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【基本情報】

1) 独立行政法人科学技術振興機構 (JST);有機化合物辞書データベース「日本化学物質 辞書 (日化辞)」 (アクセス日 平成24年2月27日)

2) 独立行政法人製品評価技術基盤機構化学物質管理センター;「化学物質総合情報提供 システム (CHRIP)」 (アクセス日 平成24年2月27日)

3) Hazardous Substances Data Bank:HSDB (TOXNET, US NLM)

  (http://toxnet.nlm.nih.gov/cgi-bin/sis/htmlgen?HSDB) (アクセス日 平成24年2月27日)

【含有・溶出試験】

4) Langlois, Ingrid., Mass spectrometric isomer characterization of perfluorinated compounds in technical mixture, water and human blood. 2007, PhD Thesis, University of Basel, Faculty of Science.

5) 国立環境研究所特別研究報告;有機フッ素化合物等POPs様汚染物質の発生源評価・

対 策 並 び に 汚 染 実 態 解 明 の た め の 基 盤 技 術 開 発 に 関 す る 研 究 (特 別 研 究), SR-67-2006, 平成15〜17年度

6) ISO 25101:2009  Water quality−Determination of perfluorooctanesulfonate (PFOS) and perfluorooctanoate (PFOA)−Method for unfiltered samples using solid phase extraction and liquid chromatography/mass spectrometry.

7) JIS K 0450-70-10:2011  工業用水・工場排水中のペルフルオロオクタンスルホン酸

及びペルフルオロオクタン酸試験方法

8) Gilles Arsenault et al., Some issues relating to the use of perfluorooctanesulfonate (PFOS) samples as reference standards. Chemosphere 2008, 70, 616-625.

9) Nicole Riddell et al., Branched Perfluorooctane Sulfonate Isomer Quantification and Characterization in Blood Serum Samples by HPLC/ESI-MS(/MS). Environ.

Sci. Technol. 2009, 43, 7902-7908.

【リスク評価】

10) EFSA, European Food Safety Authority (2008) Perfluorooctane sulfonate (PFOS), perfluorooctanoic acid (PFOA) and their salts Scientific Opinion of the Panel on Contaminants in the Food chain.

11) Seacat, A.M., Thomford, P.J., Hansen, K.J., Olsen, G.W., Case, M.T. and Butenhoff, J.L. (2002) Subchronic toxicity studies on perfluoroctanesulfonate potassium salt in cynomolgus monkeys. Toxicol Sci. 68, 249-264.

12) POPRC (2006) Risk profile on perfluorooctane sulfonate, Report of the Persistent Organic Pollutants Review Committee on the work of its second meeting, Addendum.

(http://chm.pops.int/Convention/POPsReviewCommittee/POPRCMeetings/POPRC2/P OPRC2documents/tabid/106/Default.aspxから引用)

13) SRC, Syracuse Research Corporation (2012) KowWin Estimation Software, ver.

1.68, North Syracuse, NY.

14) 化学工業日報社 (2011) 15911の化学商品

Ⅳ .  1,2,5,6,9,10-ヘキサブロモシクロドデカン (HBCD)含有製品の 安全性調査

Ⅳ- 1. 製品か ら の HBCD 放散 量調 査 

Ⅳ- 2. 難燃加 工 時 の HBCD 異性 体存 在比 に及 ぼす 温 度影 響の 推定 調査

Ⅳ- 3. 製品か ら 吸 着外 部粉 じん へ の HBCD 移行 調査

Ⅳ - 1. 製品からの HBCD 放散量調査

   

Ⅳ- 1. 製品からの HBCD 放散量調査

1. 調査内容... 1 1.1. 調査対象物質... 1 1.2. 調査項目... 1 1.3. 調査対象製品... 3 2. 調査方法... 4 2.1. 標準物質及び試薬類... 4 2.1.1. 標準物質類... 4 2.1.2. 試薬類... 4 2.2. 装置及び器具類... 5 2.2.1. 装置... 5 2.2.2. 器具類... 5 2.3. 機器分析... 5 2.3.1. 測定条件... 5 2.3.2. 検量線... 5 2.3.3. 同定及び定量... 6 2.3.4. 定量下限... 7 2.4. 含有試験... 7 2.5. 放散試験... 8 2.5.1. カーテン及びカーファブリック製品... 8 2.5.2. 断熱材及び畳製品... 10 3. 調査結果... 12 3.1. 含有試験結果... 12 3.2. 放散試験結果... 15 3.2.1. 設定条件の検討結果... 15 3.2.2. カーテン及びカーファブリック製品... 17 3.2.3. 断熱材及び畳製品... 26 4. 暴露評価... 27 4.1. カーテンの使用による室内暴露の評価... 27 4.1.1. カーテンからのHBCD放散量... 27 4.1.2. ヒトの推定 1日暴露量の設定... 27 4.2. カーファブリックの使用による車内暴露の評価... 28 4.2.1. カーファブリックからのHBCD放散量... 28 4.2.2. 推定暴露量の算出... 29 5. 有害性調査... 30 5.1. 調査方法... 30 5.2. 有害性評価... 31 5.2.1. ヒト健康への影響... 31 5.2.2. リスク評価に用いる無毒性量等... 32 5.2.3. 不確実係数の算出... 35 6. リスク評価... 35 6.1. カーテンの使用による室内暴露の評価... 35 6.2. カーファブリックの使用による車内暴露の評価... 36 7. 参考文献... 37

