5 章 多摩ニュータウン全体の集合住宅における断熱性能
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5 章 多摩ニュータウン全体の集合住宅における断熱性能 5-1 多摩ニュータウンの概要
多摩ニュータウンは、東西約
15km、南北約 5km
に渡っており、稲城、多摩、八王子、町 田の4市にまたがっている。面積は約2,884ha
の国内最大規模のニュータウンである。1965
年(昭和40
年)に多摩ニュータウン区域の都市計画が決定し、開発が始まった。図
5-1
に多摩ニュータウンの事業手法と施行区分を示す。総面積の約8割は東京都・東京 都住宅供給公社・UR
都市機構の3施工者による新住宅市街地開発事業によって、約2割は 土地区画整理事業によって整備が行われ、都営・公社・機構などの公的施策住宅および民 間による住宅が供給されてきた1。表
5-1
に多摩ニュータウンの住宅供給戸数を示す。UR
都市機構による供給が47%を占め
ていることがわかる。1
UR
都市機構パンフレット「TAMA NEW TOWN SINCE 1965
」,2005.2
種別 形態 戸数(戸)
賃貸 10,954 分譲 16,659
都営 賃貸 9,958
賃貸 3,340 分譲 3,914
民間集合住宅 7,568
戸建住宅 5,846
58,239 UR都市機構
東京都住宅供給公社
計
図 5-1 多摩ニュータウンの事業手法と施行区分
出典: UR 都市機構パンフレット「TAMA NEW TOWN SINCE 1965」
表 5-1 住宅供給戸数(新住宅市街地開発事業区域内/2005 年 11 月時点)
出典: UR 都市機構パンフレット
「TAMA NEW TOWN SINCE 1965」
5章多摩ニュータウン全体の集合住宅における断熱性能
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図5-2多摩ニュータウン基本計画図出典: UR都市機構パンフレット「TAMA NEWTOWN SINCE1965」
5 章 多摩ニュータウン全体の集合住宅における断熱性能
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5-2 UR 都市機構による集合住宅の断熱工法 5-2-1 はじめに多摩ニュータウンの住宅供給は、
UR
都市機構による供給が約半数である47%を占めてい
ることを5-1
で示した。そこで、
UR
賃貸住宅の断熱工法の変遷をまとめ、多摩ニュータウン全体の集合住宅にお ける断熱性能として取り上げることにした。5-2-2 壁の断熱工法
図
5-3
にUR
賃貸住宅の壁の断熱工法の変遷を示す。公団住宅の萌芽期である昭和
30
年代団地には、断熱材は付加されていなかったが、石油 ストーブの普及などに伴い、北側壁での結露が問題となり、断熱材の付加が必要となった。1966~1967
年に「発泡スチロール裏打ちベニヤ直張工法(熱貫流率:1.81W/㎡K)
」が採用されたが、発泡スチロールの厚さが
12mm
と薄かったため、結露を完全に抑えることは できなかった。1967~1980
年に「G1工法(熱貫流率:1.30W/㎡K)
」が壁面精度の比較的悪い在来工法で採用された。断熱材としてロックウールまたはグラスウールを防湿シートで覆って木胴縁 で内壁面に組み込んだ工法であるが、内部結露の問題と躯体精度の向上により使用されなく なった。
1967
年から「S1工法(厚25mm
の熱貫流率:0.89 W/㎡K)
」が採用され、1980年度から は在来工法にも採用され、現在の標準工法となっている。押出発泡ポリスチレンフォーム成 形板を合板または石膏ボードに裏打ちしたものをコンクリート壁面に接着する工法である。防露対策の部位については、1966年~1979年は北側居室・妻住戸外壁面・外壁に面した 押入部分に限定されていた。
1980
年から住戸の全外壁面に、さらに1995
年からは北側居室 の結露のおそれがある天井部分に断熱措置が施されるようになった。P49
に参考資料1:UR
都市機構「‘INGREPORT 建 内装 5 壁+天井/断熱+防露」
を示す。
図
5-3 壁の断熱工法の変遷 参考資料: UR
都市機構「‘ING REPORT 建」年代
発泡スチロール裏打ベニヤ直張工法
北側居室・妻住戸外壁面・外壁に面した押入 全外壁面 全外壁面+北側居室の天井部分
工法
対策部位
1995 2000
G1工法
S1工法FP厚12 FP厚15 FP-Ⅱ厚25 S1工法FP厚25(押入厚40)
1965 1970 1975 1980 1985 1990
5 章 多摩ニュータウン全体の集合住宅における断熱性能
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5-2-3 屋根の断熱工法図
5-4
にUR
賃貸住宅の屋根の断熱工法の変遷を示す。1963
年~1973 年に「露出アスファルト防水(熱貫流率:2.68W/㎡K)
