28 もので慣行と強く結びついているものである。
2. 国民文化に関する先行研究のモデル
Hofstedeモデルの調査、GLOBEの調査、Trompenaars=Hampden-Turnerの国民レベル
における文化差の研究とは、以下の内容である。Hofstede[1991]は、世界各国における文化の違い、価値観の違いを明らかにすることを目的
とし、IBM社の世界50カ国の地域において、アンケート調査を行った。その結果、権力格差(Power Distance)、集団主義対個人主義(Collectivism v.s. Individualism)、女らしさ対男ら しさ(Femininity v.s. Masculinity) 、不確実性の回避(Uncertainty Avoidance)の4つの次 元を明らかにした。また、後に、23カ国の国籍からなる大学生を対象に中国的価値観の調査を行 った結果、長期的志向対短期的志向(Long-term Orientation v.s. Short-term Orientation)
の次元を明らかにした。
31
ロシアは、Hofstedeが調査を行った1980年代当時はソ連時代であったため、調査対象とはな らなかったが、1990年以降、同様な調査が複数の研究者によって行われた(表4)。
表 4 Hofstedeモデルの各種調査
調査時期 研究者 調査対象者 調査値
1989.10 Bollinger 上級管理職、55人 モスクワ
1989~1990 Fernandez 1236人 -
1992.7 Veiga et al. マネジャー、170人 -
1993 夏 Elenkov マネジャー、64人 モスクワ、ペテルブルク
1991~1999 Mirty=Bradley 民間企業、5400人 ロシア、ウクライナ、ベラルーシ
1995.10~1996.6 Naumov=Puffer 様々な年代・職業、250人 ロシア各地
出所: 筆者作成
(表4)のロシアに関するHofstedeモデルの各種調査の数値と、Hofstede[1991]による日本、
アメリカの数値との比較をまとめた(表5)。HofstedeもWebpageに、推定値(Estimated Value)
としてロシアに関する数値を挙げている。
表 5 Hofstedeモデルの比較(ロシア、日本、アメリカ)
個人主義 権力格差 不確実性の回避 男性らしさ 長期的志向
Bollinger [1994] 26 76 92 28
Fernandez [1997] moderate low high high moderate high
Veiga et al. [1995] moderate high high low low
Elenkov [1997] 40 89 87 50
31 43 103 -5 24
41 40 68 45
Hofstede 注1 47 95 75 40
日本 注2 46 54 92 95 80
アメリカ 注2 91 40 46 62 29
Mirty=Bradley [1999]
Naumov=Puffer [2000]
出所: 注1 http://www.geert-hofstede.com/hofstede_dimensions.php 注2 Hofstede[1991]
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GLOBE(Global Leadership and Organizational Behavior Effectiveness Research
Program)は、ウォートン大学の House
教授が率いたプロジェクトで、62カ国の国民文化について世界中
951
の機関の17,000
人のマネジャーから集めたデータを元に定量分析したリサーチプロジェクトである。GLOBE は、社会的文化(国民文化)と組織文化両面について、9 つの基本的 文化特性、カルチャー・ディメンションについて検証し、それらがどのように
62
の社会的文化(国 民文化)において影響をもっているか検証している。それら9
つの基本的文化特性とは次のとおり である。・ 不確実性の回避(Uncertainty Avoidance):社会や組織、集団が、不確実性を回避するた めに、確立された社会的規範や儀式、手続きに依拠している程度
・ 権力格差(Power Distance):集団のメンバーが、権力が不均等に偏っていることに期待し、
許容する程度
・ 制度的集団主義(Institutional Collectivism):組織や社会が制度的若しくは社会的な集 団行動を促す程度
・ グループ内集団主義(In-Group Collectivism):人々が自らの組織や家族の中で、自尊心、
忠誠心、一体感を表現する程度
・ ジェンダー平等主義(Gender Egalitarianism):組織や社会が、性役割の違いを最小限に し、男女の平等を促す程度
・ 自己主張(Assertiveness):人々が、社会的関係において決意が固く、自己主張し、挑戦的 で、攻撃的である程度
