(1) 失業保険制度の収支
2001年には2億4700万ユーロの黒字であった失業保険制度の収支は、2002年には36億 9000万ユーロの赤字に転じると見込まれている(図12、表7)。
図
12 失業保険制度の収支の推移(単位 10億ユーロ)
1.5 1.331
0.247
‑3.7
‑5.11
‑4.03
‑3.14
‑0.328 ‑0.318 ‑0.417
‑6
‑5
‑4
‑3
‑2
‑1 0 1 2
1996年 1997年 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年
(注)2002-2005年の数値は、2002年12月20日の合意に先だって発表された予測値。
(資料出所)UNEDIC
表7 失業保険制度の収支の推移
(単位 100万ユーロ)
1995年 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002*
収入 20,936 20,462 19,629 20,549 21,332 22,776 22,723 22,540 支出 17,521 18,892 19,957 20,867 21,748 21,444 22,476 26,229 収支 3,415 1,570 -328 -318 -416 1,332 247 -3,689
(*)予測値
(資料出所)UNEDIC
2001年9-12月期にフランスの経済成長は急激に鈍化し、2002年に入ってそれが雇用市場 に反映され、失業保険制度の収支悪化を招いている。
失業保険への新規加入者数(=雇用創出数にほぼ相当)の推移を見ると(図 13)、年間平
均は2001年の45万人から2002年15万6,000人(見込)へと大きく後退し、景気の減速に
ともなって労働市場が停滞しつつあることを示している。
図
13失業保険新規加入者数の推移
一方、失業保険給付受給者は、2001年6月に158万人まで減少したが、その後再び増加に
転じて、2002年12月には208万5,000人となった。それをなぞるように、同じ時期に失業
率も上昇している(2002年12月末時点での失業率は9.1%)。
景気の減速は、失業者の再就職も困難にしている。1997年以来、若年者雇用創出の強化な ど、雇用政策は労働市場の構造的な改革を目指してきたが、2001年秋以降は、まず「失業を 減らす」ことに再び重心が移っている。
以下、表 8、表 9 にて失業保険制度の支出と収入の詳細を示す。支出のうち給付支出が最 近急激に伸びているが、これは補償率、受給者数がともに上昇していることによる。とりわ け、離職前の給与が高かったか、労働期間が長かった受給者が増えているため、一人当たり の失業手当給付額が高くなっている。さらに2001年の新協定によって、漸減手当のAUDに 代わる定額手当のAREの導入も、給付総額を押し上げる一因となったと見られる。
表8 失業保険支出の推移
(単位:100万ユーロ)
支出 1995年 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002*
給付支出 ARE-AUD-ACA AFR-AREF 死亡 ACR22 社会基金 地理的移動補助 支払い不履行
PARE運営・研修・評価費 ARPE基金
雇用主向け漸減補助金 資格取得契約
ASC制度への出資 運営費、固定資産 年金金庫
うちARPE 手数料
借入金利子、銀行経費 AS-FNE資金
14,316 13,505 952
8 2 169 0 -320 0 1 0 0 463 1,017 1,144 0 44 185 351
14,766 13,903 967
8 2 196 0 -309 0 478 0 0 480 1,150 1,278 36 34 183 448
15,354 14,518 969
8 2 179 0 -322 0 874 0 0 505 1,319 1,271 99 23 182 208
15,683 15,025
859 9 1 117 0 -327 0 1,168
0 0 406 1,300 1,656 140
9 182 185
15,964 15,385 789
8 1 124 0 -343 0 1,348
0 0 351 1,280 1,997 175
8 181 338
15,641 15,101 757
9 0 119 0 -345 0 1,558
0 0 303 1,359 2,015 214
15 101 391
16,723 16,142 629
7 0 89 0 -360 215 1,552
0 0 302 1,453 1,958 215
3 101 385
21,027 20,048 836 7 0 0 14 -390 525 1,010 22 11 55 1,443 2,200 146 -3 101 325 失業保険支出計 17,521 18,892 19,957 20,867 21,748 21,444 22,476 26,229
(*)予測値。
(資料出所)STATIS
22 外国人労働者を対象に、本国での社会復帰を支援するための手当
表9 失業保険収入の推移
(単位:100万ユーロ)
収入 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002*
保険料収入 保険料 補足保険料23
その他 年金徴収分 各種協定
AFR国庫負担分 登録を除く運営費 登録費用
一律拠出金 ARPE拠出金 解雇負担金 国の助成金 資産運用
18,065 17,677 219 169 199 145 747 308 0 1 0 221 1,158
93
18,732 18,329 225 178 201 95 803 313 0 0 0 228 0 90
18,101 17,753 213 135 213 159 363 319 38 0 0 260 0 175
