SKIV でも KamLAND 実験でも大きな sin22α については制限が弱くなっている。ここでは
SKIV,KamLAND実験で大きなsin22αについて互いに否定しあうかを議論したい。そのためには
χ2=χ2SKIV+χ2KamLAND (7.4.1)
なる新しい χ2 を定義して許容領域を見るのが手早い。それらを示したのが図20-22である。図 20 では KamLANDの影響を受け ∆m221 ∼ 7×10−5eV2 となる一方 tan2θ は SKIV の影響で tan2θ = 0.5 の前後ということになった。またSKIVの影響で∆m221 ∼ 20×10−5eV2付近が許 容される。これは図 21によれば大きいsin22αからの影響である。図22からも大きなsin22αが R∆∼1付近で許容され、KamLAND実験では排除することができなかったことが分かった。
大きいsin22αのステライルニュートリノがあるかどうかは十分に感度のあるJUNO実験を通し て判断できるはずである。そこでまた新しく
χ2≡χ2SKIV +χ2KamLAN D+χ2J U N O (7.4.2) を用いて解析を行った結果を図 23-25に示す。図を見ると JUNO実験の十分な精度のおかげで
∆m221 についてはテストパラメータ通り∆m221 ∼8×10−5eV2となった。一方tan2θについては JUNO実験では不定性があったもののSKIVの影響でtan2θ∼0.45に落ち着いた。大きなsin22α についてはステライルニュートリノがないと想定したJUNO実験のためにかなり否定されている。
これらのことから、JUNO実験で十分に調べられることで大きなsin22αについては否定あるいは肯 定ができるだろうことが予想される。しかしながら仮に大きなsin22αが否定されたとしても、小さ なsin22α ∼10−3については好まれている領域があるため、軽いステライルニュートリノを考える ことは未だ有意義である。
7.4 大きなsin22αについて 51
2 4 6 8 10 12 14 16 18 20
0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8
∆ m 2 21 (10 -5 eV 2 )
tan
2θ
1 σ 2 σ 3σ 4 σ 5 σ
図12: SKIV実験についての解析結果:tan2θ V.S. ∆m221。ここで図に現れていないパラメータについては変 数とおいてχ2を最小にするような値をとっている。また、以下の図でも同様とする。
2 4 6 8 10 12 14 16 18 20
10
-510
-410
-310
-210
-110
0∆ m 2 21 (10 -5 eV 2 )
sin
22 α 1 σ
2 σ 3σ 4 σ 5 σ
図13: SKIV実験についての解析結果:sin22αV.S. ∆m221
52 7 結果
2 4 6 8 10 12 14 16 18 20
0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8
∆ m 2 21 (10 -5 eV 2 )
tan
2θ
1 σ 2 σ 3 σ 4 σ 5σ
図14: KamLAND実験についての解析結果:tan2θV.S. ∆m221
2 4 6 8 10 12 14 16 18 20
10
-510
-410
-310
-210
-110
0∆ m 2 21 (10 -5 eV 2 )
sin
22 α 0.5σ
1 σ 2 σ 3 σ 4 σ
図15: KamLAND実験についての解析結果:sin22αV.S. ∆m221
7.4 大きなsin22αについて 53
0 5 10 15 20
0 5 10 15 20
Δχ2
Δm221 (10-5eV2)
KamLANDSKIV
図16: SK IV実験とKamLAND実験での∆m221のχ2の値。許容領域の図と同じく、∆m221以外のパラメー タはχ2の値が最小になる値をとっている。やはり、∆m221の最適値は実験によって異なっている。
6 6.5 7 7.5 8 8.5 9 9.5 10
0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8
∆ m 2 21 (10 -5 eV 2 )
tan
2θ
1 σ 2 σ 3 σ 4 σ 5 σ
図17: JUNO実験についての解析結果:tan2θ V.S. ∆m221(10−5eV2)
54 7 結果
6 6.5 7 7.5 8 8.5 9 9.5 10
10
-510
-410
-310
-210
-110
0∆ m 2 21 (10 -5 eV 2 )
sin
22α 0.5 σ
1 σ 2 σ 3 σ 4 σ 5 σ
図18: JUNO実験についての解析結果:sin22αV.S. ∆m221(10−5eV2)
0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1
10
-510
-410
-310
-210
-110
0R ∆
sin
22 α 1σ
2 σ 3 σ 4 σ 5 σ
図19: JUNO実験についての解析結果:sin22αV.S.R∆
7.4 大きなsin22αについて 55
2 4 6 8 10 12 14 16 18 20
0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8
∆ m 2 21 (10 -5 eV 2 )
tan
2θ
1 σ 2 σ 3 σ 4 σ 5σ
図20: SKIV+KLの解析結果:tan2θ V.S. ∆m221(10−5eV2)
