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住民

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そして、「観光スタイルにおける創造性への移行は、旅行者の観光経験に基づく 進化の一部と見なすことができる」(Richards & Wilson, 2007, p.20)として、

旅行者の価値意識と観光スタイルの進化の関係を論じている(図表3-3)。

(図表3-3)旅行者の価値意識と観光スタイルの進化の関係

リチャーズとウィルソンによると、「マス・ツーリズムの初期段階において、

休暇の価値は多くの人々にとって『所有する』という側面が強かった。当時、

休暇を取ることは一種のステータスであり、自動車やテレビといった物理的な

『モノ』を所有するのと同等の扱いであった。その後、休暇が日常生活の一部 となり、旅行での重点は『所有』から『何を見て、何をしたか』といった旅行 においての経験を問うことに移行していった。そして、最近の人々は、観光の 活動として標準化・規格化された『見聞』や『体験』が代わり映えなく延々と 継続する状態に辟易し始めている」(Richards & Wilson, 2007, p.20)という。

理由としては、旅行者にとっての観光資源が「有形物」から「無形物」に移行 している(図表3-4)ことが挙げられる(Richards & Wilson, 2007, pp.17-18)。

Creative tourism

 (創造的観光)

Cultural tourism

 (文化的観光)

Mass tourism

 (大衆的観光)

Needing Wanting Having Being

出所: Richards & Wilson (2007)

Tourism style

Driver

(基本的なニーズを満たす)

(区別の作成 → 差異の認識)

(自己開発 → 自己創造)

Self development

Creating distinction

Meeting basic needs

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(図表3-4)観光資源の移行

これは現在の観光消費における観光資源の源泉が多岐にわたることを示唆する ものである(Richards & Wilson, 2007, p.20)。「文化的観光」に関していうと、

過去には文化的記号として、《見どころ》の消費に主眼が置かれたが、現在では

《実存する雰囲気や空気に浸る》といった本質的文化消費が重視されるように なっている(Richards & Wilson, 2007, pp.20-21)。今日では「文化的旅行者」

の多くが、訪問地における地域社会の一員となって他者の日常生活と直接的に 接触したいと希望するようになっている(Richards & Wilson, 2007, p.21)。

その意味からすれば、図表3-3での‘being’とは、訪問地において旅行者が 一時的な地域社会の一員に「なる」ことを意味している。そのような志向性が 旅行者による創造性の要諦であり、観光スタイルの進化における推進力として 機能していると考えられるのである。

(2)「オールドツーリスト」と「ニューツーリスト」

プーン(Auliana Poon)はツーリストのもつ価値観などに基づき「オールド ツーリスト」と「ニューツーリスト」とに分けるのが望ましいという考え方を 示した(大橋, 2010, p.95)。プーンは、消費者においての消費行動や価値観の 変化がニュー・ツーリズムでの重大な推進力に繋がっている(Poon, 1993, p.9)

とし、オールドツーリストとニューツーリストとの間の根本的相違点を示した

(図表3-5)。前者はツーリズムでも慣れ親しんだ所に行き、自己流儀の仕方を 押し通そうとするものであり、後者は新しい所にも行くし、訪問地に溶け込も うとする心情も強いものたちである(大橋, 2010, p.95)。

Built heritage (遺産的建築物) Image (イメージ)

Museums (博物館・美術館) Identity (アイデンティティ)

Monuments (記念碑) Lifestyle (ライフスタイル)

Beaches (砂浜) Atomosphere (雰囲気)

Mountains (山岳) Narrative (物語)

Creativity (創造性)

出所: Greg Richards and Julie Wilson (2007)

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(図表3-5)「オールドツーリスト」と「ニューツーリスト」の比較

プーンは、ニューツーリストの特性について、経験志向(more experienced)、 自然・エコ志向(more‘green’)、柔軟的(more flexible)、独立的(more

independent)、「質」に対して意識的(more quality conscious)と評価して、

そのようなことに〈喜び〉を感じていると分析する。一方、オールドツーリス トにおける動機の分析について、ニューツーリストのそれと異なる。オールド ツーリストにとって、どこに行ったかは重要ではなく、他人に披露するための 暖かい場所を求めており、サービスでの品質も比較的に重要とはしていない

(Poon, 1993, p.10)と考える。その上で、オールドツーリストは均質で予測 可能なものを希求する傾向にあり、団体の中で旅行することが安全だと感じて おり、事前に支払いや手配の全てが完了した休暇を選択すると指摘する。また、

ニューツーリストは群衆と異なることを望んでおり、自分の個性を大切にして 自分でコントロールしたいと思っている、と指摘する。

一方で、最近の消費者における旅行商品の選択に関して、髙井(2013)が、

自らの旅行目的や文脈に対応した合理性に基づき海外パッケージツアーを選択 する消費選択における自律した旅行者としての「ニューツーリスト」の存在を 指摘している。そのため、ブーアスティンと同様にプーンの指摘は二項論的で 抽象的なものであるとして、一部からは批判的に捉えられる部分があることは 否めない。しかし、観光での旅行者の意識と行動を考える際、プーンの指摘は 重要な視座を与えてくれるのである。

