q
a2q
a3q
a4q
a5ここで,式(6-1)は流体1の流路におけるスカラ(臭気物質)損失を示し,式(6-2)はスカラ対流フラックス を示し,熱伝達の場合の Newtonの冷却則に相当する。式(6-3)は仕切板の上面Supから下面Sdownへのスカ ラ拡散(絶乾状態での拡散係数を用いたFickの拡散式),式(6-4)は下面 Sdown から流体への物質伝達,式(6-5)は流体2の入口から出口への物質輸送量を示す。また,Q1 [m3/s] は高濃度側体積流量,C1,in [m3/m3]は高 濃度側流入臭気物質濃度,C1,out [m3/m3]は高濃度側流出臭気物質濃度を表す。hA1 [m3/m2・s] は高濃度流体側 の臭気物質伝達率,S1 [m2] は高濃度側流路から見た総物質透過面積,Cw1 [m3/m3] は高濃度側仕切板表面(Sup) の臭気物質濃度,CHは流体1の代表臭気物質濃度として,流入臭気物質濃度C1,in,流出臭気物質濃度C1,out
の算術平均値として与える。Da [m2/s] は仕切板の臭気物質拡散係数,Cw2 [m3/m3] は低濃度側仕切板表面の 臭気物質濃度,Smin [m2]は高濃度側の総物質透過面積S1と低濃度側の総物質透過面積S2の内小さい面積,ls
[m] は仕切板の厚みである.図 6.1(a)の仕切板下面(Sdown)から流体 2(ここでは低濃度側と想定)への物質伝 達,流体 2の入口から出口への臭気物質伝達量は式(6-4),式(6-5)となる(式(6-1),式(6-2)と同様に定式 化した)。
また,仕切板間の距離を保持する間隔板は仕切板に対する伝熱フィンとして作用する。第3章では,この 間隔板によるフィン効果を有効伝熱面積の増加として組み込んだが,熱―物質輸送の相似性を考慮すれば 臭気物質輸送においても同様のフィン効果をモデル化する必要があり,次式を用いて有効面積増加として モデル化した。
(1 )
A A
S S ……(6-6)
tanh A
A
A
m L
m L , 2 A
A
p A
m h
l D ……(6-7)
ここで,SA [m2]は仕切板面積S [m2]を基準としてフィン効率αA[-]を考慮した有効面積を示す。αA (0≦α
A≦1)は臭気物質輸送におけるフィン効率,L [m]は間隔板のフィンの有効長さ (斜辺長さ LPPの半分の長さ LPP/2として定義),hA[m3/m2・s]はフィン周囲の(臭気物質の)物質伝達率,lp[m]はフィンである間隔板の厚み,
Da [m2/s]は間隔板の(臭気物質の)拡散係数である。
(6-1)式から(6-7)式は第3章で提案した簡易型の顕熱・潜熱移動モデルと連成して解析を行う。基材表面 と空気界面ではフラックス保存を境界条件として課すことで,気相-固相間連成解析を実施する。
6.3 モデル定数同定のための基礎実験 6.3.1 基礎実験のレイアウト
本節では,全熱交換エレメントの仕切板として使用される材料中の拡散係数を把握するための基礎実 験を先行して実施し,その後に全熱交換エレメントでの臭気物質移行に関する実大スケールでの実験を 実施する。
仕切板のガス透過性能を決める材料中の拡散係数把握のための基礎実験は,全熱交換エレメントを構 成する仕切板単体に対する各種ガスの透過フラックスの計測を目的として独自に設計した小形チャンバ ーで実施する。実験装置の概要を図 6.2に示す。小形チャンバーの幾何形状は図 6.2(b),(c)で示すよう に矩形断面形状(W100mm×H4mm)の流路長さL=100mmの風路中央部に仕切板サンプルを配置しており,
上下二つのチャンバーで挟み込む。
この実験系でRA(環気),EA(排気)ならびにOA(外気),SA(給気)位置での対象臭気物質濃度(本報ではア ンモニアもしくは二酸化炭素)を計測する。その上で,前述の式(6-1)~(6-7)とHausenの近似式から換算 した物質伝達率hAを用いた数値解析を併用することで,各種臭気物質に対する物質拡散係数 Da を同定 するものである。
2/3
3.66 0.68
1 0.04
air A
e
Da Gz
h d Gz
……(6-8)
de
Gz Re Sc
L ……(6-9)
ここで,Daair[m2/s]は各ガスの空気中の拡散係数であり,アンモニアは2.29×10-5 m2/s(25℃),二酸化炭 素は1.64×10-5 m2/ s(25℃)の値を用いた6-10)。de[m]は等価直径,Gz[-]はグレーツ数でレイノルズ数,シュ
ミット数(=μ/Daair),等価直径deとガス交換部の流路長さL(ここではL=50mm)の比で定義される6-11)。
