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地表における最大速度の評価

ドキュメント内 全国地震動予測地図 技術報告書 (ページ 127-136)

3.5 地震動の評価モデル

3.5.3 地表における最大速度の評価

地表面における最大速度 PGVSは,工学的基盤での最 大速度 PGVb400に対して,別途算定されている工学的基 盤から地表までの増幅率(図3.5.3-1)を乗じることによ り得られる.この増幅率は,若松・松岡(2008)による 全国を対象として作成された地形・地盤分類 250m メッ シュマップから求められた,地表から深さ30mまでの平 均 S 波速度(AVS30;松岡・若松,2008)に基づくもの であり,それに,藤本・翠川(2006)によるAVS30との 経験的関係(3.5.1-2)式を適用することによって得られ たものである.この最大速度の増幅率に関しては,4.4.3 節で詳細な説明をする.

3.5.4 地表における計測震度の評価

これまでの「全国を概観した地震動予測地図」では,

これまで,翠川・他(1999)によって示される以下の最 大速度と計測震度との経験的関係式

log S

72 . 1 68 .

2 PGV

I= + ⋅ (3.5.4-1)

を用いて,地表の最大速度から地表の震度を評価してき た.なお,ここで,Iは計測震度,PGVSは地表の最大速 度(cm/s)である.

3.5.3-1 地形・地盤分類に基づく工学的基盤(S波速

度400m/s)相当層から地表までの最大速度の 増幅率.

その後,藤本・翠川(2005)は,高密度な強震観測網 の整備によって,近年に発生した地震における高震度の 強震動記録が増加したことを踏まえ,最大速度などの地 震動強さ指標と計測震度との新たな関係式として

S 2

S 0.213 (log )

log 603 . 2 002 .

2 PGV PGV

I= + ⋅ − ⋅ (3.5.4-2)

を示した.ただしその中で,海溝型の地震である 2003 年十勝沖地震による記録は,長周期成分(主に2秒以上)

が卓越した地震動により,計測震度に対して最大速度が 大きめの傾向にあることを指摘している.そこで,海溝 型の地震と内陸地震のそれぞれについて,上記のどちら の関係式を用いるのが適切であるかを最近の大地震によ る観測記録から検討し(森川・藤原,2009),その取扱い を決定した.検討の具体的な内容については付録3に示 すが,結論として,M8 クラス以上の巨大地震が多い海 溝型の地震では (3.5.4-1) 式が,M7クラスの地震が多く 占める内陸地震では (3.5.4-2) 式が適切であると考えら れる.したがって,地表の計測震度を評価するにあたっ ては,海溝型の地震であるカテゴリーⅠ,Ⅱの地震につい ては (3.5.4-1) 式を,内陸地震であるカテゴリーⅢの地 震については (3.5.4-2) 式を用いることとした.

3.5.5 地震動のばらつき

従来の「全国を概観した地震動予測地図」では,無限 大の地震動強さが生じないようにするため,工学的基盤 における最大速度のばらつきの分布形状を対数正規分布 と仮定し,分布の裾において,対数標準偏差の3倍より 外側を打ち切ることとした.今回作成する地震動予測地 図においても,この点については同じ扱いとした.

一方,ばらつきの大きさの設定にあたっては,ばらつ きの種類を本質的にランダムな現象として取り扱うもの

(偶然的不確定性)と,知識やデータ不足によるもの(認 識論的不確定性)とに分離した上で,ハザードカーブの 計算では,偶然的不確定性に相当するもののみを考慮す る必要がある.「全国を概観した地震動予測地図」では,

距離減衰式の標準偏差として表されているばらつき(σ) は,この点を考慮した検討を行った結果として,以下に 示すような,S波速度が600m/sである基準地盤での最大 速度の振幅(PGVb600)に依存したばらつき(図3.5.5-1)

が採用された.

⎪⎪

⎪⎪

>

− <

= σ

cm/s 50 15

. 0

cm/s 50 25 25

05 25 . 0 20 . 0

cm/s 25 20

. 0

b600 b600 b600

b600

PGV PGV PGV

PGV

(3.5.5-1) その後,さらに数多く蓄積されてきた強震動記録や,

大量の地震動シミュレーションに基づいて,確率論的な 地震ハザード評価に用いるべきばらつきに関する研究が 行われてきた.そこで,確率論的地震動予測地図で用い るばらつきについて,改めてこれらの研究成果を踏まえ

た検討を行った.具体的な内容については付録3に示す が,結果として,震源近傍では,ばらつきが大きくなる という研究成果から,内陸地震が主であるカテゴリーⅢ の地震については,以下の震源距離(X)に依存したば らつき(σ

⎪⎪

⎪⎪

>

<

= σ

km 30 20

. 0

km 30 ) 20

20 / 30 log(

) 20 / 03 log(

. 0 23 . 0

km 20 23

. 0

X X X

X

(3.5.5-2)

(図 3.5.5-2の赤線)を,一方,震源近傍の地点がなく,

巨大地震による影響度が大きい海溝型の地震が主である

カテゴリーⅠ,Ⅱについては,従来の振幅に依存したばら つき(3.5.5-1式,図3.5.5-1)を採用することとした.

