JMAG
3.2.1 動作原理
DC/DC
コンバータにもいろいろなタイプの回路があり, 入力電圧を昇圧する昇圧コンバータ, 逆に入力電圧を降圧する降圧コンバータ, どちらも行うこと のできる昇降圧コンバータなどが代表的である。降圧コンバータを用いて
DC/DC
コンバータ運転時の特性を明らかにしていく。まず, 降圧コンバータの原理を説明する。
降圧チョッパ回路の動作原理
図
3.31.
パワーMOS on時図
3.32.
パワーMOS off時44
図
3.33.
インダクタ電流, 電圧の時間波形パワーMOSが
on
の時, 電流は図3.31.に示す経路に流れる。インダクタの端
子間電圧は入力電圧V
inと出力電圧V
outの差V
in-V
outとなりインダクタには磁気 エネルギーが蓄積していく。そのため,
インダクタ電流i
L は徐々に上昇してい く。パワーMOS
がoff
の時,
電流は図3.32.
に示す経路に流れる。インダクタの 端子間電圧は-V
outとなり蓄積された磁気エネルギーを放出する。そのため, i
Lは 徐々に減少する。設定したデューティ比D
に従って交互にon
とoff
を繰り返す ことによってi
Lのリプル電流Δi
Lが形成される。この時,
入力電圧と出力電圧に は式(27)
のような関係がある。そのため,
出力電流は(28)
式となる。V
out=DV
in(27)
𝐼
𝑜= 𝐷𝑉
𝑖𝑛𝑅
𝐿(28)
インダクタの電流i
L の直流バイアス分I
o と三角波と仮定した時のリプル分Δi
L(peak to peak)の概算値を求めるために, V
in, V
outを一定と仮定し, インダクタ の抵抗成分R
とシャント抵抗R
shやMOS-FET
やダイオードSBD
の電圧降下を 無視して考えるとインダクタの端子間電圧v
Lは𝑣
𝐿= 𝑉
𝑖𝑛− 𝑉
𝑜𝑢𝑡= 𝐿 𝑑𝑖
𝐿𝑑𝑡
(29)
となり, 式を変形すると45
∆𝑖
𝐿= 𝑉
𝑖𝑛− 𝑉
𝑜𝑢𝑡𝐿 ∙ 𝑇
𝑜𝑛(30)
𝐷 = 𝑇
𝑜𝑛𝑇 であるので 𝑇
𝑜𝑛= 𝐷𝑇 = 𝐷
𝑓
𝑠𝑤(31) (30), (31)式より
∆𝑖
𝐿= 𝐷(1 − 𝐷)𝑉
𝑖𝑛𝐿𝑓
𝑠𝑤(32)
と表すことができる。ただし,v
L はインダクタの端子間電圧, L はインダクタン ス,i
Lはインダクタに流れる電流,Δi
Lはi
Lのリプル分,T
onはパワーMOS のオン 時間, Tは周期, fswはスイッチング周波数である。パワーMOSがoff
している時 も(32)式と全く同じ式が導き出せる。よって, インダクタの端子間電圧とインダ クタ電流の時間波形は図3.33.のようになる。
また, (28)式を𝐿𝑑𝑖𝑑𝑡ではなく𝑁𝑆𝑑𝐵𝑑𝑡で計算を行うと
∆𝐵 = 𝐷(1 − 𝐷)𝑉
𝑖𝑛𝑓
𝑠𝑤𝑁𝑆
(33)
と表すことができる。ここで, Nは巻数, Sはインダクタの磁路断面積である。46
3.2.2 実測値と近似値
解析モデル
解析するモデルについて,
DC/DC
コンバータに用いられているインダクタの 試料として市販のインダクタ(タムラ製作所 AHD-08-0125)を用いた。コアの材 質はパーマロイダストを使用しており, 形状はトロイダル型, 巻数は一次側, 二次側共に
40Turn
となっている。モデルの寸法は図3.34.のとおりであり,コア
の寸法は磁路長
l
i=64.4mm,
磁路断面積S=71.5mm
2,内径15mm,
外形26mm,
高さ
14mm
となっている。そのタムラコイルの
1/16
モデルをSolidWorks
で作成し,図3.35.のような寸
法とした。外側から一次側巻線,二次側巻線,空気領域があり,コアとなってい る。図
3.34.
コア寸法外径 内径
高さ
S
l
i47
図
3.35.
タムラコイル1/16
モデル48
磁性材料の測定方法
測定装置構成を図
3.36.に示す。発振器からの出力をパワーアンプによって増
ドキュメント内
有限要素法における磁気ヒステリシスの一考慮法と磁性材料を用いた素子への適用
(ページ 44-49)