対象とする化学物質(対象ガス)は,RA側の流路より一定濃度で供給した注6-1)。RA側,OA側共に純水 中をバブリングし,調湿した空気を供給している。RA,OA流路共に流量は 1.0L/minとした。温度は実 験室の成り行き条件としたが,RA,OAの両流路ともに出入りの空気温度は連続測定し,22℃から28℃
程度以内の温度範囲に収まることを確認している。
拡散係数Daの算出過程の例として,調湿条件でのアンモニアを対象とした測定例を示す。RA側が濃
度470ppm,温湿度27℃,44.1%RH,OA側が濃度0.8ppm,温湿度27℃,54.9%RHの条件時,SA濃度が
23.9ppmとなった。拡散係数測定の透過セルの形状パラメータから式(6-8),式(6-9)を用いて物質伝達率
を計算すると,hA1=hA2=0.011m3/m2・sとなる。ガス透過面積は流体1, 2それぞれ等しくS1=S2=Smin=0.0025m2 であり,式(6-1)~(6-5)を用いると仕切板裏表それぞれの表面濃度はCw1=457ppm,Cw2=26.2ppmと計算 される。仕切板の膜厚さls=0.000027mからこの条件(平均相対湿度49.5%RH)での臭気物質拡散係数は9.8
×10-9 m2/sと算出できる。この計算手法では,材料中の臭気物質拡散係数Daの定義を有効拡散係数とし,
分子拡散効果に加えて吸着等温式の効果を組み込んだ拡散係数として定式化している。この点では臭気 物質拡散係数Daには陰的に全熱交換エレメント材料への吸着の効果も考慮されている。
(a) 物質拡散係数測定レイアウト
(b) 仕切板の拡散係数測定セル(上面)
(c) 仕切板の拡散係数測定セル(横断面) 図 6.2 物質拡散係数測定レイアウト
サンプル 50mm×50mm
100mm
100mm
RA
OA EA
SA
CH CW1
CW2 CL
C1,in
C2,in C1,out
C2,out
4mm 100mm
50mm
RA経路,OA経路中の空気中相対湿度の条件を段階的に変化させ,アンモニア(NH3)ならびに二酸化 炭素(CO2)の仕切板内拡散係数を計測した結果を実験条件と共に表 6.1に示す。また平均相対湿度の変化 に対する拡散係数の変化を片対数プロットとして図 6.3に示す。ここでは仕切板の物質拡散係数Daを 仕切板裏表の平均温度と平均絶対湿度から計算される平均相対湿度を条件としてプロットしている。
表 6.1 各種ガス透過試験の条件と物質拡散係数測定値
Gas CO2 NH3
湿度条件 RA≠OA RA≒OA RA≠OA
RA[%RH] 47 47 1.6 2.9 44 44 44
OA[%RH] 90 5.0 0.8 2.7 55 2.7 99
平均相対
湿度[%RH] 69 26 1.2 2.8 50 24 72 Da[m2/s]
(×10-10) 6.8 7.0 1.8 2.3 98 12 400
図 6.3 物質拡散係数の相対湿度依存性
図 6.3からは,アンモニアの場合,平均相対湿度の上昇と共に拡散係数が急激に増大する傾向が確認 でき,高湿度条件が材料中のアンモニア輸送を促進するメカニズムの存在が示唆される。二酸化炭素の 場合,低湿度側では明確な湿度依存性を示すものの,高湿度側ではその変化は微少であり,ほぼ一定値 となる。
1.E-11 1.E-10 1.E-09 1.E-08 1.E-07 1.E-06 1.E-05
0 20 40 60 80
拡散係数Da[m2/s]
裏表平均相対湿度φ[%RH]
NH₃拡散係数(湿度RA≒OA) NH₃拡散係数(湿度RA≠OA) CO₂拡散係数
6.3.2 基礎実験の結果
この基礎実験結果を用い,仕切板中の物質拡散係数Daの湿度依存性を以下のようにモデル化した。
0
DaDa f ……(6-10) アンモニア:DaNH3 2.0 10 10exp 0.075
……(6-11) 二酸化炭素: 102
5.5 0.1
1.2 10 1
1 0.1
DaCO
……(6-12)
ここで,Da0は相対湿度ゼロの条件での物質拡散係数を示す.物質拡散係数の湿度依存性に対して,
アンモニアでは指数型関数を仮定し,二酸化炭素ではLangmuir型関数を仮定した.
フィン効率算出のため,別途間隔板中の物質拡散係数についても測定を行ったが,アンモニア,二酸 化炭素共に平均相対湿度で0~70%RHの範囲では湿度依存性は見られず,物質拡散係数Daはアンモニ アで6.0×10-7~7.8×10-7 m2/s,二酸化炭素で5.3×10-7~5.9×10-7 m2/sとほぼ一定値であることを確認した.
