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 作品制作では、下絵図像として仏画図像「般若菩薩」をモチ ーフとして使用する。その理由としては、「写経」の経典は般 若心経であり、そのことから、新たな「写仏」の可能性を追求 する仏画図像は「般若菩薩」の姿形に原点的な要素が多分に含 まれていると思われるからである。

 よって、制作段階においては、仏画図像「般若菩薩」を描画 制作し、制作支持材はこれまでの試作と同様に5種類(畳表、

白壁、栂板材、アルミホイール、アクリルミラー)とする。

 制作描画材は予備実験(2)の結果から、畳表・白壁・栂板 材にはニューサクラカラーを使用し、アルミホイールにはグラ

ンドコート、アクリルミラーにはアニメックスカラーを描画材 として使用する。制作描画筆は予備実験(1)、予備実験(2)

で使用した面相筆(中)で線描の描画を試みる。

1 制作手順

 制作手順は以下のとうりであるが、ここでは、一例として支 持材:栂板材、描画材:ニューサクラカラーで制作手順を説明

する。

 《準備物》 栂板材(A3)、下絵図像「般若菩薩」のコピ       一(A3)、ニューサクラカラー、面相筆(中)、

      皿、ペインティングナイフ、スーパーチャコペ       ーパー(青)、筆洗い容器、テープ、赤ボール       ペン、あて紙等

      (図17−1〜図17−4 参照)

《制作手順》

①下絵図像

  ・栂板材に下絵図像「般若菩薩」のコピーを上部2カ所    にテープで貼り付ける。     (図18−1 参照)

  ・栂板材と下絵図像「般若菩薩i」のコピーの間にスーバ    ーチャコペーパーを入れる。   (図18−1 参照)

  ・下絵図像「般若菩薩」のコピーの上から赤ボールペンで   なぞる。赤ボールペンを使用するのは、なぞった部分と   まだなぞっていない部分がはっきり分かるからである。

      (図18−2〜図18−5 参照)

②線描制作

 ペインティングナイフでニューサクラカラーを少々皿に

 取り、面相筆(中)で上部から線描していく。この際に、

 あて紙をして描かない部分を隠しておく。

 上部から描いていくと描画材が乾いていない部分に指先が

 触れて汚れるのを防止できる。   (図18−6 参照)

③処理

 栂板材にはスーパーチャコペーパーの青色が残っている。

 この青色を消すためには湿気を与えたらよい。

       (図18−7 参照)

④作品完成

  支持材:栂板材、描画材:ニューサクラカラー   仏画図像  「般若菩薩」

       (図18−8 参照)

準備物

図17−1

 栂板材 図17−2

下絵図像

図17−3

スーパーチャコ  ペーパー等

一二三翻

図17−4

筆、描画材等

制作手順

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図18−1

]写準備

図18−2

]写過程1

図18−3

]写過程2

図18−4

]写過程3

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図18−5

転写作品 図18−6

描画過程1 図18−7

描画過程2 図18−8

完成作品

2 結果及び考察

(1)支持材:畳表、描画材1ニューサクラカラーによる

  制作

一 L・・d蜘嚇・・躯馬1哨恥蝿.、、L.醐旧庵.

図19 支持材:畳表、描画材:ニューサクラカラー  筆先揃いが大変よく、直線や自由曲線にも描画性があり、ま た細部表現の描画も可能であった。着色はニューサクラカラー の黒色が明瞭に得られた。滲みも全くなく描画性に大変優れて

いた。

 畳表の支持材効果としては、線描で表現される仏画図像が 点描的に変化することが挙げられた。これは畳表の特徴を生 かしたものであった。

 なお、和紙に描かれた「写仏」と比べてみれば、線の表情に 大きな違いがあった。墨で描かれた仏画図像は線に優しさが感

じられ、また線の流れも自然であるように思われた。それは過 去に見慣れているためではなかろうか。

 その結果、畳表に描かれた仏画図像はニューサクラカラー の線描が畳表の目に左右されて点描的な効果を見せる点が評 価できた。また静止した仏画図像が、視点を変えることによ って表情に変化をもたらすことも発見でき、この効果は畳表 の特徴といえるのではなかろうか。

 大衆の視点に立てば、普段は生活空間の場によく用いられ

ている畳に仏画図像が描かれていることについて、やや驚き を感じるかも知れない。

(2)支持材=白壁、描画材:ニューサクラカラーによる

  制作

一3−9閃職

図20 支持材:白壁、描画材:ニューサクラカラー  ニューサクラカラーは輪郭線的要素として線の強弱が大変付

けやすく、また表情的表現・細部的表現においても線描が出来 た。着色面は鮮明な黒色が得られ、滲み等も全くなく、描画性 に優れていた。

 支持材効果は、線描で描画された仏画図像が漆喰の壁になじ む感じがあったが、白壁の凹凸によって仏画図像全体が少し浮 き出すような効果も見られた。

 その結果、墨で描かれた仏画図像は、紙面からあまり浮き出 してこないが、白壁に描かれた仏画図像は浮き出し的効果が発 見出来た。これは白壁の特徴と言えるのではなかろうか。

