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各社のビッグデータ関連ビジネス

大量のデータ入手が容易になることは、既存システムや専用データロガー(測定値などのデ ータを時刻と共に記録する装置)から船上の収集データが絶え間なく送り込まれる解析プ ラットフォームを有し、助言サービスを提供できる企業にとっては有利な環境となる。

海事業界により海事産業向けに開発された先進データ駆動型システム、サービス、ハード ウェアを次に挙げる。

5.1 ABB Marine -船上アドバイザリーシステム

スイスを拠点とする電力技術及びオートメーション技術のグループであるABBはIoT経由 で技術ネットワークを一元化することにより生産性と効率を向上する新製品及びソリュー ションを開発している。

舶用分野における最近の取り組みとして、ABBは同社のAmarcon Octopus動揺監視、予測、

意思決定支援ソフトウェアをMeteoGroupのSPOSウェザールーティング(最適航路選定)ソ フトウェアに含まれる機能のひとつである SPOS Seakeeping プラグインチャートと組合せ たアドバイザリーシステムを開発している。

アドバイザリーシステムは船橋要員が本船の載貨条件(loading conditions)を明確に把握し、

本船の動揺が閾値を超える可能性の高い海域を正確に割り出すことを可能にする。それに より自動的に悪条件を回避するように航路が最適化され、貨物の安全と運航スケジュール の信頼性がより確実なものとなる。

Octopusアドバイザリーソフトウェアパッケージにはそれぞれの船型(hull type)に関する 3

次元流体力学データベースが含まれている。このソフトウェアはMeteoGroupのプラグイン チャートと連動して動的な気象条件や海象条件に対する本船固有の応答をきわめて正確に 計算する。その結果得られる最適航路アドバイスは従来のウェザールーティングシステム よりもはるかに的確である。

A.P. Moller-Maersk グループのコンテナ海運事業部門であるマースク・ラインは運航する

140隻のコンテナ船に向けにABB/MeteoGroupのシステムを発注した。本アドバイザリーソ フトウェアは船橋要員が潜在的に危険であり遅延につながる可能性のある状況を回避する ことを助けることにより、航路を最適化し、船員、船舶、貨物の安全性を向上し、運航効 率を高めるものである。

ABBは「この革新的なソフトウェアソリューションは海事部門の顧客がコストを削減しつ つ運航効率と安全性を引き上げるためにこれまで手つかずであった自社船舶の莫大な量の

データを活用することを助けるために弊社がモノ、サービス、そして人のインターネット に焦点を当てていることを反映している。 イノベーションは常にABBの競争上の優位性維 持に大きな役割を果たしており、本社のネクストレベル戦略の鍵を握る要素である」とし ている。

5.2 BMTグループ/BMT SMART -性能監視ツール「SMARTSERVICES

性能管理システムのスペシャリストであるBMT SMART社は世界の船舶の70%以上が伝統 的なヌーンレポート(noon report)に依存していると推定している。ヌーンレポートは陸上で 解析するためのデータを収集する最も基本的で広く受け入れられている方法である。しか し送られてくるデータ量が少なく一貫性にかけることからヌーンレポートの有用性には限 界がある。船舶の性能を完全かつ正確に監視するためには、連続して計測され報告される

「スマート」データを利用することが将来の成功への道である。

同社は性能監視ツール SMARTSERVICESを開発した。これはセンサーを利用して船舶のエネ ルギー消費と関連する機能レベルに関する様々なパラメーターからのデータを正確に計測、

収集するものである。船舶の動力系、推進系、航海系からのデータはデジタル化されて収 集され、風、波、潮流といった外乱データと統合され、リアルタイムで処理され、一連の 性能パラメーターと対照して解析される。加えて、伝統的なヌーンレポートもデータソー スとして利用することができる。

一定の期間にわたり複数の船舶からの複数のデータセットが利用できるようになれば、情 報を性能評価のためのベンチマーク作成に使用し、フリート全体の性能改善につなげるこ とができる。

BMT SMARTは特にリアルタイムの船舶追跡システムと組合せた場合、航路計画は陸側か

ら行う方が船上で行うよりも効果的でありうるという観点に立っている。同社は個々の船 舶だけでなくフリート全体の性能に焦点を当てた陸側性能管理ソフトウェアを開発した。

解析ツールと陸側管理ツールはそれぞれSMARTACSESS、SMARTFLEETと呼ばれている。

将来、航路計画は最も適切な航路を特定するために効率と排出量要件と照らし合わせて定 期的にチェックされるようになるだろう。同時に性能管理レポートが自動的に生成される。

5.3 CATERPILLAR MARINE -リアルタイム解析「OstiaEdge SmartShip Monitoring Suite」 キャタピラーマリン社は2015年に米国を拠点とするエンジニアリング ソフトウェア リラ イアビリティ グループ(ESRG)を買収し、実時間処理解析用OstiaEdge SmartShip Monitoring

