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圧電飛砂計の開発

ドキュメント内 保坂幸一 (ページ 30-39)

3. 飛砂量の測定方法

3.2 圧電飛砂計の開発

本研究で着目した飛砂発達領域における飛砂は,砂面が短い状況下による測定と なるため, そのような 短い状況での実験では,従来使用されてきた捕砂器による測 定は,計量に十分な測定時間が必要となるため,捕砂器前面の砂面が侵食され てし まう.そこで短い計測時間で電気的に飛砂衝突数を計測できる 圧電飛砂計を開発し た.この飛砂計は,従来の捕砂器とは異なり,飛砂の時間変化が測定できること,

設置が容易であることなどのメリットがある.

圧電飛砂計 の先端に取り付けた圧電センサー はもともと超音波風速計のセンサ ー 等で使用されているもので,センサ ー面に作用する微小な外力に対して,電気信号 を発生させることができる 。その ことから飛砂が衝突した場合 に大きな 電圧値が生 じるため,そのセンサーを設置した高さの移動飛砂粒子数を測定することができる.

飛砂計の大きさは直径 12mm であり,現実的に飛砂を観測できる装置としては非常 に小さく,風に乱れを生じさせ にくい.圧電飛砂計の主な仕様および構造図,使用 時の設置状況写真を表-3.1,図-3.2~図-3.4に示す.

表-3.1 圧電飛砂計センサーの主な仕様

[久保田ら,2006a]

図-3.2 圧電飛砂計センサーの構造[久保田ら,2006a]

図-3.3 圧電飛砂計のブロック図[久保田ら,2006a]

図-3.4 風洞内の圧電飛砂計の設置状況

圧電飛砂計を飛砂量測定装置として使用するためにはまず飛砂計の測定方法およ び結果について検定を行う必要があった.飛砂計の検定は以下の手順で実施した.

(1) 圧電飛砂計の砂粒の衝突による応答特性の検定

圧電飛砂計センサーに直径2mm程度の砂を繰り返し衝突させ,砂粒が衝突した場 合にどのような信号が発生するか調べた.得られた結果は以下の通りである.

① 砂が衝突した場合,ノイズレベルより大きな電圧信号が出力されることが分 かった.

② 衝 突 し た 砂 の 衝 突 信 号 は 大 き な 電 圧 値 が 正 に で る 場 合 と 負 が 正 に で る 場 合 がありその発生確率は同程度であった(図-3.6).

図-3.5 実験模式図[保坂ら,2004]

a)パターン1(53%) b)パターン2(47%)

図-3.6 圧電飛砂計の信号パターン[保坂ら,2004]

(2) 圧電飛砂計の飛砂粒子の衝突による応答特性の検定

数種類の粒径の珪砂を用いた風洞実験により圧電飛砂計に飛砂粒子が衝突した場 合にどのような信号が発生するか調べた(図-3.7).実験により得られた結果は以 下の通りである.

① 砂面が無い固定床(風のみが飛砂計に作用する)ケースでは,出力信号に風に よるノイズが確認され,ノイズ波形には電源周波数である1/50s程度の規則的 変動が見られた.

② シルト(中央粒径 0.045mm)が飛砂計に衝突した場合,時系列にほとんど大 きな信号が認められなかった.シルトの応答波形は,風のみが作用している場 合と類似していた.

③ 中央粒径 0.14mm,0.23mm の砂では,砂が衝突したと考えられる大きな信号

(2V以上)が認められた.粒径が大きい方が信号は大きくなり,衝突したと 考えられる大きな信号の数が増加した.

④ 各粒径ケースの飛砂計による測定値から平均値を差し引いた信号値を標準 化 し度数分布にすると,風のみを作用させたケースとシルトのケースはその度数 分布が正規分布に良く一致した.このことからノイズが不定誤差として処理で きると判断できた.中央粒径 0.14mm,0.23mm の砂では,度数分布は正規分 布に比べ尖った形状となった.これは測定値の平均値が大きくなっているから であった.

図-3.7 風洞実験模式図[久保田ら,2006a]

N o s a n d b e d ( U = 9 . 3 m / s )

0 . 0 0 0 0 . 0 0 3 0 . 0 0 5 0 . 0 0 8 0 . 0 1 0 0 . 0 1 3 0 . 0 1 5 0 . 0 1 8 0 . 0 2 0 0 . 0 2 3 0 . 0 2 5

t ( s )

-505(V)

S - D 0 4 5 ( U = 9 . 0 m / s )

0 . 0 0 0 0 . 0 0 3 0 . 0 0 5 0 . 0 0 8 0 . 0 1 0 0 . 0 1 3 0 . 0 1 5 0 . 0 1 8 0 . 0 2 0 0 . 0 2 3 0 . 0 2 5

t ( s )

-505(V)

S - D 1 4 0 ( U = 8 . 8 m / s )

