【圏域における産業の状況】
【図表1】 圏域における産業別就業者数(平成17年)
市町
実数(人) 構成比(%)
合計 第1次産業 第2次産業 第3次産業 第1次産業 第2次産業 第3次産業
飯田市 58,036 6,415 19,682 31,490 11.1 33.9 54.3
周辺町村 36,370 8,012 11,453 16,863 22.0 31.5 46.4
圏域合計 94,406 14,427 31,135 48,353 15.3 33.0 51.2
全国構成比 4.8 26.1 67.2
出典:平成17年国勢調査
【図表2】 圏域における産業別就業者数の割合(平成17年)
出典:平成17年国勢調査 第1次産業
全 国 構 成 比
20% 40% 60% 80% 100%
4.8 26.1 67.2
圏 域 合 計
15.3 33.0 51.2
飯 田 市
11.1 33.9 54.3
周 辺 町 村
22.0 31.5 46.4
第2次産業 第3次産業
圏域における産業出荷額等の推移をみると、製造業においては、平成15年以降、地域産業の積極的な設備投資(オムロン飯 田、多摩川精機等)があったことから、製造品出荷額は上昇傾向を保ってきている。農業においては、緩やかな減少傾向が続き、な かでも畜産、果樹の産出額の減少が顕著となっている。林業においては、年間生産額は、7億円程度と下げ止まり傾向が続いてい る。観光については、減少傾向が続いている。(なお、平成18年に観光消費額が増えているのは、それまで計上されていなかった一 部の観光関連消費額が平成18年度以降加算されているためである。)
南信州定住自立圏には、4年制大学がなく、高校卒業後は、飯田市では約8割が首都圏等大都市の大学に進学している。学生 全体の回帰率(高校卒業者の地元回帰率)は、飯田市資料によれば34〜38%程度で推移しており、人材の流出が大きな課題と なっている。
一方、圏域の有効求人倍率は、県内でも比較的高い水準で推移している(ただし、最近は世界的な経済不況の影響から悪化し ている。)。
地域産業の育成・振興には、技術や人材が不可欠であり、UターンやIターンによる圏域外からの就業者の確保は重要な手段で ある。そこで、飯田市の第5次基本構想・基本計画(平成19年度〜)では、目指す都市像「文化経済自立都市」において、帰ってこ られる「産業づくり」、帰ってきたいと考える「人づくり」、住み続けたいと感じる「地域づくり」を掲げ、地域の将来を担う人材確保を
優先課題としている。
そのほか、圏域全体の共通課題としては、南信州ならではの気候と風土、文化、ふるさとの味・食材と、その伝統をいかした「南信 州ブランド」のブランド化があり、地域や団体等で連携してブランド化や情報発信に取り組んでいる。
〈産業別の出荷額等の推移〉
〈圏域の産業振興における共通課題としての人材の確保〉
【図表3】 製造品出荷額等の推移 (単位:億円)
項 目 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年
製造業 3,584 3,722 4,090 4,417
農林業 278 270 263 260
観光消費額 135 137 142 121
出典:飯田市「地域経済活性化プログラム2010」 地域経済分析資料編
【図表4】 職業別求人・求職のバランス(常用雇用者)、各年度の平均値 (単位:倍)
職種 専門・技術職 事務職 販売職 サービス職 運輸職 生産工程・労務職 計 平成17年度 1.41 0.58 1.82 2.03 1.17 0.79 1.04 平成18年度 1.63 0.57 1.98 2.37 1.37 0.89 1.13 平成19年度 2.77 0.47 1.73 2.31 1.59 0.92 1.20 平成20年度 2.19 0.34 1.20 2.21 0.93 0.42 0.78
出典:飯田市「地域経済活性化プログラム2010」地域経済分析資料
*計には、別途、保安職の数値も含む。
地域の主要事業所の1つが、平成12年にITバブル崩壊の影響で事業撤退し、地域経済に大きな打撃を与え、圏域として 地域産業のあり方全体を見直す必要に迫られた。
このため、飯田市では平成13年から平成14年にかけて、地域経済の自立を目標に掲げ、地域内発型の産業育成に取り 組み始めた。本圏域の地域分析を行い、地方の視点での産業政策が必要であるとの専門家の提言を受けて、地域特性を 活かした産業分野を総合的に考える政策へと転換した。後述する「地域経済活性化プログラム」を、平成26年を目標年次 に平成18年からスタートし、毎年見直しを行っている。
① 「地域経済活性化プログラム」による圏域の経済的自立度向上への取組
飯田市は、2005年(平成17年)を基準年、2014年(平成26年)を目標年とする「地域経済活性化プログラム」(略称
「活プロ」)に取り組んでいる。これは、南信州定住自立圏の「経済自立度」(地域産業がもたらす波及所得額と、地域が 必要とする所得額を比較することにより、圏域として地域産業により経済的に充足している度合いを示す指標)を 2005年の47.8%から2014年に70%まで引き上げる、という意欲的な計画であり、定住自立圏の経済的な目標を数 値化する試みとして注目される。目標達成のための推進事業として、平成22年1月に発表された同「プログラム2010」