 大衆の視点に立てば、白壁に描くことは一種落書きのような ところがあるかも知れないが、白壁の持つ漆喰の肌ざわりや土 の温もりを感じさせるのも事実であると思われた。

(3)支持材:栂板材、描画材=ニューサクラカラーによる

  制作

図21 支持材=栂板材、描画材:ニューサクラカラー  ニューサクラカラーは輪郭線等から大変美しく流れるような 線で描画ができ、また細部表現においても筆先もよく揃い、描 画性が高いと認められた。着色面は滲み等もなく、線の強弱が つけやすく、描画性に大変優れていた。

 栂板材の効果としては、線描で描かれた仏画図像が栂板材の 板目と良好なコントラストをなし、仏画図像が板目模;様に左右

されて、広がりを感じさせることが発見できた。

 その結果、樹木の味わいや板目の美しさが見受けられた。ま た、紙面に描かれた仏画図像より栂板材に描かれた仏画図像の ほうが、より空間的な広がりの効果が発見できた。

 大衆の視点に立てば、板材に描かれたものとして絵馬などが 身近で親しみをもたれている。絵馬の場合は墨で描かれること が多く、耐久性に大変優れているが、ニューサクラカラーで描 画された仏画図像の耐久性については、未検証のため、明確な 判断はできなかった。

(4)支持材=アルミホイール、描画材:グランドコートに   よる制作

図22 支持材:アルミホイール、描画材:グランドコート  グランドコートは、細部表現において、筆先もよく揃い大変 描画しやすかった。また、はじく感じもなく、鮮明な描画性を 備えていた。着色においてはややくすんだ黒色が逆に渋みを出

していた。

 アルミホイールの効果としては、光の反射があり、この効果 を利用すれば光源の色彩を変えることによって、描画された仏 画図像に変化が現れた。例えば、青色の光源を画面に当てると より幻想的で鮮明な仏画図像が現れた。また鏡ほどではないに せよ、ものを映すことはアルミホイールの特徴といえる。

 その結果、アルミホイールに描かれた仏画図像は光源の色彩

によって仏画図像の表情を変化させることが可能であった。

 アルミホイールは一般家庭で気軽に使用されており、支持材 として今後の描画展開に大きな期待が持てる。

 大衆の視点に立てば、アルミホイールのようなものに仏画図 像を描くことに戸惑いを覚えるかも知れないが、支持材として は新たな可能性を多分に持っている。

(5)支持材1アクリルミラー、描画材:ア田干ックスカラー   による制作

図23支持材:アクリルミラー、描画材:アニメックスカラー  アニメックスカラーは、描画の際に少量の水分を必要とする が、輪郭線的要素・表情的要素などいずれをとっても大変描き やすかった。なお着色面においても明瞭な黒色が得られた。

 アクリルミラーの効果として、背景を全て映してしまうこと が挙げられる。例えば、木々の立ち並ぶ中、川面の水紋の映る 場所など、展示する環境を変えることで仏画図像も環境と共に 変化する。野外芸術作品としての要素を多分に持っており、こ の効果を生かす方向での展開が可能である。

 その結果、アクリルミラーには鏡的性質があり、制作者が描 いた仏画図像の中に、制作者自身の姿が写し出されることが発

見できた。

 「写仏」が自己との対話の場であることを鑑みれば、深い境 地に入っていくことも考えられるのではないだろうか。

 アクリルミラーに描かれた仏画図像と鑑賞者自身が同じ面に 映し出されるわけで、このような空間はあまり存在しないかも 知れない。

 支持材の効果を生かす方向での展開の余地は大いにあると考

えられた。

〔制作の結果〕

図19 仏画図像

支持材:アルミホイール 描画材:グランドコート

璽面懸ア

図20 仏画図像

支持材 アクリルミラー 描画材 アニメックス     カラー

 制作結果については、図19の作品は支持材アルミホイール に対して描画材グランドコート、図20の作品は支持材アクリ ルミラーに対して描画材アニメックスカラー、共に支持材に描 画性として高い評価が得られている。その理由としてはじく恐 れのない鮮明な着色が挙げられる。

 しかし、仏画図像を「写仏」する支持材として共にあまり適 応性のない面があるように思われる。何故なら、自然条件に近 い支持材である畳表、白壁、栂板材と比較してみると、人工的 素材アルミホイール、アクリルミラーは、やすらぎを求めて仏 画図像を描く 「写仏」の真髄から見ると少々距離があるように

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