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1.全体分析
第 41 回世界遺産委員会では、全ての危機遺産(文化遺産 37 件)及び本会合に保全状況報告が求められて いたその他の世界遺産(文化遺産及び複合遺産 66 件)の保全状況が審査された(議題 7A 及び議題 7B)。な お、今回初めて保全状況報告を行った資産は 9 件であった。これらのうち、危機遺産 20 件、その他の世界 遺産 10 件が個別審査された。
表 保全状況報告書の提出回数 保全状況報告
の提出回数
危機遺産 その他の世界遺産
1 回目 3 件 6 件
2〜10 回 16 件 34 件
11〜20 回 16 件 23 件
21 回以上 2 件
(ペルー「チャン・チャン遺跡地帯」、
イエメン「古都ザビード」)
3 件
(オマーン「バハラ城塞」、
ネパール「カトマンズの谷」、
タンザニア「ンゴロンゴロ保全地域」)
小計 37 件 66 件
合計 103 件
その概要は、第 1 章2に示したが、本章では、各資産の保全状況及び世界遺産委員会での審議状況につい ての個票を示す(2.危機遺産、3.その他の世界遺産)とともに、各世界遺産の脅威となっている要因に ついて冒頭にとりまとめた。
第 41 回世界遺産委員会に提出された保全状況(SOC)報告書のうち文化遺産及び複合遺産に関わる全 103 件 に記載された影響要因の内訳を見ると、全般的な管理体制・法的保護の不備に関わる「管理要因」が最も多 く、影響要因全体の約 34%を占め、資産地区内あるいは近傍における開発行為に関わる「開発」や鉄道建設 等のインフラ整備に関わる「交通インフラ」など開発関係の要因が次に多く(「開発」、「交通インフ ラ」、風車等の再生エネルギー施設整備を含む「公共インフラ」との合計で約 30%)、これに意図的な遺 跡破壊、戦争、内戦を含む「その他の人為活動」が約 10%と続いている(図 2 及び表)。この内訳の傾向 は過去数年変わっていない。その他、地震、浸食等の自然災害、観光による影響、石油開発、資源採掘等の 資源開発等の脅威も報告されている。
図 第 41 回世界遺産委員会に提出された保全状況報告書における脅威のタイプ
遺産含む)
資産に影響を与える要因 延べ
該当件数
大項目 小項目
1 開発 (88 件)
1.1 住宅開発 54
1.2 商業開発 8
1.3 工業地区 1
1.4 宿泊施設等 12
1.5 インタープリテーション施設、来訪者施設 13
2 交通インフラ (48 件)
2.1 陸上交通インフラ 25
2.2 航空交通インフラ 3
2.3 海上交通インフラ 5
2.4 交通インフラの利用に起因する影響 8
2.5 地下交通インフラ 7
3 公共インフラ (11 件)
3.1 水関連インフラ 5
3.2 再生可能エネルギー施設 1
3.3 非再生可能エネルギー施設 0
3.4(線状の施設に対して)局所的な施設 3
3.5 主要な線状の公共施設 2
4 環境汚染 (10 件)
4.1 海洋汚染 0
4.2 地下水汚染 1
4.3 表層水汚染 4
4.4 大気汚染 0
4.5 ごみ 4
4.6 エネルギーの過剰な使用 1
5 生物資源利用 (25 件)
5.1 漁業/海洋資源採取 0
5.2 養殖 0
5.3 土地改変 18
5.4 家畜飼育/放牧 3
5.5 農作物の生産 3
5.6 商業目的の野生植物採集 0
5.7 自給自足目的の野生植物採集 0
5.8 商業用狩猟 0
5.9 自給自足目的の狩猟 0
5.10 林業/木材生産 1
6 資源採掘 (7 件)
6.1 鉱山採掘 4
6.2 採石 2
6.3 石油・ガス 0
6.4 水 1
7 物理的な影響を与える 地域的条件 (13 件)
7.1 風 1
7.2 相対的湿度 1
7.3 気温 0
7.4 放射/光 0
7.5 ほこり 0
7.6 水 11
7.7 害虫 0
7.8 微生物 0
8 遺産の社会的利用/
文化的利用 (39 件)
8.1 祭祀/信仰/宗教利用 0
8.2 遺産の社会的評価 2
8.3 伝統的な狩猟、採集 0
8.4 伝統的な生活様式・知識体系の変化 4 8.5 アイデンティティ、社会的団結、地域人口・コミュニティ
の変化
11 8.6 観光/来訪者/レクリエーションの影響 22
