5.2 実証実験
5.2.2 動画データ配信実験
図 5.5: 各クラスタ内で最も遅いノードの平均ダウンロード速度
5.2.3 ピアの近接性測定
本実験は,通信局所性を高める手法としての地理情報クラスタリングの有用性を示すために 行う.4.1章で述べたように地理的な距離とネットワーク上の距離は一致しないため,クラス タ内通信とクラスタ外通信のコストを比較することで地理情報の有用性を示す.また,提案手 法を施した際の通信局所性への影響も検証するために既存手法との比較も行う.提案手法では シーダが存在しないクラスタを解体し,そのクラスタに属するノードは最も近いシーダを含む クラスタに割り当てられる.そのため,既存手法よりも通信局所性の面では劣ることが予想さ れるため検証を行う.
今回の実験では通信コストの尺度としてルータホップ数とRTT (Round Trip Time)を用い る.ホップ数はパケットが送信元から受信元まで送られる際に経由するルータの数を示し,RTT はパケットが送信元と受信元の往復に要する時間であり,これらはネットワーク距離を示すも のとして扱われている [25].本実験でも,実験5.2.2と同様に実験5.2.1において検証したノー ド数30の場合のノードを用いて検証を行う.クラスタは実験5.2.1によって得られた結果を利 用する.
クラスタ内通信とクラスタ外通信の比較
本実験で用いるクラスタリング結果は実験5.2.1における既存手法(ハードクラスタリング)
のものである.クラスタ内通信の通信コスト測定では,クラスタ内の全ノード間でpingコマ ンドを実行し,結果を取得する.一方のクラスタ外通信では,自分の属するクラスタ以外の全 ノードに対してpingコマンドを実行し,結果を取得する.クラスタ内通信コスト測定結果を 表5.3に示し,クラスタ外通信コスト測定結果を表5.4に示す.また,平均ホップ数の比較を グラフで表したものを図5.6に示し,平均RTTの比較をグラフで表したものを図5.7に示す.
測定結果より,すべてのクラスタにおいてホップ数,RTT共に平均値はクラスタ内通信の方 がクラスタ外通信よりも通信コストが小さいことがわかる.特にRTTはクラスタ内通信がク ラスタ外通信の半分以下の値であることからパケットの転送時間が大幅に削減できることがわ かる.この結果より,地理情報を用いたクラスタリング内における通信は通信局所性が高く,
遠距離トラフィックの削減にも貢献できることが分かった.
表 5.3: クラスタ内通信コスト
クラスタ 1(アジア) 2(南北アメリカ) 3(オセアニア) 4(欧州)
平均ホップ数 16.2 12.0 13.5 13.2
平均RTT 145.946 91.351 54.278 59.195
表 5.4: クラスタ外通信コスト
クラスタ 1(アジア) 2(南北アメリカ) 3(オセアニア) 4(欧州)
平均ホップ数 16.9 15.8 17.9 16.8
平均RTT 313.553 256.043 313.539 288.1
図 5.6: クラスタ内通信とクラスタ外通信の平均ホップ数の比較
図 5.7: クラスタ内通信とクラスタ外通信の平均RTTの比較
既存手法と提案手法の比較
クラスタリング結果は実験5.2.1のものを利用し,既存手法と提案手法のクラスタ内通信コ ストを比較する.測定結果は各クラスタ内の全ノード間でpingコマンドを実行し,取得する.
既存手法の通信コスト測定結果を表5.5に示し,提案手法の結果を表5.6に示す.また平均ホッ プ数をグラフで表したものを図5.8に示し,平均RTTを図5.9に示す.なお,グラフ内のクラ スタ番号は,1:アジア,2:南北アメリカ,3:オセアニア,4:欧州,1’:アジア・オセ アニアとなっている.
提案手法のクラスタリングではアジアとオセアニアが一つのクラスタを形成している.既存 手法の1(アジア:7ノード)と3(オセアニア:3ノード)が1’(アジア・オセアニア:1 0ノード)にまとまっているため,クラスタ1とクラスタ1’の差を比較することで提案手法 の影響を確認する.
まず,ホップ数に着目するとクラスタ1’の方がクラスタ1よりも0.6ホップ小さい.予想に 反してクラスタ1’の方が平均値が小さくなった要因として,クラスタ1よりもクラスタ3の 方がクラスタ内通信の平均ホップ数が小さかったことに加え,クラスタ1とクラスタ3のノー ド同士の通信経路上のホップ数が大きくなかったことが挙げられる.
一方,平均RTTはクラスタ1’の方が99.582[ms]多い結果となった.しかし,5.2.3章で示 したクラスタ1のクラスタ外通信のRTTがクラスタ内通信の2.1倍であることと比べるとク ラスタ1’内通信の1.7倍は,それより小さい.以上の結果より,提案手法クラスタリングは シーダを保証する際,クラスタ数を削減するために通信局所性が低下するクラスタが生じるこ とがあるが,その影響は大きなものではないことがわかる.
表 5.5: 既存手法の通信コスト
クラスタ 1(アジア) 2(南北アメリカ) 3(オセアニア) 4(欧州)
平均ホップ数 16.2 12.0 13.5 13.2
平均RTT 145.946 91.351 54.278 59.195
表 5.6: 提案手法の通信コスト
クラスタ 1 (アジア・オセアニア) 2(南北アメリカ) 3(欧州)
平均ホップ数 15.6 12.0 13.2
平均RTT 245.528 91.351 59.195
図 5.8: 既存手法と提案手法の平均ホップ数の比較
図 5.9: 既存手法と提案手法の平均RTTの比較