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和歌山大学生涯学習教育研究センター 設置計画(案)

平成 9 年 8 月

和歌山大学

センター設置にあたり文部科学省に提出された資料

和歌山大学生涯学習教育研究センター 設置計画       

Ⅰ 和歌山大学における生涯学習の現状 1 和歌山県における生涯学習の現状

(1)和歌山県における歴史と現状

 和歌山県は、広大な山間地、農産地を抱える地理的条件のため、戦後、高度成長期において、

経済的、文化的発展から立ち遅れてきた。

 しかし近年、経済的、文化的発展を支える県民の力量を培うことに重点をおく、自治体施策 が行われてきた。和歌山県北部に位置する貴志川町では、全国的にも早い昭和 63 年「生涯学 習の町宣言」を行い、町の長期総合計画においてもそれが基調となっている。平成 2 年「生涯 学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律」制定もあって施策化された国の「生 涯学習モデル市町村事業」の指定を受けた県下市町村は、平成 8 年度までに 50 市町村中 32 市 町村を数えている。

 また、和歌山県では、昭和 63 年度より和歌山県生涯学習推進会議を設置し、県民の生涯学 習への取り組みを交流し、励ますために平成 3 年度から和歌山県生涯学習フェスティバル(平 成 6 年度まで)を、平成 7 年度から「きのくにまなびふれあい広場」を事業化し、また、平成 6 年度より自治体職員、教員、民間事業者の生涯学習にかかわる実務的、理論的力量を高める ための「生涯学習プロパー研修事業」を実施している。

 また、一方、県下の高等教育機関の事情を見れば、量的に少なく地理的にも北に偏在してい る。また、県下の公私立大学においても公開講座等が開設されているが、他府県と比べて、大 学が地理的に偏在化していることもあって、広く県民に及んでいるとはいいがたく、質量とも に十分とはいえない。

(2)和歌山県における生涯学習のニーズ  ①県民の学習ニーズの高まり

  和歌山県は、山間地の市町村を含む地域であり、高齢化も進んでいる(65 歳以上人口 17.5%、全国 15 位)。こうしたこともあって「健康や体力づくりやスポーツ」(51.1%)、「趣味 や芸術など」(47.1%)を学びたいという学習内容への関心が高い。同時に「地域の歴史や文化・

自然など」(25.0%)、「政治、経済、科学、文化など」(20.5%)とするものも高い。しかし「近 くに学びたい内容の講座や場所がなかったから」(26.7%)として「学ばなかった」とするも のが少なくない。これは自治体の多くが小さい規模であり、多様な学習内容が準備できないこ

た、学習方法においては、「テレビ・ビデオやラジオなどを利用して」学びたいというものが 高い(30.8%)のも特徴的である(データは、いずれも和歌山県教育委員会『県民の生涯学習 に関する意識調査報告書』(平成 6 年 1 月))。

  以上のような県民のニーズは、市町村自治体の調査にも表れている。御坊市での調査に よれば、「生涯学習が必要である」とするものは、70.2%である。特に 40 歳代においては、

81.9%に上る。内容的には、「趣味や楽しみ」(53.3%)、「老後の生活」、「保健・健康」に続き、「知識・

教養」(20.7%)、「仕事に役立つ」(17.5%)など職業的な学習を求めている。しかし、実際の 自治体の事業には参加していないとする者が 6 割あり、その理由として「魅力的な講座などが ない」とする者が多く(19.7%、特に男性は 23.0%)、ニーズと現実のギャップを示している(御 坊市教育委員会『御坊市生涯学習市民意識調査報告書』平成 7 年度)。

  これらのデータは、高度な生涯学習ニーズや職業的な学習ニーズに対して大学が応えてい くことの必要性を示している。

 ②地域のリフレッシュ教育へのニーズと本学の対応

  上記のデータにおいても、職業的必要から学習ニーズの高まりを見ることができたが、急 速な科学技術の進展や社会の変化に伴い、企業や地方公共団体及びそこでの従事者からのリフ レッシュ教育へのニーズも高まっている。

  本学と地域の産業界は、技術開発と人材確保、企業経営方法の開発普及を目的として、「産 学交流センター」(本学システム工学部、近畿大学生物理工学部、和歌山商工会議所の三者。

