第3章 松前町の将来人口
2 地域に与える影響について
人口減少の影響は、長期的かつ非常に多岐にわたることが想定されます。人口減少が長期的に 与える様々な影響やリスクを想定した上で、長期的な視点に立ち、本町の特徴や強みを生かした
「まち・ひと・しごと」総合戦略全般の政策・施策を検討していく必要があります。
(1)産業・雇用
生産年齢人口の減少により労働力不足を招き、雇用量や質の低下、後継者不足などの問題が 生じることが懸念されます。また、農業については、担い手の不足により耕作放棄地の増加等 が進み、地域によっては人口減少が更に深刻化するおそれがあります。
基盤産業やそれを支える周辺の関連産業・サービスそれぞれが、営業を続けるためには一定 の人口規模が必要となります。地域によっては、生活を直接支えるサービスが維持できなくな る事態が予測されます。これにより、買物弱者を生む可能性は、否定できません。そうした状 況に対する施策を今から準備する必要があると考えられます。
本町の産業構造を踏まえ、雇用力の高い製造業、卸売業・小売業への雇用促進に力を入れる とともに、衰退傾向にある農業での雇用を創出することで、後継者問題、空き家や耕作放棄地 の問題が解消され、本町の基幹産業である製造業、卸売業・小売業に加え、一次産業が活性化 されると、食品加工業ともあいまって六次産業への発展が期待でき、新たな付加価値による産 業振興・農業振興などで雇用を創出することが期待されます。
(2)子育て・教育
全国的には、年少人口の減少による児童・生徒の減少に伴い、地域の核である学校の存続が 難しくなることが懸念されています。本町においても、年少人口が減少傾向にある状況を踏ま えると、出産・子育て・教育体制のしっかりとした構築が求められます。若者が希望どおりに 結婚し、安心して出産、子育てができる社会環境を実現するために、地域全体で支援する子育 てしやすいまちづくりへの取組が必要です。
本町の強みである重信川の湧水や伊予灘など、田園と水と緑に恵まれた美しい自然環境は、
子育てや教育をする上で最適な資源であり、本町の将来を担う子どもたちの教育環境に適して います。
これらの点を最大限にアピールし、特に小学校入学時に本町へ移住・定住するファミリー層 を呼び込むことで生産年齢人口及び年少人口の増加が見込めます。
子育て・教育体制として、保健医療、福祉環境などにより一層の充実を図ることが求められ ます。
(3)医療・福祉
本町では 1995 年から 2000 年にかけて高齢人口比率と年少人口比率が入れ替わり本格的 な少子高齢化に入りました。2010 年には、団塊の世代が 60 歳代となり、10 年後、20 年後 に少子高齢化のバランスをどのように取るかが問われています。
これらの状況をかんがみると、医療・福祉・介護が喫緊の課題として上げられます。高齢者 を支える生産年齢人口の減少による社会保障制度の維持が厳しくなり、制度の再構築の必要性 が高まると推察されます。高齢者が今後も本町で医療サービスが充分に受けられるよう、地域 医療の提供体制を確保することが重要です。また、若者が安心して出産でき、子育ての相談が 可能な体制の構築も重要です。
高齢者が元気で健康な状態を維持していくためには、医療のみならず、本町の自然環境を生 かした公園施設や緑地の活用、さらには文化施設や公民館での医療(健康)セミナーなど様々 な取組が望まれます。また、子育て世代には、子どもの急病などの緊急時に対応できる体制の 構築が求められます。
(4)地域生活
本町の3校区別で地域社会の影響を見た場合、松前校区・岡田校区では交通の利便性などか ら、通勤通学者の住環境として捉えられ、北伊予校区は比較的一次産業従事者が多く居住する ことがうかがえます。
本町の魅力は西も東も鉄道が通っており、空港にも近く、中心には大型商業施設を抱えてい ることで、老若男女が行き交う町として形成されています。
農業地区では、自治会や地域コミュニティの共助が機能することで、コミュニティの希薄化 は解消され、地域の防犯・防災に対し町民が協働できる体制が整えられる環境にあります。し かし、今後は高齢化と人口減少に伴って、住民がいない空家や耕作放棄地の対策も行う必要が あります。
(5)行財政サービス
人口減少により、長期的には税収など歳入の減少が見込まれる一方、高齢化が更に進むこと から、社会保障関係経費等が増加し、更に財政の硬直化が進行するおそれがあります。
町の予算規模は、2009 年の歳入 106.16 億円をピークに減少傾向で、2012 年度には 100.44 億円となっています。
町民税等の地方税は、41 億円前後と、年度による増減はありますが、減少傾向にあると言え ます。特に町の重要な収入源の一つである個人町民税は、人口や所得の変動に影響を受けやす いものです。将来人口推計による生産年齢人口(15~64 歳)の減少予測に伴い、将来の収入
(6)高齢者を支える現役人数
人口減少と年齢別人口の変遷により、生産年齢(15~64 歳)の現役世代が高齢者(65 歳 以上)1人を何人で支えるか、また、75 歳以上の高齢者 1 人を何人で支えるかを試算した結 果、2010 年には、現役世代が 65 歳以上の高齢者 1 人を支える人数は 2.4 人、75 歳以上の 高齢者 1 人を支える人数は 4.9 人でしたが、2040 年の推計では、現役世代が 65 歳以上の高 齢者 1 人を支える人数は 1.4 人となり、75 歳以上の高齢者 1 人を支える人数は 2.4 人とな ります。
(国勢調査、将来推計は社人研による推計)
0 1,000
男
0 1,000 0〜 4
5〜 9 10〜14 15〜19 20〜24 25〜29 30〜34 35〜39 40〜44 45〜49 50〜54 55〜59 60〜64 65〜69 70〜74 75〜79 80〜84 85〜89 90〜
⼥ 0 ⼈
1,000 男 0 1,000
0〜 4 5〜 9 10〜14 15〜19 20〜24 25〜29 30〜34 35〜39 40〜44 45〜49 50〜54 55〜59 60〜64 65〜69 70〜74 75〜79 80〜84 85〜89 90〜
⼥
⼈
現状(2010年) 将来(2040年)
65歳以上1人を現役何人で支える 65歳以上1人を現役何人で支える
2.4 人 1.4 人
75歳以上1人を現役何人で支える 75歳以上1人を現役何人で支える
4.9 人 2.4 人
1.男性 38.6%
2.女性 60.8%
無回答 0.6%
1.将来展望の基礎となる住民意識調査
(1)アンケートの概要
調査対象: 地方創生アンケート 町内にお住まいの 18 歳以上 40 歳未満の方 調査期間: 平成 27 年7月3日まで
調査方法: 郵送配布・郵送回収
配布・回収状況:
配布数 回収数 回収率
地方創生 2000 票 632 票 31.6.%
●アンケートの信頼性について
統計調査で一般的に使用される「母比率の区間推定」という統計的方法理論を用いています。
調査対象となる母集団を 7,000(アンケート配布数 18 歳以上 40 歳未満人口数)とした場合、
統計学上で一般的に使用される条件(信頼度 95%、標準誤差 5%)を想定した必要な回答数は 365 ということになり、この標本数を得ることができれば、調査結果は信頼できる(統計学 上、十分意味あり)とみなすことができることになります。
(2)アンケート結果の抜粋
① あなたの性別について(1つに○)
「1.男性」が 38.6%、「2.女性」が 60.8%となっています。