29
資産に影響を与える要因 延べ該当件
大項目 小項目 数
9 その他の人為活動 (50 件)
9.1 不法行為 12
9.2 意図的な遺跡の破壊 12
9.3 軍事訓練 1
9.4 戦争 18
9.5 テロリズム 0
9.6 内戦 7
10 気候変動及び悪天候 (8 件)
10.1 嵐 0
10.2 洪水 7
10.3 干ばつ 0
10.4 砂漠化 0
10.5 海水の変化 0
10.6 気温の変化 0
10.7 その他の気候変動影響 1
11 突然の生態学的事象、
地学的事象 (16 件)
11.1 火山噴火 0
11.2 地震 2
11.3 津波/高潮 0
11.4 なだれ/地滑り 1
11.5 浸食/堆積 11
11.6 火災 2
12 侵略種/外来種等 (3 件)
12.1 移入種 0
12.2 侵略的/外来種(陸生) 3
12.3 侵略的/外来種(淡水) 0
12.4 侵略的/外来種(海生) 0
12.5 増えすぎた生物種 0
12.6 遺伝子組み換え 0
13 管理要因 (162 件)
13.1 影響の低い調査活動/モニタリング活動 0 13.2 影響の大きい調査活動/モニタリング活動 3
13.3 管理上の活動 29
13.4 管理制度/管理計画 79
13.5 財政 9
13.6 ガバナンス 6
13.7 人材 13
13.8 法的枠組 23
第 41 回世界遺産委員会に提出された保全状 況報告書総数(文化遺産、複合遺産。危機遺 産、その他の世界遺産含む)
103 件
注:遺産に影響を与える要因の分類は、世界遺産センターが世界遺産の定期報告で使用しているもの。
No. 決定
No. 締約国 資産名称 個別
審議 脅威
1 7A.20 ジョージア バグラティ大聖堂とゲラティ
修道院 〇 インタープリテーション施設, 来訪者施設, 管理上の活動
2 7A.21 セルビア共和国共和国 コソボの中世建造物群 内戦, 法的枠組, 管理制度/管理計画
3 7A.22 グレートブリテン及び北ア
イルランド連合王国 リヴァプールー海商都市 〇
商業開発, ガバナンス, 影響の大きい調査活 動/モニタリング活動, 住宅開発, インタープ リテーション施設, 来訪者施設, 法的枠組, 管理制度/管理計画, 遺産の社会的評価 4 7A.23 ボリビア多民族国多民族国 ポトシ市街 管理制度/管理計画, 鋼材採掘, 表層水汚染 5 7A.24 チリ共和国 ハンバーストーンとサンタ・
ラウラ硝石工場群 管理制度/管理計画, 風 6 7A.25 パナマ共和国 パナマのカリブ海沿岸の要塞
群
浸食/堆積, 住宅開発, 観光/来訪者/レクリエ ーションの影響, 法的枠組, 管理制度/管理計 画
7 7A.26 ペルー共和国 チャン・チャン遺跡地帯 アイデンティティ, 社会的団結, 地域人口・
コミュニティの変化, 不法行為, 管理制度/管 理計画, 水(物理的な影響)
8 7A.27 ベネズエラ・ボリバル共和
国 コロとその港 洪水, 管理制度/管理計画, 水(物理的な影 響)
9 7A.28 マリ共和国 ジェンネ旧市街 〇 内戦, 住宅開発, 土地利用用途の変更, 管理 制度/管理計画, ごみ
10 7A.29 マリ共和国 トンブクトゥ 意図的な遺跡の破壊, 管理制度/管理計画, 戦 争
11 7A.30 マリ共和国 アスキア墳墓 意図的な遺跡の破壊, 管理制度/管理計画, 戦 争
12 7A.31 ウガンダ共和国 カスビのブガンダ王国歴代国
王の墓 陸上交通インフラ, 管理上の活動, 管理制度/
管理計画
13 7A.32 エジプト・アラブ共和国 アブ・メナ 住宅開発, 管理上の活動, 管理制度/管理計 画, 水(物理的な影響)
14 7A.33 イラク共和国 アッシュール(カラット・シ
ェルカット) 〇 意図的な遺跡の破壊, 洪水, 管理上の活動, 管理制度/管理計画, 戦争, 水関連インフラ 15 7A.34 イラク共和国 ハトラ 〇 意図的な遺跡の破壊, 戦争
16 7A.35 イラク共和国 都市遺跡サーマッラー 管理制度/管理計画, 戦争
17 7A.36
パレスチナ自治政府(ヨル ダン・ハシェミット王国提 案)
エルサレムの旧市街とその城
壁群 〇