では、業種横断プロジェクトに、「人材誘導・人づくり・大学連携」、「産業連携による地域資源の活用・創出」等が、また 業種中心の先導的プロジェクトに「南信州農産物の産地マーケティング力強化」、「事業者連携による観光ブランド育 成」などが掲げられている。
② 財団法人飯伊地域地場産業振興センターによる圏域産業の支援
地場産業を軸とした地域ぐるみの産業振興対策の必要性から、昭和59年に長野県、飯伊地域の飯田市をはじめ周辺 町村、支援機関(商工会・商工会議所)、地元企業、金融機関等の出えんによる第三セクター方式で財団法人飯伊地域地 場産業振興センターが設立された。特色として、「工業技術センター」(中小企業の技術高度化支援)や「EMCセンター
(電磁波防止のための解析研究・受託)」、「飯田ビジネスネットワーク支援センター」(共同受注窓口、企業間のビジネ ス仲介等)の各施設を併設していることがあげられる。
ビ ジ ネ ス 仲 介 の 例 と し て、産 官 連 携 に よ るLED防 犯 灯 開 発 が あ る。飯 田 市 が 平 成21年1月 に 環 境 モ デ ル 都 市 に 指 定 さ れ、飯 田 市 内 の 既 存 防 犯 灯 のLED化 を 計 画 し た 際 に、飯 田 市 が、LED防 犯 灯 の 製 品 開 発 を 圏 域 内の共同受発注企業グループに依頼し、防犯灯の開発、商品化に成功した。さらに他地域への販売にもつながっている。
このほか新産業分野の育成として、航空宇宙産 業、農工商連携関連産業等への支援を行っており、
これらは三遠南信地域及び中京圏との連携を深め ながら展開している。
また、技術革新や人材の育成のために、飯田市と 信州大学との協定により、平成19年4月、信州大学 大学院工学系研究科の修士課程「高度ものづくり 専門職大学院」が飯伊地域地場産業振興センター 内に開校された。現在、圏域内企業で働く社会人が 学んでいる。その他、飯田市では明治大学、長野高 専、諏訪東京理科大学等との連携に注力している。
〈「地域経済活性化プログラム」の策定〉
飯伊地域地場産業振興センターの外観
【圏域における主な取組】
③ 「南信州観光公社」を中心にした着地型、周遊型の観光振興
飯田市や圏域内の町村、観光関連産業、金融機関、地元メディアなどが出資している株式会社南信州観光公社が、旅 行業法上の総合旅行業務の登録を行い、南信州圏域の地域資源を活用し、地域産業との連携により、グリーンツーリ ズムなどの着地型・周遊型の観光商品を開発して、徐々に事業を拡大している。
圏域内の年間の観光消費額は、平成20年度に130億円(飯田市調査)となっている。そのうちグリーンツーリズム・
農家民泊は年間3億5千万円程であるが、経済波及まで考慮すると、概ね15億円程度の効果があると試算されている。
農家民泊は、中学生の修学旅行(体験教育旅行)を主な顧客としており、現在、400〜500軒の農家が参加し、活況を 呈している。農家としても自らの活動が直接消費者に伝わることで、もてなしへのインセンティブを得ていると考え られ、波及効果として市民レベルでの観光振興意識の高まりが期待できる。また、観光商品開発の面でも一泊を民泊 とし、もう一泊を民間宿泊施設の利用とするなど、ノウハウの蓄積が図られている。
④ 農産物のブランド化や付加価値化への取組
圏域における農業分野の重点施策として、産地のマーケティング力強化を目指す取組(生産基地からマーケティン グ基地への転換)を進めている。とりわけ、「市田柿」は、圏域の農協・事業者・行政機関等の連携により、地域ブランド として定着が図られてきている。
例えば、飯田市と高森町が協定を結び、高森町は市田柿発祥の地であることをモチーフとした原木跡整備や温泉設 備リニューアル等の整備事業を行うとともに、農家民宿開設と灯ろう流し及び大煙火大会の開催支援を行う。これに 対し飯田市は、これらの事業実施について市田柿ブランドの浸透や温泉やイベントの開催等の協力、支援を行う、と いった取組が考えられる。
● 数値目標を盛り込んだ飯田市独自の「地域経済活性化プログラム」を策定し、地域産業振興のための各種取組を戦略的に進 めている。
● 地域産業の育成・振興にとって技術や人材が不可欠との認識のもと、大学進学等でいったん大都市に流出した人材のUター ンや、他地域からのIターンの促進を圏域の共通課題として取り組んでいる。
● 地場産業を軸とした圏域の産業振興の推進役として、財団法人飯伊地域地場産業振興センターが、飯田市との緊密な連携 のもと、試験研究、技術指導のほか、共同受注やビジネス仲介など、様々な事業を展開している。
● 南信州の地域資源を活用したブランド化や商品開発に飯田市と周辺町村が広域で連携して、農業分野の「市田柿」の産地 マーケティング、観光分野のグリーンツーリズム、農家民泊など様々な農商工の連携も含めた取組が行われている。
● 地域経済自立度を向上させる取組として、行政と産業界が一緒になって研究・分析・議論して、地域経済の自立に向け、共通 認識をもって取り組んでいる。