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大腸菌におけるグリオキサールの変異 誘発能

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第 4 章大腸菌におけるグリオキサールの変異

Regulatory 

gene  Control site 

r-A一一~I A一一~(

Structural genes  人.

l I .  / o l  

Control of  Promoter 

inducibility 

Operator 

Z  I  Y  I  A 

l a c f   ( w i l d = i y p e )  

l a c r   (mutan

t) 

l a c ぴ (mutan

t)

Transacetyl

Permease 

Galactosidase

図4‑1 lacオペロンの構造

f  1  p  101  z  1  y  1  A 

L ノれ…叫

よ斗/

↓ d 

Z  I  Y  I  A 

n  ↓  s

Galactosidase

Z  l Y  I  A 

↓ 

鈴 か

Galacto ase 図42 lacI遺伝子又は lacO遺伝子の変異による lacオペロンの税制御

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結合するため戸‑ガラクトシダーゼは誘導されない。しかし、 lacI遺伝子に変異 が生じた変異体では、リフレッサーがオペレーターに結合することができない ためβガラクトシダーゼが誘導されるD また、 lacO遺伝子に変異が生じた場合 には、 lacオペロンの負の謁節機構が脱制御状態になり、 lacI変異体に比べると 発現レベルは低いが、常に βガラクトシダーゼが合成されるD よって、 lacオペ ロンの誘導物質が存在しない条件では、 lacI遺伝子またはlacO遺伝子に変異が 生じた変異体のみがβガラクトシダーゼ合成能を獲得するO

βガラクトシダーゼ合成能の有無に基づき lacI遺伝子上に変異が生じた変異 体を選別する際、指示薬としてフェニル‑βD・ガラクトピラノシド (P‑gal)及び 5・ブロモ‑4‑クロロ4・インドリル

‑ s

D‑ガラクトピラノシド (X‑gal)を用いる 74,760

いずれも βガラクトシダーゼの基震であるが、 lacオペロンの誘導物質ではないo

P‑galが加水分解されるとガラクトースとフェノールに分解されるため、ガラク トース代謝能を有する大腸菌はP‑galを炭素原として利用できる。すなわち、lacI 遺伝子またはlacO遺伝子に変異が生じ、 βガラクトシダーゼ合成能を獲得した 大腸菌は、炭素源として P‑galのみを含む培地においても増殖可能となる。一方、

X‑galは加水分解され濃青色の 5‑ブロモ

ι .

クロロ欄インディゴを放出するo この X‑galを含む寒天培地上のコロニーの色により、菌体内の戸・ガラクトシダーゼの 発現レベルを判定することができる。 X‑galが最少グルコース培地中に含まれる 場合に、戸‑ガラクトシダーゼ活性の検出感度が最も高いとされている。 X‑galを 含む最少グ

l

レコース寒天培地上で、lacI遺伝子に変異が生じた変異体は濃青色の

コロニーを形成し、 lacO遺伝子に変異が生じた変異体は淡青色のコロニーを形 成するO これらの性質により、 lacI遺伝子に変異が生じた変異体の選別が可能と なる。

2節 大腸菌のグリオキサール処理

まず、本実験で用いる大腸菌W3110野生株の lacオペロンが正常に機能して いること、すなわち lacI遺伝子及び、lacO遺伝子に変異が生じていないことを確 認した。 Xgalを含む最少グ、jレコース寒天培地上で大腸菌 W3110株を画線培養

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した。この際、青色と白色のコロニーが生じるD 自色のコロニーは、 lacI遺伝子 及びlacO遺伝子に突然変異が生じておらず、[3‑ガラクトシダーゼ活性が抑制さ れていることを示す。

X‑gal最少グルコース寒天培地上で、他のコロニーと良く分離した白色のコロ ニーを選択し、 LB培地に植え、 370

C

で4時間振とう培養した。この培養液 1ml  に対し、使用直前に調製した 5 ulのグリオキサール溶液を添加した。グリオキ サール処理に用いたグリオキサールの量は、大腸菌の培養液 1ml当り 0、50、 200、300、400μgとした。 370Cで1時間接とう培養した後、培養液の一部を 採り、 P‑gal寒天培地上で培養した。また、同培養液を適当に希釈した後、 LB 寒天培地上で培養したq

LB寒天培地は菌体の生育に必要な栄養条件を満たしていることから、この培 地上のコロニーの数から大腸菌の生存率を算出した。一方、 P‑gal寒天培地は炭 素源として P‑galのみを含む寒天培地であり、就に述べたように lacI遺伝子ま たはlacO遺伝子に変異が生じた変異体のみが、この培地上でコロニーを形成し 得る。よって、 LB寒天培地及びP‑gal寒天培地上のコロニーの数から、生菌数 当りの変異体数として、グリオキサールによる大腸菌の変異率 (MF)を算出し た。

大腸菌のグリオキサール処理による、大腸菌の生存率及び変異率の変化を図 4‑3に示した。グリオキサール処理濃度の上昇に伴い生存率が低下したことから、

大腸菌においてグリオキサールが毒性を有することは明らかである。序論でも 述べたが、グリオキサールと蛋白質との反応では、蛋白質中のア

l

レギニン残基

に対する結合 39や、蛋白質問のクロスリンクを引き起こすことが知られている

2738390 また、 DNAとの反応では、 DNA中のG残基に対する結合4142や、培養 細胞及びm

voにおける DNA鎖の切断が報告されている 40。従って、この毒 性の発現には、グリオキサールがDNAに作用することにより生じた DNA鎖の 切断(第6章で詳しく述べる)あるいはDNA付加体形成による DNA複製の泡 害、あるいはグリオキサールが蛋白質 (DNAポリメラーゼを含む)に作用する