交通インフラの利用に起因する影響, ガバナ ンス, 影響の大きい調査活動/モニタリング 活動, 住宅開発, アイデンティティ, 社会的 団結、地域人口・コミュニティの変化, 管理 上の活動, 管理制度/管理計画, その他の危 機:自然のリスクファクター;記念物の崩 壊
18 7A.37 リビア クーリナの古代遺跡 〇
農作物の生産, 意図的な遺跡の破壊, ガバナ ンス, 住宅開発, インタープリテーション施 設、来訪者施設, 家畜飼育/放牧, 管理上の活 動, 管理制度/管理計画, 表層水汚染, 戦争 19 7A.38 リビア レプティス・マグナの古代遺
跡 〇 戦争
20 7A.39 リビア サブラータの古代遺跡 〇 戦争 21 7A.40 リビア ガダーミスの旧市街 戦争 22 7A.41 リビア タドラット・アカクスのロッ
ク - アート遺跡群
意図的な遺跡の破壊, 人材, 不法行為, 戦争
23 7A.42 パレスチナ自治政府 イエス生誕の地:ベツレヘム
の聖誕教会と巡礼路 住宅開発, 観光/来訪者/レクリエーションの 影響, 管理上の活動, 管理制度/管理計画, 水
(物理的な影響)
24 7A.43 パレスチナ自治政府
パレスチナ:オリーブとワイ ンの地−エルサレム南部バテ ィールの文化的景観
伝統的な生活様式・知識体系の変化, アイデ ンティティ, 社会的団結, 地域人口・コミュ ニティの変化, 侵略的/外来の陸上種
31 No. 決定
No. 締約国 資産名称 個別
審議 脅威
25 7A.44 シリア・アラブ共和国 古都アレッポ 〇 土地利用用途の変更, 管理上の活動, 管理制 度/管理計画, 戦争
26 7A.45 シリア・アラブ共和国 古代都市ボスラ 〇 住宅開発, 不法行為, 戦争
27 7A.46 シリア・アラブ共和国 古都ダマスクス 〇 住宅開発, 管理上の活動, 管理制度/管理計 画, 戦争, その他の危機:火災
28 7A.47 シリア・アラブ共和国 シリア北部の古代村落群 〇
財政, 住宅開発, 人材, アイデンティティ, 社 会的団結, 地域, 人口・コミュニティの変化, 不法行為, 法的枠組, 管理制度/管理計画, 採 石, 戦争
29 7A.48 シリア・アラブ共和国
クラック・デ・シュヴァリエ とカルエッサラー・エル‐デ ィン
〇
土地利用用途の変更, 管理上の活動, 管理制 度/管理計画, 採石, 戦争
30 7A.49 シリア・アラブ共和国 パルミラの遺跡 〇
交通インフラの利用に起因する影響, 陸上交 通インフラ, 住宅開発, 不法行為, (線上の施 設に対して) 局所的な施設, 主要な線上の公 共施設, 宿泊施設等, 管理制度/管理計画, 相 対的温度, 戦争, その他の危機:多くの石材 の深刻な風化
31 7A.50 シリア・アラブ共和国 シリア・アラブ共和国の世界
遺産に関する一般的決定 〇
32 7A.51 イエメン共和国 古都ザビード 〇 意図的な遺跡の破壊, 財政, 住宅開発, 人材, 土地利用用途の変更, 管理制度/管理計画
33 7A.52 イエメン共和国 サナア旧市街 〇
内戦, 住宅開発, アイデンティティ、社会的 団結, 地域人口・コミュニティの変化, 土地 利用用途の変更, 管理上の活動, 戦争, その 他の危機:近隣住宅の構造的崩壊、建造物 の物理的被害と不安定さ
34 7A.53 イエメン共和国 シバームの旧城壁都市 〇 内戦, 財政, 洪水, 人材, 戦争, 水(物理的な影 響)
35 7A.54 アフガニスタン・イスラム 共和国
バーミヤン渓谷の文化的景観
と古代遺跡群
内戦, 商業開発, 陸上交通インフラ, 住宅開 発, 軍事訓練, その他の危機:摩崖仏崩壊の リスク, 壁画の不可逆的な悪化
36 7A.55 アフガニスタン・イスラム 共和国
ジャムのミナレットと考古遺
跡群 内戦, 浸食/堆積, 不法行為, 管理制度/管理 計画, その他の危機:ミナレットの傾き 37 7A.56 ミクロネシア連邦 ナン・マドール、東ミクロネ
シアの祭祀場 浸食/堆積, 観光/来訪者/レクリエーション の影響, 法的枠組, 管理制度/管理計画 38 7A.57 ウズベキスタン共和国共和
国 シャフリサブス歴史地区 〇
財政, 住宅開発, 人材, 法的枠組, 管理上の活 動, 管理制度/管理計画, その他の危機:伝統 的住居地区の破壊と再建