1. 調査内容

1.1. 調査対象物質

監視化学物質の一つである 1,2,5,6,9,10-ヘキサブロモシクロドデカン(以下、

HBCDとする)を調査対象物質とした。HBCDには複数の立体異性体が存在すること から、本調査では主要な異性体であるα、β及びγ体を分析対象とした(但し、製品 中の含有試験では確認のためδ及びε体も分析した)。

   

α-HBCD     β-HBCD       γ-HBCD

CAS No.:134237-50-6    CAS No.:134237-51-7      CAS No.:134237-52-8

1.2. 調査項目

HBCD は、第 103 回中央環境審議会環境保健部会化学物質審査小委員会(平成 22 年9月17日)において有害性調査項目が検討され、製造・輸入業者に対して鳥類の繁 殖試験による有害性調査指示が出されており、今後の試験の結果によっては、第一種 特定化学物質に指定される可能性も十分に考えられる物質である。また、国際的にも HBCDは残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)に基づき、条 約対象物質への追加について検討するために設置された残留性有機汚染物質検討委 員会(POPRC:POPs Review Committee)において審議されている。

こうした動向もふまえて、今後は、HBCD 含有製品の用途から、特に室内あるい は車内環境におけるヒト健康へのリスク評価が必要となってくるが、有害性情報の調 査・評価に比べ、暴露評価はまだ十分には行われておらず、一般消費者を対象とした 室内あるいは車内環境における暴露に関しては、国内外の情報が少ないというのが現 状である。

室内環境におけるHBCD含有製品からの暴露は主に、図1-2-1 に示した①揮発、

②発じん、③直接接触による経路があると考えられている。

図1-2-1  室内環境におけるHBCDの暴露シナリオ (静岡県立大学HP:http://kankyo.u-shizuoka-ken.ac.jp/column/25/

column_25.htm#fig_25-1より引用) そこで本調査では、室内または車内環境におけるHBCDの暴露評価を行うための 基礎的情報収集として、「①揮発」の経路に着目し、これらの暴露量推定を補足する ための調査を実施した。

「①揮発」経路の暴露については、様々なHBCD含有製品の放散量測定を行い、各 製品の室内または車内空気中への放散量(放散速度)を見積り、製品からの暴露の推定 を行った。また、得られた調査結果及び文献情報、使用実態調査等の情報から、室内 または車内環境への暴露評価を行い、人又は高次捕食動植物への安全性等の評価を行 った。

1.3.  調査対象製品 

  本調査において入手した調査対象製品を表1-3-1に示す。

表1-3-1  調査対象製品 1)

試料No. 用途 製造国

# 1 日本

# 2 中国

# 3 日本

# 4 中国

# 5 日本

# 6 日本

# 7

カーテン

日本

# 8 日本

# 9 日本

# 10 日本

# 11

(EPS)断熱材 2)

# 12 日本

# 13 日本

# 14 日本

# 15

(XPS)断熱材 3)

日本

# 16 日本

# 17 中国

# 18 日本

# 19 日本

# 20

日本

# 21 日本

# 22 タイ

# 23 日本

# 24

カーペット

日本

# 25 日本

# 26 日本

# 27

ファブリック カー

日本

1) 試料#5〜#7、#18〜#20及び#25〜#27は製造者等からの提供品である

2) EPS:ビーズ法発泡ポリスチレン

3) XPS:押出法発泡ポリスチレン

 

2. 調査方法 

2.1.  標準物質及び試薬類  2.1.1. 標準物質類

【HBCD標準品】

1) α-HBCD (50 mg/mL、トルエン溶液)   Wellington Laboratories社 2) β-HBCD (50 mg/mL、トルエン溶液)   Wellington Laboratories社 3) γ-HBCD (50 mg/mL、トルエン溶液)   Wellington Laboratories社 4) δ-HBCD (50 mg/mL、トルエン溶液)   Wellington Laboratories社 5) ε-HBCD (50 mg/mL、トルエン溶液)   Wellington Laboratories社

