本レポートでは、地域別のほか、主要な小売商品セクター別でも小売業の業績を分析する。分析では、 「衣 料品・服飾品」、「日用消費財」、「ハードライン(家電・日用品等)およびレジャー用品」、「その他の商品」
という 4 つのセクターを使用する。小売売上高の半分以上を占める特定の商品カテゴリーがある場合は、
その商品セクターに分類する。特定の商品セクターの中で企業の売上高の 50 %以上を占めるものがない 場合、その企業の商品セクターは「その他の商品」と見なされる。
衣料品・服飾品小売企業は最も収益性が高いとみられるが、 2016 年度はハードライン・レジャー用品が 成長の原動力となった。
ハードライン・レジャー用品
ハードライン・レジャー用品の小売企業は、世界経済が危 機を脱した
2010
年以降、順調に成長してきた。2016年度 は、この商品セクターの小売売上高成長率の平均が他のセ クターと比べてもきわめて高い7.6%となり、それが上位 250
社全体 の4.1
%という伸びの原動力ともなった。商品セクター別のプロフィール( 2016 年度) 商品セクター別のグローバル化水準
( 2016 年度)
出所: Deloitte Touche Tohmatsu Limited. Global Powers of Retailing 2018. 2017年6月を期末とする事業年度について各社のアニュアルレポートやPlanet Retail database、その他の公表デー タを基に分析
世界の小売業ランキング 2018 | 商品セクター別の動向
ハードライン・レジャー用品の小売企業の顔ぶれは、
FNACとDarty plc
の合併でフランス最大の家電小売企業が誕生したことを含め68、やや変 動があった。2016年5月には、 Lowe’sがカナダのホームセンターRONA
を買収した69。Steinhoff Internationalは米国拠点のMattress Firmを
買収し、2016年に初めて米州に進出した
70。Staplesは、 2016年11月に
傘下の英国小売店事業をロンドン拠点のHilco Capitalに71売却し、残 る欧州店舗を2017年2月にプライベートエクイティファンドのCerberusCapital Managementに売却
72したため、この世界的な小売企業は2016 年度に廃止事業として識別された。衣料品・服飾品
43
社の衣料品・服飾品小売企業の平均小売売上高成長率 は、2015年度の7.7%から 2016
年度は4.4%に減速した。
当セクターが売上高成長率でトップの座を明け渡したのは
4
年ぶりである。それでも衣料品・服飾品小売企業の利益率は依然、上位
250
社のセクター中で最も高かった。このセクターの平均純利益率は
6.2%、平均 ROA
は6.4%で、上位 250
社全体のほぼ倍の水準である。
世界最大級の衣料品・服飾品小売企業の多くは、海外事業を拡大して いる。2016年度は、この商品セクターの平均小売売上高の
35.1%が
国外事業によるものだった。上位250
社全体では国外事業の割合は4
分の1
に満たない。各社の事業展開国数は平均26
カ国に達し、他 の商品セクターをはるかに上回っている。このように国外展開の面で は最も進んでいるが、衣料品・服飾品小売企業の規模は比較的小さく、平均小売売上高は
100
億米ドル強程度である。これは、上位250
社主要商品セクター別の小売売上高成長率と利益率
1( 2016 年度)
¹為替調整後の売上高加重平均
² 年平均成長率
出所: Deloitte Touche Tohmatsu Limited. Global Powers of Retailing 2018. 2017年6月を期末とする事業年度について各社のアニュアルレポートやPlanet Retail database、その他の公表デー タを基に分析
10%
4%
0%
8%
6%
2%
-2%
2011
~2016
年度の小売売上高のCAGR² 2016
年度の小売売上高成長率2016
年度の純利益率2016
年度のROA
上位
250
社 衣料品・服飾品 ハードライン・レジャー用品 その他の商品
日用消費財
4.8% 6.3% 4.8% 6.3% 0.6%
3.2% 6.2% 2.4% 4.6% 2.1%
4.1% 4.4% 3.8% 7.6% -1.3%
3.3% 6.4% 3.7% 3.9% 0.7%
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日用消費財
日用消費財(FMCG:
fast-moving consumer goods)の小
売企業は、上位250社の中で数、規模ともに大きいため、そ の動向は上位250社の全体的な数値にも大きな影響を及ぼす。
2016年度におけるランクイン企業数は135社と上位250社の54%
を占め、売上高は同3分の2を占めた。ランクインした企業の数社は、上 位250社の中でも最大級の規模を誇り、平均の小売売上高は217億米 ドルに達する。
2016年度は、ハードラインおよび衣料品セクターに比べ
て売上高成長率は低めとなり、平均で3.8%と前年度の5.0%から低下し た。利益面では平均純利益率が2.4%と、従来から利益の少ないこの商 品セクターとしては標準的な業績である。食料品業界は、世界的にもきわめて競争が苛烈で変動も激しくなって いる。その背景には絶え間ない価格競争、
AldiとLidlの拡大、 Amazon
などによる継続的なネット食料品販売の成長、米国を中心とする食料 品価格の下落などがある。2016年も、規模の拡大と効率性の改善を
めざす食料品業界の再編が進んだ。2016年7月にはAholdとDelhaize Groupが統合し、世界最大級の食料品小売企業Ahold Delhaizeが誕
生した。統合後の売上高は690億米ドルにのぼり73、新会社は上位250 社のランキングで14位と、他の有力な欧州食料品小売企業と肩を並べ た。日本を本拠地とするコンビニエンスストアのユニーグループ・ホールディ ングスとファミリーマートは、
2016年9月に合併した。新会社のユニー・
ファミリーマートホールディングス株式会社は、上位250社の124位と なった74。また、同年9月にはSainsbury’sが、
ArgosとHabitatを所有す
るHome Retail Groupを買収し、売上高を大きく伸ばした75。2017年の買収で最も注目を集めたのは、 Amazonによる自然派スー
パーマーケットWhole Foodsの買収である。これにより、このeコマー スの巨人は食料品のリアル店舗市場に一気に進出し、食料品の品揃 えをさらに拡大した76。一方、連邦取引委員会の介入で棚上げされてい たWalgreens Boots Allianceによる米国ドラッグストアRite Aidの買収 案件は、
2017年7月、 Walgreensが会社全体の買収ではなく Rite Aidの 2,186店舗を取得するとの意向を表明した
77。Tescoは2017年11月、英国
の食料品卸Bookerの買収について承認を得た78。これにより強力な食 料品企業が誕生することになる。その他の商品
全体として、この商品セクターでは低成長および停滞傾向が 続いている。小売企業が「その他の商品」に分類されるの は、他の3つの商品セクターのいずれもがその企業の小売売 上高の50%以上を占めていない場合である。このグループに分類され た21社の平均小売売上高は基本的に横ばいとなり、
2011~2016年度
では年平均ベースでわずか0.6%の上昇にとどまった。2016年度は、グループ最大手4
社のうちの3社が減収を記録したため、グループ全体の平均小売売上高は前年度比1.3%の減少となった。
Targetは2016年度の売上高が5.8%減少した。これは主に、 2015年12
月に傘下の店舗内薬局・クリニック事業を米国ドラッグストアチェーン のCVS Pharmacyに売却したことによる。ドイツのMetro Groupは改革 を進めている途中であることから、2016年度の売上高は1.4%減と4年
連続の減収を記録した。一方、Sears Holdingの2016年度の売上高は 12.0%減少し、これで10年連続減収となった。
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