」が採用された。アスファルト防水層が露出していて、欠陥箇所が容易に分かりメンテナンスしやすい反面、
防水層表面のふくれやひび割れを起こしやすいという欠点があった。
1974
年~1976 年に「外断熱露出アスファルト防水(熱貫流率:0.96W/㎡K)
」が採用さ れた。露出アスファルト防水層の下に断熱材を入れた外断熱工法であった。屋根スラブの上 面に断熱材を設置することで、最上階住戸の室内温熱環境は、夏期の日射遮蔽による「ほて り現象」と、冬期夜間の屋根面からの熱損失による「冷え込み」が減少し、大幅に改善され たということである。1977
年からは「外断熱アスファルト防水(熱貫流率:0.86W/㎡K)
」が採用されている。屋根スラブの上に防水層を施し、その上に断熱材を設置し、コンクリート等で抑える工法で ある。室内温熱環境の改善、躯体の日射からの保護のほか、防水層の劣化を防止して耐用年 数を長引かせる効果もあるということである。「押さえ材」については、防水層のメンテナ ンスを考慮して、コンクリートの代わりに取り外しが簡単なコンクリートブロックやアスフ ァルト成形板を用いた工法も開発された。
P50
に参考資料2:UR
都市機構「UR賃貸住宅の断熱工法とその変遷」を、p51に参考資料
3:UR
都市機構「‘INGREPORT 建 外装 2 屋根防水」を示す。
年代
外断熱露出アスファルト防水
露出アスファルト防水 外断熱アスファルト防水
1990 1995 2000
工法
1965 1970 1975 1980 1985
図
5-4 屋根の断熱工法の変遷
参考資料: UR都市機構「UR賃貸住宅の断熱工法とその変遷」
5章多摩ニュータウン全体の集合住宅における断熱性能
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参考資料1:UR都市機構「‘ING REPORT建」,2012.25章多摩ニュータウン全体の集合住宅における断熱性能
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参考資料2: UR都市機構「UR賃貸住宅の断熱工法とその変遷」5章多摩ニュータウン全体の集合住宅における断熱性能
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参考資料3:UR都市機構「‘ING REPORT建」,2012.25 章 多摩ニュータウン全体の集合住宅における断熱性能
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5-2-4 壁の熱貫流率の計算UR
都市機構に「S1工法FP
厚25」の熱貫流率の計算条件を問い合わせたところ、以下
の回答を得た。熱貫流率が不明である「S1工法
FP
厚15」について熱貫流率[W/(㎡・K)]を求める。
1969
年~1973年の無断熱である南壁の熱貫流率[W/(㎡・K)]を求める。室外側熱抵抗 = 0.04
コンクリート 厚さ0.150m / 1.60(W/m・K) = 0.093 断熱材 厚さ0.025m / 0.03(W/m・K) = 0.833 石膏ボード 厚さ0.009m / 0.20(W/m・K) = 0.045
室内側熱抵抗 = 0.11
合計 1.121 熱貫流率=1/1.121=0.89
壁の熱抵抗値(㎡・K/W)
室外側熱抵抗 = 0.04
コンクリート 厚さ0.150m / 1.60(W/m・K) = 0.093 断熱材 厚さ0.015m / 0.03(W/m・K) = 0.5 石膏ボード 厚さ0.009m / 0.20(W/m・K) = 0.045
室内側熱抵抗 = 0.11
合計 0.788 熱貫流率=1/0.788=1.27
壁の熱抵抗値(㎡・K/W)
室外側熱抵抗 = 0.04
コンクリート 厚さ0.150m / 1.60(W/m・K) = 0.093 石膏ボード 厚さ0.009m / 0.20(W/m・K) = 0.045
室内側熱抵抗 = 0.11
合計 0.288 熱貫流率=1/0.288=3.47
壁の熱抵抗値(㎡・K/W)
5 章 多摩ニュータウン全体の集合住宅における断熱性能
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5-2-5 壁の熱貫流率別供給戸数事業年度が
1969
年から1999
年までのUR
による集合住宅は、賃貸が10,490
戸、分譲が14,903
戸であり、合わせて25,393
戸であった。なお、分譲住宅のタウンハウスについては、木造の住戸や、試験的に行われた外断熱の住戸が含まれるため、ここでは除外している。
図
5-5
にUR
都市機構によって多摩ニュータウンに供給された賃貸住宅と分譲住宅の戸数 を、壁の熱貫流率別に示す。1967
年~1980年の期間はG1
工法とS1
工法が混在しており、どちらの工法が採用された か不明であったため、中央値をとり、1967年~1973年がG1
