8 整形増幅器
8.2 回路シミュレーション
𝑃.•exp •− 𝑡
𝑃v‘ − exp •− 𝑡
𝑃"‘— (8 − 9)
(表8.1)フィッティングパラメータ
𝑃. 𝑃v 𝑃"
GAGG -0.114051 103n 2.82n プラスチックシンチレータ -4.18116 3.06n 2.81n
表8.1のフィッティングパラメータを⽤いて各積分時定数ごとにシミュレーションを⾏い、
その結果得られた𝑉XŽˆを実験で得られた30個の出⼒波形を平均した波形と⽐較したものを GAGGの場合は図8.5に、プラスチックシンチレータの場合は図8.6に⽰した。(プラスチッ クシンチレータの積分時定数500nsの時に関しては20個の波形の平均である)
(図8.5)GAGGの実験とシミュレーションの波形⽐較
(図8.6)プラスチックシンチレータの実験とシミュレーションの波形⽐較
また、シミュレーションと実験の時定数の変化による波⾼の振る舞いを⽐較するために、
20nsの時のシミュレーションと実験の波⾼を合わせた。波⾼を合わせる際には、シミュレー ションの𝑉Š{に与える式8-9の𝑃.を変えて合わせ、50ns,100ns,200ns,500nsのシミュレーショ ンでは20nsで合わせた𝑃.を⽤いてシミュレーションを⾏った。図8.7,図8.8はその結果で、図 8.9は各シンチレータ、各時定数ごとの最⼩波⾼の⽐較である。
(図8.7)GAGGの実験とシミュレーションの波形⽐較 (波⾼を20nsに合わせた)
(図8.8)プラスチックシンチレータの実験とシミュレーションの波形⽐較 (波⾼を20nsに合わせた)
(図8.9)図8.5〜図8.8の最⼩波⾼(橙:実験 ⻘:シミュレーション)
図8.5〜図8.8を⾒ると、実験とシミュレーションの波形の⽴ち上がりと⽴ち下がりの時定 数は、プラスチックシンチレータとGAGGの両⽅でほとんど同じような振る舞いをしてい る。このことから実験で整形増幅器として⽤いたORTEC474の積分回路は図8.1の積分回路 と、出⼒波形の時定数の変化においては同じ振る舞いをすると考えられる。
しかし、図8.5〜図8.9を⾒ると、実験の出⼒波形の最⼩波⾼はシミュレーションの最⼩波
⾼と⽐べ積分時定数が⼤きくなってもその絶対値は⼩さくなりにくい傾向が⾒られる。こ れは積分時定数が500nsの時に特に顕著に表れている。このことから実験で整形増幅器とし て⽤いたORTEC474の積分回路は図8.1の積分回路と、回路の電圧利得においては異なる振 る舞いをすると考えられる。
(図8.10)GAGGとプラスチックシンチレータの⽴ち下がり時定数⽐較
図8.10は図8.5と図8.6のシミュレーションの波形の⽴ち下がり時定数を各積分時定数ご とにプロットしたものである。ここでいう⽴ち下がり時定数というのは、波形が最⼩値とな った後に波形の最⼩値の1/eの⼤きさになるまでの時間のことをいう。GAGGとプラスチッ クシンチレータの⽴ち下がり時定数を⽐較すると、どの積分時定数においてもGAGGの⽅
が⽴ち下がり時定数が⼤きいことがわかる。
結論
実光⼦弾性散乱検出器におけるγ線と電⼦の識別可能性をプラスチックシンチレータと GAGGの発光特性の違いを⽤いて評価した。特に、検出器に接続される電⼦回路による整 形増幅器の回路のシミュレーションを⾏い、γ線と電⼦の弁別性能を評価した。
シミュレーションで想定した積分回路と実験で整形増幅器として⽤いたORTEC474の積 分回路は、同じ⼊⼒に対するそれぞれの出⼒波形の⽴ち上がりと⽴ち下がりの時定数を⽐
較すると、同じような振る舞いを⾒せることがわかった。しかし、同じ⼊⼒に対するそれぞ れの出⼒波形の最⼩値に関しては実験とシミュレーションで異なる振る舞いを⾒せた。
γ線と電⼦の弁別可能性については、実験の整形増幅器からの30個の出⼒波形を平均した 波形をプラスチックシンチレータとGAGGで⽐較すると、どの積分時定数においても⽴ち 下がりの時定数が異なることから⼗分に弁別することができると考えられる。しかし、これ はあくまで実験の整形増幅器からの30個の出⼒波形の平均波形についてであり、実際の実 験では1個の出⼒波形を⽤いてγ線と電⼦の識別を⾏わなければならない。1個の出⼒波形 を⾒る場合その波形は毎回⼤きく揺らぎ、⽴ち下がりの時定数も幅を持って検出される。そ のため、その時定数の持つ幅がプラスチックシンチレータとGAGGで重なってしまうと弁 別が困難になる。今後の課題としては、1つの出⼒波形の⽴ち下がり時定数の持つ幅を各シ ンチレータを⽤いて各積分時定数で測定し、その結果からγ線と電⼦の弁別を⾏うことの できる整形増幅器の積分時定数の最適化を⾏うことである。
参考⽂献
[1] T.Inada , et al. Phys. Rev. Lett. B 732, 356-359 (2014) [2]ATLAS Collaboration , Nat. Phys. 13, 852-858 (2017) [3]Geant4 http://geant4.web.cern.ch
[4]放射線計測ハンドブック 第3版 Glenn F. knoll , 神野郁夫 , ⽊村逸郎 , 阪井英次 [5]Epic-Crystal http://www.epic-crystal.com
[6]TwoLeads 株式会社トゥーリーズ https://twoleads.co.jp [7]浜松ホトニクス https://www.hamamatsu.com/jp/ja/index.html [8]ハヤシレピック株式会社 https://www.h-repic.co.jp
[9]ORTEC https://www.ortec-online.com [10]Tektronix https://jp.tek.com
[11]LTspice ANALOG DEVICES https://www.analog.com/jp/index.html [12]ガンマ線の基礎 千葉豪
http://roko.eng.hokudai.ac.jp/studentadm/chiba_data/gammaray/gammaray.pdf [13]宮島諒 広島⼤学理学部物理科学科卒業論⽂(2018)
[14]⾼原⼀朗 広島⼤学理学部物理科学科卒業論⽂(2019)