0 . 0 0 0 0 . 0 0 3 0 . 0 0 5 0 . 0 0 8 0 . 0 1 0 0 . 0 1 3 0 . 0 1 5 0 . 0 1 8 0 . 0 2 0 0 . 0 2 3 0 . 0 2 5

t ( s )

-505(V)

S - D 2 3 0 ( U = 7 . 9 m / s )

0 . 0 0 0 0 . 0 0 3 0 . 0 0 5 0 . 0 0 8 0 . 0 1 0 0 . 0 1 3 0 . 0 1 5 0 . 0 1 8 0 . 0 2 0 0 . 0 2 3 0 . 0 2 5

t ( s )

-505(V)

図-3.8 応答信号時系列[Hosaka and Kubota,2011]

図-3.9 応答信号分布[Hosaka and Kubota,2011]

N 0 S a n d B e d

( U = 9 . 3 m / s )

- 3 . 3 - 2 . 7 - 2 . 0 - 1 . 3 - 0 . 7 0 . 0 0 . 7 1 . 3 2 . 0 2 . 7 3 . 3

N o r m a l i z e d d a t a

0.00.10.20.30.40.50.6Probabilitydensity

N m a x : 8 0 0 0 Δ t : 0 . 0 0 0 1 2 5 s S D 0 . 3 0 4 V

S i l i c a D 0 4 5 ( U = 9 . 0 m / s )

- 3 . 3 - 2 . 7 - 2 . 0 - 1 . 3 - 0 . 7 0 . 0 0 . 7 1 . 3 2 . 0 2 . 7 3 . 3

N o r m a l i z e d d a t a

0.00.10.20.30.40.50.6Probabilitydensity

N m a x : 8 0 0 0 Δ t : 0 . 0 0 0 1 2 5 s S D 0 . 3 0 4 V

S i l i c a D 1 4 0

( U = 8 . 8 m / s )

- 3 . 3 - 2 . 7 - 2 . 0 - 1 . 3 - 0 . 7 0 . 0 0 . 7 1 . 3 2 . 0 2 . 7 3 . 3

N o r m a l i z e d d a t a

0.00.10.20.30.40.50.6Probabilitydensity

N m a x : 8 0 0 0 Δ t : 0 . 0 0 0 1 2 5 s S D 0 . 4 1 7 V

S i l i c a D 2 3 0

( U = 7 . 9 m / s )

- 3 . 3 - 2 . 7 - 2 . 0 - 1 . 3 - 0 . 7 0 . 0 0 . 7 1 . 3 2 . 0 2 . 7 3 . 3

N o r m a l i z e d d a t a

0.00.10.20.30.40.50.6Probabilitydensity

N m a x : 8 0 0 0 Δ t : 0 . 0 0 0 1 2 5 s S D 0 . 9 6 9 V

(3) 高速度カメラを用いた圧電飛砂計の検定

風洞実験により飛砂の圧電飛砂計への衝突状況を撮影し,圧電飛砂計で得られた 電気信号を飛砂量に換算する手法(ノイズカットのしきい値,測定周波数)を検討 した.

① 圧電飛砂計に飛砂が衝突すると1つの正または負の大きな信号のあとに続く 比較的大きな信号が生じていた.サンプリング周波数8000Hzで採取したデー

タから4000 Hz,2000 Hz,1000 Hz,500Hz のデータを作成して衝突信号数を

比較した結果,周波数 4000Hz 以上で採取した場合は,その衝突信号に引き 続く大きな信号を除去する必要があり,周波数 2000Hz 以下で採取した場合 には衝突数を割り増しする必要があることがわかった.

② 本 実 験 装 置 お よ び 実 験 条 件 で の 衝 突 を 判 定 す る 閾 値 は 細 砂 ( 中 央 粒 径

0.25mm)では 1.2V,粗砂(中央粒径 0.52)では2.1V程度である.

③ 圧電飛砂計は,1粒の砂が衝突する際に衝突信号が振動しつつ減衰するため,

衝突後に連続して衝突信号と同等の大きな信号が発生する.そのような場合 に,衝突後の信号値が2個連続して,閾値未満となるまで計数を止めること で誤計数を避けることができる.

④ 圧 電 飛 砂 計 か ら 求 め た 飛 砂 衝 突 数 は 高 速 度 カ メ ラ の 映 像 に よ る 衝 突 数 と 良 い一致を示した.ただし,砂面近くの飛砂数が多い場合には圧電飛砂計から の衝突数は過少評価ぎみとなる.

⑤ 飛砂計の測定限界は細砂(中央粒径0.25mm)の場合は0.03gf/cm2/s程度,粗 砂(中央粒径0.52~0.68mm)の場合は0.1~0.3gf/cm2/s程度であった.

⑥ 得られた飛砂衝突数を中央粒径と密度ρ(2.7g/cm3)とから飛砂量に換算して,

鉛直分布型トラップによる飛砂量と比較した結果は良い一致を示した.飛砂 量は砂面近傍で大きく,砂面から上に向うと急激に減じる分布を示し,風速 が大きいほど飛砂量が多い結果となった.同時に鉛直分布型捕砂器により測 定した結果と比較したところ,風速の大きい場合の砂面近傍を除けば一致は 良好であった.

