第 6 章 アルゴリズムと実験
6.1 制作アルゴリズム
次に,秘匿画像と秘匿文書を埋め込むための制作アルゴリズムを,図6.1に示す二重情報ハイディン グ画像の制作過程に沿いながら作成する.
図6.1 二重情報ハイディング画像の制作過程
① 秘匿画像1枚と秘匿文書1枚を用意する.それらをそれぞれA,Mとする.さらに,カギ画像Kを 1枚と,画素値がすべて0の空白画像を1枚用意する.
② 秘匿画像Aを正規直交関数系で展開したときの展開係数 aを算出する.その算出方法は次式を用い て行う.
𝑎𝑚𝑛= ∑𝑁𝑗=1(∑𝑁𝑖=1𝐴𝑖𝑗 𝜑𝑚(𝑖))𝜑𝑛(𝑗) (6.4) カラー画像を対象にするので,赤色,緑色,青色の3つの展開係数を算出する.
③ 秘匿文書Mのアスキーコードを空白画像のビットプレーン0に置換する.それをサイファ画像C とする.埋め込むアスキーコード個数は赤色ビットプレーン0に(N×N)÷8個以内,緑色ビットプレー ン0に(N×N)÷8個以内,そして青色ビットプレーン0に(N×N)÷8個以内とする.
④ 展開係数 aをD ビットの画素空間{0,1, ⋯ , 2𝐷− 1}の画素値に量子化する.量子化する画素値をある 範囲に制限した理由は,カギ画像に埋め込むとき,その画素値のまま直接に埋め込めるようにするため
である .展開係数を 量子化す る方法は ,(ⅰ),(ⅱ),(ⅲ) の 3 つ の区間に 分けて量子化 する.
ただし,値𝑈, 𝑉を
𝑈 = ∑𝑁𝑗=1(∑𝑁𝑖=1255𝜑1(𝑖))𝜑1(𝑗) (6.5) 𝑉 = 1 √𝑁⁄ (6.6) とする.𝑈は式(6.4)の A が最大画素値 255 の場合の値である.𝑉は正規直交関数系{𝜑𝑖(𝑗)}の関数 𝜑1(𝑗) (𝑗 = 1,2, ⋯ , 𝑁)の関数値である.
(ⅰ) −𝑈 < 𝑎 ≤ −𝑉のとき 𝑞𝑎𝑚𝑛= 2𝐷−1−1
log10𝑈−log10𝑉(log10(−𝑎𝑚𝑛) − log10𝑉) + 1 (6.7) (ⅱ) −𝑉 < 𝑎 < 𝑉のとき
𝑞𝑎𝑚𝑛= 0 (6.8) (ⅲ) 𝑉 ≤ 𝑎 ≤ 𝑈のとき
𝑞𝑎𝑚𝑛= 2𝐷−1−1
log10𝑈−log10𝑉(log10(+𝑎𝑚𝑛) − log10𝑉) + 2𝐷−1 (6.9) 量子化係数qaを画素値とする画像が量子化画像である.
A
C
M K
Q G H
展開係数aと量子化係数qaの関係をグラフに表したのが図6.2の量子化特性である.ただし,図6.2 はqaの画素値を16個で例示したものである.
図6.2 量子化特性
⑤ 次に,量子化画像のビットプレーンを転置する.𝐷ビット画素空間の転置は,最上位のビットプレー ン(𝐷 − 1)を最下位のビットプレーン0に転置し,ビットプレーン0は1つ上のビットプレーン1へ,
ビットプレーン1はビットプレーン2へと順次1つ上のビットプレーンに転置する.最後にビットプレ ーン(𝐷 − 2)をビットプレーン(𝐷 − 1)に転置して,ビットプレーンの転置は完了する.これを画素値の 変化で示すと,式(6.10),式(6,11)になる.式(6.10)は転置前で,これを画像にしたのが量子化画像であ る.式(6.11)は転置後で,これを画像にしたのが転置後量子化画像Qである.
𝑛𝐷−1× 2𝐷−1+ ⋯ + 𝑛1× 21+ 𝑛0× 20 (6.10) 𝑛𝐷−2× 2𝐷−1+ ⋯ + 𝑛0× 21+ 𝑛𝐷−1× 20 (6.11) ただし,𝑛𝑘 (𝑘 = 0,1, ⋯ , 𝐷 − 1) は転置前ビットプレーン𝑘における数値「0」または「1」
⑥ 転置後量子化画像Q とサイファ画像Cを1枚のホログラム画像 Gに合成する.その合成方法は式 (6.12)で行う.
{0,1, ⋯ , 2𝐷− 1} × 2 + {0,1} (6.12)
-U -V V U a
qa 2 D -1
2 D-1
つまり,ホログラム画像G は{0,1, ⋯ , 2𝐷𝑎− 1} × 2である電子透かし領域と,ビットプレーン0の {0,1}
を画素値とするステガノグラフィ領域から構成される2層構造である.この2層構造が二重情報ハイデ ィング画像の仕組みである.ホログラム画像の画素空間の2層構造を図6.3に示す.
図6.3 ホログラム画像の2層構造
⑦ 最後にホログラム画像Gをカギ画像Kに次式で埋め込む.以上で二重情報ハイディング画像Hを制 作することができる.
𝐻 = 𝐺 +256−2255𝐷+1𝐾 (6.13)