,漢字1字ずつに分割する(例:\\亀\\井\\),(2) 助動詞の

「う」の前には形態素境界はないものと見なす(例えば「やろう」は「やろ」と「う」ではなく,「やろう」全体 で1形態素と見なす)。

2.4.5 ピッチの急激な変動に伴って知覚される母音

以下に示すように,母音を引き延ばして発音した際,ピッチの急激な変動や声の震えなどが生じたことによ り,引き延ばし部に母音が存在するように感じられることがある。

      

【例】   

    ___/   「カオガ」の「ガ」の途中でピッチが急上昇するもの     カオガー    「カオガ ア」のように「ア」の部分が強調されて聞こえる         

        

    ____/   「カオガー」の引き延ばし部でピッチが急上昇するもの     カオガーー   「カオガー ア」のように聞こえる

             ___     

       \/\  「カオガー」の引き延ばし部でピッチが上昇下降するもの     カオガーーー  「カオガー アー」のように聞こえる

     

この種の音声については,以下の通り対処する。

知覚された母音が語の一部を担う場合,それが形態素境界を跨ぐ(後続形態素の先頭に位置する)場合 は母音を,1形態素内である場合は長音記号を,それぞれ発音形に記す(2.4.4節も参照されたい)。

【形態素境界】  \\影\\絵\\ & \\カゲ\\エ\\   【形態素内】  \\小さい\\ & \\チ ー サイ\\

  \\お\\送り\\ & \\オ\\オ クリ\\   \\数\\学\\ & \\ス ー\\ガク\\

ただし感情表出系感動詞については,引き延ばし部において知覚される母音の有無によって,異なる感 情表出の機能を担う可能性があると考えられるため(「アー」と「アーア」など),1形態素内であって も,知覚された母音を表記する。

(Fあー あ)と & (Fアー ア)ト … × (Fあー)と & (Fアー)ト

上記以外は,以下の通り一律タグ<H>を用いて記す。

顔が & カオガ<H>

2.4.6 曖昧な発音の扱い

発音の怠けや転訛などに伴って曖昧な音声が生じた場合にどのように書き起こすかを,以下四つの場合に分 けて説明する。なお本節の説明では,タグ(?)と タグ(W)に触れる。タグの詳細については,それぞれ2.5.4 節,2.5.11節を参照されたい。

1. 発音は曖昧だが,語自体は特定できる場合 2. 発音が曖昧で,その語が存在するか否か迷う場合 3. 発音が曖昧で,語が特定できない場合

4. 複数の読みを持つ語や口語表現に関連する語で迷う場合

2.4.6.1 発音は曖昧だが語自体は特定できる場合

自発性の高い音声においては,以下に示すような発音の怠けや転訛現象などが数多く出現する(以下,まと めて「音声の転訛現象」と呼ぶ)。

母音・子音の脱落:

例:コチラガ ワ  → コチラガ ー([w]の脱落), ア リ ガトー → ア イ ガトー ([r]の脱落)

直音化(拗音の脱落):

例:シュジュ ツ →  シジ ツ,  ジュ ミョー →  ジ ミョー

複数音韻の怠け:

例:ト リアエ ズ → ト リャー ズ/ト ラ エズ

長母音の短母音化:

例:ソー ユー ヒト → ソー ユ ヒト,  ヨー スルニ →  ヨ スルニ

このような事例については以下のように対処する。

音声の転訛現象が確実に生じていると判断できる場合:タグ(W)を用いて,実際に発音された音と丁寧 に発音された場合に生じる(と予想される)音を併記する。

とりあえず  &  (Wトリャーズ;トリアエズ),   手術は  &  (Wシジツ;シュジュツ)ワ

その判断に曖昧性が残る場合:発音形にタグ(?)を付与するにとどめる。

とりあえず  &  (?トリアエ)ズ,        手術は  &  (?シュジュツ)ワ

「例えば」を例に対処の具体例を示す。

明瞭に「タトエバ」と聞こえる場合 例えば& タトエバ タグなし 「タトエバ」かそれ以外の音かで迷う場合 例えば& (?タトエバ) タグ(?)付与 「タトエバ」以外の音に聞こえる場合

 –音が同定可能 例えば& (Wツトエバ;タトエバ) タグ(W)付与  –候補はあるが迷う 例えば& (W (?ツトエバ);タトエバ) (W)左項に(?)

 –複数の候補で迷う 例えば& (W (?ツドエ,ツデ);タトエバ) (W)左項に(?)の複数候補  –一切聞き取れない(候補が挙げられない) 例えば& (W (?);タトエバ) (W)左項に値なしの(?)

2.4.6.2 発音が曖昧でその語が存在するか否か迷う場合

自発性の高い音声では,「が」「は」「へ」などの短い助詞は弱化して発音されることが多い。そのため,これ らの助詞がそもそも存在するか否かで迷うことがしばしばある。また「顔を合わせる(カ オオ アワセル)」や

「家へ帰る(イ エエ カエル)」のように,オ段,エ段で終わる語に同じ母音の助詞「を」「へ」が後続する場合,

ピッチの変化を伴わずに「カ オー」「イ エー」のように平坦に引き延ばされて発音されることも少なくないが,

この時,引き延ばし部が短くなり,「カ オ」「イ エ」のように助詞が脱落しているように聞こえることもある。

このように,発音された音が曖昧なために,その語がそもそも存在するか否かで迷う場合については,以下 に示す文脈と音声の観点から対処法を定める。

[文脈上の観点]

  ア) その語が存在した方が文脈上,より自然である。

  イ) その語が存在してもしなくても文脈上どちらも自然である。

  ウ) その語が存在しない方が文脈上,より自然である。

[音声上の観点]

  a) その語が確実に聞こえる。

  b) その語が存在するように聞こえるが不確かである。

  c) その語が存在しないように聞こえるが不確かである。

  d) その語が確実に聞こえない。

具体的には以下の通りである。ここでは「私は」を例に説明する(問題となっている語を助詞「は」と仮定)。

音    声

a)確実に存在 b)存在する可能性高い c)存在しない可能性高い d)絶対存在しない ア)存在した方が 私は& ワタシワ 私は& ワタシ(?ワ)   私& ワタシ

文   より自然 ※タグなし   ※発音形に(?) ※「は」表記せず

イ)存在・非存在  私は& ワタシワ 私は& ワタシ(?ワ)   私& ワタシ   どちらも自然   ※タグなし ※ 発音形に(?) ※「は」表記せず 脈 ウ)存在しない方  私は& ワタシワ 私& ワタシ

  がより自然   ※タグなし ※「は」表記せず

なお,このケースに相当するものの多くは,上で例示したように短い助詞であるが,必ずしも助詞に限られ る訳ではない。また,上記対処法は,あくまで当該語の存在自体に曖昧性が残る場合を対象としている。発音 が曖昧で語の選択に曖昧性が残る場合(助詞の「は」か「が」かの判断が付かない,など)については,次節 を参照されたい。

2.4.6.3 発音が曖昧で語が特定できない場合

発音が曖昧であるために,語が特定できないことがしばしばある。

ないという 程 / こと で   … 「程(ほど)」と「こと」で迷う それ くらい / ぐらい にしておく  … 「くらい」と「ぐらい」で迷う で /(Fえ)次に   … 「で」とフィラーの「え」で迷う

ドキュメント内 csj-report.pdf (ページ 51-58)

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