・ 未来志向 (Future Orientation):人々が、将来の計画や投資、時間が経ってから得られ る満足といった未来志向の活動にかかわっている程度
・ 業績志向(Performance Orientation):組織や社会が集団のメンバーに、業績や卓越性を 向上することを奨励し、それに報償を与える程度
・ 人間志向(Humane Orientation):文化が、他人に対して公正、自己犠牲的、寛容で、優 しく、親切である程度
ロシアにおける
GLOBE
の調査は、Gratchevを中心として、1995年から1996
年にかけて行 われた。電気通信業界、食品加工、金融業界のマネジャーや経営者ら合計450
人がその対象と なった。ロシア、日本、アメリカの比較について、現状実践している価値(As Is)と理想としている 価値(Should Be)について、それぞれ比較を行った(表6)。
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表 6 GLOBEの数値比較(As Is と Should Be)
ロシア Rank 日本 Rank アメリカ Rank
業績志向 3.39 C 4.22 B 4.49 A
未来志向 2.88 D 4.29 B 4.15 B
ジェンダー平等主義 4.07 A 3.19 B 3.34 B
自己主張 3.68 B 3.59 B 4.55 A
制度的集団主義 4.50 B 5.19 A 4.20 B
グループ内集団主義 5.63 A 4.63 B 4.25 C
権力格差 5.52 A 5.11 B 4.88 B
人間志向 3.94 C 4.30 B 4.17 C
不確実性の回避 2.88 D 4.07 C 4.15 B
ロシア Rank 日本 Rank アメリカ Rank
業績志向 5.54 D 5.17 E 6.14 A
未来志向 5.48 B 5.25 B 5.31 B
ジェンダー平等主義 4.18 B 4.33 B 5.06 A
自己主張 2.83 C 5.56 A 4.32 B
制度的集団主義 3.89 D 3.99 C 4.17 C
グループ内集団主義 5.79 B 5.26 C 5.77 B
権力格差 2.62 C 2.86 C 2.85 C
人間志向 5.59 B 5.41 B 5.53 B
不確実性の回避 5.07 A 4.33 C 4.00 C
As Is
Should Be
また、Trompenaars=Hampden-Turner[1993, 1997]は、30 社のグローバル企業が展開し ている
50
カ国について、それぞれの国から最低100
人以上の社員を対象に合計約15,000
人 のマネジャーから、7つの文化カテゴリーに関する調査を行った。7つの文化カテゴリーは、次のと おりである。・ 普遍主義(Universalism) / 個別主義(Particularism):規則対人間関係
・ 個人主義(Individualism) / 共同体主義(Communitarianism):個人対集団
・ 感情中立的(Neutral) / 感情表出的(Affective):感情表出の範囲
・ 関与特定的(Specificity) / 関与拡散的(Diffusion):関与の範囲
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・ 達成型地位(Achievement) / 属性型地位(Ascription):地位が付与される方法
・ 順次的(Sequential) / 同期的(Synchronous):時間管理の方法
・ 内的志向(Inner-directed) / 外的志向(Outer-directed):自然との関わり方
同じく、ロシア、日本、アメリカの比較を表にした(表7)
表 7 Trompenaars=Hampden-Turnerの文化カテゴリーの比較(ロシア、日本、アメリカ)
ロシア 日本 アメリカ
普遍主義 / 個別主義 個別主義 ミックス 普遍主義
個人主義 / 共同体主義 個人主義 共同体主義 個人主義
感情中立的 / 表出的文化 感情表出的文化 感情中立的文化 ミックス 関与特定的 / 拡散的文化 関与拡散的文化 関与拡散的文化 関与特定的文化
達成型 / 属性型地位 属性型地位 属性型地位 達成型地位
順次的 / 同期的 同期的 同期的 順次的
内的志向 / 外的志向 外的志向 外的志向 内的志向
ロシアの文化カテゴリーについては、次のような理解になる。
・ 個別主義文化であり、焦点は規則よりも人間関係にある。
・ 個人主義文化であり、多用するのは「私」を主張とする表現であり、意思決定は代表が行う。
・ 感情表出的文化であり、自分の考えや感情を言語媒体と共に非言語媒体を用いて表に出 す。
・ 関与拡散的文化であり、人間関係を作る場合、間接的で、肝心な点の周辺を回る。
・ 属性型地位文化であり、組織内での自分の地位を明らかにするため、肩書きを広汎に使う。
・ 同期的文化であり、同時に複数の活動をし、約束時間は大まかで、重要な人物に時間を与 える。
・ 外的コントロール志向的文化であり、柔軟で、進んで妥協し、平和を保とうとする。