図-3.10 高速度カメラによる撮影状況[久保田ら,2007]

1 01 1 00

1 0- 1 1 0- 2

T r a n s p o r t r a t e ( g / c m 2 / s )

1 0- 3 1 0- 4

0102030405060

E l e v a t i o n ( c m )

D 5 2 0

T r a p ( u * : 2 . 6 1 m / s ) T r a p ( u * : 2 . 4 4 m / s ) T r a p ( u * : 1 . 6 9 m / s ) S e n s o r ( u * : 2 . 5 2 m / s ) S e n s o r ( u * : 2 . 3 1 m / s ) S e n s o r ( u * : 1 . 7 7 m / s )

図-3.11 飛砂計と捕砂器の飛砂量鉛直分布測定結果の比較(D25)

[Hosaka and Kubota,2011]

図-3.12 飛砂計と捕砂器の飛砂量鉛直分布測定結果の比較(D52)

[Hosaka and Kubota,2011]

図-3.13 飛砂計と捕砂器の飛砂量鉛直分布測定結果の比較(D68)

[Hosaka and Kubota,2011]

1 00 1 0- 1

1 0- 2 1 0- 3

T r a n s p o r t r a t e ( g / c m 2 / s )

1 0- 4 1 0- 5

0102030405060

E l e v a t i o n ( c m )

D 2 5 0

T r a p ( u * : 1 . 3 2 m / s ) S e n s o r ( u * : 2 . 3 8 m / s ) S e n s o r ( u * : 1 . 7 9 m / s ) S e n s o r ( u * : 1 . 2 9 m / s )

1 01 1 00

1 0- 1 1 0- 2

T r a n s p o r t r a t e ( g / c m 2 / s )

1 0- 3 1 0- 4

0102030405060Elevation(cm)

D 6 8 0

T r a p ( u * : 1 . 6 7 m / s ) T r a p ( u * : 1 . 2 9 m / s ) T r a p ( u * : 0 . 8 4 m / s ) S e n s o r ( u * : 1 . 6 7 m / s ) S e n s o r ( u * : 1 . 2 9 m / s ) S e n s o r ( u * : 0 . 8 4 m / s )

(4) 高濃度飛砂量測定のための圧電飛砂計の改良

圧電飛砂計は強風時や砂面近傍などの飛砂が非常に多く発生する状況下では,飛 砂量を過小評価する場合があった.圧電飛砂計のセンサー部は 12mm の円形をして おり,ここに飛砂が衝突することによって生じる微弱電圧により飛砂を検知し て単 位時間当たりの飛砂粒子数を計数する.飛砂量の過小評価は 12mm のセンサー径で は大量に飛砂が生じている場合 に同時に複数の砂が衝突 してしまう ことが要因で発 生する.そこで,このセンサ ー部に内径がセ ンサー面積よりも小さい面積の穴があ いたカバーを取り付けた.穴の大きさは 8,6,5,4,3,2.5mmのものを用いて穴の 大きさによる測定結果の違いを評価した.結果は以下の通りである.

① 従来型と各種カバーを取り付けた改良型との 測定結果の 比較を行った結果,

砂面近くでは改良型は従来の測定限界値を越えており,特に内径 4mm のカ バーを取り付けたものが最も大きい測定値を示した。カバーの内径が小さい

3mm,2.5mmではむしろ測定値は小さくなった.内径が小さいとカバー入口

で砂がはじかれることなどにより,カバー内部の検知部まで到達しない飛砂 が増えるためと考えられる.

② 測定限界値はD25に対しては約0.1gf/cm2/s,D52の砂に対しては約 1gf/cm2/s と考えられ,測定限界が広がった.

③ D25の砂に対して,u*=1.6~1.8m/sの場合の砂面近傍(砂面上 10cm以下)で は過小評価となったが,このような風条件は台風や竜巻などの来襲時であり,

飛砂による地形変化が問題となるような強い季節風 が卓越する状況等 では,

この飛砂計で十分に測定できると考えられる.

左:カバーなし,中:カバー内径 5mm,右:カバー内径4mm 図-3.14 圧電飛砂計のセンサーカバー装填状況[香取ら,2013]

※Trapは 飛 砂 計 の 各 ケ ー ス に 対 し て ほ ぼ 同 条 件 の 捕 砂 効 率 で 補 正 さ れ た 捕 砂 器 の 測 定 結 果

図-3.15 飛砂量鉛直分布(中央粒径0.25mm)[香取ら,2013]

※Trapは 飛 砂 計 の 各 ケ ー ス に 対 し て ほ ぼ 同 条 件 の 捕 砂 効 率 で 補 正 さ れ た 捕 砂 器 の 測 定 結 果

図-3.16 飛砂量鉛直分布(中央粒径 0.52mm)[香取ら,2013]

ドキュメント内 保坂幸一 (ページ 30-39)

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