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3教

第1節  単元開発の視点

 本節では、r人物学習」を視点とした中学校祉会科歴史的分野における単元開発の視点 を明らかにする。

1 学習内容と学習方法の設定

 ここでは、現在の中学校社会科歴史的分野における知識注入を中心とした授業の課題一

①歴史学習の意義の理解、②歴史学習に対する興味・関心の育成、③主体的な学習態度の 育成、④資料活用能力や歴史的思考力の育成一を克服するとともに、歴史的人物の生き方 を通して学習者の人間形成に寄与するような授業構成のあり方を示すため、実践事例の分 析から得られた歴史授業構成の特性を手がかりとして学習内容と学習方法を設定する。

 まず、「人物学習」の各目標領域に対応した学習内容の中から、ねらいの達成に向けて 有効であると思われるものを検討し設定する。

 まず第1に、歴史学習的興味・関心をねらいとした4つの学習内容においては、歴史的 人物を教材として取り上げることによって、抽象的な歴史的事象を具体化し歴史学習に対 する学習者の興味・関心を高めるよう意図されていた。この場合、通史Lの歴史的人物と 郷土の歴史的人物の2つの選択肢が考えられるが、小学校での歴史学習あるいはこれまで の生活経験からの歴史的人物に対する既有の知識、様々な分野で活躍した歴史的人物を広 い範囲から選択することができる可能性、導入段階での動機付けなどを考慮すると、「学 習者が興味・関心を有する歴史的人物」およびr歴史的人物と歴史的事象との関連」を学 習内容として設定し、通史上の歴史的人物を取り上げることが望ましいものと思われる。

 第2に、歴史的興味・関心をねらいとした日標領域では、歴史的人物の人間性や歴史的 行為を学習することによって、その人物に対する興味・関心を高めることを意図した学習 内容と人物の行為の日的一手段や事象閥の関連を学習することによって、歴史的事象に対 する興味・関心を高めることを意図した学習内容の2つに分類された。この場合、歴史的 人物を介した歴史的事象をとらえさせることよりも、単元全体にわたってより具体的に理 解させることが可能である人物自体を学習内容として取り上げることの方がねらいを達成 する上では効果的であると考えられ、r歴史的人物」を学習内容として設定することが望 ましいものと思われる。

 第3に、歴史的思考・判断をねらいとした目標領域では、3つの学習内容に分類されて いたが、ここでは「歴史的人物の意思決定」を学習内容として設定することが望ましいも のと思われる。なぜならば、意思決定力の育成こそが「人物学習」の新しい視点であると

の指摘もあるが、この学習内容は他のr歴史的人物の生き方」・r歴史的人物とその時代 的背景」の2つを内包したものとなっているためである。すなわち、学習過程の中に位置 付けられたr説明」において人物と時代的背景との関連付けが図られ、r判断」では人物 の生き方などを追体験的に考察することで歴史的思考力や判断力を育成するという2面性 を有しているからである。

 第4に、歴史的技能・表現をねらいとした目標領域では、「歴史解釈とその表現」と「歴 史批判とその表現」の2つの学習内容に分類されていた。前者は歴史的人物に関する課題 解決的な学習過程を構成することで、各学習段階に応じて必要な資料を収集・選択・処理

・活用・表現する多様な活動が位置付けられ、歴史的技能や表現力の育成が図られるよう 意図されていた。一方後者では、人物を正しく再認識するために最新資料や立場を異にす

る複数資料を用いる学習活動を通して、歴史的技能や表現力を育成することが意図されて いた。ともにねらいは同じであるが、後者にっいては学習対象・学習場面が限定されてい ること、資料が複眼的に提示されてはいるが、それは授業者の価値観に基づいたものであ ることから、より主体的な認識と学習態度の形成が意図されている前者の「歴史解釈とそ の表現」を学習内容として設定することが望ましいものと思われる。

 第5に、歴史的知識・理解をねらいとした目標領域では、歴史的人物の行為・歴史的事 象・時代的背景・歴史的人物の役割の4っを核とした学習内容に分類されていたが、これ らはそれぞれ独立して理解されるのではなく、互いに関連して学習者にとらえられる授業 構成がなされていた。つまり、実践事例によっては理解の順序が異なる場合はあるが、歴 史的事象を生み出してきた歴史的人物の行為に着目し、時代的背景と関連付けて理解を図 り、そこから人物の果たした歴史的意義をとらえさせるという一連の過程によって、この 4つの内容が統一的にとらえられるというものであった。したがって、ここではr歴史的 人物の行為」・「歴史的人物と関連する歴史的事象」・「歴史的人物と時代的背景」・「歴史 的人物の役割」を学習内容として設定することが望ましいものと思われる。

