以上のことから,国内と外国における外的要因(有病率,臨床症状,治療方法及び治験実施医療 機関)は類似しており,外国臨床試験成績を日本人に外挿するうえで問題にならないと考えられた。
2) 日本人と外国人における薬物動態の比較注3)
日本人と外国人の健常成人におけるエレトリプタンの薬物動態プロファイルを,線形性,食事の 影響,分布容積,血漿蛋白結合率,全身クリアランス,血漿中代謝物及び尿中排泄率の各項目につ
注1)Ramadan, N. M., et al.(current) : Evidence‑Based Guidelines for Migraine Headache in the Primary
Care Setting: Pharmacological Management for Prevention of Migraine. the American Academy of Neurology.
注2)Steiner, T.J., et al.(2000): Guidelines for All Doctors in the Diagnosis and Management of Migraine and Tension‑type Headache. British Association for the Study of Headache, 2nd edition approved for publication.
注3)ヘ.「薬物動態に及ぼす民族的要因」(概要337頁)
外挿可能性の根拠
いて,国内及び外国で実施された第Ⅰ相試験の結果を記述統計により比較した。また,これらの第
Ⅰ相試験の結果を併合した,統計的な検討を加えた解析(メタ・アナリシス)を実施し,日本人と 外国人の薬物動態を比較した。
記述統計により比較した結果では,薬物動態プロファイルは日本人と外国人で類似していたが,
日本人の経口投与時における曝露量は外国人に比べ約30%〜40%低かった。また,メタ・アナリシ スの結果においても,日本人における経口投与時のCmax及びAUCは外国人に比べそれぞれ33%及び 38%有意に低いことが示され,記述統計による比較と類似した傾向であった。
日本人と外国人の健常成人における絶対生物学的利用率を,国内と外国の第Ⅰ相試験の間で比較 した結果,日本人における絶対生物学的利用率は外国人に比べ約22%低かった(絶対生物学的利用 率は日本人及び外国人でそれぞれ36.4%及び46.9%)。エレトリプタンの静脈内投与後の薬物動態 パラメータには日本人と外国人の間で差が認められなかったことから,経口投与時の曝露量の民族 間差は生物学的利用率の差に起因していると考えられた。その要因として,吸収の程度が日本人に おいて低いこと,あるいは初回通過代謝が日本人において高いことが推察された。また,同時に測 定した唾液中濃度は血漿中濃度とほぼ同様に推移し,唾液中濃度と血漿中濃度は相関していること が示唆された。
日本人と外国人の片頭痛患者の発作時におけるエレトリプタンの薬物動態を国内用量反応試験
(治験№160‑901ト‑6)),欧州及び米国の臨床試験(治験№160‑318,103ト‑9,13))で得られた唾液中 濃度で比較したところ,健常成人と同様に,日本人の曝露量は外国人に比べて低く,その差は13%
であった。
日本人の健常成人における曝露量(Cmax及びAUC)及び片頭痛患者における唾液中濃度は外国人 に比べ低い値を示した。しかし,後述するように,ブリッジング試験である国内用量反応試験(治 験№160‑901 )とブリッジング対象試験である欧州及び米国の臨床試験(治験№160‑314,102
ト‑7,8))で,本薬の用量における有効性及び安全性の成績は類似していた。曝露量の民族間差が有
効性及び安全性の差としてあらわれない要因として,曝露量の民族間の変動は個人間の変動よりも 小さいこと,また,この差は臨床効果を裏付ける薬理作用(ヒト頭蓋血管の収縮作用)に影響を及 ぼさない程度であることが考えられる注1)。これらの考察は,①プロプラノロール併用によるエレ トリプタンの曝露量の30%程度の上昇はエレトリプタンの有効性に影響しないこと,②薬物動態/
薬力学モデルに基づく患者における頭痛の改善率の検討から,曝露量の30%の減少により頭痛の改 善率は3%しか低下しないと推定されたことなどのデータからも支持される注2)。
3) 日本人と外国人における用量反応,有効性及び安全性の比較
① ブリッジング対象試験の選択
国内用量反応試験(治験№160‑901ト‑6))をブリッジング試験として位置付け,外国の第Ⅱ相 用量反応試験(治験№160‑314ト‑7)
)の治験デザイン及び外国臨床試験成績(治験№160‑314,
102,305ト−7〜9))に基づいて計画し実施した。
ブリッジング対象試験の選択は,以下のように行った。
国内用量反応試験は,有効性の評価の対象とした7つの外国第Ⅱ/Ⅲ相試験(治験№160‑314,
102,305,318,104,307,103ト‑7〜13))と以下の点で治験デザインが類似していた。
注1)ヘ.「薬物動態(曝露量)の民族間差が有効性に影響しないとする根拠」(概要352頁)
注2)ヘ.「薬物動態の民族間差が有効性の差としてあらわれないことを支持するデータ」(概要353頁)
外挿可能性の根拠?