平成 8 年 3 月)及び「和歌山県地域経済研究機構」(本学経済学部、和歌山経済研究所、和歌 山商工会議所。平成 8 年 7 月)を設立している。

  一方、地方公共団体も地域社会の急激な変化のなかで、事業官庁から政策官庁への脱皮を 求められ、高度な職業的な教育を必要としている。これらの諸団体は独自の研修の充実を図っ ているが、大学等への期待も高い。和歌山県職員研修所の調査によれば、政策理論、政策形成 手法、地域政策論など公共政策関連課題については、特に「大学、各種学校等の教育機関を利 用する」ことを希望する者が多い。地域政策論については、次長級 12.8%、課長級(課長職以外)

8.7%が希望し、政策形成論については、課長級 7.0%、課長級(課長職以外 )8.7%が希望して いるなど、政策作成業務に携わる管理職クラスほど大学等の学習ニーズが高いのである(いず れも和歌山県職員研修所『和歌山県職員研修ニーズ調査報告書』平成 7 年 10 月)。

  また、学校職員については、本学大学院教育学研究科において、和歌山県教育委員会との 連携の下に、他府県と比べて多くの現職教員を受け入れており(入学者数の 4 割・国立大学平 均約 3 割)、また、学校教育現場の緊急課題に応える公開講座を、教員と父母の共同学習とし て展開できる方法で実施している。

  このように、生涯学習への強い要望を見るとき、和歌山県及び県下の自治体と高等教育機 関が、それぞれが生涯学習の事業を充実させるだけでなく、相互に連携・協力し、多様な学習 ニーズに応えることが必要であることを示している。また、放送メディア等を活用し、遠隔地 にも届けることができる方法などを考慮する必要を示している。

  特に、和歌山大学は教育学部、経済学部に加え、県民の多年の要望であった理工系のシス

を生かし、県民の生涯学習ニーズ及び産業界、官界が必要とするニーズに応えていく上で本学 の役割は極めて大きいと言えよう。

 ③地域からの要請・期待

  既に触れたように、和歌山県は積極的に生涯学習振興策を実施しているものの、高等教育 機関の本県における偏在等により、高等教育段階における生涯学習については未だ十分とはい えないが、和歌山県または県民からの本学を含めた高等教育機関に対する要請・期待には大き なものがある。和歌山県教育委員会からは、すでに別紙1のとおり、地域の生涯学習の中核機 関としての本学の生涯学習教育研究センター設置への要望書が提出されており、また、現在策 定中の和歌山県生涯学習推進基本構想においても、地域の高等教育機関への期待が議論されて いる。こうした地域的ニーズからも本学としても早急に同センターを設置することが地域の国 立大学としての責務であると考える。

  また、平成7年3月に、県の「和歌山県高等教育調査委員会」は次のような提言を行っている。

「生涯学習の機運が高まる中で、カルチャーセンター的な活動にとどまらず、レベルは高度化、

多様化しており、高等教育機関の人材、教育施設への期待が大きくなっている。こういったニー ズに応えるためには、高等教育機関が主体となって教育・研究機能、施設など多様な資源を広 く住民に開放し、産業界や行政にも活用できるような体制を整える必要がある」。また、「放送 や通信メディアを活用した新しいシステムによる学習情報や高等教育機関相互間(中略)の連 携、交流を可能とするためのネットワークの整備を図る必要がある」との提言も行っている。

さらに、「行政においても多様化、複雑化する行政ニーズに対応するための課題は山積していて、

高等教育機関はこれらに応える必要がある」としている。これらは、和歌山県として高等教育 機関に対する期待を表明したものであり、これに応えるためには、学部や附属施設の枠を越え た学内共同教育研究施設としての生涯学習教育研究センターを本学に設置する必要があると考 える。

  さらに、財団法人和歌山経済同友会は昨年 12 月に、「次なる和歌山の活力を求めて」と題 する提言をまとめたが、その中で人材育成の観点から、「多様化・複雑化が進むビジネス社会 において、社会人はより高度な専門的な知識を求めている。大学は社会人を対象とした『大学 連合公開講座』を開設し、地域の教育レベルの向上に資することが望ましい」としており、県 内の大学に対する期待を表明している。本学は、県内唯一の国立大学として、社会人に対する 高等教育レベルの教育機会を提供するほか、他の県内大学と共同した多様な生涯学習機会を提 供する必要がある。

  また、同提言をまとめる際、和歌山経済同友会が会員へのアンケート調査を実施しており、

その中で、「教育・研究活動といった観点から地域の魅力づくりを進めるため、何をすべきか」

との問いに関し(二つ以内の複数回答)、「地域内における産官学共同の研究活動を強化する」

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