Suiteを提供している。本ソフトウェアは機械の問題を早期警告し、本船乗員と陸側職員の 両方に情報を提供し、運航と保守に関する詳細な情報を得た上での決断を可能にするもの である。

このテクノロジーは過去 10 年間にわたって開発されてきたものであり、米国海軍を含む 様々な環境で使用実績がある。商船や艦船に搭載された様々な船上機器、ディーゼル機関 からガスタービンに至る機関、そして空調ユニット、モーター、ポンプ、コンプレッサ、

逆浸透プラントを含む補助機器を監視することができる。米国海軍での利用では、約 120 隻について5,000を超えるデータポイントからのデータを捕捉し、分析するために使用され た。

OstiaEdge ソフトウェアパッケージは船上データの利用の改善を通して 船主やオペレータ

ーによる状態に基づく監視保全(CBM)戦略の導入を支援し、次のような様々な方法で価値 を生むことを助ける。

• 自動予測診断アナリティクスを使って故障が発生する前に問題を特定する

• 船上及び陸上でのリアルタイム解析を通してより迅速に問題解決する

• 装置の健康状態や性能のリアルタイムの透明性を通じて保守間隔をより効率的に計画す る

• フリート全体の保守支出に優先順位をつけることにより、投資に対する利益を最大化す る

キャタピラーマリンはMaKとCaterpillarの4ストローク舶用エンジン向けにDiCARE遠隔 エンジン監視システムを供給している。これは1987年に初めて導入された。DiCAREは持 続的に運転中のエンジンの状態を望ましい状態と比較し、運航及び保守の決定を下すうえ での診断を提供する。

5.4 ClassNK・MOL -状態に基づく監視「CMAXS e-GICSX」

共同研究の成果に基づいて、日本海事協会(ClassNK)、三井造船(MES)、三井テクノサービ ス株式会社は次世代型機関状態監視システムを開発している。CMAXS e-GICSX と呼ばれ るこのシステムは電子制御のMAN 2ストロークディーゼルエンジンの早期異常検知を支援 するものである。

CMAXS e-GICSX は船陸間通信の有無に関わらず(インターネットに接続されていなくて

も)船内で異常を検知し、問題解決できることから特に重要である。高度なアルゴリズムを 用いて複数のセンサー間の相関関係を解析することができる。

商船三井(MOL)の運航船 3隻でエンジンの異常検知の効率と問題解決機能の実装試験が行 われる。商船三井(MOL)は自社フリートからのビッグデータを収集し、総合船舶運航支援 ネットワークを構築することを狙っている。これは海上ブロードバンド環境を利用した本 船上、陸側の双方におけるタイムリーなデータ分析により個々の船舶及びフリートの性能 向上、コスト効率の向上、船舶管理の合理化、環境負荷の低減に役立てることを意図した ものである。CMAXS e-GICSXの実装試験はこういった取り組みの一環である。

商船三井(MOL)は「昨今、船舶に搭載されるエンジンは電子制御機関が中心となり、大量 の機関ビッグデータを入手できるようになった。また気象・海象を含めた航海ビッグデー タも船陸間通信機器等の発達により時々刻々と入手可能となる」としている。実装試験プ ログラムではまずメタノール専用船MAYAROにCMAXS e-GICSXが搭載される。

5.5 DANELEC MARINE -VDR接続システム「VDR Connect」

デンマーク企業であるDanelec Marineは船舶の航海情報記録装置(VDR)が船舶データ収集 ネットワークの中心的存在となりうると考えている。そのためには選択的遠隔アクセス機 能を持つようにVDRを特別に設計する必要がある。

2002年以降に建造された国際航海に従事する 3,000総トン数以上の船舶は型式承認を取得 した VDR の装備を義務づけられている。VDR は特定の船上搭載システムからの大量の安 全関連データを収集、蓄積する非常に効果的なデータ記録装置である。

Danelecのソリューションは VDR Connectと呼ばれ、VDRのより広い可能性を活用するも

のである。VDR Connect は船位、速力、船首方位、音響測深機データ、操舵命令と応答、

主機操作命令と応答、風向・風速、主警報のようなリアルタイムの「必須」データを提供 するのみならず、燃料流量計、エンジン速度と温度、排出量監視デバイス、補機、気象観 測用計器、その他のデータ源からの「任意」の情報を組み合わせる。

VDRに対するIMO改正基準が2014年7月1日に発効し、音声及びビデオの記録時間が延 長されたことによりVDRへのデータフローは大量となった。今後数年間は現在の衛星通信 回線容量の制約が継続すると考えられることから、全データを一括転送するよりもVDRか ら小規模のデータブロックを一定の間隔で転送する方が実用的である。

2014年に導入されたDanelecのVDR Connectは特別に開発されたインターフェースを使用 するWebベースの遠隔アクセスサービスであり、VDRからのデータを衛星通信システム経 由で選択的に陸側オフィスに送るものである。VDR ConnectモジュールはPCを経由する必 要がなく、直接本船のITと衛星通信システムに繋がれる。陸側の航路計画者はコンピュー