•
二重盲検,プラセボ対照,無作為化試験であること•
国際頭痛学会の片頭痛診断基準により「前兆を伴う片頭痛」又は「前兆を伴わない片頭 痛」と診断された患者を対象としていること•
患者の選択基準及び除外基準がほぼ同一であること•
ほぼ同一の服用方法であること•
同一の有効性の評価項目及び評価方法を用いていること•
主要評価が服用2時間後の頭痛の改善であること7つの外国臨床試験(治験№160‑314,102,305,318,104,307,103ト‑7〜13))におけるITT集 団を対象とした初回服用2時間後の頭痛の改善率を表ト−80に示した。
7つの外国臨床試験のいずれにおいても,エレトリプタンの用量とともに頭痛の改善率は高く なり,エレトリプタンのいずれの用量における頭痛の改善率もプラセボに比較して統計的に有意 に高かった。また,エレトリプタンの各用量における頭痛の改善率は,外国臨床試験の間でほぼ 同程度であった。
これらの検討結果に基づいて,国内用量反応試験の開鍵前の1999年12月に外国臨床試験成績の 外挿可能性を評価するための解析計画についての治験相談を実施したところ,医薬品機構より,
有効性の評価項目に関する用量反応の類似性を主に検討すること,2つの外国臨床試験[治験№
160‑314
ト‑7)(欧州)及び160‑102
ト‑8)(米国)]を,国内用量反応試験に対するブリッジング対 象試験とすることが提案された。その提案に基づいて,この2試験をブリッジング対象試験とし
た。
表ト−80 外国第Ⅱ/Ⅲ相試験における初回服用2時間後の頭痛の改善率(ITT)
エレトリプタン
治験№ 20mg 40mg 80mg プラセボ 54%* 65%* 77%* 24%
160‑314a)
(欧州) (70/129) (76/117) (91/118) (30/126) 47%* 62%* 59%* 22%
160‑102 a)
(米国) (129/273) (174/281) (170/290) (60/276) 62%* 65%* 19%
160‑305
(欧州)
(265/430) (288/446) (44/232) 64%* 67%* 31%
160‑318
(欧州)
(108/169) (107/160) (25/80) 62%* 70%* 40%
160‑104
(米国)
(109/175) (119/170) (34/86) 54%* 68%* 21%
160‑307
(欧州)
(111/206) (142/209) (21/102)
58%* 30%
160‑103
(米国)
(283/492)
(36/122)
* プラセボとの比較:p<0.05 a) ブリッジング対象試験
② ブリッジング試験とブリッジング対象試験の試験方法の詳細な比較
ブリッジング試験である国内用量反応試験とブリッジング対象試験である欧州及び米国の2試 験の試験方法の類似点・相違点も詳細に検討した。その概略を表ト−81に示した。
外挿可能性の根拠
(i) 治験デザイン
国内,欧州及び米国の3試験のいずれも多施設共同,二重盲検,無作為化,プラセボ対照,
並行群間比較試験であり,3試験の間で共通であった。
(ii) 片頭痛の診断基準
国内,欧州及び米国の3試験のいずれにおいても,国際頭痛学会の片頭痛診断基準で片頭痛 と診断された患者を対象とし,3試験の間で共通であった。
(iii) 対象年齢
治験における患者の対象年齢は,国内用量反応試験では18歳以上65歳未満としたが,欧州及 び米国の2試験では18歳以上とし上限を設定しなかった。外国臨床試験の成績から65歳以上の 患者における有効性及び安全性が65歳未満の患者と同様に認められていること注),実際に治 験に組み入れられた65歳以上の患者数は,ブリッジング対象試験とした欧州の臨床試験で 7/692例(1.0%),米国の臨床試験で17/1190例(1.4%)と少数であることから,有効性及び 安全性の類似性の評価に問題はないと考えた。
(iv) 追加服用の有無及び服用の対象とした発作回数
国内,欧州及び米国の3試験のいずれにおいても,主目的として初回服用に対するエレトリ プタンの有効性を検討した。また,欧州の臨床試験では,再発例に対して追加服用を可能とし,
米国の臨床試験では,無効例及び再発例に対して追加服用を可能とし,追加服用におけるエレ トリプタンの有効性を副次的目的として検討した。服用の対象とした発作回数については,国 内及び欧州の2試験では1回の発作のみ,米国の臨床試験では3回の発作であった。しかしな がら,類似性の評価に関する解析項目を「1回目発作に対する初回服用2時間後の頭痛の改善 率」としたことから,これらの違いは類似性の評価に支障ないと考えた。
(v) 投与量
国内,欧州及び米国の3試験のいずれにおいても,エレトリプタン20mg,40mg,80mg及びプ ラセボを用いた。欧州の臨床試験では実薬対照としてスマトリプタン100mgを用いたが,類似 性の評価ではエレトリプタンの用量反応を比較することから,スマトリプタンの成績は用いな いこととした。
(vi) 有効性の主要評価項目
国内,欧州及び米国の3試験における有効性の主要評価項目は「頭痛の改善」であり,3試験 の間で共通であった。また,3試験のいずれにおいても,主解析はITT集団における初回服用 2時間後の頭痛の改善率であった。
(vii) 有効性の解析対象集団
国内,欧州及び米国の3試験における有効性の解析対象集団は,ITT群と評価可能群の2つ の集団であり,またその定義は3試験の間で共通であった。3試験において,ITT集団と評価 注)「高齢者に対する臨床成績のまとめ」(概要675頁)