工法、1974年以降はS1
工法 であるとみなした。また、分譲住宅の断熱仕様は公表されていないが、賃貸住宅と同仕様で あるとみなした。なお、実測とアンケートを行った分譲住宅であるH
団地とP
団地の詳細 図を確認したところ、賃貸住宅と同仕様であった。南側壁面が無断熱の住戸が
10,285
戸あり、41%を占めている。住戸の南側には、暖冷房 の使用が多いと考えられる居間があるため、これらの住戸に断熱改修を行う意義は大きいと 考えられる。図
5-5 壁の熱貫流率別供給戸数
5章多摩ニュータウン全体の集合住宅における断熱性能
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戸数総面積(㎡)平均(㎡)戸数総面積(㎡)平均(㎡)戸数総面積(㎡)平均(㎡)戸数総面積(㎡)平均(㎡)戸数総面積(㎡)平均(㎡)戸数総面積(㎡)平均(㎡)1K1735,083.5929.381DK1835,709.6031.201325,721.3143.341LDK39423,412.7659.42663,618.1454.821LDK+S181.8281.821LDK+3K3397.29132.432DK2,177104,754.2748.1226413,854.7252.481749,646.5755.442DK+店舗171,399.2082.312LDK7444.5063.50877,721.8888.761,595118,189.6774.1024416,811.7468.902LDK+S1068,474.9279.959664.5073.832LDK+2K等161,898.71118.672LDK+1DK738,074.96110.622LDK+2DK等81,153.94144.243K76038,930.8051.223DK3,400179,726.8652.8637221,986.9659.1059235,328.4059.68312,083.2167.2074453,325.2871.673DK+S141,190.8485.063LDK59441,317.9869.5621013,484.1064.2193375,184.5680.581,19095,865.6880.564,884434,547.2488.9727823,000.2782.733LDK+S4468.68117.1737935,734.6894.2910960.3096.033LDK+1DK等23930,002.99125.544DK121,046.5287.218662.9682.87423,746.2289.204LDK32029,142.4091.0740140,578.70101.1957456,061.2497.672,991327,297.81109.43444,514.51102.604LDK+S29633,155.92112.014LDK+K4387.9296.984LDK+1DK334,676.94141.735LDK313,908.07126.076711.12118.5225131,269.16124.586LDK172,377.29139.84全住戸タイプ7,463402,027.6384649,325.781,976156,575.871,888162,443.1312,5691,139,847.8365149,569.46防露対策の部位断熱工法の種類
1969~1979年北壁、妻住戸の外壁面、外壁に面した押入れ部分に限定1967~1973年G1 RW又はGWァ25 U=1.30W/㎡K(南壁は無断熱 U=3.47W/㎡K)1974~1975年S1 FPァ15 U=1.27W/㎡K1980~1994年住戸の全外壁面1976~1981年S1 FP‐Ⅱァ25 U=0.89W/㎡K
1995年~住戸の全外壁面+北側居室の結露のおそれがある天井部分1982年~S1 FPァ25(押入ァ40) U=0.89W/㎡K (押入U=0.62W/㎡K)
U=0.41W/㎡K 1995~1999年1969~1973年1974~1975年1976~1979年1980~1981年1982~1994年事業年度
住戸タイプ
未改修
P
団地,改修前H
団地改修後H
団地 表5-2壁の熱貫流率および住戸タイプ別供給戸数改修前H団地5 章 多摩ニュータウン全体の集合住宅における断熱性能
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表
5-2
に壁の熱貫流率および住戸タイプ別供給戸数を示す。本研究で実測とアンケートを実施した
H
団地の壁の熱貫流率は、改修前が0.89W/(㎡・K)
であった。UR の多摩ニュータウンの集合住宅の48%は、壁の断熱性能が改修前 H
団地よ りさらに低いことがわかった。 このことから多摩ニュータウンの既存集合住宅に断熱改修 を施す意義は大きいと考えられる。今後の課題として、年代別住戸タイプごとの外皮平均熱貫流率(UA値)を求め、次世代 省エネ基準に適合する改修方法の提案を行うことを挙げる。