6.4 全熱交換エレメントを対象とした臭気物質移行率測定
全熱交換エレメントの臭気物質移行率を高い精度で測定するため,気密に十分に配慮したダクト,風量 計,送風機を用いて,図 6.4に示す実験系で臭気物質移行率の測定を行った。
図 6.4 エレメントのガス移行率測定系の概要
風量QEA[m3/h]
チャンバー 3.0m×2.4m×H2.5m
送風機(EA) エレメント
送風機(SA) 風量QSA[m3/h]
送風機(OA) OA
SA
RA EA
屋外へ排気
RA→EAの空気は チャンバー内で 循環させる
NH3は床面に置いた 30%アンモニア水を 揮発・攪拌することで 初期濃度を作出
オリフィス 風量計
オリフィス 風量計 CO2はチャンバー
天井面から注入し,
攪拌しながら目標 初期濃度を作出
床置き型の超音波加湿器にてRA内を調湿
チャンバーサイズは 3.0m×2.5m×H2.4m であり,チャンバー内はガス吸着性を極力抑制するため,内壁 材質にはポリエステル,エポキシ塗料とシリコン(目地)を採用した。対象としたチャンバーサイズが大きく,
定量的な吸着量の評価は困難であったことから,測定はRA濃度が十分に高濃度かつ定常状態であることを 確認した後,即ち十分な吸着平衡に加えて流れ場と濃度場の定常状態を確認した上でエレメントのガス移 行測定を開始した。各ガスの濃度管理はチャンバー内RA濃度をモニターしながらCO2は100%のガスボン ベを用いて RA濃度が約 10,000ppmとなるよう調整し,NH3は30%アンモニア水を揮発・攪拌することで
100~500ppmの範囲の濃度を作出した。相対湿度調整には超音波式加湿器を用いた。CO2はRAチャンバー
の天井面から吹出し・攪拌を行いRA内の一定濃度を作出した。NH3はRAチャンバー内の床面付近にてア ンモニア水を揮発させ,攪拌を行うことでRA内の一定濃度を作出した。チャンバー表面等に対するアンモ ニアの吸着量は小さく,迅速に吸着平衡に到達することを確認している。本実験では最大でも 25ppm程度 の一般環境中のアンモニア濃度と比較して,相対的に高濃度を対象としたが,この濃度条件ではチャンバー に対する流入・流出濃度が計測誤差以下でほぼバランスし,吸着平衡となっていることを確認すると共に,
流れ場を含めて20分程度の時間で十分な定常状態となることを確認した.チャンバー内(即ちRA空気中濃 度)の各種ガス濃度が定常状態となったことを確認後,RA,SA,OAの濃度変化を経時的に計測し,各々の ガス濃度の減衰近似曲線を用いて(6-13)式に示すガス移行率の定義式により算出した.
SA OA
100
A
RA OA
C C
C C
(実測) (実測)
(実測)
(実測) (実測)
……(6-13)
ここで,ηA(実測)[%] は実験から得られたガス移行率,CSA(実測),COA(実測),CRA(実測) はSA,OA,RAで測定さ れた各パスの臭気物質濃度[m3/m3]を示す。この時,各時点での式(6-13)で算出されたガス移行率はほぼ一 定値であることを確認している。
また,今回の実験では第 3 章,第 5章で使用した小型エレメントでは十分な移行後の臭気物質濃度差が 確保できないことが予備実験で確認されたため,測定精度確保の観点で,住宅用途に使用される全熱交換エ レメントよりも大きいサイズのビル用途向けの全熱交換エレメント(有効熱交換サイズ□192mm×448mm) を用意し,定格風量である250 m3/hと共に,それよりも低風量(即ち高効率,高移行率となる)条件で実験を 実施した。エレメントの材質は第 3 章,第 5 章で使用した小型エレメントと同様の特殊加工紙を用いてい る。また,RAの静圧とSAの静圧は等しくなるようダクト系の圧損,送風機の出力を調整し,エレメント の仕切板以外の機械的な隙間からの移行を極力除外できるように実験系構成に配慮した。チャンバー内外 の温度は 25~30℃の間の成り行き条件で測定しているが,相対湿度は RAチャンバー内の床面付近から吹 出す超音波式加湿器を用いてRA内を十分に攪拌しながら調湿することで実験条件を作出した。
6.5 数値解析の概要
湿度条件に依存した臭気物質輸送を解析するためには,仕切板裏表の相対湿度を詳細に算出した上 で,仕切板中の物質拡散係数Daを計算する必要がある。第3章の簡易型数値解析の手法を用いて仕切板 裏表面の温度と絶対湿度を求め,図 6.3の結果から各種ガスにおける物質拡散係数Daの値を決定する。
解析対象空間は第3章で示したものと同様に1mm×1mmの等間隔の2次元正方メッシュを用いて分割