オールドツーリスト(Old tourists) ニューツーリスト(New tourists)

太陽を求める 異なる経験

大衆追従 変化を求める

今さえ良ければよい 見て楽しむが破壊はしない

どこに行ったか披露する その瞬間を楽しむ

自己所有 自己成長

自己優位 他者理解

施設が好き スポーツが好き

慎重的 冒険的

ホテル内での食事 ローカルフード

同種 雑種

出所: Poon(1993)

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(3)「ハード・ツーリズム」と「ソフト・ツーリズム」

プーンによる「オールドツーリスト」・「ニューツーリスト」の分類は、消費 者における消費行動の変化と価値観の変化を旅行者行動に置換したものである。

ここでは、プーンがいう「価値観の変化」を観光における旅行者の価値意識の 変容と理解して、プーン以前より議論されていたマス・ツーリズムに対峙する 概念としての「ソフト・ツーリズム」について取り上げたい。

オルタナティヴ・ツーリズム22に包含される「ソフト・ツーリズム」(soft

tourism)とは、「ローカル・レベル・ツーリズム」(local-level tourism)とも

呼ばれ、地域住民の視点を重視したツーリズム形態である(安福, 2000, p.113)。 また、地域住民とゲストとの間の相互理解、ホスト地域の文化的伝統を尊重し、

可能なかぎり環境保全を達成するような観光(長谷川政弘編著『観光学辞典』, 1998, p.12)のことを指す。

ちなみに、ヨーロッパでは、すでに 1970 年代後半から、マス・ツーリズム に対峙する新しい観光行動が議論されるようになっている(吉田, 2010, p.225)。 ツォレス(1981)らは、「ハード・ツーリズム」と「ソフト・ツーリズム」の 間における旅行者の価値変容を対比させた表を作成しており、吉田(2008)に よって翻訳されている(図表3-6)。ツォレスらによる分類は、基本的にハード・

ツーリズムの形態として団体旅行を想定しており、その中には団体パッケージ ツアーも含まれる。一方のソフト・ツーリズムの形態は、基本的に個人旅行を 想定している。

パッケージツアーを考慮した場合に、個人旅行者向けのパッケージツアーも 数多く存在する。それらを選択する旅行者たちがソフト・ツーリズムの範疇に あるかという疑問に対しては、「パッケージツアー」というマス・ツーリズムの 装置系に組み込まれる以上、ハード・ツーリズム領域と考えるのが妥当である。

しかし、近年の個人旅行者向けのパッケージツアーは、商品造成過程にマス・

22オルタナティヴ・ツーリズムの発生経緯およびマス・ツーリズムとの比較に関しては、石原(2000)に 詳しい。ツーリズム分野では、オルタナティブ論的な考え方に立脚するものとして、具体的にはソフト・

ツーリズム、グリーン・ツーリズムなど種々な名称で呼ばれているが、一般的に、それらは「新しい意 識的ツーリズム」(new aware tourism)と総称されるもので、約言していえば、地域主導性、環境の持 続性保持、持続発展可能なツーリズムを3原則とする(大橋, 2010, p.31)。

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カスタマイゼーション(mass-customization)の概念が取り入れられたものや、

現地滞在中の旅行者の行動は完全にフリーとなるツアーなどもあり、ハード・

ツーリズムとソフト・ツーリズムを二項的に区分することが難しい面もある。

(図表3-6)「ハード・ツーリズム」と「ソフト・ツーリズム」の比較

6.旅行者と訪問地の人々との接触

マス・ツーリズムという形態は、これまでに様々な批判の対象となってきた。

その中の一つに旅行者と訪問地の人々の関係があり、安福(1994a=2000a)は、

両者間における接触の特徴として、①自文化のバブル、②ステレオタイプ化、

③プロのホスト、④人間関係の商品化、⑤ツアーガイドの 5 点を挙げている。

上記をもとにして、ここでは団体パッケージツアーでの様相について述べたい。

ハード・ツーリズム ソフト・ツーリズム 団体旅行(マスツーリズム) 個人で、家族・友人と

慌しい時間 ゆったりの時間

速い交通手段 適度な速さの移動手段 変更不可能な行程 思いつきの行動決定 外からの管理(他人任せ) 内からの管理(自律的な旅)

どこでも同じライフスタイル その土地のライフスタイル

《見どころ》志向 体験・経験志向 疲れを伴うアクティヴィティ のんびり成り行きまかせ 少ない(不必要な)知的準備 訪問地に関する事前学習

外国語不要 外国語の学習

(文化的)優越感に浸る よろこびの享受 買い物・ショッピング プレゼントを持っていく

土産物を買う 新しい知識の記憶・記録 スナップ写真と絵ハガキ スケッチ・絵を描く(プロ写真)

珍しいものへの好奇心 身体のリズム

やかましい おちついた

出所: Zolles他(1981, p.12)をもとに、吉田(2008・2010)

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