【HBCD-13C12標準品】

1) α-HBCD-13C12 (50 mg/mL、トルエン溶液)   Wellington Laboratories社 2) β-HBCD-13C12 (50 mg/mL、トルエン溶液)   Wellington Laboratories社 3) γ-HBCD-13C12 (50 mg/mL、トルエン溶液)   Wellington Laboratories社

【HBCD-d18標準品】

1) α-HBCD-d18 (50 mg/mL、トルエン溶液)   Wellington Laboratories社 2) β-HBCD-d18 (50 mg/mL、トルエン溶液)   Wellington Laboratories社 3) γ-HBCD-d18 (50 mg/mL、トルエン溶液)   Wellington Laboratories社 注) 含有試験では、HBCD-13C12をクリーンアップスパイク用内標準物質、HBCD-d18

をシリンジスパイク**用内標準物質として使用した。放散試験では、HBCD-13C12

を内標準物質として使用した。

2.1.2. 試薬類

1) アセトン 残留農薬試験・PCB試験用   関東化学(株) 2) アセトニトリル LC/MS分析用   関東化学(株) 3) メタノール LC/MS分析用   関東化学(株) 4) 超純水 LC/MS分析用   和光純薬工業(株) 5) ジクロロメタン 残留農薬試験・PCB試験用   関東化学(株)

6) HFIP   セントラル硝子(株)

7) ABS Elut-NEXUS 200 mg/6 mL   Agilent Technologies社 8) Sep-Pak Plus Florisil 910 mg   Waters社

注) HFIP:ヘキサフルオロイソプロパノール

クリーンアップスパイクは、前処理操作中の損失を確認するために添加。各内標準物質は13Cで標識した安 定同位体標識化合物である。

** シリンジスパイクは、クリーンアップスパイクの回収率を確認するための基準として使用する13Cで標識 した安定同位体標識化合物である。

2.2. 装置及び器具類 2.2.1. 装置

1) 恒温槽

2) マスフローコントローラー(MFC) 3) 遠心分離機

2.2.2. 器具類

1) ヘッドスペースバイアル(容量20 mL)

2) 小型チャンバー  セパラブルフラスコ(容量325 mL)をセパラブルカバー(容量125

mL、細口を2つ設置)で蓋した容器(ツバ内径85 mm)

2.3. 機器分析 2.3.1. 測定条件

高速液体クロマトグラフ質量分析法 (LC/MS/MS)

【LC条件】

L C 装 置 Agilent 1100 (Agilent Technologies社) カ  ラ  ム Ascentis Express C18 (SUPELCO社)

長さ 150 mm×内径2.1 mm×粒径2.7 mm 移  動  相 A:水、B:アセトニトリル/メタノール (1/9)

0→16 min   A:B=20:80

16→18 min   A:20→0  B:80→100  linear gradient 18→20 min   A:B=0:100

20.1→27 min   A:B=20:80 流      量 0.25 mL/min

カラム温度 40℃

注  入  量 5 mL

【MS条件】

M S 装 置 API4000(AB SCIEX社)

イオン化法 ESI(Negative)

測定モード SRM(Selected Reaction Monitoring)

測定イオン 各HBCD異性体 m/z 640.6 > 78.9 (定量用)       m/z 640.6 > 80.9 (確認用) 各HBCD-13C12異性体 m/z 652.6 > 78.9

各HBCD-d18異性体 m/z 657.6 > 78.9 2.3.2. 検量線

1) 検量線作成用標準液の調製

  各HBCD異性体の50 mg/mL標準原液を分取し、アセトニトリルで1 mg/mLの混

合標準液を調製した後、アセトニトリル/水(4/1)溶液で順次希釈して、1〜200 ng/mL の混合標準液を調製した。各HBCD-13C12異性体の50 mg/mL標準原液を分取し、ア セトニトリルで1 mg/mLの混合標準液を調製した後、先程の1〜200 ng/mL混合標

準液に内標準物質として10 ng/mLとなるように添加し、これを検量線作成用標準液 とした。

  含有試験の場合は、HBCD-13C12異性体と同様に、各HBCD-d18異性体の50 mg/mL 標準原液を分取し、アセトニトリルで1 mg/mLの混合標準液を調製した後、先程の

1〜200 ng/mL混合標準液に内標準物質として10 ng/mLとなるように添加した。

 

