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医療救護活動

NIPPON DATA2010 村上 慶子 帝京大学

J- MICC Study徳島地区調査

2) 医療救護活動

 阪神淡路大震災の中で組織的に医療活動として精神医療活動が行われた。阪神地域は地域で精神疾患を支え る体制づくりがなされたこともあり、発災直後より、地域で通院治療を受けていた精神疾患者に対する精神科 医療救護活動が神戸大学、兵庫県精神保健センター、県立光風病院の医師が中心となり立ち上げられた。そこ に大阪府などの精神科グループが加わり保健所に精神科救護所が置かれ対応がなされた。地域の精神疾患患者 への対応だけでなく、避難所や仮設住宅で生活している被災者に対するPTSDなどのメンタルヘルスの問題に 対する対応もはじめられた。

【おわりに】

 阪神淡路大震災では、健康問題として PTSD や孤立・孤独・うつ状態などのメンタルヘルスの問題が浮かび上

がった。医療救護活動として精神科救護所が設けられたが、メンタルヘルスへの対応のために「こころのケア

センター」も設けられた。高齢社会下の発災であったが、介護保険制度成立前であったこともあり要介護者に

対する福祉避難所設置など廃用性症候群、災害関連死の発生予防やそのケア体制などの対応も問われた災害で

あった。

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シンポジウム2   S-06

東日本大震災における福島県の健康課題

大平 哲也

福島県立医科大学医学部 疫学講座

 東日本大震災では、地震・津波による大災害に加え、東京電力福島第一原発事故に伴う広大な環境汚染と甚 大な社会影響を引き起こした。特に福島県では、震災による直接死に比べてその後の関連死が多く、それには 放射線による避難の影響が関連している可能性がある。福島県では、県民全体の健康管理を長期に実施するた めの健康管理調査事業 ( 以下、県民健康調査 ) が震災後に立ち上げられた。県民健康調査は、福島全県民を対象 とした基本調査 (外部被ばく実効線量推計) と詳細調査である①震災当時0-18歳の約36万人の子ども達への甲状 腺検査、②避難区域住民 21 万人を対象とした健康診査と③こころの健康度と生活習慣に関する調査、及び④福 島県内の毎年の妊産婦約1万5千人への妊産婦調査。を実施している。今回、県民健康調査の結果を中心として、

福島県の健康課題を身体的、心理的、社会的面から現状を報告し、今後の対策について考える機会としたい。

 身体面については、元々福島県民の健康課題として心筋梗塞、脳梗塞死亡が多く、循環器疾患への対策が課 題であった。特定健診及び後期高齢者健診受診者では、震災後1〜2年において、避難区域住民を中心として肥 満・過体重が増加し、それに伴い、高血圧、脂質異常、糖異常、肝機能異常、多血症、心房細動等を持つ者の 割合が増加した。さらに、これらの震災後の新規発症には避難したことが影響していた。次に、震災後5年間の 身体状況を検討した結果、震災後に増加した肥満者の割合に低下はみられず、高血圧、脂質異常、糖異常を有 する者の割合はさらに増加していたが、肝機能異常者は減少傾向がみられた。小児についても同様に震災後に 過体重の増加がみられ、その傾向は震災の影響がなかった他県に比べて顕著であることも報告されている。さ らに甲状腺検査の結果、平成29年9月現在194人のがん及びがん疑い例が発見されているが放射線との関連は明 らかではなく、放射線に対する不安の解消には至っていない。

 心理的には、平成23年度こころの健康度・生活習慣に関する調査において、16歳以上の者を解析した結果、

震災後の自覚的症状として、いらいら等の精神症状、及び腰痛、関節痛等の運動器疼痛を訴える者の割合が多 くみられた。また16歳未満でも、いらいら等の精神症状に加えて、腹痛、頭痛などの身体症状の訴えが多くみら れた。 16 歳以上において Kessler6 (K6) によって判定された精神的不調を訴える者 (K6 の得点が 13 点以上 ) の割 合は平成23年度調査では14.6%と高値を示した。また、精神的不調を訴える者の割合は平成24年度調査以降年々 低下傾向を示してきたが、震災後 6 年以上が経った現在でも一般集団と比べると高い値であり、長期間の避難生 活及び放射線への不安等が影響している可能性が考えられた。小児のこころの健康度については Strengths and Difficulties Questionnaire (SDQ) を用いて評価した結果、支援を必要とする者 (SDQ の得点が 16 点以上 ) の割合は、非被災地域と比べて高かった。平成24年度以降その割合は年々低下傾向がみられているものの、未 だ非被災地域と比べて高い状態が続いている。

 社会的には、震災後に避難を余儀なくされ、住居形態、家族構成の変化に加え、失業・転職、経済状況の悪

化等がおこり、それぞれが身体的健康やこころの健康に影響を及ぼしていた。また、放射線の影響についての

認識は他県の方がより強く認識しており、このことが福島に対する風評被害に繋がっている可能性がある。以

上のように身体的、心理的、社会的課題はそれぞれがお互いに影響し合っており、その対策のためには、単一

の対策ではなく、これらを包括するような対策が必要と考える。

シンポジウム2   S-07

熊本地震における健康課題

服部 希世子

熊本県県北広域本部 阿蘇地域振興局 保健福祉環境部(阿蘇保健所)