ことによる蛋白質の失活等が関与していると考えられるo 一方、グリオキサー ル処理濃度の上昇に伴い変異率が上昇した。すなわち、大腸菌においてグリオ

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40 

30 

20 

10 

(

EO F× )比 三 100 

75 

50 

25 

( ポ ﹀ 一

ω﹀ 一

と コ

ω

500  400 

g l y o x a l  ( μ g )  

200  300  500  100 

400  300 

g l y o x a l  ( μ g )  

100  200 

大腸菌のグリオキサール処理における生存率及び変異率。 (A)グリオ キサール処理 (37"C、1待問)による大腸菌の生存率。 (B)lacI遺伝 子及び lacO遺伝子における変異率。各々のグリオキサール濃度におけ るグリオキサール処理実験を最低3回行い、平均値を算出し図に示した。

X軸は大腸菌の培養液 1mlに添加したグリオキサールの量を表わして し=るo

43

キサールが変異誘発能を有することが示されたD 尚、グリオキサールによって 誘発された変異の解析は、大腸菌の培養液 1ml当り 300ほのグリオキサール を添加して処理を行った実験で得られた変異体について行ったO グリオキサー ルによって誘発された変異を効率よく検出するためには、高い変異率と同時に ある程度の生存率を示す処理条件が望ましいと考えられるO この 300μgの条件 下では、生存率1.5%、変異率1.0x 104であり、変異率は未処理群(グリオキ サール 0μg)の約 75倍であるo

次に、このP‑gal寒天培地上のコロニーから、 lacI遺伝子に変異が生じた変異 体のみを選別するために以下の操作を行った。100μのP‑gal培地に P‑gal寒天 培地上の単一のコロニーを選択して植え、 37"Cで一晩培養した。 この終夜培養 液を Xgal最少グルコース寒天培地及びP‑gal最少グルコース寒天培地に植え、

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さらに培養した後、 X‑gal最少グルコース寒天培地上で濃青色を示したコロニー をlacI変異体として選別した。そのものに対応する P‑gal最少クツレコース寒天 培地上の大腸菌を次節での実験に用いた。

3節 変 異 体 の lacI遺伝子の配列解析

DNAの配列解析法として、サンガーらの開発したジデオキシ法に基づく、酎 熱性細菌由来の TaqDNAポリメラーゼを用いたサイクルシークエンス法が広 く用いられている。本法の特徴は、環状及び鎖状 (1本鎖及び2本鎖)いずれの DNAも鋳型として用いることができ、 DNAの形状に無関係に同一反応条件が 使用できる点にある。また、サイクルシークエンス法の導入により、用いる鋳 型 DNAが少量c1μgまたはそれ以下)でよいことも長所の一つである。蛍光 式自動シークエンサーを使用することにより、簡便な操作で迅速かつ正確な配 列解析が可能である。現在、シークエンス反応産物を蛍光標識する方法として、

蛍光標識したプライマーを用いるダイプライマー (DyePrim er)法と基質であ るジヂオキシヌクレオチド (ddNTP)を蛍光標識したダイターミネーター (Dye Terminator)法があるo この他、基質ヌクレオチド (dNTP)が蛍光標識され

た方法もあるが、現在のところ汎用性はない。

ダイプライマ一法は、用いる鋳型DNA中にダイプライマーの配列がなくては ならないという制限があるが、基質が通常のヌクレオチドであり、その取り込 みが速やかであることから、明瞭な解析結果が得られるD 一方、ダイターミネ ータ一法は、任意のフライマーを用いて解析できるが、基質が蛍光標識された ヌクレオチドであるため、ダイプライマ一法に比べ解析能力が劣る。今回、著 者が標的遺伝子とした lacI遺伝子は全長 1200塩基対と長いため、ダイプライ

マー法を用いて配列解析を行った。

実際に lacI遺伝子の配列を解析するに当り、まず、 lacI遺伝子に変異が生じ ていることが確認された変異体の大腸菌を P‑gal最少グルコース寒天培地から 単離培養し、大腸菌の染色体 DNAを抽出した。次に、染色体上の lacI遺伝子 全領域の解析を行うために、図 4・4に示した手順に従って配列解析を試みた 750

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まず、第 l段階自のPCRにより lacO領域を含む lacI遺伝子断片を得たo次に、

ダイプライマ一法によるシークエンス反応を行うために、 5三末端にダイプライ マーの配列を有するプライマーを用いて第 2段階自の PCRを行った。 8P6、・ 21M13、T3は、これらに対応する汎用プライマーの名称に相当する。このPCR 産物を鋳合型DNAとし、パーキンエルマ一社のAppliedBiosystems Dye Primer  Cycle 8equencing Kitを用いてシークエンス反応を行った。配列解析はApplied Biosystems model 3738 DNA 8equencerを用いて行った。

Primer 

1st PCR 

: : p  

Primer 1 

~剛悶

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