2) 検量線の作成

検量線作成用標準液を2.3.1項の測定条件でLC/MS/MSに5 mL注入し、得られた SRMクロマトグラムから各HBCD異性体(対象物質)及び対応するHBCD-13C12異性 体(内標準物質)のピーク面積を求め、横軸にHBCD濃度(ng/mL)、縦軸に対象物質の 内標準物質に対するピーク面積比をプロットし、検量線を作成した。一例としてα -HBCD検量線を図2-3-1に示す。

y = 0.0934x + 0.0607 R2 = 0.9999

0.0 5.0 10.0 15.0 20.0

0 50 100 150 200 250

α-HBCD濃度 (ng/mL)

(対/)

図2-3-1  α-HBCD検量線の一例 2.3.3. 同定及び定量

1) 同定

  分析試料液5 mLを2.3.1項の測定条件でLC/MS/MSに5 mL注入し、得られたSRM クロマトグラム上のピーク保持時間(リテンションタイム)が標準物質とほぼ同一で あれば対象物質として同定した。

2) 定量

同定された対象物質及び内標準物質のピーク面積比を検量線に代入し、分析試料液 中の対象物質の量を算出した後、以下の式によって試料の含有濃度または放散速度を 算出した。

Q W Q

C 1

) t i (

i= - ´

    Ci :試料のHBCD含有濃度または放散速度 (mg/gまたはmg/m2/h)     Qi :分析試料液全量中のHBCDの量 (mg)

    Qt :空試験でのHBCDの量 (mg)

    :試料量(g)または試料面積/放散時間 (m2/h) 2.3.4. 定量下限

  検量線作成用混合標準液の最低濃度を 5 回測定し、得られた測定値の標準偏差を 以下の式によって求め、その 10 倍を本調査における分析方法の定量下限とした(表 2-3-1)。

1 )

( i 2

-= å -n

x s x

s :標準偏差

xi :  個々の測定値 (ng/mL)

―x :  測定値の平均値 (ng/mL) n :  測定回数

表2-3-1  本調査における分析方法の定量下限

測定値 (ng/mL) 測定回数

α-HBCD β-HBCD γ-HBCD δ-HBCD ε-HBCD

1 0.978 0.996 0.881 0.954 0.944

2 0.965 1.027 0.888 1.010 0.857

3 0.992 0.979 0.910 1.000 0.883

4 0.957 1.007 0.868 1.010 0.912

5 0.969 0.967 0.897 1.055 0.958

標準偏差σ 0.013 0.024 0.016 0.036 0.042

10σ 0.1 0.2 0.2 0.4 0.4

  この定量下限(10σ)を基にして、試料量、前処理時の分取量及び定容量等から各試 料の定量下限値を算出した。

2.4.  含有試験 

  放散試験を実施する前に、調査対象製品のHBCD含有試験を行い、各HBCD異性体 の含有濃度を調査した。平成 21 年度の本調査で開発した試験方法に基づいて各製品の 含有試験を行った。含有試験フローチャートの概要を図2-4-1に示す。

  なお、複数の部材からなる畳製品については、HBCDを含有する可能性のあるポリス

チレンフォーム板のみを対象とした。

ジクロロメタンまたはHFIP ジクロロメタンで適宜希釈

←クリーンアップスパイク用内標準物質添加 メタノール

・遠心分離

Sep-Pak Plus Florisil固相カラム (必要に応じて実施)

アセトニトリル/水(4/1)

←シリンジスパイク用内標準物質添加 濃縮・転溶

精製

LC/MS/MS測定 試料分取

溶解 分取・希釈

再沈

図2-4-1  含有試験フローチャート

2.5.  放散試験 

  今回の放散試験は、試料形態に応じて以下の 2 通りの方法を採用した。カーテン 及びカーファブリック製品はヘッドスペースバイアル、断熱材及び畳製品については 小型チャンバーを用いた加熱加速測定法により、各想定温度における製品からの HBCD放散速度を推定または実測した。

 

2.5.1. カーテン及びカーファブリック製品

1) ヘッドスペースバイアルを用いた放散試験方法

  各試料を30〜40 cm2程度の表面積(片面)で切断して重量を測定した後、20 mL容 ヘッドスペースバイアルに封入した。恒温槽に試料を封入したバイアルを導入した 後、高純度空気を通気し、表2-5-1の測定条件でそれぞれ試料から放散したHBCD を捕集管 (ABS Elut-NEXUS)に採取した (図2-5-1)。捕集管からHBCDをアセト

ン 5 mL で溶出し、溶出液に内標準物質(HBCD-13C12)を加えて溶媒置換した後、

LC/MS/MS測定を行った。

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