【はじめに】

 熊本県阿蘇地域は、 1 市 3 町 3 村から成る人口約 6.5 万人、高齢化が進んだ地域である。熊本地震では甚大な被 害が生じ、最大避難所数139ヶ所、約17,000人の方々が避難生活を余技なくされた。多くの方々が今も仮設住宅 等で生活されている。

 阿蘇地域では前震・本震以外にも最大震度5弱以上の強い揺れを観測する地震が8回発生し、また余震が断続 的に発生したため、住家被害に加え、いつ起こるか分からない大地震への恐怖とライフラインの復旧が長引い たこと等により、避難期間の長期化と車中泊の増加を招いた。ここでは熊本地震時の主な健康課題とその対応 について振り返る。

【避難所等保健医療ニーズの把握】

 地震直後は一気に多数の避難所が開設し、救急医療と同時に被災者の健康管理および避難所の環境衛生管理 が急務となった。阿蘇保健所自体が被災し、職員の参集が困難で被害の全体像がほとんど把握できないなか、

DMAT は避難所情報 (避難者数、医療の状況、ライフライン、環境衛生、要配慮者数、有症者数等) を収集し、

EMIS に入力していた。 150 ヶ所近くのこれら避難所情報は膨大で、保健所では迅速な分析・評価ができず迅速 な支援に結びつけることは困難だった。

 一方、本震後から災害派遣保健師チーム及び多くの外部医療支援チームが被災市町村に参集し、市町村では、

市町村・保健所保健師と外部支援者との間で定期的なミーティングが開催され、避難所等の情報共有を行いな がら支援活動が展開された。また、要配慮者について把握と対応が始まっていた時期だった。

 本震7日目に避難所アセスメントシートが県下統一され、本庁で情報の電子化と集約の体制がとられた。しか し、様式は有症状者数等の人数記載が求められ、避難者数が日々大きく変動する状況で誰がどうカウントする のか、なぜ項目の人数を毎日報告しないといけないのかという意見が寄せられた。すでに市町村では、支援者 による避難所等巡回結果の報告と問題点に対する対応が次々に行われており、刻々と状況が変化するなか、市 町村と支援者で対応が完結できる事項について本庁へ報告する時間や手間をかける必要性が低かった。

 医療情報については、 EMIS による医療機関情報のほか、産業医科大学 久保達彦先生により「 J-SPEED ( 災 害時診療概況報告システム)」が初めて導入された。これは、医療救護班が診療した被災者の疾病等の情報を収 集・分析する仕組みで、地域ごとに患者数や病気の種類の変化が可視化され、感染症対策および医療救護班の 必要数など適切な医療活動を行う目安になった。

【感染症対策】

 本震7 日目に県医療救護調整本部に熊本県感染管理ネットワークによる感染症部門が立ち上がり、阿蘇地域 では長崎大学臨床感染症学 泉川公一先生を中心とした ICT チームが結成され、避難所における感染症サーベイ ランス等が開始された。インフルエンザ等まん延防止が必要な感染所について市町村ごとに患者数が報告され、

避難所への衛生管理の早期介入およびまん延防止対策が図られたおかげで、断水が継続するハイリスクな環境 のなか感染症のアウトブレイクは発生しなかった。

【DVT対策】

 本震3日後から保健師チームおよび医療救護班により避難所、車中泊者に対してチェックリストを用いたハイ

リスク者のスクリーニングを開始し、ハイリスク者には弾性ストッキングの配布と生活指導を行った。また医

療チームにより下肢静脈エコーによる潜在的DVT患者のサーベイランスが行われた。

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学術委員会企画シンポジウム   S-08

「災害時循環器疾患の予防・管理に関するガイドライン」

編集の背景と今後の課題

安田 聡

国立循環器病研究センター 心臓血管内科部門

  2011 年 3 月 11 日午後 2 時 46 分,宮城県沖を震源とするマグニチュード 9.0 の大地震が発生し,その直後に発生 した大津波が東北地方を中心とする東日本の沿岸を襲い,甚大な人的・物的被害を惹起した.また,この東日 本大震災は,東京電力福島第一原子力発電所の事故を惹起し,広域にわたる放射能汚染を引き起こした.東日 本大震災は寒冷な時期に発生したこと,沿岸地域を中心に多くの住民が津波で家を失い避難所・仮設住宅での 避難生活を余儀なくされたこと,東北地方を中心とした東日本の広域な地域のライフラインが機能停止に陥っ たことなど,精神的・肉体的ストレスにより住民の健康状態にも甚大な影響を与えた.循環器系は最もストレ スの影響を受けやすい臓器系の一つである.また,循環器疾患は,その疾患の性格上,急性期の対応が最も重 要な疾患の一つである.このような背景から,日本循環器学会・日本高血圧学会・日本心臓病学会の3学会合同 で「災害時循環器疾患の予防・管理に関するガイドライン」が作成されるにいたった.災害時という非日常的 な状況における循環器診療に関するものであり,従来のガイドラインのように無作為前向き試験によるEBM (evidenced based medicine) に基づいて記述することはきわめて困難であると考えられた.本ガイドラインは,

東日本大震災を含め,大規模災害が循環器疾患に対して与えた影響に関するこれまでの知見をまとめ,実際に

震災を経験した各々の専門家が現時点において行っている方針・見解を集大成するという方針のもと編集され

た.東日本大震災を契機に今後,災害時の疾病リスクを減らすために,災害の備え・維持・分析と健康影響の

最終的な評価に関しての情報を提供するためのベースラインデータの集積とヘルスシステムの確立が必要であ

ると考えられる.