第 6 章 不安定化制御によるカオスの一生成法 85
6.3 安定平衡点に対する不安定化
6.3.1 制御器の構成
x∗ を式(6.2.1)の平衡点とし,パラメータλ∗ に状態フィードバックする不安定制御器を構成する.平
衡点周りの変分:
x=x∗+ξ,λ=λ∗+u (6.3.1)
に関する線形化方程式は次式となる.
dξ
dt =Aξ+Bu (6.3.2)
ここで,
A= ∂f
∂x
x=x∗,λ=λ∗
(n×n) (6.3.3)
B = ∂f
∂λ
x=x∗,λ=λ∗
(n×r) (6.3.4)
式(6.3.2)に対して次の状態フィードバックを構成する.
u=C⊤ξ=C⊤(x−x∗) (6.3.5)
ここで >は転置を表し,Cは (r×n)の定行列である.制御を加えたときの系の方程式は次式となる.
dx
dt =f(x,λ∗+C⊤ξ) (6.3.6)
このとき,制御系の特性方程式は次式で表される.
A+BC⊤−µIn= 0 (6.3.7)
ここでInは(n×n)の単位行列である.式(6.3.7)の極を極配置法により任意に指定することにより,式
(6.2.1)の平衡点周りの局所的な安定性を操作することができる.ここで,制御対象が可制御条件を満た
す場合には,任意の極配置が可能である [54].可制御条件は,
rank
B|AB|A2B| · · · |An−1B
=n (6.3.8)
で示される.つまり,式(6.3.8)を満たすとき,式(6.3.2)に対し極を不安定に指定すれば,平衡点を不安 定化する制御系を構成できる.ここで制御を始める条件は,
||x−x∗||< δ (6.3.9)
である.制御対象が安定結節点である場合,制御によって弾かれた軌道が再び安定多様体上に乗ってしま い,周期解が発生する可能性がある.そのため,δ は,線形近似が意味を失わない程度の大きい値を取る 必要がある.
6.3. 安定平衡点に対する不安定化 87
ここで,制御時間を示すパラメータτ を導入する.式(6.2.1)の解軌道が 平衡点近傍に来る,すなわち
式(6.3.9)を満たすならば,次の手順で制御を行う:
1. 式(6.3.5)を用い,制御入力u を計算する.
2. τ 時間だけuを制御パラメータに印加する.
δ 内に式(6.2.1)の軌道が入るたびに上記の制御を繰り返す.その結果,解軌道は安定平衡点近傍で不安
定となり,安定平衡点に落ち着くことはなくなる.
6.3.2 勾配系 (Gradient System)
図6.3.1で示される非線形抵抗を含むRC回路を考える.非線形抵抗は次式で表される特性をもつと仮
定する.
g(v2) =−αv2+βv23 (6.3.10)
回路定数を:
C1=C2= 1.0, R1=R2= 1.0, E = 0.5, α= 2.0, β= 1.0 (6.3.11) と固定すると,回路方程式は次式となる.
dv1
dt =E−2v1+v2
dv2
dt =v1−
−v2+v32 (6.3.12)
この回路の位相平面図を図6.3.2に示す.ここでは電源電圧を制御して,安定結節点N1を不安定化し,
カオスアトラクタを得たいする.
変分をv1= ˆv1+ξ, v2= ˆv2+η, E = ˆE+u とし,式(6.3.2)に対応するヤコビ行列 A および制御パ ラメータ E の変分 BE を求めるとrank [BE|ABE] = 2 となり,可制御である.従って,制御を加え た系全体の特性方程式は次式となる.
A+BEC⊤−µI2=µ2−pµ+q= 0 (6.3.13)
p ,q を適当な不安定領域上に置いたとき,制御器C = (C1, C2)⊤ は次式で示される.
C1=p+ (1−α+ 3v22) + 2
C2= (−(1−α+ 3v22))(p+ (1−α+ 3v22))−q−1 (6.3.14) τ =Runge-Kuttaの繰り返し回数×刻み幅= 700×0.0005,p= 3.0,q = 3.0,δ = 0.2と選び,制御を 加えたときの位相平面図を図6.3.2に示す.振動的な素子の存在しない系から,カオス的な解軌道を生成 することができたことがわかる.
88 第 6章 不安定化制御によるカオスの一生成法
v
1
E
1 1 2v
2R
R
2c c g v( )
2図6.3.1 RC回路
図6.3.2 RC回路の位相平面図