なお,従来の「全国を概観した地震動予測地図」では,

工学的基盤における最大速度のばらつきの分布形状が対 数正規分布であると仮定し,無限大の地震動強さが生じ ることを避けるため,分布の裾において,対数標準偏差 の3倍より外側を打ち切っている.この点については,

新たな知見が得られていないこともあり,本検討で作成 する地震動予測地図においても同じ扱いとしている.

確率論的地震動予測地図で考慮する地震ごとに,適用 する地震動評価手法を整理して表3.5.5-1に示す.

3.5.5-1 カテゴリーⅠ,Ⅱの地震に適用する,従来用いてきた振幅に依存したばらつき(太線).

3.5.5-2 カテゴリーⅢの地震に新たに導入する震源距離に依存したばらつき(赤線).破線は従来の振幅依存のば

らつきで,「深さ」は断層面の中心深さを表す.

3.5.5-1 確率論的地震動予測地図における地震と適用距離減衰式一覧.

距離減衰式

地震 旧地震

分類

地震

カテゴリー 係数 補正 ばらつき 主要活断層帯に発生する固有地震 主要活断層帯 Ⅲ 地殻 - 距離 南海トラフの地震

(南海~東南海~想定東海地震) 海溝型 Ⅰ P間 - 振幅

宮城県沖地震および三陸沖南部海溝寄りの地震 海溝型 Ⅰ P間 北日本 振幅 三陸沖北部のプレート間大地震 海溝型 Ⅰ P間 北日本 振幅 三陸沖北部から房総沖の海溝寄りの

プレート間大地震(津波地震) 海溝型 Ⅱ P間 北日本 振幅 三陸沖北部から房総沖の海溝寄りの

プレート内大地震(正断層型) 海溝型 Ⅱ P間 北日本 振幅

三陸沖北部の固有地震以外のプレート間地震 海溝型 Ⅱ P間 北日本 振幅 福島県沖のプレート間地震 海溝型 Ⅱ P間 北日本 振幅 茨城県沖のプレート間地震 海溝型 Ⅱ P間 北日本 振幅 十勝沖の地震・根室沖の地震 海溝型 Ⅰ P間 北日本 振幅

色丹島沖の地震 海溝型 Ⅰ P間 北日本 振幅

択捉島沖の地震 海溝型 Ⅰ P間 北日本 振幅

十勝沖・根室沖のひとまわり小さい

プレート間地震 海溝型 Ⅱ P間 北日本 振幅

色丹島沖・択捉島沖のひとまわり小さい

プレート間地震 海溝型 Ⅱ P間 北日本 振幅

沈み込んだプレート内のやや浅い地震 海溝型 Ⅱ P内 北日本 振幅 沈み込んだプレート内のやや深い地震 海溝型 Ⅱ P内 北日本 振幅

北海道北西沖の地震 海溝型 Ⅲ P間 - 距離

北海道西方沖の地震 海溝型 Ⅲ P間 - 距離

北海道南西沖の地震 海溝型 Ⅲ P間 - 距離

青森県西方沖の地震 海溝型 Ⅲ P間 - 距離

秋田県沖の地震 海溝型 Ⅲ P間 - 距離

山形県沖の地震 海溝型 Ⅲ P間 - 距離

新潟県北部沖の地震 海溝型 Ⅲ P間 - 距離

佐渡島北方沖の地震 海溝型 Ⅲ P間 - 距離

安芸灘~伊予灘~豊後水道のプレート内地震 海溝型 Ⅱ P内 - 振幅

日向灘のプレート間地震 海溝型 Ⅱ P間 - 振幅

日向灘のひとまわり小さいプレート間地震 海溝型 Ⅱ P間 - 振幅

与那国島周辺の地震 海溝型 Ⅱ P間 - 振幅

大正型関東地震 海溝型 Ⅰ P間 - 振幅

その他の南関東で発生するM7程度の地震 海溝型 Ⅱ P間/P内 - 振幅 主要活断層帯以外の活断層に発生する地震 上記以外 Ⅲ 地殻 - 距離 太平洋プレートのプレート間の震源断層を

