第 5 章 状態依存型断続特性を有する非線形力学系における分岐 63
5.4 状態依存型断続特性を有する Alpazur 発振器
5.4.4 周期解とその安定性
本システムには様々な種類の周期解が存在するが,各半平面における解軌道の性質の違いから周期解の 分類を行なう.
半平面 H 上を運動する解軌道は次の2種類に分類される.
• HS(Sliding): 半平面 H 上の Π0(y = b) を初期値とし出発した解軌道が dy
dt 6= 0 を満たし,
Π1(y=h) に到達する場合.
• HR(Rotating): 半平面H 上の Π0(y =b) を初期値とし出発した解軌道が dy
dt = 0を少なくとも 一度以上満たし,Π1(y=h) に到達する場合.
例えば,図5.4.3(c)は HR1HS1 周期解であり,周期は2となる.Π0 上を出発した解軌道は HR もしく は HS を経て半平面B 上に移動する.5.4.3節で述べたように,式(5.4.2) は安定な平衡点を持つため,
システム全体にリミットサイクルが発生するためには HS により半平面 B に移動した後,必ず y =b を横断的に通過しなければならない.もしそうでなければ,解軌道は安定な平衡点に落ち着き2度とス イッチング動作が発生しなくなってしまうためである.図5.4.5に上記の大域的分岐の発生する様子を 示す.半平面 B が解軌道として安定な平衡点を持つため,あるパラメータのとき解軌道が太い実線,
u2=T(u0) で示されたとすると,このパラメータにわずかなパラメータ変化を加えることでΠ1 に解軌 道が接し,その結果スイッチング動作が行なわれなくなる.この場合,解軌道は太い点線で示すように安 定な平衡点ue に落ち着いている.
ここで,(HRlHSm)n 周期解の安定性は合成写像Tℓn(u0) の微分値によって決定される.
定義(HRl HSm)n 周期解を
• |µ|<1 ならば,安定周期解(記号 S で略記)
• µ >1 ならば,正不安定周期解(記号 D で略記)
• µ <−1ならば,逆不安定周期解(記号 I で略記)
72 第 5章 状態依存型断続特性を有する非線形力学系における分岐
と呼ぶ.ここでµ は µ= ∂Tℓn
∂w0
(5.4.13) である.
(HRl HLm)n 周期解の分岐はµがスカラー値であるため次の3種類のみが発生する.
• 接線分岐: µ= 1 で生じる.
• 周期倍分岐: µ=−1 で生じる.
• 大域分岐: 軌道の一部が局所断面に接することで生じる.
ここで,解軌道がΠ0もしくはΠ1に接するとき,スイッチング動作はおこらないと仮定する.
具体的に上記の分岐は,分岐パラメータ λ=λ0の前後について,次の関係式が成り立つことをいう.
• 接線分岐:
Ø⇔ {D−type(HRl HSm)n}+{S−type(HRl HSm)n} (5.4.14)
• 周期倍分岐:
S−type(HRlHSm)n⇔ {I−type(HRlHSm)n}+{S−type(HRlHSm)2n} (5.4.15)
• 大域的分岐:
(HRlHSm)n⇔Ø (5.4.16)
ここで,⇔ は分岐の前後を表す分岐式を,Øは固定点が存在しない状態を示す.断続動作特性を有する 非線形力学系において,ある周期解に大域的分岐が発生した場合,新たにどのような周期解が発生するか はまったく予測できない.
5.4. 状態依存型断続特性を有するALPAZUR発振器 73
(a)
(b)
(c)
図 5.4.3 コ ン ピ ュ ー タ シ ミ ュ レ ー シ ョ ン お よ び 回 路 実 装 1.大 域 的 分 岐 近 傍 の 安 定 な 周 期 解 (B2=5.0).(a)HR1 周期解(B1=1.86), (b)HR4HS1 周期解(B1=1.8), (c)HR1HS1 周期解(B1=0.145).
74 第 5章 状態依存型断続特性を有する非線形力学系における分岐
(a)
(b)
(c)
図 5.4.4 コ ン ピ ュ ー タ シ ミ ュ レ ー シ ョ ン お よ び 回 路 実 装 2.カ オ ス ア ト ラ ク タ (B2=5.0). (a)B1=0.56, (b)B1=0.5, (c)B1=−2.8.
5.4. 状態依存型断続特性を有するALPAZUR発振器 75
図5.4.5 大域的分岐の様子.
76 第 5章 状態依存型断続特性を有する非線形力学系における分岐