18,743 18,413 177 152 222 254 479 232 36 0 0 267 0 316
19,503 19,159 213 130 227 161 365 269 31 0 83 379 0 314
20,746 20,376 234 136 228 179 348 239 31 0 202 550 0 252
20,979 20,702 159 118 249 196 294 199 0 0 118 471 0 218
20,979 20,845 6 127 324 204 35 177 0 0 10 587 0 224 収入計 20,936 20,462 19,629 20,549 21,332 22,776 22,723 22,540
(*)予測値。
(資料出所)STATIS
(2) 財政問題への対処:2002年12月20日の合意
2002年以降に予測される収支の赤字をどのように手当てするか。失業保険制度は景気と労 働市場の変化に迅速に対応することを目下求められている。
なお、失業保険協定第6 条は、保険料率や給付額の調整など、経済情勢に応じて制度の収 支安定のためにあらゆる措置をとることを認めている。
財源の確保に関しては、金融機関から今後3年間で29億ユーロの借入れを実施することが 決められた。中長期的には、金融機関からの借入れとともに、国の保証をともなう債券発行 による資金調達計画が立てられることになっている。
失業保険制度そのものの見直しについては、財政建て直しの目的から、2002 年 12 月 20 日に労使間でいくつかの合意が実現した。この合意内容は、2003年1月1日から2005年12 月 31日まで有効となるもので、現行の失業保険協定(2001年1 月1 日から2003年 12月 31日まで有効)に修正を加えることになった。
で、失業者側により犠牲を強いるものとなった。また、雇用主と被用者の双方に対して保険 料率が引き上げられる。一方で、失業手当の漸減性復活は盛り込まれなかった。以下に、こ れらの制度変更について詳述する。
◆保険料引上げ
2003年1月1日から保険料率が5.80%から6.40%に引き上げられた(雇用主4%、被
用者2.4%)。これは1993年当時(6.6%)を超える高い水準である。また、失業保険
手当最低給付額は変わらないが、UNEDICによる求職者の補足年金保険料代納の水準を 引き下げるため、離職前の給与に対する失業保険手当の置換率は57.4%から1.8%程度 下がると見られる。
◆給付期間
2003年1月1日以降の新規失業者については、新しく下表通りの失業保険手当給付期 間が適用されることになった24。ただし、2002年12月31日時点ですでに解雇手続き が開始されていた失業者の給付期間は旧制度により、2003年1月1日時点ですでに手 当受給中の求職者については、2004年1月1日まで従来通りの給付期間が適用される。
また、これらの者のうち、雇用契約終了時に50歳以上であった求職者で、失業手当給 付期間が45ヶ月以上の場合には、この新措置は適用されない。
2003年1月1日以降の失業保険手当給付期間
Filière 労働期間 年齢 失業保険手当給付期間
1 2 3 4
離職前22ヶ月中に6ヶ月 離職前24ヶ月中に14ヶ月 離職前36ヶ月中に27ヶ月 離職前36ヶ月中に27ヶ月
全員 全員 50歳以上 57歳以上
7ヶ月 23ヶ月 36ヶ月 42ヶ月
これらの制度改革による収支改善は、次のように予測されている。保険料率の引上げなど によって2005年までに67億5100万ユーロの収入増が見込まれ、給付の引き締めによる支 出削減分65億7800万ユーロと合わせて、収支は約130億ユーロ改善される。この結果、失 業保険制度の収支は、2003年にはなお47億ユーロの赤字が見込まれるものの、2004年から は黒字に転じ、2005年末までの累積赤字は14 億ユーロに抑えられると予測されている(制 度変更がなかった場合の累積赤字見込は147億ユーロ)。
24 当合意への署名を拒否した労組FOは、この変更によって失業保険手当給付の対象から外れる失業者の数を 25-30万人と推定している。
表
10 2002年
12月
20日の労使合意による失業保険制度収支の改善予測
(単位:100万ユーロ)
2002年 2003 2004 2005
合意前
単年度収支 - -5,113 -4,038 -3,143 累積収支 -2,400 -7,500 -11,600 -14,700 合意による効果
保険料収入増加分 - +1,994 +2,335 +2,422 給付削減分 - +855 +2,829 +2,894 合意後
単年度収支 - -2,264 +1,126 +2,173 累積収支 -2,400 -4,700 -3,500 -1,400
(資料出所)ASSEDIC
失業保険財政の健全化は、今後も引き続いて労使間の検討課題となる。2006年の累積収支 の黒字化に向けて、労使間では 2003、2004 年に話し合いを続け、また財政安定化のための 特別基金も創設されることになっている。
(3) 失業保険制度の将来展望:2004年新協定へ向けて
現行の失業保険協定の有効期間は 2003 年末で、近く新協定が準備されることになるが、
2002年12月20日合意の適用期間が2005年12月31日まであるため、2004年新協定は基 本的にはこの合意を踏襲することになるだろう。現在、財政の改善が失業保険制度にとって 急迫の課題となっている。
PAREの運用に関しては、労使間で2003年1-3月期にも総括報告書が作成される予定であ る。職業訓練については、ANPEと管理職雇用協会(Association pour l’emploi des cadres:
APEC)との間の連携強化や、公的機関や地方自治体との協力、若年者を対象とする訓練制度 の改革などが検討されている。また、新規企業設立支援策の強化や、50歳以上の求職者を新 規採用する雇用主への漸減補助金なども課題として浮上している。