予め特定しにくい地震 上記以外 Ⅱ P間 北日本 振幅 太平洋プレートのプレート内の震源断層を

予め特定しにくい地震 上記以外 Ⅱ P内 北日本 振幅

フィリピン海プレートのプレート間の震源断層を

予め特定しにくい地震 上記以外 Ⅱ P間 - 振幅

フィリピン海プレートのプレート内の震源断層を

予め特定しにくい地震 上記以外 Ⅱ P内 西日本

(一部) 振幅 陸域で発生する地震のうち活断層が特定されてい

ない場所で発生する地震 上記以外 Ⅲ 地殻 - 距離

浦河沖の震源断層を予め特定しにくい地震 上記以外 Ⅱ 地殻 - 振幅 日本海東縁部の震源断層を予め特定しにくい地震 上記以外 Ⅲ 地殻 - 距離 伊豆諸島以南の震源断層を予め特定しにくい地震 上記以外 Ⅲ 地殻 - 距離 南西諸島付近の震源断層を予め特定しにくい地震 上記以外 Ⅲ P間 - 距離

(注) 距離減衰式のばらつき: 「距離」距離依存で震源域で大,「振幅」振幅依存で震源域で小.

3.6 確率論的地震動予測地図の作成条件の変更履歴 平成17年3月,政府の地震調査研究推進本部より「全 国を概観した地震動予測地図」が公表された(2005年版).

その後,諸評価の更新や地震発生確率の経時変化等を踏 まえて,確率論的地震動予測地図は毎年更新されており,

平成18年9月に2006年版,平成19年4月に2007年版,

平成20年4月に2008年版の地震動予測地図が公表され ている.そして,平成21年春に2009年版となる全国地

震動予測地図(本内容に準拠)が公表される予定である.

以下にこれまでの地図の作成条件の変更履歴を表形式 で整理する(表3.6-1~表3.6-4).また,全ての地震を考 慮した場合(平均ケース)の30年間で震度6弱以上とな る確率の分布図を,2005年版から2008年版まで,図3.6-1

~図 3.6-4 に示す.なお,確率の値による色分けのカラ ーバーは,年度によって異なっていたが,ここでは現在 のものに統一している.

3.6-1 2006年版の確率論的地震動予測地図の作成条件の変更点.

地震の分類 作成条件(2005年版よりの変更点)

主要98断層帯

・更新過程を適用した地震発生確率の算定において,時間軸原点を「平成17年

(2005年)1月1日」から「平成18年(2006年)1月1日」に変更.

・ポアソン過程を適用した地震発生確率の算定については変更なし.

・平成18年3月末までに公表された長期評価の一部改訂結果を反映させる(富 良野断層帯東部,北由利断層).

海溝型地震

・更新過程または時間予測モデルを適用した地震発生確率の算定において,時 間軸原点を「平成17年(2005年)1月1日」から「平成18年(2006年)1月1日」

に変更.

・ポアソン過程を適用した地震発生確率の算定については変更なし.

震源断層をある程度 特定できる地震

(主要98断層帯以外の活断 層に発生する地震)

・変更なし

震源断層を予め 特定しにくい地震

・地震発生頻度分布に使用する気象庁の震源データについて,データの改訂及 び更新(2002年末までのデータ→2004年末までのデータ)を反映させる.

地震動の評価 ・変更なし

3.6-2 2007年版の確率論的地震動予測地図の作成条件の変更点.

地震の分類 作成条件(2006年版よりの変更点)

主要活断層帯

(呼称変更)

・更新過程を適用した地震発生確率の算定において,時間軸原点を「平成18年

(2006年)1月1日」から「平成19年(2007年)1月1日」に変更.

・ポアソン過程を適用した地震発生確率の算定については変更なし.

・平成18年12月末までに公表された長期評価の公表結果(一部改訂も含む)を 反映させる(曽根丘陵断層帯,人吉盆地南縁断層,櫛形山脈断層帯,境峠・

神谷断層帯主部,雲仙断層群南西部).

海溝型地震

・更新過程または時間予測モデルを適用した地震発生確率の算定において,時 間軸原点を「平成18年(2006年)1月1日」から「平成19年(2007年)1月1日」

に変更.

・ポアソン過程を適用した地震発生確率の算定については変更なし.

震源断層をある程度 特定できる地震

(主要活断層帯以外の活断 層に発生する地震)

・平成18年12月末までに追加で公表された長期評価の結果を反映させる(甲府 盆地南縁断層帯と人吉盆地断層帯を削除).

震源断層を予め 特定しにくい地震

・地震発生頻度分布に使用する気象庁の震源データについて,データの改訂及 び更新(2004年末までのデータ→2005年末までのデータ)を反映させる.

地震動の評価 ・西南日本の異常震域に対応するため,距離減衰式の補正係数を導入する.

ドキュメント内 全国地震動予測地図 技術報告書 (ページ 127-136)