2 4 6 8 10 12 14 16 18 20
10
-510
-410
-310
-210
-110
0∆ m 2 21 (10 -5 eV 2 )
sin
22 α 1σ
2 σ 3 σ 4 σ 5 σ
図21: SKIV+KLの解析結果:sin22αV.S. ∆m221(10−5eV2)
56 7 結果
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
10
-510
-410
-310
-210
-110
0R ∆
sin
22α 1 σ
2 σ 3 σ 4 σ 5σ
図22: SKIV+KLの解析結果:sin22αV.S.R∆
2 4 6 8 10 12 14 16 18 20
0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8
∆ m 2 21 (10 -5 eV 2 )
tan
2θ
1σ 2 σ 3 σ 4 σ 5 σ
図23: SKIV+KamLAND+JUNOの解析結果:tan2θV.S. ∆m221(10−5eV2)
7.4 大きなsin22αについて 57
2 4 6 8 10 12 14 16 18 20
10
-510
-410
-310
-210
-110
0∆ m 2 21 (10 -5 eV 2 )
sin
22α 1 σ
2 σ 3 σ 4 σ 5σ
図24: SKIV+KamLAND+JUNOの解析結果:sin22αV.S. ∆m221(10−5eV2)
0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1
10
-510
-410
-310
-210
-110
0R ∆
sin
22 α 1σ
2 σ 3 σ 4 σ 5 σ
図25: SKIV+KamLAND+JUNOの解析結果:sin22αV.S.R∆
58 8 結論と今後の展望
8 結論と今後の展望
前章でSuper Kamiokande IVとKamLAND実験について実験データからステライルニュートリ ノの影響を調べた。また、将来の実験としてJUNO実験を取り上げステライルニュートリノに対す る感度を調べた。SKIVではステライルニュートリノの影響で∆m221 のベストフィット値が上昇し
たもののKamLAND実験でのベストフィット値とのズレはあまり解消されなかった。また、単純に
SKIVとKamLANDで和をとったχ2解析では大きいsin22αの可能性があることがわかり、その 可能性はJUNO実験の結果によって判断できることがわかった。
今後の展望としてはまず第一にχ2解析をよりしっかりと評価することで厳密にパラメータに対し て制限をかけることが考えられる。例えば、実は本論文のχ2解析では統計誤差のみを扱っており、
系統誤差については一切含めていない。そのため本来の評価よりも制限が厳しくなってしまってい る。他に、太陽ニュートリノについてはエネルギーの分解能を考慮しておらず、また全体を通して バックグラウンドも無視している。したがって、正確に評価を行うためにはこれらを含めた計算を行 うことが必要である
第二に質量二乗差∆m231 が十分大きいとして無視した3つ目のアクティブニュートリノを含めた 系を考えなければならない。また第三に混合行列については本論文では簡単のため新しい混合角α を一つ増やしたのみであるが、実際には加えるべき新しい混合角は全部で3つあり更に物理的位相は 2つ増える。これらをすべて入れた評価をしていく必要がある。
最後に太陽ニュートリノについてはSKについてのみ議論したが他にもSNO実験やBorexino実 験などまだ太陽ニュートリノ実験のデータがある。特にアクティブニュートリノの総量を測定でき るSNOのNCに関する実験における制限からステライルニュートリノに対する強い制限が期待され る。また、今後太陽ニュートリノ振動実験でより低いエネルギーの結果が現れることが期待されるか ら、これらの結果に対しても解析を行えばupturnが見られないという問題が解決されるはずである。
59
謝辞
本論文執筆にあたり、時間と労力を割いてくださった指導教官の安田修教授に深く感謝申し上げ る。最後まで協力していただけたからこそ、物理を納得するまで理解し論文を書くことができた。ま た北澤敬章先生には場の理論のゼミで大変お世話になった。あれほど深く物理を学べたことは私に とって僥倖であった。また深澤先輩、酒井先輩、柳田先輩、芝田先輩にも大学院生活の中で大変お世 話になった。同期の増川くん、松坂くんには私のしつこい議論にも根気よく付き合っていただいた。
そのおかげで非常に楽しく研究生活が送ることができたことは言うまでもないことである。合わせ て、私生活を支えていただいた家族、話し相手となってくれた友人たちに深く感謝申し上げる。
60 参考文献
参考文献
[1] C. Giunti and K. C. Wook, Fundamentals of Neutrino Physics and Astrophysics. Oxford Univ., Oxford, 2007. https://cds.cern.ch/record/1053706.
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[14] Super-Kamiokande Collaboration, K. Abeet al., “Solar Neutrino Measurements in Super-Kamiokande-IV,” Phys. Rev.D94 no. 5, (2016) 052010,arXiv:1606.07538