4.1 労働災害の現状
我が国における労働災害(休業 4 日以上の死傷者数)は、安全衛生年鑑によると平成 15 年では死傷者数 125,750 人、死亡者数は 1,628 人で、それぞれ前年比 0.1%、1.8%の減少と なり、全体としてはここ数年、減少の傾向を示している(図 4.1 参照)。
労働災害発生状況を産業別にみると製造業が最も多く、死傷者数が 32,518 人で全体の
25.9%となっており、死亡者数は 293 人で全体の 18.0%(建設業の 548 人に次いて 2 番目
に多い)となっている。
「印刷業・製本業・その他印刷」においては労働災害 844 人(前年 934 人)、死亡者は 2 人(前年 6 人)で、労働災害は全産業の約 0.7%、製造業の約 2.6%を占めている。事故の 型別では、労働災害 844 人のうち「はさまれ、巻き込まれ」が最も多く 456 人(前年 520 人)、事故の起因物別では、「一般動力機械」が最も多く 438 人(前年 522 人)となってい る(表 4.1 および表 4.2 参照)。
また、印刷業における労働災害の発生率をみてみると、度数率は 1.15、強度率は 0.27 と なっており、製造業全体(度数率 0.98、強度率 0.11)のなかでは高い値になっている(表 4.2 参照)。
これらの状況から「印刷業・製本業・その他印刷」においては「一般動力機械」による
「はさまれ、巻き込まれ」の事故が最も多いが、前年と比較すると労働災害の減少が見ら れた。
0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 140,000 160,000 180,000
平成9年 11年 13年 15年
単位;件
0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 単位:人 労働災害発生件数 死亡者数
図 4.1 労働災害の発生推移
表 4.1「印刷業・製本業・その他印刷」における事故の型別
平成 14 年 平成 15 年
はさまれ、巻き込まれ 520 456
転倒 71 87
動作の反動、無理な動作 74 66
墜落、転落 85 61
切れ、こすれ 64 60
その他 120 114
計 934 844
(単位:人)
表 4.2「印刷業・製本業・その他印刷」における事故の起因物別
平成 14 年 平成 15 年
一般動力機械 522 438
仮設物、建築物、構築物等 96 97
動力運搬機 62 56
荷 53 44
用具 40 39
その他 161 170
計 934 844
(単位:人)
表 4.3 労働災害 度数率・強度率(100 人以上の事業所が対象)
度数率 強度率
平成 14 年 平成 15 年 平成 14 年 平成 15 年
全 産 業 1.77 1.78 0.12 0.12
製 造 業 0.98 0.98 0.12 0.11
印刷業・製本業 1.41 1.15 0.10 0.27
(備考)
資料出所:安全衛生年鑑(平成 16 年版)労働災害動向調査
度数率:労働災害死傷者数÷延労働時間数×1,000,000
強度率:労働損失日数÷延労働時間数×1,000
4.2 印刷産業機械による事故事例の収集および事故の現象別の分析
当委員会では、印刷産業機械による事故事例を収集して事故の原因、傾向等の分析を行 ったうえ、事故の未然防止のための事故防止可能性分析を試みた。
以下の 4.2.1 項に事故の事例収集について、4.2.2 項に事故の現象別の分析結果に
ついて、4.3 項に印刷産業機械の事故防止可能性分析結果を示す。
4.2. 1 印刷産業機械による事故事例の収集
当委員会の各社より、印刷産業機械(印刷機械、製本機械、紙工機械)による事故事例 34 件を収集した。
収集した事例の内容は、事故のあった機械の「機種」、 「製造年」、 「事故の発生箇所」、 「被 災者の操作経験年数・年齢」、「障害部位」、「障害の程度(障害形態)」、「発生状況」、等で ある。
これら事故事例に基づき、事故の現象別に行った分析結果を 4.2.2 項に示す。
4.2. 2 事故の現象別の分析
(1)オペレータの操作経験年数
機械の操作、運転経験の少ない 2 年未満および十分熟知していると思われるベテラ ン層が被災した事例が全体の約 6 割となっており、U字型分布が見られた。これは、2 年未満のオペレータの安全教育不足、経験不足や未熟操作による危険予知不足から発 生したものと、逆に 5 年以上の経験者は作業の熟知、慣れによる危険不感知に陥った ため発生したものではないかと推測される(図 4.2 参照)。
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
