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5.6 大きな斜航角を伴う船の操縦特性に及ぼす船型の影響
前節までにおいては、大きな斜航角を伴う船の操縦運動を 対象とした主船体 流体力の数学モデルおよび数学モデルに含まれる諸係数値の推定法について述 べると共にその検証を行った。 次にこれらの成果が実際の問題にどのように応 用されるのか、応用例を示しながら考える。
例えば港湾域における操縦運動に関する問題を考えると、低速航行中の船の 安全性の観点から、個々の船に要求される舵面積やスラスタ容量の決定に関す る問題は、造船設計で取り扱われる代表的な検討課題である82)。 また特定の港 湾に過去に例のない大型船を入港させる場合の操船方法の検討、入港基準の策 定、大型船の入港が可能となるような港湾レイアウトの設計等は、操船シナリ
オの作成に代表される操船設計や港湾設計に深く関わる83)。
このような問題を検討する手段として、操縦運動あるいは操船シミュレーショ ンが最も効果的な手段のーっとなることは異論の余地のないことと思われる。
従って本研究の成果は、このような操縦運動のシミュレーション計算の基本とな る数学モデルという形で反映され、港湾域の操縦運動に関する諸検討等に有効 に活用されるべきものである。
事実、 新しい船を建造する場合、仕様書上で模型試験やシミュレーション計 算によって設計の初期段階で操縦性能に関する検討を十分行うことを明記する ケースも増えてきている。 またIMO
(
国際海事機関)では、船舶の航行安全を確 保する上での施策のーっとして、操船者に自船の操縦性能を十分に熟知させう るために、個々の船舶の主要な操縦性能を記載したManoeuvring bookletを備え ることを勧告している4)。 従って造船者にとって、要求された操縦性能について の仕様を満足するよう船を設計、建造することはもちろんのこと、設計あるい は建造された個々の船の操縦性能に関する正確な情報を操船者へ伝えることも 重要であると考える。しかしこれらの検討段階では時間的な制約もあり、対象船 舶に関する拘束模型試験を実施できないのがむしろ一般的であり、その場合に は数学モデルで使用する流体力微係数を何らかの方法で推定する必要がある。本節では、 本計算法が特に、数学モデルに含まれる諸係数の値を模型試験を
行う ことなく船型要素を考慮して推定できるという特長を持つこと、 また船が 大きな斜航角を伴う場合の操縦運動と船型との関連についての研究例はほとん ど公表されていないことから、2隻の異なる船型を対象にシミュレーション計算 を行い、船型の違いが大斜航角時の船の操縦特性に及ぼす影響について調べる ことにより、 造船設計や操船設計への応用の可能性について考える。
5.6.1 計算条件
計算対象船はコンテナ船型およびタンカー船型であり、前節で示したLNG船 型の模型と同様に船長を 5mとし、主要目をTable 5.3 に示す。 ただしTable 5.3
Table 5.3 Principal particulars of Container ship and Tanker
Container Tanker
L 5.000 m 5.000 m B 0.726 m 1.000 m
d 0.271 m 0.366 m
Cb 0.572 0.820
AR/Ld
に示した計算対象船は、 何れの船型も第3 章、第4章において大斜航角時の流 体力の計算に供した船型と同ーである。
シミュレーション計算を行う際の入力データとなる主船体の流体力微係数は、
5.4節の方法で求めた。 Table 5.4には、計算によって求めたコンテナ船およびタ ンカーの流体力微係数を示す。
また初期船速、船体に与える横力と回頭モーメントおよび舵角は、先のLNG 船型の模型試験に対応させてシミュレーション計算を行う。 なお与える横力の大 きさについては、 各船に与える横力均と各船の排水量ム(= mg) との比む/ム が一定となる条件とした。
Table 5.4 Hydrodynamic derivatives for Cotainer ship and Tanker
Container Tanker む|υ| -0.325 -0.498 Y:1vl -0.592 -1.124
EZT 0.085 0.115
Y�rlrl 0.000 -0.006
Y:r -0.261 -0.360 N�v -0.080 -0.151 N�vvv -0.196 -0.077 N�r -0.047 -0.058
N:1rl -0.041 -0.055
N�vr -0.124 -0.159 N�vrr 0.010 0.010
5.6.2 シミュレーション計算例および考察
Fig.5.12およびFig.5.13はそれぞれ、船首尾タグを併用した横移動およびその 場回頭時のシミュレーション結果であり、各図の上段にコンテナ船型についての 計算結果を示し、 下段がタンカー船型の場合である。 これらの図においても、
縦軸、 横軸は船長Lに対する比で表しており、横カが作用し始めてからの船体 中心の航跡を実線で表し、 10 secごとの船影も付記している。
Fig.5.12およびFig.5.13の結果を見ると、船首尾タグを併用した横移動、その 場回頭の運動航跡ならびに回頭角の発達に関しては、初期船速の影響も含めて 船型に違いによる差異はさほど顕著なものではないように思われる。
Fig.5.14、Fig.5.15 はそれぞれ、船首タグ、船尾タグを各々単独で用いた場合 のシミュレーション結果である。Fig.5.14の船首タグによる回頭運動の場合、U。
= 0.0 m/secの場合の船型の違いによる運動の差異はほとんど見られないが、前 進速度を有する場合には、コンテナ船型の回頭角の発達がタンカー船型に比べ て小さく、 運動航跡もコンテナ船型の方がタンカー船型の場合より旋回半径が 大きい。 一方Fig.5.15の船尾タグによる回頭運動の場合、初期船速の有無に関