画家の魂・パレットとその作品―ピカソ・ダリから近代日本の巨匠まで―
特に第 1 部の受賞作については、作品の隣に絵本を置く台を設置して展示したが、アンケートの自由 記述には、原画と絵本と両方を楽しむことができて良かったという内容が多かった。また、日本では
なかなか手に入れることのできない海外の絵本を見ることができて良かったという声も聞かれた。絵 本も手に取れることで、ゆっくりと時間をかけて展示をご覧になるお客様が多かった。
○関連行事等について
関連行事としては、①ワークショップ、②ちいさなワークショップ、③絵本の読み聞かせ、④外部
講師によるギャラリートーク、⑤ロビーコンサート、⑥クイズラリー、⑦ギャラリートークを行った。
①は今回の受賞作家であるきくちちき氏を講師に招き、親子を対象に、手製本の絵本をつくった。時 間の終わりには発表会を行い、完成させた絵本には、きくち氏が内容を見てその場でイラストと言葉 を添えた帯を作って付けてくださった。発表の時やきくち氏に作品を見せる時の、子どもたちの少し 照れながらも誇らしげな表情が印象的であった。②はコラージュによるカードづくりを行った。当日 は台風による荒天で参加者数は多くなかったが、家族や親子で思い思いの作品に仕上げていた。③は 絵本原画展恒例の、高浜市立図書館えほんの森読書アドバイザーの方々による読み聞かせで、原画が 展示されている中から絵本を選んで読んでいただいた。小さな子どもの参加もあり、場を和ませてく れた。④は開幕後に急きょ決まったもので、本展コーディネーター、現地のコンクールの国際審査員 でもあった絵本評論家・広松由希子氏による。現地の様子や作家の素顔なども織り交ぜながら、広松 氏ならではのお話をいただき、好評であった。⑤は館コンサートボランティアの方々によるコンサー トで、ピアノとチェロ、ピアノ連弾の 2 公演行った。⑥は毎年恒例の鬼みちまつりにあわせて小中学 生を対象に行った。展示作品を見ると答えられる内容の設問とし、多くの子どもたちの参加があった。
1 階ホワイエでは現地での授賞式やワークショップや展示の様子、受賞者へのインタビューなどの映 像を上映した。また、コンクールの賞の一つ「子ども審査員賞」にちなみ、来館した子どもたちに好 きな作品を選んで投票してもらう「たかはま子ども審査員賞」を行った。これは他の巡回館でも行っ たもので、どの館でも傾向は似ているという興味深い結果が得られ、今後の広報などに参考になるの ではないかと思われた。
さらに、毎週土曜日の午後を「こどものじかん」とし、赤ちゃんや小さなお子さんを連れた方々が、
周囲に気兼ねなく会話を楽しみながらご観覧いただける優先時間とした(利用者累計:642 名、うち 子ども 102 名)。館内のレストラン「Omi」では、展覧会の内容にあわせて、日本人の口に合うよう 工夫されたスロヴァキア料理とデザートをメニューに加えていただいた。
なお、広報面の新しい取り組みとして、巡回 5 館共同で Twitter と Facebook を立ち上げ、当館の Facebook ともリンクさせて SNS を通した広報活動を行った。
○まとめ
観覧者数の面では、目標達成率 64.1%、前回(2012 年)と比べてもおよそ 2,000 人減と、大幅に
下回る結果となった。来館者の満足度は高く、上質な展覧会であるだけに悔しい思いである。要因と
しては、2 週続けて週末に台風がきたこと、ブラティスラヴァという言葉の知名度の低さ、学校はじめ
各地で様々なイベントが行われている時期であること、絵本原画展ならばある程度の集客が見込める
であろうというある種の慢心があったのではないか、といったことが考えられる。このほか、各地で
絵本原画展が行われるようになり飽和状態であること、デジタル技術の導入が進んで手描きではない
作品が増え、「原画」の意味が問われ始めていること、ボローニャ展と交互に行うことによるマンネ
リ化なども考えられよう。かわら美術館で絵本原画展を開催する意味と、今後も続けるのであればど
のような絵本原画展を開催していくのかについて、深く検討する必要がある。
(4) 特別展「土の物語-ヒメナ&スティーブン
“Terram Fabulas”- Ximena Elgueda & Steven Ward -」について
学芸員 今泉岳大 チリ生まれのヒメナ・エルゲダと、アメリカ生まれのスティーブン・ウォードは絵画、彫刻、塑像、
建築などジャンルに捉われず幅広い作品を制作する芸術家である。ヒメナは 1994 年に名古屋芸術大 学の美術学士修士奨学金生として、スティーブンは 1995 年に滋賀県立陶芸の森のレジデンスアーテ ィストとしてそれぞれ来日し、以来日本に定住し活動をしている。
