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地域のニーズに合った事業計画のつくり方

ドキュメント内 様式第1号 (ページ 31-34)

実際の事業計画づくりに入ります。海岸防災林の再生という大きな目的に向かう上で、多様な主 体と協働していく必要があることはもちろん、まずは地域が望み、地域から歓迎される活動を行う ことが肝心です。特に地域との協働について考えてみましょう。

(1)地域から見た海岸防災林再生の目的

海岸防災林は国土と合わせて住民の生命や財産を守るための森林ですが、最も恩恵を受けるのは 地域住民ということになります。また、昔から燃料を採ったり、キノコを収穫したりと、地域の方々 の生活やレクリエーションの場でもあったわけです。

このため、地域の方々が海岸防災林再生に協力するのは「当然」と思われがちですが、東日本大 震災で被災した地域は、いまだ生活再建の目処が立っていない方も多く、不自由な生活を強いられ ている方がたくさんいます。

このような現状を理解し、地域の方々のニーズをよく把握した上で活動への参加を呼びかけるこ とが大切です。

(2)地域と協働するために大切なこと ①市町村別の計画を把握する

海岸防災林の再生事業のほとんどは国の力で進められていますが、市町村では、海岸防災林を含 めた街づくりの構想を持っています。

特に、歴史文化自然資源の復元方針や、防災・減災、緑地公園の建設整備計画、地場産品の産出 や集積の場づくりなど、これからの街づくりに海岸防災林は直接間接的にさまざまな形で関わって きます。

活動する地域の復興計画や地理的社会的特性等についてよく調査し、理解した上で海岸防災林再 生活動の計画づくりを行っていくことが大切です。

②地域産業や観光の振興

海岸防災林再生活動の目的は、植栽と育林によってできるだけ速く防災機能を持った海岸林を再 生することです。

しかし、団体や企業が行う海岸防災林再生活動の場合には、植栽活動を通じて海岸林再生に対す る機運を高め啓発するとともに、地域の震災復興や産業・観光の活性に寄与することも大切な目的 であると思います。

そのためには、まず活動する地域の産業や観光をよく把握し、その活性化のために少しでも役立 つ活動を考えてみることも大切です。

せっかく活動するのですから、できれば地元の役場や地域の方々に協力を依頼し、地域の名産品 や特色を体験してみてはいかがでしょうか。

Ⅳ 地域や多様な主体の協働・連携と活動計画づくり

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③地域への提案

海岸防災林再生はとても息の長い事業で、地域の方々の協力が欠かせません。

海岸防災林再生活動が、地域にさまざまな恩恵をもたらすことが理解されれば、地域の方々も協 力してくれるでしょう。例えば次のような提案をしてみてはいかがでしょうか。

・海岸林活動は、新たなコミュニティ形成の場に繋がる。

・多様な主体が協働したくさんの人が来ることで、地域活性化に繋がる。

・地域の子どもたちの生命と財産を守るだけでなく、環境教育や自然体験の場にもなる。

・海岸林だけでなくさまざまな生き物をモニタリングすることにより、懐かしい生き物が復活し、

子どもたちの未来に残すことができる。

・産業や観光とタイアップしたイベントを実施することにより、地域の産業や観光をPRする良 い機会が創出できる。

地域の中から、海岸防災林の保育活動の中心メンバーになってくれる方が出てこれば大成功です。

活動資材や食料を地域から購入する、地域から会員を募る、地域の会合などに積極的に参加する などして、地域とつながる努力をしてみましょう。

(3)生物多様性と生態系サービスの復元 環境を守る活動

Ⅱ章で示したような希少な動植物の回復は、地域の自然環境保護や観光にとっても貴重な資源に なります。また、森づくりを志す会員だけでなく、自然保護や自然生態系に関心の高い会員も活動 に取り込むことにつながります。

植栽地の下層植生、周辺の植生、発生するキノコ、訪れる野鳥、昆虫や甲殻類など、定期的なモ ニタリングを計画してみましょう。

「海岸防災林生き物リスト」や「海岸防災林林床植物図鑑」などを団体で作ってみてはいかがで しょうか。地域の関心が高まり、新しい協力者を呼び込む良いきっかけにできると思います。

また、定期的なゴミ清掃活動なども、地域の方々の関心を引き、たくさんの方が活動に参加する きっかけにできるのでは思います。

(4)その他の協働 ①小中学校との連携

海岸林の再生には長い年月を要します。未来に向けた長期の活動の基盤を作るには、学校との連 携が大切です。

児童生徒の活動プログラムや教師向けの手引き、安全管理から植栽技術、維持管理技術、モニタ リング手法等、学校向けの指導マニュアルがあれば、学校との連携を進めることができます。

宮城県の海岸林再生活動では、既に東松島市、亘理町、山元町などで海岸林植樹活動に学校が参 加しています。植栽の体験だけでなく、防災・減災や、自然環境等様々な学習の場として、海岸林 が持つ可能性を引き出してみましょう。

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②高等専門学校、大学との連携

高等専門学校、大学へのアプローチとしては、調査・研究プログラムのテーマ設定やフィールド 提供を行うのはいかかでしょうか。

自ら考え行動するテーマとして海岸林再生活動を位置づければ、部活動やサークル活動に取り入 れてもらうことも可能だと思います。

③産品開発とエコツーリズム

海岸林再生活動をシンボル化し、シンボル商品とともに普及させることで再生活動のための資金 づくりやコミュニティビジネスへの展開の可能性が広がります。

また、地域の自然環境資源や歴史文化資源を活用したエコツーリズムと海岸林再生活動を結びつ けたメニューや、被災地支援活動と結びつけたメニューなどを大都市圏等に提案していけば、広域 の連携・協働に結びつき、大きな力を得ることになるかもしれません。

その他、震災語り部、震災体験談などは、ツーリズムの大きな資源として利用できます。

④大都市圏の企業・団体等との連携

都市には、人、モノ、カネが豊富にあり、海岸林再生活動フィールドには、海岸林植栽活動だけ でなく、海岸の自然環境や雄大な景観、さまざまなツーリズムの資源があります。

大都市圏の企業・団体が海岸林再生に関わってくれることは、地域に大きな力が下りてくること になり、互いに得るものが大きい理想的な協働につながります。

しかし、大都市圏の企業や団体が活動するためには、地元で受け入れ活動をコーディネートする 団体が不可欠で、その能力やノウハウを持った団体が、さまざまな魅力的なメニューを提案してい けるかどうかがカギになります。

【大都市圏の企業・団体との連携事例】

東京都に事務所を置く公益社団法人ゴルフ緑化促進会さんは、公益社団法人国土緑化推進機構・

宮城県森林インストラクター協会との共催により、山元町で海岸林再生活動に取り組んでいます。

たくさんの親子、多様な団体の参加や、豊富な活動メニューによって充実した事業を行い、大き な成果をあげています。

一般親子の他、みどりの少年団やイオン チアーズクラブなどたくさんの団体によ る協働の形態で実施

植樹活動後は、ネイチャークラフトや自然 観察やいちご狩りを楽しんだり、昼食に地 域の名産品を味わったりして楽しんだ

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