2.4.4 毒性試験
2.4.4.8 その他の毒性試験
2.4.4.8.1 比較免疫原性
FDAの助言に従い、Wistar ラットを用い、市販の rFIX 製剤(BeneFIX®)に対するノナコグ ベータ ペゴルの相対的な免疫原性を評価するため、同様の曝露量で免疫原性比較試験を実施した。ラットに ノナコグ ベータ ペゴル又はBeneFIX®を2週間投与し、さらに1週間休薬後に抗体検査用試料を採取し た。このサイクルを 4 回繰り返し、合計で最低 8週間の曝露を行った。ノナコグ ベータ ペゴルの 25
IU/kg/週又は BeneFIX®の 25 IU/kg/日投与後の抗薬物抗体形成動物数又は抗体力価に差異はなかった。
ノナコグ ベータ ペゴルの200 IU/kg/週又はBeneFIX®の200 IU/kg/日で抗体は検出されなかった。ラッ トにおけるノナコグ ベータ ペゴルと BeneFIX®の抗体形成誘発性に差異はみられなかった。この試験 結果は臨床試験の結果と一致している(Module 5.3.5.3 Integrated Summary of Immunogenicityを参照のこ と)。
2.4.4.8.2 40 kDa PEGの毒性試験
開発段階の早期、すなわち、Rowettヌードラットを導入してノナコグ ベータ ペゴルの慢性毒性を評 価する前の段階で、ラット及びサルにおける40 kDa PEG単体の毒性試験を実施することとした。入手 可能な公開情報から、PEG 化製剤に関して、マクロファージ、腎尿細管上皮及び脳上皮細胞を含む 種々の組織における空胞形成が記述されている 26, 27, 28, 29, 31, 32, 41, 42, 43, 44。空胞形成はターンオーバーの 低い細胞におけるPEG蓄積に対する適応反応であると説明されている。
ラットでは40 kDa PEGを45及び117 mg/kg/週の用量で2又は6週間投与した。カニクイザルでは、
40 kDa PEGを45 mg/kg/週の用量で2及び6週間、又は7 mg/kg/週の用量で13週間投与した。これらの
結果から、PEGを高用量投与すると、他の40 kDa PEG化製剤で報告されている所見、すなわちマクロ ファージにおける空胞形成(ラットに 45及び117 mg/kg/週を 6週間投与)及び脈絡叢上皮細胞の空胞 形成(サルに45 mg/kg/週を6週間投与)が認められた。マクロファージ又は脈絡叢にPEGがみられて も、変性、炎症又は壊死の兆候は認められなかった。ノナコグ ベータ ペゴルの臨床推奨用量40 IU/kg/
週で投与される PEG量は0.23 mg/kg/週となるが、この量は前述の試験で使用した PEG投与量の 30~
500分の1以下である。
2.4.4.8.3 PEG及び脈絡叢
EMA3、The Society of Toxicological Pathology45及びBioSafe43は、PEG化製剤が非臨床試験動物モデル の脈絡叢上皮細胞又は細網内皮系(RES)に空胞形成を示した場合、PEG 化製剤の安全性評価に関す る勧告を公表している。特に懸念すべき事項は、広範囲な空胞形成が細胞機能及び脳脊髄液(CSF)の 産生に影響を及ぼす可能性の有無である。脳脈絡叢上皮細胞は CSF の主要な分泌源であり、血液-
CSF関門を形成している46。現在のところ、脈絡叢の機能を評価する臨床バイオマーカーはない。
生体内分布試験において、ノナコグ ベータ ペゴルは血管に富む器官に分布すること、PEGは予期し た通り脈絡叢を含むRESに分布することが示されている(図2.4-13)。
予定臨床用量を超える用量が投与されたカニクイザル及び Rowett ヌードラットの試験における顕微 鏡的観察では、脈絡叢上皮細胞に空胞形成は認められなかった。動物試験では、脈絡叢上皮細胞にノ ナコグ ベータ ペゴルのPEG成分の分布が認められた。しかしながら、このことは空胞形成又は病理組
織学的な細胞機能障害と関連していなかった。Rowettヌードラットの 26週間試験における高用量群の 脈絡叢に対する透過型電子顕微鏡観察では、小胞(リソソーム)に PEG の存在が認められたが、正常 な上皮細胞の機能に対する影響は認められなかった。
PEGは製剤処方、化粧品及び食品添加物として、また、主として薬物の t1/2を延長させるために広く 使用されている。最近10年間では、低分子PEG(<1 kDa)からより高分子PEG(≥ 30 kDa)を使用す る方向にシフトしている。脈絡叢の空胞形成は主として40 kDa以上のPEGで報告されている3, 41, 43。
Ivens ら(2013)47は、Micera®、PEGASYS®及び Cimzia®の非臨床試験及び臨床試験では週 1 回投与
による30~40 kDa PEGとRES及び脈絡叢における空胞形成との間には相関が認められると述べている。
Ivensらの公表論文中の図に本申請の提出資料に含まれるノナコグ ベータ ペゴル及び40 kDa PEGの試
験データを追加し、図2.4-15として示した。
図2.4-15 非臨床試験におけるPEG用量(µg/週)と空胞形成の関連性
Modified from Figure 3 in Ivens et al (2013,47) including nonacog beta pegol (study 208260, 4 week monkey, and study 212513, 26 week rat, for conversion to PEG doses 40 IU equals 0.23 mg or 230 µg PEG), 40 KDa PEG (study 209215, 6 week monkey, study 209294, 6 week rat, and 13 week rat data from Rudman et al.41, 1 mg equals 1000 µg).
ノナコグ ベータ ペゴル及びPEGの非臨床試験における週1回のPEG投与で認められた所見には、
Ivensら 47が報告しているデータとよく相関していることが認められる。また、これまで、ノナコグ ベ
ータ ペゴル投与時の PEG 相当量では、PEG に関連する顕微鏡的変化は認められていない。ノナコグ ベータ ペゴルの臨床推奨用量(40 IU/kg/週、PEG量として230 µg/週に相当)は、2009年から慢性リウ マチ性関節炎の治療剤として欧州連合及び米国で承認、市販されている Cimzia®の週1回臨床投与によ るPEG量の1/3以下である。
PEG単体又はタンパク質に結合した PEGに関する報告の大半では、脈絡叢、マクロファージ及び腎 に空胞が認められたケースを含め、PEG の存在と関連する変性、炎症又は壊死が認められないことか ら、ターンオーバーの低い細胞におけるPEG蓄積に対する適応反応であると記述されている43, 48。