彼らは土を素材にした共同制作によって、小作品だけでなく巨大な空間造形作品にも取り組んでき た。彼らの代表作である「山の広場(Mountain Plaza)」は野外劇場を制作するプロジェクトである。
愛知県知多郡美浜町布土の里山で 2000 年に制作が始まり、舞台背景にあたる高さ 3 メートル、長さ 13 メートルの巨大な音響板は、60 トン以上の粘土を使用し、焼成まで 14 年を要し現在も制作中であ る。
2 人が作品制作の中で大切にしているのは、作品それ自体の造形的な美しさだけではなく、対話的な 共同制作の中で作品を生成してゆくプロセスと、制作作業の中で生まれるコミュニケーションである。
特に「山の広場」は彼ら 2 人だけではなく、友人・知人・ボランティア・学生など多くの人々が制作 に関わりました。彼らは土を練り上げ、造形するという触覚的な作業を介して、人と繋がり、大地や 自然と共鳴するのだ。本展では 2 人のこれまでの作品約 100 点に加えて、野外作品の制作風景を映像 とともに紹介した。
ヒメナ・エルゲダとスティーブン・ウォードは作家の分類としては陶芸家というよりは現代美術作 家であるが、枠組みとしては陶芸の文化を紹介する展覧会として打ち出した。
○観覧者の傾向
観覧者数の合計は 3,100 人(目標 3,000 人)、うち有料観覧者は 602 人(19%)、無料観覧者は
2,498 人(81%)となり、圧倒的に招待券での入場者が多い展覧会となった。男女の比率はやや女性
が多く、アンケート(回収枚数 255 枚、回収率約 8.22%)の結果では約 49.4%となっている。年齢
別割合は 50 代から 70 歳以上が併せて約 43%となり若年層よりも多かった。居住区については市内が
約 10%となり、上記の性別、年齢別割合ともに通常の傾向の通りであったといえる。
○来館者の反応
アンケートには「すばらしい展覧会でした(年齢性別不明)」という意見があった一方で、「マニ アックすぎてよく理解できなかった(50 代男性)」という意見もあり、展覧会および作品の評価は「非 常に良い」「非常に悪い」の両極端に別れたという印象であった。そのせいか、アンケートの「展示 内容に興味関心を持ったか」という項目では「はい」と答えた割合は 57.6%と通常よりも少なめであ り、それに伴って「来館をひとに勧めたいか」という質問に対しても「はい」を答えた人は全体の約 47%と少ない結果となった。
○関連行事等について
関連行事としては、①パフォーマンス・プレゼンテーション②ワークショップ③ロビーコンサート
④ギャラリートークなどを行った。
パフォーマンス・プレゼンテーションは作家が 1 階ホールで展示したインスタレーション作品「土 のラビリンス」の公開制作を行い、参加者は制作の作業を手伝いながら、展示作家の2人からこれま での活動の軌跡や作品に対する想いについてお話を聞いた。講演会というかたちで来館者に話すより も、彼らが屋外作品「山の広場」で行っているように、一緒に手を動かし、制作をしながら会話をす るというスタイルで彼らのこれまでの活動の軌跡や作品の解説などを行った。
ワークショップはパフォーマンス・プレゼンテーションとほぼ同じだが、「土のラビリンス」の共 同制作に特化したワークショップとして行った。ちいさなワークショップではヒメナ氏の出身地であ る南米の楽器「チャフチャス」を、リサイクル品を使用して制作し好評を得た。
○まとめ
展覧会の枠組みとしては「やきもの」の展覧会として行ったが、実際は現代美術作品の展示に近い ものとなった。企画の動機は「陶芸」や「やきもの」や「土」をより自由に柔軟に鑑賞し、楽しんで もらいたいという想いがあったが、現代美術は難解であるという固定概念によって鑑賞が難しいとい う来場者もあった。しかし、「かわら美術館」として幅広いやきものの美術作品を紹介してゆくこと は必要であり、今後も良い題材があれば積極的に取り組むことも必要ではないかと考える。
1階ホールで制作・展示を行った「土のラビリンス」はヒメナ氏とスティーブン氏から提案があっ
たインスタレーション作品であったが、素材に焼成前の瓦粘土を使用するということで展示室に黴や
粉塵が発生することが懸念され、事前に東京国立文化財研究所と株式会社 LIXIL の専門家にヒヤリン
グを行った。この意見を踏まえた上で、高浜市と館長と相談し、次回展までに清掃期間を設けること
を条件に制作を許可した。最終的に黴等の問題はなく、撤去後に入念な清掃を行い次回展に備えた。
ドキュメント内
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