1~2未満 2~5年 5~10年 10年以上
単位:件
図 4.2 操作経験年数
(2)障害部位
障害部位は、指および手に集中しており、危険部位への指および手の接触防止のた めの細かい配慮の不足が原因の一つと考えられる。また、機械運転時、機械メンテナ ンス時に危険部位への安易な接近、不注意による作業が事故の原因となったとも考え られる(図 4.3 参照)。
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18
指 手 頭部 腕 腰 足
単位:件
注 : 要 因 が 複 数 あ る も の は 重 複 し て カ ウ ン ト し て い る 。 図 4.3 障害部位
(3)障害形態
傷害形態は、切断 3 件、骨折が 10 件であり、大きな傷害が発生した事故が約 4 割を占めている。他は、打撲/外傷 20 件、脳震盪 1 件となっている(図 4 . 4 参 照)。危険分類で限界的な傷害が 6 割を占めているが、重大以上の傷害が 4 割とな ったことは顕在的および潜在的危険性のある機械で傷害が発生していると考えら れる。
0 5 10 15 20 25
打撲/外傷 骨折 切断 脳震盪
単位:件
図 4.4 障害形態
(4)加害部位
加害部位は、「回転ニップ巻き込み」が 14 件、「可動部にはさまれ」が 11 件で圧倒 的に多く、両方で全体の約 2/3 を占めている。「ナイフ、カッターに接触」も 4 件あ った(図 4.5 参照)。 「駆動中、回転中に手を出すな」という機械安全の基本が守られ ていないことが多いことを示していると考えられる。
0 2 4 6 8 10 12 14 16
固定部に衝突 高温接触 落下 ナイフ、カッターに接触 可動部にはさまれ 回転ニップ巻き込み
単位:件
図 4.5 加害部位
(5)作業の状態
機械の運転中の事故が一番多く 16 件であった。全体の 53 %を占めており、運転 中の安全作業が遵守されていないことが多いと考えられる。また、運転中に危険 部位へ近づく作業の必然性と防護策の見直しが必要であると考えられる。保守時 の事故は 8 件であった。
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 終業時
始業時(含む作業切り替え準備)
保守時 運転時
単位:件
図 4.6 作業の状態
(6)機械の製造年
機械の製造年代別にみてみると、1990 年代が一番多く 17 件あり、2000 年代が 11 件、1980 年代が 5 件の順番であった。
また、国内のPL法施行( 1995 年)以前と以降での事故件数を比較してみると、 1990 年代に限ると施行以降のほうが少なくなっていることがわかる。これは安全に対する 対策が強化されたことも一因と推測される。しかし、2000 年以降は再び増加となって いる。
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18
1980年代 1990年代 2000年代 単位:件
PL法施行以前 PL法施行以後
図 4.7 機械の製造年
4.3 事故防止可能性分析
(1)事故原因の推定
事故の原因を事例から分析してみると、機械の可動部、回転部にカバーが適切に設 置されていなかった事例、安全装置が取付けられていなかった事例(または故意に外 していた)、機械を停止しせず作業を行った事例もあった。
詳しくみてみると、作業標準の遵守や教育訓練の徹底、適切な安全装置の取付けな どにより、事故を未然に防げたと思われる事例も多い。
表 4.2 および図 4.8 に事例に基づく事故の推定される主な要因および、その件数
をまとめた。
表 4.2 推定される主な要因
推 定 要 因 件数
①安全装置を故意に殺していたために起こった事故 6 件
②極めて危険な作業(禁止作業)を行ったために起った事故 13 件
③作業経験の未熟、教育の不足による事故 4 件
④作業の不注意、ミスによる事故 18 件
⑤作業環境、作業スタイルの不備による事故 1 件
⑥安全装置が無かったために起こった事故 3 件
注 : 要 因 が 複 数 あ る も の は 重 複 し て カ ウ ン ト し て い る 。
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20
⑥安全装置が無かったために起こった事故
⑤作業環境、作業スタイルの不備による事故
④作業の不注意、ミスによる例
③作業経験の未熟、教育の不足による事故
②極めて危険な作業(禁止作業)を行ったために起こった事故
①安全装置を故意に殺していたために起こった事故
単位:件
図 4.8 推定される主な要因