本研究では4ν 系の一番単純な混合として通常のMNS行列にR10をかけて U4×4=UstdR01 =R23W13R12R10
=
c01 s01 0 0
−s01c12c13 c01c12c13 s12c13 s13e−iδ
−s01Uµ1std c01Uµ1std c12c23−s12s23s13eiδ s23c13
−s01Uτ1std c01Uτstd1 −c12s23−s12c23s13eiδ c23c13
(5.2.1)
R10=
c10 −s10 0 0 s10 c10 0 0
0 0 1 0
0 0 0 1
(5.2.2)
Uµ1std = (−s12c23−c12s23s13eiδ) (5.2.3) Uτstd1 = (s12s23−c12c23s13eiδ) (5.2.4) という混合行列を考えた。ここでニュートリノの配列は
ν4f =
νs
νe νµ ντ
, ν4m=
ν0
ν1 ν2
ν3
(5.2.5)
となる。また、νsはステライルニュートリノであり、それに合わせ新しく質量固有状態ν0を導入し た。この論文では新しい質量m0を
m1< m0< m2 (5.2.6)
の範囲で定義して扱う。
さらに以下では∆m2SOLが支配的な場合を考え、物質中の2ν 近似と同様の近似を行い、s13 →0 として
id
dtνf =Hνf, H= ∆m221
2E U εU−1+V (5.2.7)
U =R21R10 =
cα −sα 0 sαcθ cαcθ sθ
−sαsθ −cαsθ cθ
(5.2.8)
ε= diag(R∆,0,1), V = diag(0, Ve+Vn, , Vn) (5.2.9) という時間発展を扱う。ここでsα = sinαなどでα =θ10, θ =θ12である。この新しく導入された 振動パラメータαはアクティブ、ステライル間の混合角であり、ステライルニュートリノを加えた 効果の大きさを表す。R∆は質量二乗差の比で
R∆= ∆m201
∆m221 (5.2.10)
である。また、ニュートリノの配列は
νf =
νs νe
νa
(5.2.11)
5.2 アクティブ・ステライル混合と振動確率 39 を考える。ここでνaは電子ニュートリノではないアクティブニュートリノである。
KamLAND実験とJUNO実験は真空中での振動となるのでポテンシャルをゼロして考えれば良
い。そこでνe →νeの振動確率Peeは真空振動の公式を利用すると振動確率は、
Pee(E, L) = 1−4c2θ [
c2αs2θsin2
(∆m221L 4E
)
+c2αs2αc2θsin2
(∆m201L 4E
)
+s2αs2θsin2
(∆m220L 4E
) ]
(5.2.12) となる。質量二乗差はR∆を使って
∆m201 = ∆m221R∆,∆m220 = ∆m221(1−R∆) (5.2.13) などとなる。振動確率を見るとα →0で、またR∆ →0でも標準的な2ν 振動に帰着することがで き、ステライルニュートリノの影響が現れないことになる。一方α ∼ O(1)の場合にはステライル ニュートリノの効果が現れる事がわかる。
後述にもある通り本来JUNO実験は∆m2AT M が測定できるほどに精密な実験である。しかし本 論文ではステライルニュートリノを加えた場合の結果を太陽ニュートリノ実験と比較したいため JUNO実験の評価でも上記の振動確率を用いる。また、振動パラメータとして∆m201ではなくR∆
を用いる。
最後に本研究の中における物質中のニュートリノ振動、具体的には太陽ニュートリノ振動の振動確 率の取り扱い方について述べておく。太陽ニュートリノは幾つかの核融合過程を通して、
(1) 太陽のコア付近で生成され表面に向けて太陽の物質中を伝播する。
(2) その後宇宙空間を真空振動して伝播し、地球に到達する。
(3) 観測時間が夜間の場合はさらに地球内部の物質中を振動しながら伝播し測定器において測定さ れる。
本研究では(2),(3)についてはそれぞれ、地球・太陽間の距離に対する観測誤差に対して真空中の 振動波長が短く激しい振動が平均化されていること、地球の直径では太陽ニュートリノ振動にはあ まり影響がない、という理由からこれらを無視し、(1)の場合のみを考慮した。ただしステライル ニュートリノが加わった場合、非断熱効果が強く現れ単純に解析解を求めることができない。その
ためRunge–Kutta法を用いてコアから太陽表面までの数値計算を行うことで振動確率を求めた。ま
た、3つの解析を通して計算時間の短縮化のためにOpenMPを用いた計算の並列化を行った。しか しながらこれらの技術的なことは物理とは本質的には関係がないためこれ以上は立ち入らない。
40 6 太陽ニュートリノ振動に関連する実験と解析方法について
6 太陽ニュートリノ振動に関連する実験と解析方法について
ここでは太陽ニュートリノ実験、KamLAND実験、JUNO実験に関しての解析の方法などを述べ る。結果については次章で扱う。
6.1 ∆m
2SOLの値のズレの問題
太陽ニュートリノ実験と、同じ質量二乗差を与えるはずのKamLAND実験では測定される∆m221 にずれがあるという問題がある(図7)。この問題の原因は太陽ニュートリノ振動におけるエネルギー
0.50 1.00 1.50 2.00
∆m221(eV2) 0
2 4 6 8 10
∆χ2
68.27% C.L.
95.00% C.L.
99.73% C.L.
×10−4 Solar (3ν)
KL (3ν) Solar+KL (3ν)
図7: ∆m221に対して太陽ニュートリノ実験のみの場合とKamLAND実験を組み合わせた場合について∆χ2 の値を示す。[6]。∆χ2が大きいほどその値が否定されるが、KamLANDのデータの有無で二つの値がずれて いることが分かる。(3νと書いてあるのは標準的な3ν振動という意味であり、ステライルニュートリノが入っ ているわけではない。)
スペクトルで見られる upturnを見ることで理解できる。upturnとは高エネルギー側から低エネ ルギー側に向かって振動確率が大きくなることを指す。これは物質中の2ν 振動における共鳴が式 (4.3.15)から
Eres = ∆m221cos 2θ 2√
2GFNe (6.1.1)
のエネルギーで起こること、また電子密度Ne は太陽コアでの上限値があることから共鳴を起こす ニュートリノのエネルギーに下限があることで発生する。つまり共鳴の発生しない低エネルギー側で は共鳴による強い混合がないため振動確率が大きくなり、高エネルギー側では共鳴の影響で振動確率 が小さくなる。その結果がupturnが発生する。上式からupturnの立ち上がりは∆m221が大きいほ ど高エネルギー側にずれる事が理解できる。
ここで再掲になるが振動確率についての理論値と実験データを示したものを図 8 に示す。こ