 以卜、5つの目標領域を意図した9つの学習内容を単元開発の視点として設定する。

 次に、学習方法面から、ねらいの達成に向けて有効であると思われるものを検討し設定

する。

 H章で見たように学習方法に関しては、実践事例に基づいて9つに類型化を図った。こ の中で先の5つの目標領域を意図した9つの学習内容すべてに対して関与している学習方 法は、「歴史的共感理解」型と「歴史的研究」型の2つである。この内事例は少ないがr歴 史的研究」型を学習方法として設定することが望ましいものと思われる。その理由は、単 元の中に知識(記述的知識・説明的知識)、技能、思考力、価値判断力、意思決定力とい った5つの要素が具体的に設定されており、歴史上の論争的な問題場面での人物の問題解 決的行為の事例を教材として選択することにより、学習者の興味・関心や研究心を引き出 そうと意図されているからである。そして、これら5つの能力形成を図るための手立てと

して「記述」・「説明」・r判断」という3っの学習活動が授業過程の中に位置付けられて いる。すなわち、このr歴史的研究」型を学習方法として設定することは、次の2点にお いて意義があるものと思われる。1つは、各目標達成に向けて先の9つの学習内容を取り 上げることができる点。もう1つは、中学校での知識注入を中心とした歴史授業の5課題

の内、3課題(②歴史学習に対する興味・関心の育成、③主体的な学習態度の育成、④資 料活用能力や歴史的思考力の育成)に対する克服の手立てが示されている点。ただし、残

り2課題については解決の手立てが明らかにされておらず、新たにその手立てを設定する 必要がある。

 残された2課題とは、①歴史学習の意義の理解と⑤人間形成に寄与する授業構成のあり 方であった。この2つは分離独立したものではなく、互いに関連しているものと考える。

すなわち、歴史学習が人間形成に資するものであるということが学習者に自覚されれば、

歴史を学ぶ意義も理解されるのではないかと思われるからである。では、人間形成に資す る歴史学習とはどのようなものであろうか。このことにっいては、序章で峰氏と吉田氏、

1章で小俣氏と平田氏の見解を考察してきたが、筆者自身は次のようにとらえることが重 要であり、それが歴史学習に人物を中心に据える意義でもあると思われる。それは、歴史 的人物の生き方を学び、自分自身の生き方を見つめ直す機会にするとともに、よりよい自

己実現に向けて、その学習経験を生かしていくというものである。生き方のとらえさせ方 については、以下の理由から「歴史的研究」型を基本としたい。全生涯にわたって歴史的 人物の生き方をとらえさせることは不可能であるため、人生の問題場面、言い換えるなら ば、人生の岐路となる場面を取り上げ、その対応の仕方から人物の生き方を考えさせるよ うにしたい。つまり、問題場面での意思決定をとらえさせることが歴史的入物の生き方理 解につながるのではないかと思われるからである。また、断片的な生き方理解ではなく、

複数の間題場面での考察を通してより深く歴史的人物の生き方に迫ることができるように

したい。

 以上から、「歴史的研究」型を基本とした学習方法を単元開発の視点として設定する。

2 r坂本龍馬と幕末」の単元開発の視点

 現在の中学校社会科歴史的分野における知識沖入を中心とした歴史学習の課題を克服す るとともに、歴史的人物の生き方を通して学習者の人間形成に寄与する授業構成のあり方 を明らかにするため、5つの目標領域を意図した9っの学習内容と「歴史的研究」型を基 本とした学習方法を設定した。この双方の視点から坂本龍馬を取り上げ、教材化を図る。

 坂本龍馬を教材化する意義として、次の5点を挙げることができる。

 第1に、没後140年近く経つ今でも多くの人々を魅了する要素をもつ坂本龍馬を教材 として取り上げることによって、歴史学習に対する興味・関心を高めることができる。

 第2に、坂本龍馬の人問性や亀山社中結成・薩長同盟仲介・海援隊結成・大政奉還画策 などといった歴史的行為におけるr創意・選択・決断・行動」をとらえさせることによっ て、人物に対する興味・関心を高めることができる。

 第3に、坂本龍馬の人生は波乱に満ちたものであるため、間題場面の選択肢が多いとい う点から「歴史的研究」型を学習方法として設定することが適当であり、坂本龍馬の生き 方やその目的実現過程に見られる様々な能力・資質について考えさせることによって、よ

りよい自己実現に向けて自分自身の生き方を見つめ直す機会とすることができる。

 第4に、坂本龍馬に関する歴史学の研究成果としての文献資料が豊富であり、高知県立

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