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第 4 章 衝突被害軽減ブレーキの効果検討

4.4. 右左折事故

右左折事故についてAEBの衝突回避効果を検討した.図4.7にAEB(FOV 50°, DT=0.5 s)作動 状態で,右左折事故を再現した2例を示す.事例3は四輪車が右折し、四輪車の反対方向から自 転車が走行した事故である.四輪車と自転車の速度は,時刻tAにおいて14.1 km/h, 15 km/h、衝突

0 10 20 30 40 50 60 70

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

Vehicle VelocityVA(km/h)

TTCA(s) 𝑉𝑉=2×0.8𝐺×(𝑇𝑇𝑇𝑇𝑇𝑇−0.5)

𝑉𝑉=2×0.8𝐺×𝑇𝑇𝑇𝑇𝑇𝑇

Collision avoided at 50°

Collision velocity reduced at 360°

AEB not activated Collision avoided at 90°

Collision avoided at 360°

DT=0.5s DT=0.5s DT=0 s

22.2%

50.8%

82.5%

19.1%

22.2%

17.5%

58.7%

27.0%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

50° FOV 90° FOV Ideal AEB

Ratio

Collision avoided Collision not avoided with AEB AEB not activated

360° FOV

31

時には 17 km/hおよび 15 km/hであった.自転車乗員が車の前面から見た視野角に入り続けてい

たのでAEBが作動し,衝突が回避された.

事例4では四輪車が左折し,自転車が四輪車と同方向から走行した。四輪車と自転車乗員の速 度は,自転車が歩道から道路に入った時刻 tEにおいて,2 km/h,15 km/h、衝突時には7.1 km/hと

15 km/hした。自転車が四輪車の後方から近づいたので、自転車は常にAEBセンサー視野の外側

に位置していた。その結果,四輪車は衝突を回避することができなかった.

(a) Case 3 (b) Case 4

Fig. 4.7 The ratio of AEB effectiveness in avoiding collisions in left/right turn collisions

図4.8は右左折事故について,3種類のセンサー視野角FOV(50°, 90°, 360°)によるAEBの衝 突回避の有無を,自転車が道路に侵入した時刻 tEにおける TTCEと車の速度の関係から示したも のでる.四輪車速度は低く30 km/h未満であった.右左折事故40件が再現され,そのうち,20件

の衝突はFOV 50° で衝突が回避された。センサーFOVを90° に拡大することで,さらに9件の

衝突が回避された。FOVを360°にすると、加えて衝突8件が回避された。FOV 360°回避されなか った衝突は3件であり,そのうち2件はAEBによって速度が減少したが,1件はAEB が作動し なかった.

Fig. 4.8 Collision avoidance with TTC and vehicle velocity at the time of cyclist appearance for various AEB sensing FOV and DT 0.5 s in left/right turn collisions.

0 10 20 30 40 50 60 70

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

Vehicle velocityVE(km/h)

TTCE(s)

Collision avoided at 50°

Collision avoided at 90°

Collision avoided at 360°

collision velocity reduced at 360°

AEB not activated 𝑉𝑉=2×0.8𝐺×𝑇𝑇𝑇𝑇𝑇𝑇

𝑉𝑉=2×0.8𝐺×(𝑇𝑇𝑇𝑇𝑇𝑇−0.5)

32

図4.9に,左折と右折の衝突におけるAEBの3種類の仕様(FOV 50°, DT 0.5 s; (FOV 90°, DT

0.5 s; FOV 360°, DT 0 s)による衝突回避を,自転車乗員の向き別に示す.右折の方が左折よりも,

AEBの衝突回避効果が高い.これは右折の方が四輪車から自転車の距離が大きいことによる.

右折,左折ともに自転車が四輪車と同じ方向から四輪車に近づく場合は,衝突回避が困難とな っている.センサーの視野角FOVの拡大は,衝突回避に有効である.理想的なAEB(FOV 360°,

DT 0 s)であっても,衝突が回避できなかった事例が右折,左折ともに見られた.これらの事故で

は,走行する四輪車が横断歩道を歩道近くに通過するときに,自転車が歩道から道路に入ったこ とで,四輪車が停止することができなかった.これらの衝突を回避するためには,自転車の歩道 での挙動も予測する必要がある.

(a) Right turn (b) Left turn

Fig. 4.9 The ratio of AEB effectiveness in avoiding collisions in left and right turn collisions.

4.5. 4章のまとめ

本研究ではドライブレコーダの映像を用いて,PC-Crashによって四輪車対自転車の出会い頭事 故の再現を行い,さらに,四輪車にAEBが取り付けられた場合の衝突発生の有無を検証すること で,AEBの効果評価を行った.ドライブレコーダの映像によって,自転車乗員の行動および四輪 車の運動を事故直前まで把握することができ,精度が高く,矛盾のない事故再現が可能となる.

AEB が自転車との衝突回避に非常に有効であることが示された.センサー視野角 FOV 拡大に よって,多くの衝突が回避できるようになる.ただし,理想的なAEB(FOV 360°, DT 0 s)であっ ても衝突回避が困難な事故が存在した.それらはTTCが小さなもので,出会い頭では自転車の飛 び出し,右左折では四輪車が歩道近くで横断歩道に走行しているときに歩道から自転車が道路に 侵入するものであった.

さらに,事故被害者数をゼロに近づけるためには,車車間通信や路車間通信といった死角を減 らすICT技術開発,あるいは自転車の行動予測が重要と考えられるが,一方,自転車乗員の交通 ルールに対する教育や,被害軽減のためのヘルメット着用等を進めていくことも重要であると考 える.

3 4

4 6

6 6 1

1

2 2

3 3

1

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

Same Opposite Same Opposite Same Opposite

Ratio

collision avoided collision not avoided with AEB AEB not activated

FOV 50°

DT 0.5 s FOV 90°

DT 0.5 s FOV 360°

DT 0 s

13 4

15 9 16

1 2

1

1 1

8 2

4 1

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

Same Opposite Same Opposite Same Opposite

Ratio

collision avoided collision not avoided with AEB AEB not activated

FOV 50°

DT 0.5 s FOV 90°

DT 0.5 s FOV 360°

DT 0 s

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